どうも、常夏鳳梨です。
個人的にオルクセン飯をテーマにした作品が少ないので、それだったら書けば良いや!!というノリで書いたモノがこちらになります。
ちなみに、本作も捏造設定たっぷりです!!
そういうのを恐れていては、二次創作が出来ないんだぜ。
星歴一〇二五年の四月。
ベレリアンド戦争から百年以上が経ち、人間達からは過去のモノとして扱われ始めた頃──オルクセン連邦は春を迎えていた。
そして、その首都であるヴィルトシュヴァインには、大小問わずいくつかの運河が流れているのだが、そのうちの一つの運河の周辺に植えられた木々が──アンズの花が綺麗に咲いていた。
このアンズの花は、元々はグスタフ王が飢餓対策として植えた木々の一つであった。
現に、夏の時期になると美味しいアンズの実が実るため、そのアンズの実を摘んで食べる市民も少なくは無かった。
何だったら、そのアンズをジャムやらお菓子やらに加工して
そして、この時期のヴィルトシュヴァインの市民達の楽しみの一つとして、アンズの花見がよく挙げられていた。
そもそも──花見とは、古くから秋津洲における春の風物詩として知られてる風習であった。
ただし、秋津洲の花見はあくまで桜の花を見るのが前提であるのに対し、このオルクセンの地での花見はアンズの花を見ることが前提であるため、たまに似て非なるモノとして比較されることがしばしばあった。
しかし、この風習を偉大なるオルクセン国王であったグスタフ・ファルケンハインも愛し、そして王自らも花見に参加したこともあってか、ヴィルトシュヴァインの市民は自然とそれを花見と受け入れていた。
そのため、今年もまたヴィルトシュヴァインの運河の辺りで花見を行う市民の姿が多く見られていたのである。
「──今年も人が多いなぁ」
オーク・コボルト・ドワーフ・闇エルフはともかく、巨狼や大鷲に闇エルフや白エルフなど、種族の差など関係なくアンズの花を見ているその姿に対し、そう言葉を漏らすコボルト族(ミニチュア・シュナウザー種)の青年。
彼はベレリアンド戦争の後──厳密に言えば、星欧大陸を舞台にした二度目の大戦の後に生まれた世代のため、オルクセンとエルフィンドの戦いのことはあくまで親世代の話でしか知らなかった。
ただ、グスタフ王に対して白エルフがやらかしたのかな?しか思っていなかったため、彼はそれ以上は気にすることはなかった。
そのためか、彼は白エルフに対する差別偏見などは持っておらず、まさに彼は今を生きるオルクセン国民と言っても過言ではなかった。
ついでに言えば、彼の大学の友人の中には白エルフが居たのだが、親世代から特に何も言われなかった模様。
「さてと、僕もぼちぼち花見をしますかね」
そう呟いた後、アンズの木々の近くにあるベンチに座ると、手に持っていたカバンからとあるものを取り出すコボルトの青年。
彼が取り出したのは、大きなブドウを使ったパンにクリームチーズをこれでもかと塗り、それをサンドイッチにしたものであった。
今から約八〇年前──星歴九四五年、多くの魔種族で構成されたオルクセン連邦はとある研究者の発表に対し、震えた上で驚いていた。
その研究者の発表と言うのは、コボルト族がチョコレートやネギ類を除いた物──アルコール・ブドウ・キシリトール類を含めた一部の食べ物を食べたとしても、体に何の影響も出ないという事実であった。
この事実に対し、当然ながら様々な魔種族で構成された国であるオルクセンの国民達は困惑し、その中でも特にコボルト達の衝撃が大きかった。
しかし、そのコボルトに纏わる研究結果が真実だと分かったところ、コボルト達は歓声を上げたのは言うまでもない。
かくして、呪いとも言える一部の制約から解放されたコボルト達は、健康に害の出ない範囲で飲み食いして楽しんでいた。
なお、コボルトがアルコール・ブドウ・キシリトールなどの一部の食品を食べれる理由は諸説あるものの、未だに多くの謎が残されているだけあって、結局は一〇二五年現在であっても理由の解明に至ってはいなかった。
