超かぐや姫!& ウルトラマンオメガ 〜八千年の孤独を照らす光〜   作:ひみつ

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オメガの時系列は、ウルトラヒーローズEXPO2026 うめだサマーフェスティバルのステージの後になります。わかりやすくコウセイとの分離後すぐにしようと思ったのですが、どうしてもストーリーに組み込みたかったのでステージ後にしました。


縄文時代編
1話『ソラトとかぐや』


 

地球での激闘、相棒であるコウセイとの別れ。そして宇宙の遊園地を巡るインフィニットの一件が過ぎ去ってから、しばらくの時が流れた。

宇宙の静寂の中、突如として空間が歪み、次元の穴が口を開く。

巻き込まれた真紅の巨人は、異次元の渦を抜けた先で、見慣れた青い星を目撃した。

 

――地球だ。

 

懐かしさに胸を打たれたのも束の間、眼下の大地では、世を焔に葬る溶鉄怪獣〈デマーガ〉が目覚め、暴れまわっていた。

 

「放っては……置けないな!」

 

赤き戦士、ウルトラマンオメガは、そこに芽吹いた命を守るために地球へと降り立つ。

 

「命を大切にしない奴は……許せないからな!」

 

手にしたオメガスラッガーが真紅の光軌を描き、デマーガの放つ熱線を真っ二つに切り裂く。懐へ跳躍一閃。一撃のもとに怪獣を深き大地の底へと沈め、辺りに再び静寂を取り戻した。

 

だが、勝利の余韻の中でオメガは首を傾げる。

 

「ここは……地球か? いや、確かに地球だけど……」

 

肌を撫でる風も、空気の感触も地球そのものだ。しかし、あまりにも空が青く、澄み切っている。どれだけ視線を遠くに巡らせても、鉄の建造物一つ見当たらない。目に入るのは、果てしない森と山、そして美しい海だけだった。

 

「俺の知っている地球じゃないな」

 

コウセイやアユ姉、サユキたちのいる星ではない。数々の戦いの中で異なる世界の地球を見てきたオメガは、意識を研ぎ澄ませて『オメガスコープ』を展開した。

 

「……大昔の地球、なのか」

 

数年や数百年の話ではない。遡ること、実に八千年前。まだ人間が文明すら築いていない古代の時代だ。

 

「これ……どうやって戻ればいいんだ?」

 

時空を超える力を持つメテオカイジュウ〈ガメドン〉もいない今、元いた時代へ帰る術はない。ガラにもなく頭を抱えたその時、オメガの感覚が妙な違和感を捉えた。

 

――電波?

 

こんな時代に存在するはずのない人工的な信号。発信源は海だ。

オメガは光を収め、久しくなっていなかった人間の姿――オオキダソラトとなり、浜辺の砂を踏みしめた。

 

(最後にこの姿になったのは……コウセイと一つになる前か。懐かしいな。あいつ、どうしてるかな)

 

不意に胸を突いた寂しさを払うように首を振る。

 

「なーんて、浸ってる場合じゃないよな」

 

調査に向かおうとした、その時だった。

 

『ねえ、ねえ! こっち見て! お願い! かぐやに気付いて……!』

 

切羽詰まった声が耳に届く。ソラトが咄嗟に振り返ると、そこには小さな海洋生物のような姿をした存在がいた。

 

「なんだ……お前?」

『良かった……気付いて、もらえた……! よがっだあああ……っ!』

 

白くふわふわとした“かぐや”は、ぽろぽろと大粒の涙をこぼし、子供のように声を上げて泣き崩れたのだった。

波音が静かに響く浜辺。ソラトは砂浜に腰を下ろし、隣に身を寄せる小さなウミウシ――かぐやの言葉にじっと耳を傾けていた。

 

彼女の正体が月の電子生命体であること。

月を抜け出した先で「酒寄彩葉」という少女と出会い、かけがえのない時間を過ごしたこと。

月に連れ戻された後、地球で響いた彩葉の歌に導かれて再び飛び立ったものの、不慮の事故で八千年前の過去へ飛ばされてしまったこと……。

 

『ソラトの姿が見えてね……お願いだから気付いて欲しくて、急いでこの姿を作ったんだ……』

「俺が捉えた電波の正体は、かぐやの宇宙船だったんだな」

『うん……。でも、もう壊れて動かなくなっちゃって……』

 

壊れてしまった船の力では、人間の肉体すら構築できない。

誰にも認識されない電子の存在のまま、果てしない孤独の中にいた彼女。同行していた犬DOGEを介し、この小さなウミウシの姿を作ることで、かろうじて世界に触れることだけが叶っていたのだという。

 

