オルクセンのグルメ   作:常夏鳳梨

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副題:夏の終わりの味

一応、ヨーロッパ圏や北欧圏ではザリガニが食べられているらしい。
ただ、それぞれ食べ方が違うそうな。
きっと、山で暮らしている時のご馳走だったんだろうなぁ(妄想)
ちなみに、野生のザリガニは寄生虫云々で食べちゃダメだぞ!!


ザリガニのボイル

あぁ、やっぱり夏の終わりと言えばこれだよ。

とある闇エルフは、この時代の文明の利器であるスマホを介した上で、ネット通販にて購入した商品を──真空パック状態のザリガニを見つめながら、そう声を漏らしていた。

 

彼女にとって、ザリガニは夏が終わる時期に楽しめるご馳走であった。

何しろ、彼は山岳地帯の集落に暮らしていたため、その間に流れる川を泳ぐ川魚などを食べることがよくあった。

そのこともあってか、一応は川魚扱いされていたザリガニもまた貴重な栄養源として扱われていた。

 

彼女の集落はその側に生息していたザリガニを食べていたらしく──夏になると、集落に居た闇エルフ達はこぞって川へと移動し、ザリガニ釣りに熱中していた。

ザリガニ釣りの際、彼女達は匂いの強い乾物などを餌に使っていたのだが、これはザリガニが強い匂いに集まる性質を利用していたらしく、闇エルフはこのような形でザリガニを釣った後、ルンルン気分で集落に戻った後にザリガニパーティーを開くことが多々あった。

 

山間に暮らしていた当時の彼女は、ザリガニ釣りの才能や武器を扱う才能はもちろんのこと、馬になった上で操る才能ですら持っていなかったものの、何かしらのことを書き記す文章力だけはあった。

そのため、一〇二五年現在の彼女は随筆家──つまりはエッセイニストとして活動していた。

 

幸いなことに、彼女の文才は本物だったようで──ベレリアンド戦争、そして二度に渡る大戦が終わった後の彼女は約二〇年もの間、個人ブログにてエッセイを連載し続けているとか。

しかも、彼女のエッセイはオルクセン国内外問わず人気が高く、何度か書籍化されたこともあった。

 

そんな彼女の脳裏に浮かぶのは、ベレリアンド戦争前に破壊される前の集落にて、他の闇エルフ達と仲良くザリガニを食べる日常の光景だった。

 

集落では末っ子気質だった彼女は、ベレリアンド戦争前の虐殺で姉様と呼んでいた数人の闇エルフを失った。

そして、救援にやって来た闇エルフ達の力を借りる形にて、何とかオルクセンの地へと踏み入れた彼女は、今に至るまでオルクセンにて暮らし続けていた。

 

もちろん、彼女自身も一度はエルフィンドに戻ろうと考えたこともあった。

しかしながら、数十年──と言うよりかは、百年もオルクセンの地での暮らし続けたからか、その国での暮らしに慣れてしまったのに加え、エルフィンドが彼女の故郷である集落を破壊したのもあってか、結局はオルクセンに暮らし続けることを決めたのである。

 

閑話休題(それはさておき)

 

闇エルフ達は、主に川で獲りたての新鮮なザリガニを茹でた上で、そこにハーブバターを添えて食べることが多かった。

このハーブバターは、ディルと呼ばれるハーブをバターの中に練り込んだモノで、エルフィンドではよく食べれていたモノだった。

 

ディルもまた、エルフィンドの山や森でよく採れる食材の一つだったらしく、彼女は姉貴分である闇エルフ達と共にハーブ採取に行くことも多々あった。

山育ちである彼女は、たまにはデトックスがてらハーブを摘みに山に行こうと思い立ったことはあったものの、その際にオルクセン国内でクマにまつわる騒動があったからか、結局それは今も叶わぬままであった。

 

そんな彼女ではあるが、時代の進歩は凄まじいもので──今のエルフィンドでは、地元での雇用を生み出すのと地方の再生のためにザリガニの養殖が行われており、その養殖の賜物こそが彼女が今手に取っている真空パック詰めのザリガニなのだ。

 

