「―—警報! 警報! 中央指令室前通路にて、未確認の霊体……いや、生物群による甚大な物理的・精神的侵略を確認! 緊急防衛陣形を展開してください!」
カルデア中央指令室(コントロールルーム)に、けたたましいサイレンが響き渡る。
ダ・ヴィンチちゃんがモニターの数値を二度見どころか五度見し、ロマニ・アーキマンは血の気を引かせてドーナツを落とした。
「な、なんだいこの霊体グラフレベルは!? 魔力反応じゃない、これは……『ノリ』!? 純粋な『狂気のノリ』がカルデアの防壁を穿って侵入してきている!?」
「先輩! 危険です、私の後ろへ!」
デシュールドを持ち、即座に身構えるマシュ・キリエライト。その隣には、数々の特異点を修羅場としてくぐり抜けてきたマスター、藤丸立香(男性)が立っていた。彼の眼光は鋭い。数々の魔王、邪神、英雄王と対峙してきた男の面構えだ。
「……来るか、新たなハザード。サーヴァントのみんな、迎撃準備だ!」
ズドドドドドドド!!!!!
重圧な隔壁が、理不尽なまでの質量と勢いで粉砕された。煙塵の中から現れたのは、黄金のアフロヘアーを眩しく輝かせ、黒のサングラスを掛けた巨漢――ボボボーボ・ボーボボ。そしてその脇を固める、首領パッチと天の助。
「フハハハハ! ついに乗り込んだぞ、噂の『カルディア』とやらに!」
「おいボーボボ! ここはカルデアだ! あと俺のプリンを勝手に食ったろ! 許さねえぞ、ここを第二の埼玉にしてやる!」
「ぬぬぬ〜! ぬの意地を見せてやるぬ〜!」
「「「だれー!?!?」」」
立香、マシュ、そして後ろに控えていたサーヴァントたちのツッコミがハモった。
「サーヴァント……ではない!? えっ、人類史の危機に無関係そうなビジュアルの圧がすごい!?」
立香が思わず叫ぶ。
「ええい、問答無用! かかれーっ!」
首領パッチが叫ぶと同時に、ボーボボが不敵に笑い、脇の下から『バナナ』を取り出して耳に当てた。
「もしもし、おふくろ? あ、俺。今カルデアに殴り込みに来てるんだけど、晩飯ハンバーグにしておいて。あ、パイナップル乗ってるやつね。……何? お前はおふくろじゃない、ただの『近所の豆腐屋のババア』だただと!?」
「知らん電話を戦場でかけるなアァァァ! しかも自分で間違い電話に気づいてショック受けてるんじゃねえ!」
立香の怒涛のツッコミが炸裂する。
「マスター、落ち着いてください! 敵の宝具(?)の真名看破を急ぎます!」
マシュが盾を構えて叫ぶが、ボーボボはすでに次の行動に出ていた。
「鼻毛真拳奥義……『人類史を揺るがす朝食』!!」
ボーボボの両鼻から伸びた漆黒の鼻毛が、次元を切り裂きながら繰り出される! 狙われたのは――クーフーリン!
「ハッ、速ぇ! だが、このゲイ・ボルクの前にそんな奇妙な槍……じゃねえ、鼻毛が届くかよ!」
クーフーリンが槍を構えて跳躍したその瞬間、鼻毛の先についていたのは槍の穂先ではなく、『生温かいトースト(イチゴジャム塗り)』だった。
「食えっ!」
「ぶはっ!?」
顔面にジャムトーストを張り付けられたクーフーリンが激突し、壁へと沈んでいく。
「アニキ―――ッ!? なんだあの攻撃!? 概念礼装か!? それとも呪いか!? ジャムの塗りが絶妙に均一でうまそうだけど!!」
立香が思わず食レポ交じりのツッコミを飛ばす。
「ふふふ、動揺しているなマスター。ハジケリストの恐ろしさはこんなものではないぞ!」
首領パッチが自慢げに胸を張ると、突然自分の頭から『ヤカン』を取り出し、そこにお湯を注ぎ始めた。
「見てろ、これが俺の真の姿……『3分後のカップラーメン』だ!」
「そのままじゃねえか!! お湯注いで待つだけの時間を戦場で作るな! あと蓋の上にネギ乗せるな!」
すかさず立香の鋭いツッコミが刺さる。
その横で、ところてんのすけがプルプルと震えていた。
「ぬぬぬ……私を無視するなぬ! 食らえ、ところてん鉄拳!」
天の助が繰り出したラッシュを、ギルガメッシュが冷ややかな視線で『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を開き、無数の宝具で迎撃する。
ドドドドド!