『彩葉の歌がね……月まで届いたんだよ。だから、もう一度会いたかった……会いたかったのに……!』

 

黒真珠のような小さな瞳から、ぽろぽろと雫がこぼれ落ちる。

彩葉に会えないという現実。八千年という途方もない拒絶。絶望が何度も彼女の胸を締め付け、責め立てていたのだろう。

 

(こういう時……コウセイなら、なんて言うだろうな)

 

ふと、かつて共に戦った相棒の顔が思い浮かぶ。

コウセイならどうするか。どうやって寄り添うか。

――いや、答えは最初から決まっていた。コウセイならいつだって、自分の心から溢れた素直な“やさしさ”で相手を抱きしめるはずだ。

 

「……一人で、寂しかったろ」

 

それは、ソラトの口から自然とこぼれ落ちた言葉だった。

ソラトはしゃがみ込み、小さなかぐやの身体にそっと指先を添え、その涙を丁寧に拭う。

 

(かなしいな……誰かの涙を見るのは)

 

身を切り裂かれるような悲痛な涙。それを受け止めたソラトは、まっすぐな瞳で静かに、けれど力強く告げた。

 

「もう一人じゃない。俺がいるから」

『……っ!』

 

かぐやの瞳から、再び大きな雫が溢れ出す。

だが、今度の涙は絶望のそれではない。

絶望の底に沈んでいた自分へ、確かに差し伸べられた光。

久しく忘れていた“誰かに届いた”という喜びが、彼女の胸を温かく満たしていた。

 

――その直後だった。

 

静かだった海が突如として狂ったように荒れ狂い、地響きのような唸りを上げた。

今度は電波などではない。海の底から膨れ上がる、巨大な生命の気配――。

危機を察知したソラトは、咄嗟にかぐやを両手で包み込むように拾い上げ、素早く跳躍して波打ち際から距離を取る。

状況が飲み込めず狼狽するかぐやを胸元で守るソラトの視線の先。大荒れの海を割って、巨体が姿を現した。

 

「あれは……ゲードスか!」

 

深海に生息する古代の怪獣〈ゲードス〉。

さっきのデマーガといい、この突然の出現……まさかこの時代、この世界で怪獣たちが一斉に目を醒ます“目覚めの刻”が訪れようとしているのか。ソラトの脳裏に嫌な懸念が走る。

だが、悩んでいる暇はない。今、なすべきことは一つだ。

 

「かぐや、下がってろ」

 

かぐやに向ける眼差しは、先ほどまでの柔らかさから一変し、大切な存在を守る戦士の鋭いものへと変わっていた。

 

『ソラト……っ』

 

手の中で、かぐやが小さく震えながらソラトを見上げる。不安を隠しきれないその声に、ソラトは不敵で温かい笑みを返した。

 

「だーいじょうぶ。任せとけって」

 

ポンとやさしく背中を押す。

 

「あの岩場の陰に隠れてろよ」

『うん……!』

 

かぐやは小さな身体で一目散に走り、岩陰へと身を潜めた。

かぐやが安全な場所に避難したのを確認すると、ソラトは振り向き、50メートルを超える巨躯で暴れ狂うゲードスを正面から睨み据えた。

 

(俺だって早く元の世界へ帰る方法を探さなきゃいけない。コウセイにもまた会いたい……)

 

荒れ狂うゲードスを見上げながら、ソラトは一瞬だけ拳を強く握りしめる。

帰りたい場所がある。会いたい仲間がいる。それはソラト自身も同じだった。

 

(――でも、それ以上に)

 

チラリと視線を落とせば、岩陰から必死にこちらを見つめる小さなウミウシ――かぐやの姿。

八千年。途方もない時間の中、たった一人で絶望に耐え続けてきた少女。

会いたい人に会えない悲しさを、ソラトは痛いほど知っていた。

 

(目の前で泣いている奴を放っておいて、何がウルトラマンだ!)

 

ここで背を向けたら、もう二度と…共に戦ったウルトラマンたち、コウセイに顔向けできない。

なら、やる事は決まっている。

 

「――一つ、決めたことがある」

 

荒れ狂う風の中、ソラトの呟きが力強く響く。

 

「かぐやをもう一度、彩葉に会わせてやる。あいつの願いは……俺が絶対に叶える!」

 

確固たる決意とともに、ソラトは右腕を天へと一閃した。

空間が裂け、眩い光の粒子とともに『オメガスラッガー』がその手へと収まる。オメガメテオを急速装填――溢れ出す神秘の光がソラトの全身を包み込み、巨大な光の柱となって天空へと突き抜けた。

 

光が弾け飛ぶ。

そこに立つのは、真紅の光の巨人――ウルトラマンオメガ!

 

 

 

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