二〇二七年一月一日、午後十一時四十八分。
東京、霞が関。日本魔法省地下庁舎。
蓮根奎星は、一人で取調室に座っていた。
正確には、逮捕されたわけではない。電車脱線事故のあと、現場へ到着した魔法省職員によって一般社会側の救急搬送から切り離され、魔法省の医療部門で最低限の処置を受けた。その後、事故現場における魔法使用について事情を確認する必要があると言われ、この部屋へ通されたのだ。
しかし、どう見ても取調室だった。
灰色の壁。四角い机。硬い椅子。窓はない。天井からは白い照明が一つだけ吊り下がり、机の隅には事情聴取を記録するための羽根筆と、小さな水晶が置かれている。
以前、斎賀玄弥がこういう場所へ入れられていたと聞いたことがある。そのときの奎星は、「もっとすげえ鎖とかあるのかな」などと、呑気なことを考えていた。
今は、そんなことなどどうでもよかった。
奎星は椅子へ浅く腰掛けたまま、床を見つめていた。
背中が痛い。
治療は受けた。骨折はない。脊椎にも重大な損傷はない。そう説明された。ただ、背中から車内の仕切りへ叩きつけられた衝撃で筋肉とその周辺組織を傷めており、魔力もかなり消耗しているらしい。動くたび、鈍い痛みが走る。
けれど、そんなものは今、どうでもよかった。
頭の中では、ずっと同じ言葉が回っている。
――どちら様ですか?
奎星の指が、僅かに動いた。
左腕には、銀色の腕時計がある。
スズメから貰ったものだ。
ほんの一週間前。クリスマスの日。
――これ俺に!?
――はい。
――マジ!?
――マジです。
嬉しかった。
その場で腕へつけた。似合うかと聞いた。スズメは、よく似合っています、と笑ってくれた。
今日も朝からずっとつけていた。補習中も、初詣でも、電車の中でも。
「…………」
今、あの人は、これを自分が選んだことすら覚えていない。
胸の奥が、ぎゅっと握り潰されるように痛んだ。
「……なんだよ、それ」
小さな声は、灰色の部屋に吸い込まれた。
答える人はいない。
朝、七十九点を取った。あと一点で初詣へ行けなくなって、本気で落ち込んだ。スズメが追加問題を出してくれた。東京へ行った。一緒に参拝した。屋台を回った。たこ焼きを食べて、たい焼きを食べて、おみくじを引いた。
来年も。
そう言った。
――来られたら。
スズメはそう言って、笑っていた。
数時間前のことだ。
まだ、数時間しか経っていない。
なのに。
――どちら様ですか?
「…………っ」
奎星は唇を噛んだ。目の奥が熱くなる。
泣くな。
そう思う。
何で、こんなところで、一人で、知らない役人が来るのを待ちながら泣かなきゃいけない。
腹が立つ。悲しい。怖い。
スズメは生きている。怪我も大したことはないと言われた。それなのに、いなくなったような感覚が消えない。
本人は、いる。
声も、顔も、全部同じだ。
ただ、自分を知らない。
それが、思っていたよりずっと怖かった。
奎星は額を押さえた。背中が痛い。頭も痛い。身体は疲れている。魔力も空に近い。
なのに、眠気だけはなかった。
そのとき、扉の向こうで鍵の外れる音がした。
がちゃ。
奎星はゆっくり顔を上げた。
入ってきたのは、五十代半ばほどの男だった。魔法省の濃紺の制服を着ている。腹回りには少し余裕があり、金縁眼鏡の奥には細い目があった。額は広く、頭頂部の髪はかなり心許ない。
手には分厚い書類。胸元には、魔法省機密保持局の銀色の証票が光っている。
男は奎星の向かいへ座り、資料を机へ置いた。
「待たせたね」
奎星は答えなかった。
男はそれを気にした様子もなく、胸元の証票へ一度触れた。
「日本魔法省機密保持局、一般社会事案課。上席審査官の戸倉雅臣だ」
「…………」
「君にいくつか確認したいことがある」
戸倉が羽根筆へ杖を向けると、青い光が灯った。羽根筆がふわりと浮かび、紙の上へ日付と事件名を書き始める。
《二〇二七年一月一日》
《一般社会内鉄道事故に伴う魔法使用事案》
《対象者・蓮根奎星》
戸倉が資料を一枚めくった。
「蓮根奎星君。十七歳。国立魔法学校マホウトコロ、上級課程二年」
「……はい」
「昨年五月末の特例編入」
「はい」
「魔力測定値、一万七百二」
奎星は黙った。
戸倉が眼鏡越しに奎星を見る。
「間違いないね?」
「知らねえよ。魔法省が測ったんだろ」
戸倉の眉が僅かに動いた。
「質問には適切に答えてもらいたい」
「……はい」
「事故発生時、君は一般社会の鉄道車両内にいた」
「ああ」
「蓮根君」
「いました」
「そして脱線が発生した直後、魔法を使用した」
奎星の指が、膝の上で僅かに動いた。
「……使った」
「呪文は?」
「アレスト・モメンタム」
戸倉は手元の資料へ目を落とした。
「現場から検出された残留魔力も一致している。かなり大規模な使用だったようだね」
「電車だったから」
「君一人の魔力反応が、複数車両へ及んでいる」
「だから?」
戸倉が顔を上げた。
「……何?」
奎星も顔を上げる。疲れ切った目だった。
「だからなんだよ」
「蓮根君」
「俺の魔力量が規格外なの、知ってるんだろ?」
「知っている」
「だったら何だよ」
戸倉の口調が少し硬くなった。
「だからこそ確認が必要なのだ」
資料が机へ置かれる。
「君ほどの魔力量を持つ者が、学校の管理区域外、それも一般社会の公共交通機関内で魔法を使用した。これは軽く扱える事案ではない」
「…………」
「君はまだ学生だ。本来、学校外における魔法使用には、より慎重でなければならない立場にある」
奎星の拳が握られる。
「……好きで使ったわけじゃねえよ」
「それを今から確認している」
「見りゃ分かるだろ」
「態度を改め――」
どんっ!