「ぬわーーーーーっ!? 体が、体が切り刻まれるぬーーーーーっ!!」
バラバラに砕け散る天の助。しかし、次の瞬間。
「……あれ? 一口サイズに切れて、特製ポン酢がかかってて美味しそう……?」
マシュが思わず呟いてしまった。
「美味しそうにするなマシュ! 相手はプルプルした謎の物体だぞ! ってか切られて美味しくなってどうするんだお前はー!」
「ぬへへ、ポン酢最高〜」
「再生しながら味の感想述べるな!!」
混沌を極める指令室。
ギルガメッシュすらも「な、なんなのだこの者たちは……言動に一筋の理すら存在せぬ……! 雑種以前に、概念としておかしいわ!」と引き気味に宝具の展開を止めてしまう始末。
その時、ボーボボがゆっくりと立香へ歩み寄ってきた。
重厚な足音。周囲の空気が一変する。
「……ふっ、いいツッコミだ、少年。お前にはハジケの素質がある」
「要らねえよそんな素質! 俺は世界を救うために必死なんだよ!」
「だが、このカルデアという場所……あまりにも『真面目』すぎる。世界を救う前に、お前たちの魂をハジケさせてやらねばならん!」
ボーボボが大きく手を掲げると、カルデアの天井が突如として大崩落を起こした。
いや、崩落したのではない。天井が巨大な『タコ焼き機』へと変貌していたのだ!
「な、カルデアの構造が書き換えられていく!? 理象の改変……いや、ギャグ補正による世界線の侵食だよこれー!?」
ダ・ヴィンチちゃんが頭を抱えて叫ぶ。
「ハジケリストの恐ろしさを知るがいい! 次回、カルデア崩壊!? いや、全員でタコ焼きパーティーだ!!」
「勝手に次回予告を作るな! そしてなんでタコ焼きなんだよ! 具材は何なんだよ!!」
「フハハハ! 具材はお前たちだーっ!」
「絶対嫌だーーーッ!!!」
ボーボボの掲げた拳から放たれる、眩いばかりの『ハジケオーラ』。
カルデアの英霊たちが、そして立香とマシュが、光の中に呑み込まれていく――!
ツッコミの限界を迎えたカルデアの運命は!?
そして、後半で明かされるハジケリストたちの真の目的(=たぶん何も考えてない)とは!?
「目がぁぁ! 視界全面がタコ焼き機の穴で埋め尽くされているぅぅ!?」
眩い光が収まると、そこはいつものカルデア指令室……ではなく、床一面に巨大な丸い凹みが無数に穿たれた『超巨大タコ焼きプレート空間』へと変貌していた。
鉄板の熱気でメラメラと揺らぐ空間の中、藤丸立香は必死に身を起こす。
「大丈夫ですか、マスター!?」
「マシュ! 俺は無事だ……無事だが、なんで全員頭から紅生姜を被せられてるんだよ!?」
「わかりません! でも、妙に甘酸っぱくて食欲がそそられます!」
「順応するな! ツッコミの軸をブレさせるなマシュー!!」
「フハハハ! ようこそ、俺たちの『タコ焼き空間』へ!」
ドヤ顔で言い放つボーボボの横で、首領パッチは爪楊枝を2本手にして巨大な青のりバズーカを構え、天の助は天かすのプールで泳いでいた。
「もうやだこの空間! 理屈が1ミリも通ってねえ!」
「サーヴァントの攻撃も効かないだなんて……これが『ハジケ』の概念支配……!」
青ざめる立香と、盾を構えつつも困惑を隠せないマシュ。そこへ、指令室の破片を蹴散らして新たな4人組(?)が飛び込んできた。
「ちょっとーーーッ!! またあんたたちは勝手に人の施設をタコ焼き空間に変えてるんじゃないわよーーーっ!!」
甲高いツッコミの声とともに現れたのは、ピンクの髪の少女・ビュティ!
そして首輪をつけた少年・ヘッポコ丸、ソフトクリーム(?)頭の男・ソフトン、さらに白くて小さくて可愛い謎の生物・田楽マン!
「ビ、ビュティさん!? あなた、この狂気の世界における『唯一の理性』ですね!?」
立香はまるで救世主を見たかのような目でビュティに駆け寄った。
「あなたたち、巻き込まれちゃって本当にお気の毒様! あ、初めましてビュティです! 説明するから聞いて!」
「頼む! この状況の解説をくれ! ダ・ヴィンチちゃんもロマニも思考停止してルービックキューブ解き始めてるんだ!」
ビュティは真剣な表情(少女漫画風の作画)になり、背景にシリアスな特異点マップを浮かび上がらせながら語り始めた。
「実は……マルハーゲ帝国の生き残りが、人為的に『特異点』を作り出したの! その歪みの影響で、このカルデアと私たちの世界がごっちゃになっちゃったのよ!」
「な、なんだってー!?」
立香とマシュが叫ぶ。
「マルハーゲ帝国……! 人類史を脅かす新たな悪の組織か! まさか魔神柱やクリプター以上の脅威が……!?」
「そう! そしてその刺客が、もうそこまで来ているわ!」
ズズズズズ……!!
