現在、日本の東京都某選挙区に於いて、衆議院補欠選挙が行われていた。某政党の議員が汚職をスクープ紙にスッパ抜かれた事で辞職し、その穴埋めのために選挙が行われたのである。そして今も街角で、立候補者が声を枯らして選挙演説を行っていた。
「……だからして! 今こそ我々○○党は! 海中のメタンハイドレート採掘に全力を賭す事によってエネルギー革命を起こし……。な、なんだお前らは!」
『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』
だがその演説会場に、突如として乱入者があった。……新R・R・K・K、ネオ・バドーの戦闘員である。そして上半身というか、胸から頭にかけてが巨大なブラウン管になっている怪人、『怪人ブラウン管男』とでも言うべきだろうか。それがゆっくりと、現場に歩み入って来る。
『びびびびびび!! びびび!!』
『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』
「うわあああぁぁぁ!!」
「きゃあああぁぁぁ!?」
演説を聞くために集まっていた人々も、選挙運動員も、必死で逃げ惑う。無論のこと、候補者の男性も、逃げようとした。しかし、そこへ戦闘員たちが回り込む。
『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』
「ひいいぃぃ!? た、助けてくれ! だ、だれか!」
「せ、先生!」
一人の選挙運動員が、必死になって腰を抜かした立候補者を助け起こそうとする。だがその彼は、戦闘員に殴り飛ばされた。
「ぎゃっ!」
『ききき……。きぃ? ききききききぃぃぃ!』
だが戦闘員は、気を失ったのか死んだのかは定かでは無いが倒れ込んだ選挙運動員の、その着上着から姿を覗かせた財布に目を取られる。そしていそいそと、その財布を抜き取って懐に仕舞おうとした。
ばきっ。
嫌な音が響き、その戦闘員の首から上が消し飛ぶ。やったのは、ブラウン管男であった。ブラウン管男は頭部、というか巨大ブラウン管のてっぺんに手を当てて、疲れ果てた様な様子を見せた。
『びびびびびび……』
『『『『『『ききき……』』』』』』
『びび! びびびびびび!!』
『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』
戦闘員たちは、ブラウン管男の叱咤に背筋を伸ばし、2体が首から上が失せた戦闘員の身体を抱え、1体が倒れた戦闘員の首を拾って撤退する。残った多数の戦闘員は、腰を抜かしたままの立候補者に迫る。その手にはサブマシンガンが握られていた。明らかに、殺す気満々である。
「助けて、助けてくれ! だれかー!!」
「おっさん、あんまり悪どい事を裏でやってるから、そういう目に遭うんだぜ」
「えっ……」
声が響く。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと、俺を呼ぶ。聞け、悪人ども。俺は、正義の戦士……」
『びびびびびび!!』
『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』
ブラウン管男と戦闘員たちが近場の中層マンションの上を仰ぎ見る。そこには1人の人影があった。いや、その姿はカブトムシをモチーフとした改造人間……。
「仮面ライダー、ストロンガー!!」
そしてストロンガーはマンションの屋上から飛び降りる。そして戦闘員たちを殴り飛ばし、蹴り飛ばした。仮面ライダーストロンガー、城茂はブラックサタンという秘密結社が生み出した改造電気人間だ。脳改造による洗脳を自己催眠装置によって逃れた彼は、ブラックサタン、そして後継組織のデルザー軍団を倒した7人目の仮面ライダーである。
そして彼は、腰を抜かした立候補者の男に向かい、語る。
「まあ、てめえも狙われるに相応しい悪事を働いてるのはそうなんだけどよ。だけどそれを裁くのは警察の仕事だ」
「な、なんの事だ? そ、それより助けてくれ! わしは」
「ああ、いい、いい。しらばっくれなくても、よ。証拠はもう全部、警察に渡してある。てめえが息子にやらせてる事業での金儲けのために、ある企業の持ち主を違法な手段で
「な!」
「今回、てめえを殺そうとしてたのは、その企業の社長だった男の奥さんだ。奥さんは、自分の生命保険の受取人を、新R・R・K・Kにする事で、てめえを殺す契約を結んだ」
そして茂は言った。偉そうにふんぞり返って。だが、その声音には、どうにもしようがない、遣り切れなさがにじみ出る。
「奥さんは、死んだ。自殺じゃねえ。自殺じゃ、保険金下りねえからな。……殺人の証拠は、ねえ。現在の普通の科学技術じゃ、殺人だと立証できねえ。契約金は、ネオ・バドーに渡っちまった。だがせめて、てめえは助けてやる。この後、なが~い刑務所でのお勤めにはなるだろうが、な。
そうすれば、ネオ・バドーは金だけ取って契約を実行できねえクソ野郎だって話が広まるだろうさ。そうなれば……」
バババババババババン!!
