超かぐや姫!& ウルトラマンオメガ 〜八千年の孤独を照らす光〜   作:ひみつ

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更新です。
次の話も近いうちに更新します。
誤字脱字あったら申し訳ないです。


3話『星空の誓い』

 

集落に来て最初の晩。

ソラトとかぐやは、満天の星々が瞬く夜空の下、パチパチと爆ぜる焚き火を静かに囲んでいた。

木串に刺された川魚が香ばしい煙を上げ、ソラトは焼き上がるのを今か今かと待っている。

 

『ソラト、子供たちとすぐ仲良くなったね』

「まあな」

 

昼間の食事の後、集落の人々は二人を大いに歓迎してくれた。

どこへ行っても「神様」と崇められて深々と頭を下げられるのには参ってしまったが、川へ出かけて子供たちと魚を追いかけているうちに、気づけばすっかり日が落ちていた。

 

『けど……もう〜! ほんっとにかぐやびっくりしたんだから! ソラトが宇宙人で、しかも巨人だなんて! 月よりもっと遠くから来てたなんてさ!』

 

ソラトは先ほど、かぐやに自分のすべてを打ち明けていた。

自分が「ウルトラマン」と呼ばれていること。宇宙人で、ここではない別の地球で仲間と過ごしていたこと。そして、宇宙の平和のために戦う途中で次元の歪みに巻き込まれ、この時代へ落ちてきたこと。

 

『話のスケールが大きすぎて、さすがのかぐやちゃんもパンク寸前だよ……』

 

宇宙も次元も股にかけた広大すぎるソラトの境遇に、さすがの「月の姫」も目を丸くして驚きを隠せない。

 

『かぐやも宇宙人だけどさ、宇宙のことなんて全然知らないな。ねえ、宇宙ってどんなところなの?』

「宇宙か……色んな星があって、綺麗で、広い場所だな。ほら、今空で光ってるあの光も、どこかの星なんだ」

 

ソラトとかぐやは、吸い込まれそうな夜空を見上げる。

 

「あの一つ一つに、命が芽吹いてる」

『ソラトはその命を守る……ウルトラマンなんだね』

「まあ……な」

 

命を守る――。

今のソラトを突き動かしているのは、コウセイやアユム、サユキといった仲間たちとの出会いと、ただ観測するのではなく「そこに息づく命を守りたい」という純粋な願いだ。

 

だが、過去の自分は違っていた。

ただ星々を観察し、記録するだけの『宇宙観測隊』の一員だった頃、自分は多くの星が滅び去るのを黙って見届けてきた。救えたはずの星を見放したことも一度や二度ではない。その冷酷だった過去が、時折胸を締め付ける。

 

自分にできるのは、あの日見放した命の痛みを絶対に忘れないこと。そして――。

 

『ソラト……?』

 

押し黙ったソラトを、かぐやが心配そうに見上げている。

 

「ん? ああ……なんでもないよ」

 

今目の前にいる――かぐやを守ること。

 

「そうだな、今の俺はオオキダソラトで、ウルトラマンオメガだ。大切な相棒と……仲間がくれた俺の名前なんだ」

『かぐやもね、名前を彩葉から貰ったんだよ』

「同じだな」

『うん!』

 

自分とかぐやは、案外似た者同士なのかもしれない。出会ってからの時間は短くとも、ソラトの胸には温かな親近感が芽生えていた。

 

「一人で食べるご飯よりさ、誰かと一緒に食べるご飯の方が美味しいんだ」

 

焼き上がった串焼き魚を手に、ソラトは語りかける。

 

「だから俺、決めたんだ。いつか……かぐやがまたご飯を食べられるようになったら、二人で死ぬほどご飯を食べるって」

『ソラト……』

「食べような。絶対」

『うん……!』

 

かぐやは黒真珠のような目を輝かせ、ウミウシの身体をぴょこんと揺らして力強く頷いた。

 

『じゃあその時は、かぐやが作るね!』

「おっ、かぐや料理できるのか!」

『もっちろん! 任せてよ!』

「なら焼きそば! 目玉焼き乗せてくれよな」

『え〜、ソラト子供っぽ〜い!』

「それが美味いんだよ。コウセイが作ってくれたからな」

『コウセイ……?』

「俺の――大切な相棒で、一番の友達だ」

 

星空を見上げながら、遠い空の向下にいる相棒の顔を思い浮かべるソラト。

ソラトは語り始めた。コウセイと出会い、喧嘩して、仲直りして、迷いながらも共に駆け抜けた青春の日々を。かぐやが愛おしそうに語ってくれた、酒寄彩葉との思い出と同じように。

 

『じゃあ、コウセイはかぐやにとっての彩葉と一緒なんだね!』

「そうだな。……一番、一緒にいたい奴だ」

 

やっぱり似てるな、とソラトは笑う。

 

「あーあ、またコウセイの焼きそばが食べたいな……」

『かぐやはね、彩葉のクソまずいパンケーキでいいから食べたいよ……』

「クソまずいのに食べたいのか? 変わってるな」

『水と小麦粉だけのパンケーキなんだよ? 彩葉が食べてたやつ。かぐやにも作ってくれたの』

「昼間の飯より不味そうだな……」

『彩葉が作ってくれたから美味しかったの! だから食べたいの!』

「あ……それ、わかる。俺もコウセイが作ってくれるから食べたいんだ」

『でしょ?』

「ああ」

 

暗い夜の中、二人の笑い声が弾けた。

 

『……あの子、この集落の子供だね』

「おーい、こっち来いよ」

 

ソラトが手を振ると、暗がりから少し警戒した様子の少年がそろりと姿を現した。

 

「どうしたんだ? みんなもう寝てる時間だぞ」

 