机が揺れ、羽根筆が跳ねた。
戸倉の目が見開かれる。
奎星が机を叩いていた。
「ざけんじゃねえ!」
「蓮根君!」
「俺が好きで魔法使ったとでも思ってんのか!?」
奎星は立ち上がった。背中に激痛が走る。それでも、今は止まれなかった。
「あいつが仕掛けてきたんだ! 電車ごと落とされたんだぞ!」
「声を落としなさい!」
「落とせるかよ!」
「ここは魔法省だ!」
「だから何だよ!」
奎星の声が、灰色の部屋へ響き渡る。
「俺が魔法使ってなかったらどうなってた!?」
戸倉が黙った。
「電車だぞ!? 何人乗ってたと思ってんだよ!」
遠い車両。悲鳴。子供。家族。車掌。
奎星の脳裏に、事故の瞬間が蘇る。
「人が死んでたかもしれねえんだぞ!」
声が掠れた。
「それでもルールが大事なのかよ!?」
沈黙が落ちた。
戸倉はしばらく奎星を見ていた。そして、怒鳴り返さなかった。
「……大切だ」
低い声だった。
奎星の眉が動く。
「君は学校で何を学んだのだ」
「…………」
「魔法界と一般社会が、今のように完全に分離されるまでに、どれほど長い時間を必要としたと思っている」
奎星は黙った。
戸倉の声は、先ほどよりむしろ静かだった。
「かつて魔法使いと非魔法族が同じ社会の中で暮らしていた時代、魔法への恐怖は衝突を生み、迫害を生み、その反発はさらに大きな争いを生んだ。犠牲になったのは魔法使いだけではない。非魔法族側にも、多くの死者が出た」
「…………」
「その歴史の果てに、我々は選んだ」
戸倉は一拍置いた。
「互いの社会を守るため、魔法を一般社会の目から隠すことを」
奎星の拳が、ゆっくりと緩んだ。
知っている。
授業でやった。魔法史でも、魔法法規でも。スズメからも教わった。
「一人の善意による例外を無条件に認めれば、次の者も『自分は正しい』と判断して魔法を使う」
戸倉は続けた。
「その者にも、その者なりの理由があるだろう。さらに次の者にもある。誰もが自分の行為だけは特別だと思い始めれば、規則は機能しなくなる」
「…………」
「規則とは、使用者本人の善意を疑うために存在するのではない」
戸倉が奎星を見る。
「誰もが、自分だけは例外だと思わないために存在するものだ」
正しい。
分かっている。
悔しいくらい、正しい。
数時間前、確認テストで緊急避難と一般社会での魔法使用について、スズメと散々やったばかりだった。
――魔法使いが魔力を扱う際、最も大切なことは何ですか。
――自分の魔法が、何をするのか分かってること。
――誰に当たるか。止められるか。
――分かんないなら、人に聞くこと。
「…………」
奎星は、ゆっくり椅子へ座った。
もう、怒鳴る力もなかった。
「……分かったよ」
戸倉が見る。
「もういい」
「蓮根君」
「俺のことは好きにしていい」
「まだ処分が決まったとは言っていない」
「じゃあ好きに調べろよ」
奎星は少しだけ顔を上げた。
「停学でも、魔法禁止でも、何でもいいよ」
「…………」
「だから」
声が弱くなる。
「スズメちゃんに会わせてくれ」
戸倉が資料へ目を落とした。
「……烏丸スズメさんのことだね」
「ああ」
「それについても、確認が必要だ」
奎星の眉が寄る。
「何を」
戸倉は一度、言葉を選んだ。
「彼女は、君のことを知らないと証言している」
「だから!」
奎星の声が戻る。
「変な魔法かけられたんだって!」
「そう証言しているのは、現時点では君だけだ」
「俺が見たんだよ!」
「烏丸さんの証言と一致しない」
「一致するわけねえだろ!」
「蓮根君」
「記憶取られたんだって!」
「蓮根君」
「硝子玉が出てきたんだよ! そいつの手に! スズメちゃんに呪文が当たった直後に!」
戸倉は資料へ何かを書き込んだ。
その態度が、奎星には余計に腹立たしかった。
「聞いてんのかよ」
「聞いている」
「だったら――」
「こちらも慎重にならざるを得ないと言っているのだ」
「何で俺に?」
戸倉が、少しだけ息を吐いた。
「彼女は君の学校の教師だね」
「そうだよ」
「二十一歳」
「だから?」
「君は十七歳」
奎星の目が僅かに細くなる。
嫌な予感がした。
「何が言いてえんだよ」
戸倉は机の上で指を組んだ。
「年齢の近い教師に憧れを抱くこと自体は、珍しいことではない」
「…………」
「だが、相手が自分を知らないと言っている以上、一方的に親しい関係だったと主張し、面会を求め続ける行為は慎重に扱う必要がある」