乾いた火薬の爆発音が響き、無数のサブマシンガンの弾丸が、立候補者とストロンガー、茂を襲う。しかし全ての弾丸は、ストロンガーが
だが、ブラウン管男が背中に手を回す。ブラウン管の後方末端から、ブラウン管男は何かパーツの様な物を引っこ抜いた。それは変形し、少々不格好な小銃へと姿を変える。
「なんだ? いくらでも来いよ。ただし」
「ストロンガー、『電パンチ』を出せ。『電キック』でもいい。相手に届かなくてもいい、急げ」
「な、だ、誰だ!?」
「急げ。信じろ」
「ち! 電、パアアアァァァンチ!!」
茂はその声を信じた。いや、声を信じたと言うよりも、その声にあった
眩い光条が、ブラウン管男の小銃先端より
「な、何ぃ!?」
『びびびびびび!?』
光のビームは、しかし茂の電パンチに触れる直前でぐねりと方向を変えて、明後日の方向に飛ぶ。それは斜め後ろにあった選挙カーにぶつかり、それに大穴を開けて粉々に吹き飛ばし、そしてその後ろにあった小公園の噴水を爆砕した。噴水は、大爆発を起こす。水と高熱で溶けたコンクリートによる、水蒸気爆発だろう。
「なんだぁ!?」
「……今のTVは液晶式が大半だからな。だがストロンガー、君ならブラウン管の構造ぐらいは知っているだろうに」
「そ、そうか! 電子銃か! ブラウン管式TVには、電子ビームを出す小出力の電子銃が、ってことはアレは超強力な電子ビームか!
……って、お前誰よ」
そこに立っていたのは、右半身が青い金属質、左半身が赤い金属質と
「そうか、お前が一文字さんの言ってた野郎か。名前ぐらい、名乗れよ」
「……あんたらの前で
……正義に味方しているだけで、正義そのものでは無い、がね」
「えーっと……。なんだそりゃ」
「正義のためなら悪い事もやるって事だ。……道交法違反とか、航空法違反とか」
「あ」
言葉に詰まる城茂。仮面ライダーも、道交法には喧嘩を売っている様な存在だ。ライダーのバイクの種類によっては、航空法にも喧嘩を売っている。いや、彼の後輩のスカイライダーなんかは、もろに航空法に喧嘩を売っていないだろうか。
『びびびびびび!!』
そして再度ブラウン管男が電子ビームを撃ち放つ。ストロンガーがまた電パンチで受けようとしたが、その時にはマシナリーが前に出ていた。そして右前腕部でビームを受け止める。いや、その時には彼の両前腕部には、内蔵されていた凶悪な形の
そして電子ビームはうねりっ、と蛇の様にうねり、天空の彼方へと飛び去って行く。おそらく、いや間違いなく、この
「さすがに、その威力では連射はできない様だな!」
『びびび!! びびび!?』
『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』
バババババババババン!!
雑兵の戦闘員たちがサブマシンガンを乱射する。しかしストロンガーも、マシナリーも、仮面ライダーの外装は対人用の弾丸で傷付くほどヤワではなかった。そしてストロンガーは悪徳立候補者を流れ弾から守る。こいつには司法の裁きを受けさせねばならない。なんとしてもネオ・バドーの手に掛けさせてはならないのだ。
次の瞬間マシナリーはジャンプすると、電磁ブレードの出た両腕をクロスさせて叫ぶ。
「電・
『び、びびびびびび!?』
カッ!!