そのためか、彼のようにブドウやレーズンを好んで食べるコボルトも居たようで、今ではコボルトであっても普通にブドウやレーズンに関する商品を食べれるようになっていたのである。
だからなのかは定かではないか、彼はこの日のために貯めたバイト代を奮発した上で、常連客としてよく通っている馴染みのパン屋にて、大きな干しブドウが入ったブドウパンを買ったのである。
「フフフ、貯めておいたバイト代を奮発して使った甲斐があったな」
そう呟いた後、クリームチーズがこれでもかと塗られたブドウパンのサンドイッチを頬張るコボルトの青年。
酸味と甘味が濃縮された干しブドウがたっぷりと入ったパンは、かつては白パンと呼ばれていた。
だからなのか、長命種である魔種族の国民が多いオルクセン連邦では、それが当たり前となった今となってもなお、白パンと呼ぶ人々も少なくはなかった。
ただし、彼のようにまだ若い者達はかつて白パンが高価であったことを知らず、何故たかが白いだけのパンをありがたがるのだろう?と思っていた模様。
その白パン本来の甘みと干しブドウの甘酸っぱさ。
それから、たっぷりと欲望のままに塗られたクリームチーズのまろやかな塩味と濃厚さも加わったことにより、ガッツリとしながらもどこか茶菓子を思わせるような味付けになっていた。
なので、彼は自分で作ったクリームチーズを挟んだブドウパンのサンドイッチを頬張った後、五十五年前にオルクセンに行われた万博によって生み出された発明品こと、無糖の缶コーヒーを飲んでいた。
ちなみにこれは余談ではあるが、最近のオルクセンでは無糖コーヒーを好む国民達が増えつつあったとか。
「うっっっっま──!!」
そして、その相性が合わないはずもなく──コボルトの青年は思わずそう声を漏らしていた。
それから彼は目の前にあるアンズの花を見つつ、無糖の缶コーヒーとブドウバンのクリームチーズサンドイッチを飲み食いしていた。
秋津洲の桜の花のように、オルクセンの地でも春の到来を祝うかのようにアンズの花が咲き誇っている。
つい数年前まで、新型ウイルスによる自粛ムードに巻き込まれていたからか、コボルトの青年はそんな幸せをブドウパンを食べるのと同時に噛み締めていた。
やっぱり、オンラインよりかはこっちの方が良いな。
そう思いつつ、ヒラヒラとこちらの方に落ちてくるアンズの花びらを手のひらで受け止めるコボルトの青年。
ちょうどその時、ふと彼と視線が合ったのは──美しい金色の髪を持つ眼鏡を掛けた白エルフであった。
けれども、二人ともそういう経験がほぼほぼ無かったからか、急に顔を真っ赤にしたかと思えば、そのまま視線をアンズの花の方へと移していた。
しかし、一度目が合ったからなのかは分からないが──とにかく、少しだけお互いのことに気になっていたようで、コボルトの青年も白エルフもチラチラと見つめていた。
やがて、勇気を出して声を掛けてみようと覚悟を決めたようで、コボルトは声を出したのだが
「「あ、あの!!」」
案の定、白エルフもまた同じタイミングで声を出したため、二人は気まずいどころか何故か笑い始めていた。
それはまるで、お互いに似た者だと認め合うように。
そのためか、コボルトの青年と白エルフは優しい笑顔をそれぞれ浮かべた後、こう声をかけていた。
「──僕達、もしかしたら同じようなことを考えていたかもしれないですね」
「えぇ、みたいですね」
そう語りかけるように会話をする二人の顔には、異種族関係なく惹かれ合う男女の姿が映っており、これを機に二人はアンズの花を背景に色々と会話をしていた。
自分の好きなコーヒーの品種のこと、美味しいパン屋のこと、ヴィルトシュヴァインの所々にある図書館のこと──などなどを語り合った二人は、連絡先を交換したのは言うまでもない。
そして、その一年後に今度は二人一緒にアンズの花を見に行ったのは、ここだけの秘密の話である。
【本日の一品】
☆ぶどうパンのクリームチーズサンドイッチ