奎星の表情から、何かが消えた。
「……は?」
「事情が確認できるまで、彼女への接触は――」
「ちょっと待て」
声が低くなる。
「今、何つった?」
「君が一方的に――」
「その前」
沈黙。
戸倉は、わずかに視線を逸らした。
「……つきまといと判断される可能性もある、と言っている」
「…………」
何かが切れた。
本当に、音がしたような気がした。
奎星の頭の中で、一瞬にしてたくさんのものが蘇る。
五月二十九日。知らない魔法学校の最初の夜。一人で飯を食いたくなくて、必死に引き止めた。
――スズメちゃんもここで食ってってよ。
――烏丸先生です。
第零書庫。死の呪文。目を覚ました病室。ずっと隣にいたと聞いた。
夏。水羊羹。葛切り。死にかけた自分の手を、スズメが握っていた。
二学期。星迎祭。観測塔。花火。ダンス。銀色の星。
――あなたは……私にとって、とても大切な人です。
――私から、離れないでください。
常隠島。夜の海。握った手。二羽の銀の鴉。
神代。
――愛してる。
クリスマス。銀色の腕時計。
今、左腕にある。
今日。初詣。たい焼き。おみくじ。
来年。
――期待しておきます。
全部。
一方的?
憧れ?
つきまとい?
「…………」
胸が痛かった。
ただ忘れられただけでも、死ぬほど痛いのに。
二人の半年を、知らない人間に、そんなものだったと踏みつけられた気がした。
がたん!
椅子が後ろへ倒れた。
「っざけんな!」
戸倉が身を引く。
「蓮根君!」
「俺が!」
奎星の目が赤くなる。
「俺がスズメちゃんにつきまとってたって!?」
「そう断定したわけでは――」
「言ってんだろうが!」
「落ち着きなさい!」
「落ち着けるかよ!」
背中が痛い。
どうでもいい。
「俺のこと疑ってねえで、もっとやることあんだろうが!」
「蓮根君!」
「ハゲ!」
沈黙。
戸倉の口が僅かに開いた。
「…………は?」
一拍置いて、戸倉は聞き返した。
「ハゲ……?」
「そうだよハゲ!」
「き、君ね!」
「人の記憶盗んで電車落としたやつがいるんだぞ!?」
「頭髪は今関係ないだろう!」
「そいつほっといて俺のこと調べてんのかよ!」
「ほっといてなどいない!」
「だったら探せよ!」
奎星の声が震えた。
「俺がどんだけ……!」
その先が出なかった。
どれだけ。
どれだけスズメを大切にしていた。好きだった。愛していた。
どれだけ二人で積み重ねてきた。
それを、ここで知らない役人へ言葉にするのか。
できなかった。
喉の奥で、全部が詰まった。
「俺が……」
声が掠れる。
その瞬間。
がちゃ。
扉が開いた。
「そこまでだ」
奎星が振り返る。
濃紺の魔法省制服。百八十センチ近い身長。頑丈な体格。短く揃えた髪。顎から口元を覆う髭。
胸元には、翼を広げた鳥と天秤の紋章。
魔法省監察局。
「真壁さん……」
真壁征士郎。
その顔を見た瞬間、奎星の中で張り詰めていたものが、少しだけ緩んだ。
知っている人。
自分を知っている。
スズメとのことも、学校で何があったかも、自分が何をしてきたのかも知っている人。
それだけで、泣きそうになるほど安心した。
真壁は奎星を一度見る。倒れた椅子。叩かれた机。戸倉。最後に、記録用の羽根筆。
「戸倉上席審査官」
「真壁監察官」
戸倉が立ち上がる。先ほどまでとは明らかに姿勢が違った。
「ここからは私が引き継ぐ」
「しかし、本件は一般社会内での大規模魔法使用事案です。機密保持局として――」
「承知している」
真壁は静かに遮った。
「そのうえで言っている」
戸倉が黙る。
真壁は机の上へ一枚の書類を置いた。
「今回、蓮根君が使用した《アレスト・モメンタム》については、生命および身体に対する現在の危難を回避するための緊急救命行為と認定した」
戸倉の目が書類へ落ちる。
「……もう?」
「現場の残留魔力、列車の速度記録、車体損傷、乗員証言、魔法省災害対策局の初動報告。必要なものは揃っている」
「ですが――」
「緊急避難としての処分免除適用は、監察局特別案件として私の名で通した」
真壁は続けた。
「マホウトコロ九重院校長からも、本人の在籍状況、校外活動中の身分確認、および今回の救命行為について承認を得ている」
奎星の目が、少しずつ開く。
真壁が戸倉を見る。
