中央回廊で、最後まで抵抗していた黒曜の環の男が杖を振り上げた。
「コンフリンゴ!」
「遅い!」
鷲尾宗一の杖が、その半瞬前に動く。
「エクスペリアームス!」
赤い光が男の手首を打ち、杖が宙を舞った。その落下地点へ深見玲司が滑り込み、拾わせる暇すら与えないまま蹴り飛ばす。
「インカーセラス!」
別方向から伸びた拘束縄が男の腕と胴を巻き取り、床へ叩きつけた。
「ぐっ……!」
それでも起き上がろうとした男の正面へ、三本の杖先が同時に向く。
「動くな」
鷲尾の低い声だった。
男の動きが止まる。
少し離れた場所では、もう一人の黒曜の環が二人の禍祓官に挟まれていた。右へ逃げれば気絶呪文、左へ逃げれば拘束術。後ろへ下がれば、そこには霊脈隊から戻ってきた禍祓官が立っている。
「降伏しろ!」
返事の代わりに、黒い魔法が飛んだ。
前にいた禍祓官が半歩だけ身体をずらす。
「プロテゴ!」
魔法を斜めへ弾く。
その瞬間には、もう別の杖が動いていた。
「ステューピファイ!」
直撃。
男の身体が崩れ落ちる。
さらに奥では深見が一人の黒曜の環を追い詰めていた。
「まだやる!?」
「黙れ!」
黒い刃。
深見は正面へ盾を出さず、横の柱へ身体を隠した。刃が羊脂玉を削り、白い欠片が飛ぶ。
その陰から杖先だけを出す。
「デパルソ!」
衝撃は男の胸ではなく、床へ入った。
足元が跳ねる。
体勢が崩れる。
「な――」
そこへ。
「ステューピファイ!」
赤い光。
倒れた。
深見が柱の陰から出てくる。
「はい、一人!」
「数えてる暇があるなら周囲を見ろ!」
鷲尾の怒声が飛ぶ。
「見てます!」
「今見ただろう!」
「細かいなあ!」
言い返しながらも、深見の目はもう次の敵を探している。
だが。
いない。
中央回廊。
階段。
二階の渡り廊下。
大食堂へ続く道。
先ほどまで黒い外套で埋め尽くされていた場所に、立っている黒曜の環はもう一人もいなかった。
代わりに、床には拘束された者たちが並んでいる。全員の杖は回収され、手首には魔法封じが施されていた。
その向こうでは、奎星の守護霊によって戻った生徒たちが、まだ混乱した顔で周囲を見ている。
「……終わった?」
誰かが呟いた。
鷲尾は答えなかった。
まだだ。
耳を澄ませる。
遠く。
校庭。
轟音。
一度。
間を置かず、二度。
羊脂玉の壁が僅かに震える。
全員の表情が変わった。
深見が校庭側を見る。
「隊長……」
鷲尾は腕時計へ目を落とした。
作戦開始から、九分を過ぎている。
地下で蓮根奎星が守護霊を維持できると計算された時間は十二分。
残り。
三分を切っている。
「拘束確認!」
鷲尾が叫んだ。
「全員、魔法封じを二重にしろ! 杖は一本残らず回収!」
「了解!」
「負傷者は?」
「三名、戦闘継続困難! 重傷ではありません!」
「そいつらは残せ!」
深見が振り返る。
「鷲尾さん」
「ああ」
二人とも、同じ方向を見ていた。
校庭。
御影玄一郎。
真壁征士郎。
斎賀玄弥。
三人だけで。
神代冥司を止めている。
そこへ。
今なら行ける。
生徒たちはもう敵ではない。
黒曜の環も、中央部では制圧した。
霊脈中枢への経路も、倉橋と久世が守っている。
迎撃隊が最初から待っていた瞬間だった。
「動ける者!」
鷲尾の声に、禍祓官たちが一斉に顔を上げた。
「校庭へ行くぞ!」
「了解!」
十一人が動いた。
*
地下。
「十分!」
伊織の声が響いた。
残り二分。
奎星の銀の鴉は、すでに学校の大半へ届いていた。
黒い靄が抜ける。
一人。
また一人。
入口近くでは、もう杖を向けてくる生徒はいない。
日向が息を整えながら通路を見る。
「……来ない」
楓も杖を下ろしはしないまま、耳を澄ませた。
「黒曜の環も?」
「少なくとも、この入口にはいないね」
久世が答えた。
隣では倉橋が、上から届く戦闘音へ顔を向けている。
さっきまでとは明らかに違う。
校舎内の戦いは減っている。
代わりに。
校庭の音だけが。
異常なほど大きい。
ドンッ!!