閃光が走った。そしてブラウン管男は、クロス状に身体を切り裂かれた。マシナリーはバク転して飛び退く。直後、ブラウン管男は爆炎を噴いて大爆発した。
同時に、ストロンガーも叫ぶ。
「エレクトロ・ファイヤー!」
『『『『『『ききききききぃぃぃ!!』』』』』』
戦闘員たちが、地面を放射状に走った電撃の網に絡め捕られて次々に爆散する。彼は呟いた。
「やれやれ。見せ場を取られちまった、か?」
そう言いつつも、彼の視線はマシナリーから離れない。少なくとも今回は、謎のライダーの呼び名と、そして必殺技の1つまで判明したのだ。仮面ライダーストロンガー、城茂。ラフな口調と出たとこ任せなやり口には似合わず、実はけっこう頭の回転は早いのだった。
そこへサイレンを鳴らして、数台のパトカーが駆けつける。数人の刑事と、数人の警官が、そのパトカーから降車した。そして腰を抜かしてへたり込んでいた、選挙の立候補者を取り囲む。
「衆議院議員選挙立候補者、鶴井漉蔵。田中牧仁氏、小平雄一氏、遠見健太氏、三笠奈津子女史、笹井由紀子女史ら5人に対する殺人教唆の疑いで、5月12日午前11時5分、通常逮捕する。これが逮捕状だ」
「な!? し、知らん! わしは知らんぞ!」
「既に証拠も確保している。そうでなければ裁判所が逮捕状を出すわけが無いだろう」
「く、くそ……」
茂は一瞬唖然とする。
「……俺が警察に流した証拠で、逮捕じゃねえのか」
「そちらは裏取りが遅れている様だ。わたしが警察に流した、複数人の殺人教唆の方が早く結果が出た様だな」
「あいつ、殺しの依頼までやってたのかよ……」
やがて刑事たちの指揮官らしき中年、いや壮年と言った方がいいかもしれない男が、2人のライダーの方へ歩いて来る。
「通報感謝する。警視庁捜査一課の
「どういたしまして、と非公式に言っておこうか。新條警部、わたしの『上』から、K氏についての申し出があったはずだが」
「……彼はマザーを喪失して後、修理や整備に事欠く様になって前線を退き、現在はその超高精度センサーによる鑑識活動に従事している。だが、君は彼とは異なる。曲がりなりにも正規の派遣手段を取って、警察に送り込まれてきたKとは違う。
Kの修理と整備を請け負ってくれるという申し出は有難い。だが警察としては、いや彼の友であるわたし個人としても、言ってしまうならば得体の知れない存在である君の背後勢力に、Kを任せる事はできない」
「了解した」
マシナリーは、小さく溜息にも聞こえる電子音を鳴らす。
「田中善右衛門元警視総監が現役だったならな。
「何か言ったかね?」
「言ったよ。さて、それではわたしは去らせてもらう」
「事情聴取は、無理なんだろうな」
「ああ」
そして仮面ライダー・マシナリーの体内にある無線によるリモコンで、無人で彼のサイドカーがその場に現れる。空飛んで。航空法違反の他に、確実に電波法違反も犯している。サイドカーに乗り込んだマシナリーは、そのままアクセルを回すと明らかにスピード違反の速度で消えて行ったのである。
「警官の前で、やめて欲しいよまったく……。む?」
新條警部が気付くと、ストロンガーも姿を消していた。そして物陰で、人間の姿に戻った城茂は呟く。
「……能力的にゃ、すげぇな。あの必殺技の威力、俺の再改造、超電子の技に匹敵しやがる。俊敏性も、パワーも、チャージアップ状態の俺にひけを取らねえ。いや、あいつが三味線弾いてやがった場合は、もっと、か?」
何度も言うが、城茂は乱暴な態度やあまり慎重には見えない部分が目立つが、その実けっこう鋭い部分はあるのだった。
*
老人型の巨大基地ロボットであるグランパの内部に帰還したマシナリーは、人間形態に戻って立体映像の谷博士に報告を行っていた。
『鶴井は生きて逮捕されたか。これで新R・R・K・Kの評判には大きな傷が付くな』
「はい、
『ああ。かつての田中課長の助力のおかげで、8マンは警視庁8番目の刑事として、陰での働きを出来ていた様な物だ』
そして彼らは、溜息を吐く。
『今の我々の弱点だ。日本警察、いや日本政府にもさほど伝手が無い。幾つかの民間企業を隠れ蓑にしてはいるが。今の名前は不明だが、対ショッカー同盟の後継組織、それにどうにか連絡を取り、協力を申し出るべきだろうか』