「彼は《星帰り作戦》の中核を担い、その成功に決定的な役割を果たした蓮根奎星君だ」
一拍。
「そして、烏丸スズメ先生が担当する生徒だ」
戸倉の顔が僅かに強張った。
「二人の関係については、学校側の記録、過去の事情聴取、監察局の記録すべてで確認できる」
「…………」
「確認もせず、負傷した未成年者へ『つきまとい』という言葉を使ったのか?」
静かな声だった。
それだけに、怖かった。
戸倉は口を閉じた。
「……申し訳ありません」
「私に謝るな」
真壁が即座に言う。
「謝罪する相手が違う」
戸倉が奎星を見る。
さっき、ハゲと二回言われた相手だ。
奎星も、少しだけ気まずくなった。
戸倉が頭を下げる。
「蓮根君。先ほどの発言は不適切だった。確認が不十分な状態で、君と烏丸先生の関係について決めつけるような発言をした」
深く頭を下げる。
「謝罪する」
奎星は少し黙った。
「……俺も」
戸倉が顔を上げる。
「ハゲは……言いすぎた」
「…………」
「すみません」
「……ああ」
戸倉が一瞬、頭頂部を気にしたような気がした。
多分、気のせいだ。
真壁が扉を指す。
「今日はもういい。記録は私へ回してくれ」
「承知しました」
戸倉は資料をまとめ、部屋を出ていった。
扉が閉まる。
静かになった。
奎星はしばらく、その扉を見ていた。
それから、真壁へ視線を戻す。
「…………」
「何だ」
「真壁さん」
「うん」
「結構偉い人……?」
真壁の眉が、ほんの少し上がった。
「今更か」
「いや」
奎星は倒れた椅子を起こそうとした。
「痛っ……」
真壁がすぐに近づく。
「無理に動くな」
「大丈夫」
「その言葉は信用していない」
「みんな同じこと言う……」
真壁が椅子を起こし、奎星を座らせる。それから向かいの席へ腰を下ろした。
今度は、記録用の羽根筆を止めた。
「ここからは事情聴取ではない」
奎星が見る。
「君の話を聞きたい」
「…………」
真壁の顔は仕事の顔をしていた。
それでも、さっきの戸倉とは違う。
「真壁さん」
「何だ」
「何が起きてんの?」
その一言だけで、奎星は急に十七歳へ戻ったような気がした。
怒りも、反抗も、全部少し消える。
ただ、怖い。
「スズメちゃん」
声が掠れる。
「何で俺のこと覚えてないの?」
真壁は、すぐには答えなかった。
「……はっきり言う」
奎星を見る。
「我々にも、まだ全容は掴めていない」
「…………」
「だから君が見たものを、最初から教えてほしい」
奎星は小さく頷いた。
「電車で」
話し始める。
「変な男が来た」
長身。黒いフード。遠くから、ずっと自分を見ていた。名前を呼んだ。デパルソ。電車。脱線。アレスト・モメンタム。スズメを抱いた。背中をぶつけた。外へ出た。男が待っていた。
「それで」
奎星の手が膝の上で握られる。
「俺に呪文撃った」
真壁の目が鋭くなる。
「君に?」
「俺」
間違いない。
「あいつ、最初から俺を狙ってた」
「呪文は?」
「……覚えてる」
奎星は、あの音を口の中でもう一度なぞった。
「ダムナティオ・メモリアエ」
真壁の眉が寄る。
「…………」
「知ってる?」
「いや」
即答だった。
奎星が少し驚く。
「真壁さんでも?」
「少なくとも、現行法令で指定されている記憶操作呪文、禁呪、禍祓官用の危険術式には該当するものがない」
「古代魔術?」
「可能性はある」
真壁が顎へ指を当てる。
奎星は続けた。
「俺、聞いたことない呪文で一瞬遅れて――」
「それで烏丸先生が?」
「前に入った」
真壁の目が僅かに伏せられる。
「……そうか」
「当たったあと、最初は何ともなさそうだった」
「うん」
「でも」
奎星が右手を開く。
「そいつの手に」
小さな球体の形を作る。
「硝子玉が出た」
真壁の動きが止まった。
「……硝子?」
「うん」
「玉だったのか?」
奎星が真壁を見る。
声が変わった。
「何?」
「詳しく」
「透明で……このくらい」
奎星は親指と人差し指で大きさを示した。
「中になんか、銀色の光みたいなのが入ってた」
「…………」
「で」
奎星は思い出す。
男の指。指輪。硝子。
「ちん、って」
真壁の目が変わった。
「何?」
「もう一度言ってくれ」
「え?」
「音だ」
「……ちんって鳴った」
奎星は少し戸惑いながら続けた。
「硝子玉が、あいつの指輪か何かに当たって」
真壁はゆっくり顔を上げ、天井を見た。
何もない。