夜を照らす明かりのない縄文時代、人々の就寝は早い。日が落ちればすぐに夢の中だ。

 

「……焚き火が見えたから、気になって」

「そっか。名前は? なんて言うんだ?」

「オイラは……レピ」

「レピか。俺はソラト。このちっこいのがかぐやだ。よろしくな」

「神様……なんだよね?」

「んー、まあ……そんな感じかな。ほら、座れよ」

 

レピはソラトの左隣に腰を下ろし、パチパチと燃える火を見つめる。

 

「食うか?」

 

ソラトが手渡した焼き魚を、レピはコクリと頷いて受け取った。

もぐもぐと魚を口に運ぶ少年と、静かに時間を共有する。

 

「……神様、魚取るの上手かったね」

「おう」

「初めてだったんでしょ? オイラだって、最初はあんな風に掴み取りできなかったよ」

「神様が魚取るのは意外だったか?」

「うん。ちょっとびっくりした。オイラも、みんなも」

 

今日の午後、子供たちに混ざって魚を獲ろうとしたら「神様にそんなことをさせるなんて畏れ多い!」と大人たちに止められたのを思い出す。だが、人との触れ合いは本当に楽しかった。長らく孤独の中にいたかぐやにとっても、それは宝物のような時間だったはずだ。

 

「神様だろうがなんだろうと、飯は食わなきゃ生きていけないからな」

 

ソラトが笑うと、レピは意を決したような鋭い眼差しでソラトを見つめ直した。

 

「……怪物を、倒したの?」

「ああ」

 

正体に関わる問いに、ソラトはあっさりと頷く。今ここにコウセイがいたら、泡を吹いて焦り倒すか、猛説教を食らうところだ。だが、キサラにも見られている以上、隠す意味もない。

 

「……オイラも」

「ん?」

「オイラも怪物を倒したいんだ! オイラの手で……っ!」

 

立ち上がり、興奮気味に叫ぶレピ。

 

「そりゃ……なんでだ?」

 

ソラトが真剣な眼差しで問い正すと、レピは急に顔を伏せ、言葉を詰まらせた。

 

「それは……っ」

「レピ! こんなところにいたのね」

 

足音とともに現れたのは、若い女性だった。レピと瓜二つの顔立ちをしている。

 

「母さん……」

「神様、申し訳ありません……! うちの子がご迷惑を……」

 

レピの母親・サクヤは、焦ったように深々と頭を下げた。

 

「いいって、気にするなよ」

「レピ、行くよ」

「……うん」

 

レピはまだ何かを言いたそうにソラトを振り返ったが、サクヤに強い力で手を引かれ、暗闇の奥へと連れ去られていった。

 

(何か……あるな)

 

少年の瞳の奥に宿っていた復讐の火種。ソラトが思案していると、隣でかぐやが「ふぁぁ……」と大きな欠伸をした。

 

「眠いか?」

『うん……今日はね、かぐやすごく楽しかったんだ。ソラトに会えて……怪物は怖かったけど、久しぶりにたくさんの人と話せて……』

 

かぐやは小さな声で、ぽつりと胸の内を漏らす。

 

『……でもね、かぐや……寝るのが怖いんだ。今日のことが全部『夢』で……目を醒ましたら、またずっとひとりぼっちなんじゃないかって……そう思ったら、すごく怖くて……』

 

絶望の中に置き去りにされていた傷痕は、まだ癒えていない。

 

「大丈夫だって」

 

ソラトはしゃがみ込み、指先で優しくかぐやの頭を撫でた。

 

「夢なんかじゃないさ。俺が、かぐやの隣にいるから」

 

言葉とともに伝わる指先の温度。このウミウシの体は実体がなく、ぬくもりなど感じられないはずだった。それなのに――かぐやの心は、じんわりとした温かい安心感で満たされていく。

 

『……うん』

 

ソラトの優しさに守られ、かぐやは安心したように瞳を閉じた。

 

「よし、今日はもう寝るか」

 

ソラトは焚き火を消そうと、水の入った木の容器を手に取る。

――だが、次の瞬間。ソラトの動きがピタリと止まった。

 

背筋を走る、強烈な悪寒。

ソラトは大急ぎで振り返り、漆黒の森を鋭く睨み据えた。

 

(――クンクンっ)

 

鼻をひくつかせ、空気を嗅ぎ分ける。

焚き火の焦げくさい匂いの隙間から、かすかに漂ってくる異臭。

 

(この匂い……生臭い血と、肉が腐ったような……怪獣の匂いだ!)

 

かつてどこかで嗅いだことのある、狂暴な怪獣の臭気。

 

『ん〜……ソラト? どうしたの……?』

 

微睡みの中から、かぐやが不安そうに声を上げてくる。

 

「……なんでもない。あーあ、俺も眠くなってきた。寝るか!」

 

ソラトは瞬時に不敵な笑みを浮かべ、胸の内の胸騒ぎを押し隠した。焚き火に一気に水をかけ、ジュッと音を立てて煙が上がると、かぐやを包み込んで素早く住居へと戻ったのだった。

 

――夜更けの森。

静寂が支配する漆黒の闇の中を、巨大な影が蠢いていた。

 

グチャリ、と肉が踏み潰される嫌な音が響き、夜鳥が一斉に羽ばたく。

闇に溶け込み、姿を消しながら移動するその禍々しい気配は――確実に、集落へと近づいていた。




ウルトラマンオメガでウタさんを演じた役者さんは、ウルトラマンギンガSでキサラ女王も演じていたので、それに因んで関係あるキャラクターの名前を拝借して登場させてみました。ギンガSを視聴したことのある人なら顔も想像しやすいかと思って。

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