地下全体が揺れた。
天井から細かな砂が落ちる。
日向が顔を上げた。
「……御影先生」
楓の表情も硬くなる。
岳が拳を握る。
澪は何も言わない。
ただ、杖を持つ指へ力が入った。
そのとき、上へ続く通路から誰かが走ってきた。
戻った生徒だった。
息を切らしながら叫ぶ。
「中央回廊、黒曜の環を制圧したって!」
日向が振り返る。
「マジ!?」
「禍祓官の人たち、校庭に向かってる!」
「――!」
日向の身体が、その言葉だけで動いた。
「行くぞ!」
楓も反射的に一歩出る。
岳。
澪。
全員。
同じだった。
校庭へ。
御影たちのところへ。
「待て」
倉橋の声が落ちた。
日向の足が止まる。
振り返る。
「何で?」
「行くな」
「でも黒曜の環は終わったんだろ!? だったら俺らも御影先生たちの――」
「行くな」
今度は、さっきより低かった。
日向の眉が寄る。
「俺らだって戦える」
「知ってる」
「なら!」
「知ってるから言ってる」
倉橋が日向を見る。
その顔に、冗談も迷いもなかった。
「ここまで君たちが奎星君を守ったのも見た。生徒を傷つけずに止めたのも、黒曜の環を通さなかったのも知ってる」
「じゃあ何でだよ!」
倉橋は一拍だけ黙った。
そして。
はっきり言った。
「お前たちは足手まといだ」
空気が止まった。
日向の目が見開かれる。
楓も。
岳も。
澪も。
誰も、すぐには言葉を返せなかった。
日向の顔が怒りに変わる。
「……は?」
「倉橋さん」
楓が低く呼ぶ。
だが、倉橋は言い直さなかった。
「今の君たちが、あの戦場へ入れば足手まといになる」
「俺らは――!」
「戦える。分かってる」
日向の声を遮る。
「でも、あそこにいるのは黒曜の環じゃない」
また。
校庭から爆音。
一瞬遅れて、地下の壁が震える。
倉橋はそちらへ顔を向けた。
「神代冥司だ」
誰も喋らない。
「一発の範囲が校庭を消す。盾で受ければ割られる。姿くらましで避けても、現れた先を読まれる。御影さんたち三人が何をやってるか、ここから音を聞いてるだけでも分かる」
澪の表情が変わる。
彼女は決闘に強い。
だからこそ。
想像できてしまう。
あの三人が。
姿くらましを何度も戦闘へ組み込みながら。
一瞬の失敗が死に直結する速度で戦っていることを。
倉橋が続ける。
「君たちが入れば、御影さんは必ず君たちを見る」
日向の口が止まる。
「真壁さんも。斎賀さんも。あそこへ向かった禍祓官たちもだ」
「…………」
「一人でも危なくなれば、庇う。助ける。射線へ入る」
倉橋の声が少しだけ低くなる。
「その一秒で神代が抜ける」
地下。
その先。
目を閉じている奎星。
銀の鴉。
日向の視線が、ゆっくりそちらへ動いた。
倉橋は言った。