けれど、頭の中で何かを一つずつ並べているようだった。
奎星は、この顔を以前にも見たことがある。御影も、考え始めるとこうなる。
「真壁さん?」
返事はない。
「おーい」
「…………」
「真壁さん」
「六人」
突然、真壁が言った。
「何?」
真壁の目が奎星へ戻る。
「黒曜の環の残党から事情を聞いている」
「……残党?」
「ああ」
真壁はまだ、どこまで話すか迷っていた。
けれど、今の奎星はもう完全に当事者だった。
「神代がマホウトコロの生徒たちへ行った認識干渉。その方法について調べていた」
奎星が黙る。
「六人。所属していた集団も、神代との距離も違う人間だ」
真壁の声が低くなる。
「全員が、同じ部分だけ覚えていない」
奎星の背筋が冷えた。
「……同じ?」
「誰から方法を聞いたのか。どういう仕組みだったのか。そこだけが不自然に抜け落ちている」
「…………」
「そして」
真壁が奎星を見る。
「全員が一つだけ、音を覚えていた」
奎星には、もう分かった。
「……硝子」
「ああ」
真壁の顔が険しくなる。
「硝子同士が触れるような音」
「じゃあ……」
奎星の声が少し震える。
「あいつ」
「まだ断定はできない」
真壁は制した。
「ただし」
机の上へ指を一度置く。
「初めて形のある手掛かりが出た」
硝子玉。音。記憶。消された方法。
全部が、一本の線になり始めている。
「真壁さん」
「何だ」
「スズメちゃんは」
奎星は怖かった。
聞きたくない。
でも、聞く。
「本当に……俺のことだけ?」
真壁の表情が少し柔らかくなった。
「現時点の調査では」
ゆっくりと言う。
「そう判断している」
奎星が息を止める。
「烏丸先生は、自分の名前を覚えている。年齢も、出身も、家族も」
「…………」
「自分がマホウトコロの魔法史教師であることも覚えている。記録局にいたことも、そこを辞めた理由も、古代魔術の研究も」
奎星の目が動く。
「御影先生は?」
「覚えている」
「九重院校長」
「覚えている」
「日向たちは?」
「学校の生徒として認識している」
「真壁さんは?」
「私も覚えていた」
「……斎賀」
「覚えている」
次の質問が、喉の奥で止まった。
自分。
もう答えを知っている。
真壁が続ける。
「神代冥司についても覚えている。学校が奪われたことも、《星帰り作戦》が行われたことも、自分が常隠島へ避難していたことも」
「じゃあ」
奎星が少しだけ前へ出る。
「俺のことだって」
「そこだけがない」
はっきりと言われた。
「…………」
「正確には」
真壁が続ける。
「君が関わっている記憶に、不自然な空白がある」
「空白?」
「ああ」
真壁は、今日確認した内容を思い返した。
「たとえば、烏丸先生は自分がこの冬季休暇中、補習を担当していたことを覚えている」
奎星の目が開く。
「今日の?」
「そうだ」
「じゃあ!」
「ただ」
真壁が静かに言う。
「誰に教えていたのかが分からない」
「…………」
奎星の口が止まる。
「教材を作った記憶もある。確認試験を作ったことも覚えている」
「七十九点……」
小さく呟く。
「答案もあるだろ」
「ああ」
「俺の名前」
「書かれている」
「なら!」
「見ても」
真壁が奎星を見る。
「自分の生徒だという実感がないそうだ」
「…………」
胸が、また痛くなる。
真壁は続けた。
残酷だと分かっている。
でも、今は事実が必要だった。
「今日、初詣へ行ったことも覚えている」
奎星が顔を上げる。
「……え?」
「神社の場所も。参拝したことも。屋台で食べ物を買ったことも」
「じゃあ俺――」
「隣に誰がいたのかだけが」
一拍。
「ない」
何も言えなかった。
たい焼き。たこ焼き。おみくじ。二人で歩いた。
でも、スズメの中では、そこだけ誰もいない。
「……何だよ、それ」
奎星は笑った。
笑えていない。
「めちゃくちゃじゃん」
「ああ」
「そんな忘れ方ある?」
「通常はない」
真壁の声は低かった。
「だから不自然なんだ」
記憶そのものを適当に壊したのではない。
一つの人物。その人物へ繋がる情報だけを、選んで抜いている。
「…………」
奎星は左腕を見る。
時計。
「これも」
「何?」
「これ」
時計へ触れる。
「スズメちゃんがくれた」
真壁が時計を見る。
「クリスマス」
「……そうか」
「覚えてない?」
「本人にはまだ確認していない」