ネット通販のレビューには、『とても美味しい‼︎』というありきたりのコメントの他、『こんなに美味しいザリガニは初めて食べた‼︎』という絶賛するようなコメントが書かれており、それを見た彼女はこう思った。

あぁ、あの頃のようにザリガニが食べたい──と。

 

その結果、彼女はその養殖ザリガニを購入したわけなのである。

ちなみに、グロワールにもザリガニを食べる文化があるらしいのだが、スープやグリルなどにして食べるらしく、そのことを知った彼女が何か違うとばかりの反応になったのは別の話である。

 

「フフフ、可愛いザリガニくん。私が美味しく調理してあげるからね──」

 

かれこれ十五年は使用しているキッチンにて、真空パックに入っていたザリガニを丁寧に取り出した後、彼女は優しく微笑みながらそう呟いた。

そして、そのまま沸騰している鍋の中に入れ、数分間放置する形で塩茹でしたザリガニをハーブバターで味付けし、それを丁寧に皿に盛り付けた彼女は、その光景を何かしらの記録に残したいと思ったようで、そのままブログ用の写真として撮影した。

 

それから、彼女は完成したザリガニのボイルが乗った皿をテーブルに置くと、汚れた手のためのフィンガーボールやおしぼりもまたその皿の両脇に置いていた。

このフィンガーボールとおしぼりはザリガニのホイルを食べる時の必需品であり、彼女が暮らしていた集落での古くからの伝統であった。

 

「さぁて!!食べて食べて、食べまくるぞ!!」

 

そう意気揚々とした様子で呟いた後、彼女は宣言通りにザリガニを手掴みで食べ始めていた。

ハーブバターで味付けされたザリガニのボイルは、久々に食べたであろう闇エルフの脳天を直撃した。

そう、これこそが闇エルフの夏の風物詩なのだ!!

 

そして、ザリガニを食べる際に汚れた手をフィンガーボールやおしぼりを使って拭いた後、またザリガニを食べる──ということを繰り返してつつ、無我夢中になって食べていた。

 

ザリガニよ、あぁ懐かしのザリガニよ。

そんなポエムじみたことを思いながらも、ザリガニを完食した彼女はしばらく物思いに耽るようにその瞼を閉じていた。

 

ベレリアンド戦争前のエルフィンドの地にて、夏の終わりと秋の始まりを祝うためのザリガニパーティーは、彼女の集落にとっては夏の時期の楽しみの一つであった。

だからこそ、夏が終わる度にその思い出が自然とフラッシュバックし、懐かしさと共に寂しさを感じることが年々増えていた。

 

だからこそ、彼女はこういう形でザリガニを食べれたことに対し、僅かばかりのやりきった感を抱いていたのである。

 

「あ〜、美味しかった」

 

電気式のクーラーが効いている室内にて、彼女はザリガニの殻が山積みとなった光景を目に前に、満足げにそう呟いていた。

そして、彼女は再びブログ用の写真を撮った後、殻やらフィンガーボールやらを片付けた後、そのままパソコンの前に座ったかと思えば、カタカタとキーボードを操作する形にて、ブログに載せるエッセイを書き始めていた。

 

その数十分後、自身が食べたザリガニに関するエッセイを書き上げた彼女は、それを色々とチェックしてからブログにアップした後、メイドイン秋津洲のゲーミングチェアにもたれ掛かっていた。

 

人生は山あり谷ありと言うけれども、こういうのも悪くはないかもしれない。

久々にザリガニを食べた彼女は、思わずそう考えたようで──お腹がいっぱい担った影響なのか、そのままウトウトとしていた。

 

それから一〇分が経った頃、彼女がザリガニに関するエッセイを投稿する形にて更新したブログはというと

 

『ザリガニ‼︎ザリガニじゃないか‼︎』

『ザリガニなんて久々に見たわ──』

『飯テロぉ!!』

『何これ美味しそう』

 

というコメントが続々と書かれていたのだが、そんなことなど知らない当の彼女は、満腹からの強い眠気に襲われていたからか、寝るために歯を磨いていたのだった。




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☆ザリガニのボイル
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