「だから足手まといだ」
今度は。
少しだけ。
言葉を足した。
「今はな」
沈黙。
日向の拳が強く握られる。
悔しい。
分かるから。
余計に。
悔しい。
「……俺」
声が低い。
「御影先生に、ずっと教わってきたんだけど」
「知ってる」
「夏も戦った」
「知ってる」
「星迎祭でも」
「知ってる」
「奎星守って、ここまで来た」
「ああ」
「それでも?」
倉橋は迷わなかった。
「それでもだ」
日向が俯く。
楓が隣で何も言わない。
慰めもしない。
今は、それを言う場面ではない。
岳が先に口を開いた。
「……じゃあ」
全員が見る。
岳は奎星を見たまま言った。
「ここにいればいい」
日向が顔を上げる。
「岳」
「まだ二分ある」
短い言葉。
いつも通りだった。
「奎星、終わってない」
「…………」
楓が目を閉じる。
一度。
そして杖を握り直した。
「そうね」
日向を見る。
「私たちの仕事、まだ終わってない」
澪も小さく息を吐いた。
「校庭へ行って邪魔するくらいなら、こっちを絶対に崩さないほうがましね」
「澪まで……」
「悔しいのは同じよ」
日向が黙る。
その横。
伊織は計測文字から視線を外さない。
「あと一分四十三秒」
日向の顔が上がった。
「細かい!」
「今は必要」
「……分かったよ!」
勢いよく杖を握り直す。
通路へ向く。
「じゃあ絶対誰も通さねえ!」
楓が呆れたように見る。
「最初からそうしなさい」
「うるさい!」
倉橋の口元が、ほんの少しだけ動いた。
それ以上、何も言わない。
彼自身も。
校庭へ行きたかった。
真壁征士郎。
御影玄一郎。
斎賀玄弥。
子供の頃から名前を聞いたことのある魔法使いたち。
今なら。
同じ戦場へ立てる。
それでも。
行かない。
ここには。
奎星がいる。
術者を守る者が必要だった。
だから。
残る。
それが。
自分の仕事だった。
*
校庭。
神代冥司の魔法が御影の正面で炸裂した。
「っ――!」
御影は盾を真っ直ぐ出さない。
斜め。
受け流す。
それでも衝撃の半分までは殺せず、身体が横へ弾かれる。
三メートル。
着地。
神代がその横を抜ける。
地下へ。
「玄一郎!」
真壁が叫ぶ。
御影は返事をしない。
ばちん!!
消える。
神代の正面へ姿現し。
「デパルソ!」
足元。
神代の踏み込みが半歩ずれる。
そこへ斎賀。
「ステューピファイ!」
神代が盾を出す。
御影がもう一歩入る。
進路。
塞ぐ。
神代の瞳が僅かに細くなった。
「…………」
言葉はない。
もう。
本当にない。
杖だけが動く。
細い赤黒い光。
御影が首を傾ける。
頬を掠める。
二発目。
腹。
「プロテゴ!」
小さな盾。
割れる。
御影の身体が後ろへ飛ぶ。
だが。
倒れる前。
ばちん!!