奎星が時計を握る。少しだけ、強く。
「会いたい」
真壁は、すぐには答えなかった。
「真壁さん」
「…………」
「スズメちゃんに会わせて」
「蓮根君」
「ちょっとだけでいい」
「今は」
優しい声だった。
それが、余計に嫌だった。
「やめたほうがいい」
奎星が真壁を見る。
「何で」
「彼女にとって」
真壁は言葉を選んだ。
「今の君は、知らない人だ」
「…………」
「君が半年分の記憶を一気に話せば、烏丸先生は自分が覚えていない大量の事実を突きつけられることになる」
「でも」
「混乱させる」
「思い出すかもしれない」
「その可能性も否定はしない」
真壁は否定しなかった。
「だが、逆もある」
奎星の口が閉じる。
「今は、彼女自身も何が自分へ起きたのか理解できていない」
「…………」
「君が本当に烏丸先生を大切に思っているなら」
真壁が静かに言った。
「今は少し、時間をやってくれ」
大切。
その言葉に、奎星の目が少し揺れる。
「……分かった」
本当は嫌だった。
今すぐ行きたい。全部話したい。最初の夜から今日まで、全部言って、思い出してほしい。
いつもの顔で。
「蓮根君」
と呼んでほしい。
でも。
「分かったよ」
もう一度、奎星は言った。
真壁が頷く。
「それに」
資料を閉じる。
「不安定なのは烏丸先生だけじゃない」
「俺?」
「自覚がないのか」
「…………」
「列車一編成へ減速魔法を掛け、背中から叩きつけられ、その直後に目の前で大切な人間の記憶を奪われた」
奎星の目が少し下がる。
「そのまま事情聴取で机を叩いて、役人へハゲと言った」
「それは」
「不安定だ」
「……はい」
真壁の口元が、ほんの少しだけ緩んだ。
奎星も、少しだけ息を吐く。
「すみません」
「私に?」
「いや……全部」
「謝る必要はない」
「ちょっと取り乱した」
「ちょっとではないな」
「真壁さん、今日厳しくね?」
「玄一郎ならもっと言う」
「それはそう」
一瞬だけ、本当に一瞬だけ、いつもの奎星が戻った。
真壁は立ち上がった。
「学校まで送る」
奎星も顔を上げる。
「玄一郎も待っている」
「御影先生?」
「ああ」
真壁が扉へ向かう。
「事故の連絡をしたら、今すぐ東京へ行くと言い出した」
「来ればよかったのに」
「九重院校長に止められた」
「何で?」
「お前を事情聴取している役人を脅す可能性があるからだ」
「…………」
少し想像する。
御影。取調室。戸倉。
「止めて正解だな」
「ああ」
二人は、ほんの少しだけ笑った。
*
日付が変わる頃、マホウトコロの転移区画へ青白い光が走った。
先に現れたのは、真壁と奎星だった。
「蓮根君!」
九重院の声が響く。
奎星が顔を上げると、そこには九重院、御影、藤森、それに数人の教師が待っていた。冬季休暇中で学校へ残っている者たちが、転移区画の周囲に集まっている。
「校長」
九重院がすぐに奎星へ近づいた。
「身体は?」
「大丈夫」
御影の目が細くなる。
「大丈夫な顔ではない」
「御影先生まで」
「背中」
「ちょっと痛い」
「藤森」
「もう診ます」
「え、今?」
「今です」
「魔法省で治療したよ」
「診ます」
「はい」
いつもの教師たちだった。
自分を知っている。
奎星の胸が、少しだけ楽になる。
そのとき、もう一つの転移陣が光った。
奎星の身体が止まる。
魔法省の医療担当者に付き添われ、烏丸スズメが現れた。
黒髪。白いタートルネック。紺色のコート。初詣のときのままだった。怪我は、ほとんどない。
九重院がそちらへ向かう。
「烏丸先生」
「九重院校長」
普通の、いつもの呼び方だった。
「ご心配をおかけしました」
「気分はいかがです?」
「身体に問題はありません。ただ……記憶については」
スズメの言葉が、そこで少し止まる。
御影も近づいた。
「烏丸」
「御影先生」
スズメがそちらを見る。
「申し訳ありません。補習中の生徒にまで事故へ巻き込んでしまったようで」
御影の顔が、ほんの少し固まった。
奎星にも聞こえた。
補習中の生徒。
名前は、ない。
藤森が呼ぶ。
「烏丸先生も、あとで一度検査を」
「分かりました。藤森先生」
全部、覚えている。
校長。御影。藤森。教師としての自分。
それなのに、奎星だけ。
「…………」
スズメの目が、こちらへ向いた。
目が合った。
ほんの二秒。
いつもなら、
何です?