「まだ、そこまで正体を明らかにするべきではないかと。今の規模の活動であるなら、今の社会的影響力で余裕があります。新R・R・K・Kの狙いである、8マン系列のサイバーブレインになり得るほどの電子頭脳や量子電脳の情報。そしてある意味それに匹敵する、光明寺博士のキカイダー・シリーズの頭脳回路。その情報は、先日の作戦で全て焼却できました」
『だが、新R・R・K・Kは、諦めはすまい』
立体映像の谷博士の表情は暗い。
『やつらは、戦闘員の頭脳の程度が低い事を懸念している。奴らの戦闘員は、8マン系列のスーパーロボットと、発想は近い。無論能力的には劣るどころか何十週も周回遅れだ。しかしその頭脳は、元になった人間の精神を移植しているのだ』
「ただ、8マンの電子頭脳と違い、特にそのロボット頭脳と相性の良い人間の精神でなければ移植できないのでしたね」
『そうだ。その選考基準は、単に機械との相性だけで決まり、その人間の能力や知能とは関係が無い。だから奴らは、最終的にどうしようもなく、金欲しさに犯罪に安易に手を染めた犯罪者の頭脳を、戦闘員のロボット頭脳にインストールした。そしてそのままコピーして大量生産した』
谷博士は、
『あれは、間違いなくアメリカにわたしが残して来た技術の、成れの果てだろう。8マンの頭脳に使った技術の、その何世代も前の、初歩技術。しかし、それの原型が金欲しさに悪に魂を売った犯罪者の物であったが故に。ネオ・バドーの戦闘員は作戦中に金や宝飾品、金銀を見るや、勝手な行動に出るのだ。
それをどうにかまともな戦闘員にしたいのだろう。無論、他の技術も手に入れば、とは思っているだろうが。いわゆる『頭の良い』ロボット戦闘員を大量に揃えたい、のだ』
「戦いは数だよ、兄貴、という奴ですね」
『そうだ。やつらがロボット戦闘員を大量に生産しない理由が、『使えない』からだ。だが戦闘員の頭が良くなってしまえば。1体1体の戦闘力は低くても、仮面ライダーレベルの相手には太刀打ちできなくとも。最大十数人から、ライダーと名乗れないレベルの半端な者まで含めても数十人しかいないライダーたちでは。数万体が一気に行動を起こせば』
仮面ライダー・マシナリーの人間態である青年が、重々しく頷く。
「新R・R・K・Kが、営利組織であるという事は。次は民間軍事会社運営にでも手を出しかねませんね」
『そうだ。そしてそれが他の悪と手を結んだ時』
「既にいくつか、怪しい動きを始めている組織があります」
『どうにかせねば、ならん。可能ならば、警察勢力と手を組んで、ロボット刑事Kの戦列復帰を後押ししたいものだが』
「……行方不明の、わたしの『兄弟たち』も。どうにか発見できれば……」
重苦しい雰囲気の中、彼らは相談を重ねる。彼らは『正義の味方』である。正義そのものでは無いかもしれない。しかしそれでも、少しでも世界を正しい方向に持って行きたいのである。
いつの日か、いつの日にか、その彼らの技術が平和のためだけに使われる日が来ることを信じて。彼らは歩き続けるのだ。
今回、『キックじゃない必殺技』出しました。なんとなく、でもキックの必殺技も出したいですな。近いうちに。とりあえずキカイダー派閥の人にファンサービス。技名だけ、仮面ライダーガタックから(笑)。
滝さんに似た刑事の人、この時代では警部です。中年っていうか壮年。たぶんロボット刑事の放映当時に恋人だった人と結婚してる。当時のおやっさんは、たぶん引退してますな。Kは作中でも説明しましたが、原作漫画でマザーの巨大ロボが制作者の女性科学者と共に、R・R・K・Kの巨大ロボットWith彼女の弟と共に爆散しましたんで、現在自分でどうにかこうにかできる限りの整備をしつつ延命に延命を重ねてます。でも前線に出るのは無理ぽ。なので一歩退いて、鑑識で頑張ってます。
あー、番外編で過去の話として、『8マン対ロボット刑事』でも書きたくなったなあ。でも舞台となる事件が思いつかない……。どっちも、ロボットの刑事、ではあるんですだよな。8マンは警視庁8番目の刑事ではあるんですし。