姿くらまし。
十メートル横へ。
姿現し。
着地。
膝が沈む。
立つ。
「しぶと……」
斎賀が言いかけて止めた。
御影が睨んだからではない。
別の音が聞こえた。
足音。
一つではない。
大勢。
校舎。
中央回廊側。
斎賀が一瞬だけそちらを見る。
「……来た」
神代も気づいた。
御影だけが振り返らない。
来るのは分かっていた。
次の瞬間。
「プロテゴ・マキシマ!」
複数の声が重なった。
神代が放った赤黒い魔法。
御影の前。
そこへ横から巨大な防壁が割り込む。
激突。
轟音。
一枚ではない。
一層目が軋む。
二層目。
三層目。
衝撃を順番に殺す。
光が消える。
御影が初めて横を見た。
鷲尾宗一。
その隣。
深見玲司。
さらに。
中央回廊を制圧した禍祓官たち。
十一人。
全員。
杖を構えている。
深見が息を切らしながら笑った。
「御影隊長!」
御影の眉が寄る。
「遅い」
「すみません!」
「中央は」
鷲尾が答える。
「制圧しました。黒曜の環は全員拘束。動けない三人だけ残してあります」
「生徒は」
「戻り始めています」
御影の目が僅かに動く。
それだけ。
「そうか」
一言。
そして。
神代へ向き直る。
深見が御影の横へ出ようとした。
「隊長、怪我――」
「後だ」
「ですよね!」
真壁も一度だけ周囲を確認する。
十一人。
全員が無傷ではない。
長衣が裂けている者。
額から血を流している者。
腕を庇っている者。
それでも。
戦える。
真壁が即座に指示を出した。
「囲むな!」
何人かが動きを止める。
「全方向から詰めれば同士討ちになる! 地下側だけを厚くしろ!」
鷲尾が即座に理解する。
「第一線、五人! 御影の後ろ! 第二線、残りは左右を塞げ!」
「了解!」
誰も迷わない。
五人が御影の後方へ扇状に展開する。
残りが左右。
地下へ通じる方向。
校舎へ抜ける道。
神代が使いそうな射線を、一つずつ潰していく。
斎賀が目を丸くした。
「一気に増えたな」
真壁が言う。
「お前は勝手に混ざるな」
「何で俺だけ?」
「動きが読めん」
「十二年付き合ってまだ?」
「今のほうが読めん!」
神代が杖を上げた。
会話が終わる。
赤黒い光が六方向へ分裂した。
「来るぞ!」
御影。
一発目。
避ける。
二発目。
鷲尾。
盾を斜め。
逸らす。
三発目。
深見。
「プロテゴ!」
真正面では受けない。
その横から別の禍祓官が盾を重ね、角度を変える。
四発目。
真壁が先に足元へ撃つ。
「デパルソ!」
神代の立ち位置がずれ、射線そのものが変わる。
五発目。
斎賀が姿くらまし。
「はい、そっち」
神代の死角へ現れ、杖先へ牽制。
六発目。
御影の顔色が変わる。
地下。
「させるか!」
ばちん!!
射線上へ姿現し。
「プロテゴ!」
衝突。
盾。
軋む。
その後ろ。
「重ねろ!」
鷲尾の声。
二枚目。
三枚目。
四枚目。
魔法が一枚ずつ盾を砕き。
最後。
五枚目の前で。
逸れた。
轟音とともに校庭の端へ突き刺さる。
誰も倒れていない。
御影が一瞬だけ後ろを見る。
鷲尾が言った。
「一人で全部やるな」
御影の眉が僅かに動く。
どこかで聞いたような言葉。
真壁が横から言う。
「聞いたか、玄一郎」
「聞こえてる」
斎賀が笑う。
「怒られてんじゃん」
「お前もだ」
鷲尾が言った。
斎賀の笑みが止まる。
「俺も?」
「特にお前だ」
「初対面に近いのに!?」
「話は聞いてる」
「誰から!?」
「今そこじゃない!」
真壁が怒鳴る。
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
空気が緩んだ。
神代だけは。
一切。
変わらなかった。
杖先。
地下。
御影が見る。
まただ。
神代はもう、目の前の十三、十四人を倒そうとしていない。
抜ける。
それだけを考えている。
左へ踏み出す。
禍祓官二人が移動。
塞ぐ。
右。
深見。
「ここは通しませんよ!」
神代が杖を向ける。
深見の顔から笑みが消える。
黒い光。
「プロテゴ!」
一枚。
割れる。
深見が二歩下がる。
その後ろから鷲尾。
「インペディメンタ!」
神代の足が一瞬鈍る。
斎賀。
「デパルソ!」
横から押す。
御影。
正面へ戻る。
また。
塞がる。
「…………」
神代の視線が動いた。
御影。
真壁。
斎賀。
鷲尾。
深見。
禍祓官。
その向こう。
校舎。
さらに下。
地下。
残り時間。
顔には出さない。
それでも。
もう。
選べる手が減っている。
神代が杖を下げた。
御影の目が細くなる。
「来るぞ」
真壁も気づく。
「全員、散開準備!」
神代の足元へ、赤黒い文字が浮かんだ。
学校の導管はもう使えない。
巨大な円環もない。
神代自身の魔力だけ。
それでも。
十分すぎる。
一つ。
十。
百。
古代文字が空中へ立ち上がる。
斎賀の笑みが消える。
「……まだそれだけ出んのかよ」
神代は答えない。
杖を振る。
文字が一斉に飛んだ。
「散れ!!」
真壁の怒声。
ばちん!!