と聞く。
烏丸先生です。
と訂正する。
今日は、何もない。
スズメは、知らない生徒を見るように小さく会釈した。
そして、視線を離した。
「…………」
奎星は笑えなかった。
藤森が隣へ来る。
「蓮根君」
「…………」
「医務室へ行きますよ」
「うん」
「歩けますか」
「歩ける」
「肩を貸します」
「大丈夫」
「貸します」
「はい」
奎星は最後に一度だけ振り返った。
スズメは九重院と話していた。普通に、落ち着いて、いつもの烏丸スズメだった。
自分を知らないこと以外は。
*
医務室。午前零時四十三分。
「骨に異常はありません」
藤森の声を聞きながら、奎星はうつ伏せになっていた。
「筋層と脊柱周辺の軟部組織に損傷。魔法省での初期治療は適切です。ただし魔力消耗が大きいので、今夜は絶対安静」
「明日の補習は?」
「何を言っているのです?」
「休み?」
「当然です」
奎星が少しだけ顔を上げる。
「……スズメちゃんに言ったら怒るかな」
藤森の手が、一瞬止まった。
「…………」
奎星も気づいた。
今、その人は補習をしていたことは覚えていても、自分を知らない。
「……何でもない」
枕へ顔を戻す。
治療が終わる。薬を飲み、背中を固定され、灯りが落とされる。
藤森が扉の前で止まった。
「何かあればすぐ呼んでください」
「うん」
「本当にですよ」
「はい」
扉が閉じる。
一人になった。
白い天井を見上げる。
奎星は仰向けになろうとして、背中に走った痛みに顔をしかめた。
「っ……」
横を向いても痛い。結局、身体を少し斜めにした、一番楽な姿勢を探す。
眠れない。
考える。
何を、どこから考えればいい。
フードの男。電車。硝子玉。呪文。黒曜の残党。同じ音。スズメの記憶。昔の事故。記憶を外へ出す方法。媒体。
全部が、ぐちゃぐちゃだった。
でも、一番頭へ浮かぶのは、結局同じ言葉だった。
――どちら様ですか?
「…………」
奎星は目を閉じた。
「やめろよ……」
頭の中へ言う。
でも、消えない。
――どちら様ですか?
「俺だよ……」
誰もいない部屋で、答える。
「蓮根奎星」
声が少し震えた。
「……知ってるだろ」
返事はない。
奎星は左腕の時計を握った。
こんなに証拠がある。
時計。栞。答案。写真。学校中の人間。友達。御影。真壁。
みんな、二人が知り合いだったことを知っている。
なのに、一番知っていてほしい本人だけが知らない。
「…………」
こんこん。
扉が二度、叩かれた。
奎星が顔を上げる。
「はい」
扉が静かに開く。
そして、奎星は固まった。
「……失礼します」
烏丸スズメが、一人で立っていた。
「スズメちゃん」
反射的に身体を起こす。
「っ!」
背中に痛みが走る。
それでも構わない。
「思い出した!?」
声が明るくなる。
期待が、一瞬で全部戻ってくる。
「俺のこと!」
スズメの表情が僅かに曇った。
「…………」
奎星は、その顔で分かった。
「……いえ」
声は、いつもの丁寧な声だった。
「申し訳ありません」
期待が落ちる。
胸の中へ、そのまま重く沈んでいく。
「……そっか」
奎星は笑おうとした。
「いや、別に謝らなくていいよ」
スズメは病室へ入る。距離は数歩。以前なら、平気でベッドの横まで来た。
今日は、少し遠い。
「真壁さんから、事情を聞きました」
「うん」
「列車が脱線した際、あなたが減速魔法を使い、被害を抑えたと」
「…………」
「それから」
スズメは一度、自分の身体へ目を落とした。
「私を庇ってくれたそうですね」
「助けるって」
奎星がすぐに言う。
「当たり前だろ」
スズメの目が、少しだけ揺れた。
奎星は続ける。
「それに、助けてくれたのはスズメちゃんだし」
「私が?」
「だって最後、俺に魔法飛んできたとき前に入って――」
言葉が止まる。
真壁の言葉が蘇った。
――彼女にとって今の君は、知らない人だ。
――一気に話せば混乱させる。
その前も言いたい。
第零書庫。夏。鬼火鳥。常隠島。
何度助けられた。
何度守られた。
だから今度は、自分がそうしただけだ。
「今までだって」
口から出かけた言葉を、奎星は止めた。
拳を握る。
「…………」
スズメが不思議そうに見る。
「今まで?」
「いや」
奎星は笑った。
頑張って、いつもみたいに。
「何でもない」
「…………」
「お礼とか」
少し手を振る。
「大丈夫だから」
スズメは何も言わない。
奎星が続ける。
「今はいっぱい休んでよ」
「ですが、怪我をしているのはあなたです」
「俺は慣れてる」
「慣れていてはいけないでしょう」
「…………」
奎星が止まった。
その言い方。
似ている。
いつものスズメ。
「……何ですか?」
「いや」
胸が痛い。
「スズメちゃんっぽいなって」
スズメは少し困った顔をする。
「私は、烏丸スズメですが」
奎星は一瞬、笑いそうになった。
でも、笑えなかった。
「……そうだな」
「はい」
沈黙が落ちる。
スズメは少し迷ってから、口を開いた。
「蓮根君」
奎星の瞳が揺れた。
同じ呼び方。
半年、ずっと聞いてきた。
蓮根君。
何度も、何百回も。
それなのに、全然違う。
名前を今日初めて覚えた教師が、知らない生徒へ呼びかける声だった。
「……何?」
「私は」
スズメが静かに言う。
「あなたのことを、覚えていないようです」
「…………」
「真壁さんから、あなたが私の担当する生徒だと聞きました」
奎星は何も言わない。
「記録も確認しました」
スズメの声が少し苦しくなる。
「あなたの答案に、私の字で採点がある」
今日の七十九点。赤い丸。
「補習計画にも、あなたの名前があります」
「うん」
「それでも」
スズメが奎星を見る。
「思い出せません」
「…………」
「申し訳ありません」
「だから」
奎星が少しだけ強く言う。
「謝んなくていいって」
スズメの目が揺れる。
「スズメちゃん、悪くないじゃん」
「…………」
「悪いのは」
フードの男。硝子玉。
「あいつだから」
スズメは、その言葉を少しだけ考えるように黙った。
奎星はまた笑う。
「だから、今は休んで」
「でも」
「俺も寝る」
「本当に?」
「藤森先生に絶対安静って言われた」
「なら寝てください」
「はい」
「魔法も使わないでください」
「はい」
「勝手に出歩かない」
「はい」
奎星は少し笑った。
「何ですか?」
「いや」
「…………」
「やっぱ先生だなって」
スズメも、ほんの少し笑った。
「教師ですから」
それを、何度聞いただろう。
奎星は喉の奥へ何かが込み上げるのを、必死に飲み込んだ。
「……うん」
スズメは扉へ向かう。
「それでは」
一度、振り返る。
「本当に、ありがとうございました」
奎星は笑う。
いつもみたいに。
「いいって!」
手も振る。
「おやすみ、スズメちゃん」
「……おやすみなさい」
扉が閉じる。
かちゃ。
音がした。
「…………」
静かだった。
奎星の顔から笑顔が消える。
布団を掴む。強く握る。
「…………っ」
泣かない。
歯を食いしばる。
今、スズメは普通に話した。
自分を蓮根君と呼んだ。
教師として気遣って、叱って、笑った。
全部、同じだった。
なのに。
「……全然」
声が震える。
「違うじゃん……」
布団をさらに握る。
悔しい。悲しい。怖い。
でも、それより少しずつ、別のものが胸の底から上がってくる。
怒り。
フードの男。
あいつがやった。
スズメを殺したわけじゃない。傷つけたわけでもない。
もっと変な方法で、もっと卑怯に、半年を奪った。
最初の夜。補習。第零書庫。水羊羹。葛切り。星迎祭。常隠島。クリスマス。今日。
全部、自分たちが少しずつ積み重ねたものだった。
「…………」
奎星は左腕の時計を見る。
銀色の時計は、まだここにある。
消えていない。
自分は覚えている。
みんなも覚えている。
だったら、終わっていない。
「……取り返す」
小さな声だった。
誰も聞いていない。
「絶対」
神代榊は、医務室の壁際に預けられている。
奎星はそれを見る。
「取り返してやる」
敵は、スズメそのものを奪ったわけではない。
彼女はここにいる。
ただ、俺たちの間にあった半年を盗んだ。
俺から、一番大切な人との、一番大切なものを盗んだ。
だったら。
「……返してもらうからな」
蓮根奎星は、もう一度時計を握った。
七十九点。たった一点を諦めなかった日。
その日の最後に、もっと大きなものを奪われた。
それでも、今度も諦めない。
一度失っただけで、終わりになど絶対にしてやらない。