ばちん!!
ばちん!!
禍祓官たちが一斉に姿くらまし。
黒い雨が校庭へ突き刺さる。
爆発。
御影。
十メートル右へ。
現れた瞬間。
「ステューピファイ!」
神代が弾く。
反対側。
鷲尾。
「インカーセラス!」
縄。
切られる。
上。
斎賀。
「デパルソ!」
盾。
後ろ。
深見。
「エクスペリアームス!」
神代が身体を捻る。
さらに左右。
赤。
白。
青。
何本もの魔法。
だが。
無秩序ではない。
互いの射線を潰さない。
誰かが撃てば。
誰かが待つ。
神代が向けば。
逆側から撃つ。
御影たち三人ほどではない。
当然だった。
何十年も三人で現場へ出ていたわけではない。
それでも。
全員が禍祓官だった。
闇の魔法使いを捕らえ。
呪物を止め。
魔法災害へ入り。
人を逃がし。
仲間を生きて帰す。
そのために。
何年も。
何十年も。
現場へ立ってきた者たち。
神代の魔法を正面から上回る者はいない。
だから。
上回ろうとしない。
一人が受ける。
一人が流す。
一人が死角を潰す。
一人が倒れれば、すぐ別の一人が穴へ入る。
神代が突破しようとするたび。
そこに。
誰かがいる。
御影だけではない。
今は。
何人も。
いる。
*
地下。
「十一分!」
伊織の声が響いた。
残り。
一分。
奎星の身体が大きく揺れた。
「蓮根君!」
スズメが支える。
「まだ……!」
声が掠れている。
「あと一分!」
「分かっています!」
銀の鴉。
羽が一度。
揺れる。
それでも。
消えない。
日向が入口から振り返った。
行きたかった。
校庭へ。
今でも。
行きたい。
御影の隣で戦いたい。
一緒に学校を取り戻したい。
でも。
杖を握り直す。
前を見る。
誰も来ない通路。
それでも。
守る。
最後まで。
倉橋の言葉が頭へ残っている。
――お前たちは足手まといだ。
腹が立つ。
めちゃくちゃ腹が立つ。
でも。
その続きも。
忘れていない。
――今はな。
日向が小さく呟いた。
「……絶対追いつくからな」
楓が横を見る。
「誰に?」
「全員」
岳が頷く。
「俺も」
澪は少しだけ笑った。
「ずいぶん遠いけどね」
「知ってる!」
日向は校庭の方向を一度だけ見た。
「だから追いつくんだろ」
その声は。
地下の奥で目を閉じている奎星には届かなかった。
それでいい。
今は。
それぞれが。
自分の場所に立っている。
*
校庭。
神代冥司の視線が、再び地下へ落ちた。
ほんの一瞬。
御影が見る。
真壁も。
斎賀も。
鷲尾も。
深見も。
全員。
もう分かっている。
あと少しだ。
神代が杖を握り直した。
御影玄一郎も。
真壁征士郎も。
斎賀玄弥も。
その周囲に立つ禍祓官たちも。
誰一人。
退かない。
残り。
一分。
神代の前に。
大人たちが立っていた。