タコ焼き空間の闇から、不気味な唸り声とともに姿を現したのは――無数の腐肉を纏った凶悪な犬の群れ!
「キタァァァ! マルハーゲ特異点刺客!『ゾンビ狗(ドッグ)』の群れだーっ!」
田楽マンが謎の旗を振りながら叫ぶ。
「グアァァァオ!!」
大量のゾンビ狗が、凄まじい殺気を放ちながらカルデア一行とハジケリストたちへ襲いかかる!
「くっ、迎撃するぞ! マシュ、サーヴァントたち!」
立香が指示を出そうとしたその瞬間、ボーボボが前に出た。
「下がっていろ、カルデアの少年。ここからは……ハジケリストの『本気』を見せてやる」
「えっ……急にシリアスな顔になられても困るんだけど!?」
ここから、理不尽の極みとも言えるハジケリストたちの怒涛のラッシュが始まった!
「行くぞ天の助! オナラの準備は出来ているな!?」
「いつでも来い、ヘッポコ丸! 私のプルプルはすでに極限だ!」
ヘッポコ丸が首輪を外しかけ(あるいは謎のガスを噴出させ)、天の助のゼリー状の体にライドオン!
2人は揃って滑走路の構えを取った!
「合体奥義――『皐月ジェット』ーーーッ!!」
シューーーーーッ!!(※凄まじいオナラ音とトコロテンの摩擦音)
超音速で噴射された天の助とヘッポコ丸が、ゾンビ狗の群れの周囲を円状に超高速旋回!
立ち上る謎のジェット気流とプルプルバリアが、ゾンビ狗たちを一網打尽に閉じ込める!
「な、なんだあの合体技!? 名前の風雅さとやってることの汚さ・意味不明さがまったく噛み合ってねええええ!!」
立香の命がけのツッコミが響く!
「次は俺だ! 受けろ、聖剣の威光を!」
首領パッチが手に持ったのは、どう見てもただの『ネギ』!
しかし、そのネギが黄金のオーラを放ち始める!
「首領パッチソード一閃!! エクスカリバー(仮)!!」
ズバァァァン!!
「ネギで切ったぁぁぁ!? しかも斬撃の跡からすき焼きの匂いがするぞ! 聖剣への冒涜だろそれー!」
「仕上げだ!! 超絶合体(?)サッカー技!!」
ボーボボが突如として青いユニフォーム姿に変身! 足元には黄金に輝くサッカーボール(※よく見ると首領パッチの顔)!
「鼻毛真拳奥義――『ファイアボーボボトルネード』ーーーッ!!」
ドッゴォォォォン!!
ボーボボが背後に巨大な炎の魔神(※なぜかおばあちゃんの姿)を背負い、炎を纏ったシュートを放つ! イナズマを突き破るような超次元サッカー技がゾンビ狗の群れを直撃!
「他社の超次元サッカーアニメのパロディじゃねえか!! 技のスケール感と著作権の危うさが同時に襲いかかってくる!!」
立香の喉が焼け野原になるほどのツッコミ!
炎に包まれ、弱体化したゾンビ狗たち。
そこへ、烏帽子をかぶり和服を纏った陰陽師スタイルの天の助が悠々と足を踏み出した。
「ふっ……狂乱の宴もこれまで。陰陽抜刀……『寒天固めの術』!!」
お札をかざすと、空間全体に超低温の寒天ウェーブが吹き荒れる!
ゾンビ狗たちは悲鳴をあげる間もなく、プルプルの寒天の中に閉じ込められ――
キュポン! キュポン! キュポン!
なんと、持ち運び可能な『アイススラリー風パウチ容器』へと一瞬で変換されてしまった!
「「「パウチになっちゃったーーーーー!?」」」
カルデア陣営全員の声が完全に一致した。
「ふう……激闘だった」
汗を拭う天の助。その手には、今しがた変換されたゾンビ狗味(?)のアイススラリーパウチ。
「よし、勝利の乾杯だ!」
ボーボボ、首領パッチ、天の助の3人が、躊躇なくそのパウチのストローを咥え、一気に吸い込んだ!
ゴクッ……ゴクッ……ゴクッ……
静まり返る指令室。全員が見守る中、3人の顔色が同時に土気色へと変わる。
「「「まず〜い! もう一杯!!」」」
青汁のCM顔で絶叫する3人!
「不味いなら飲むなアァァァ!! なんでおかわりしようとしてんだよ! 健康志向のCMみたいに言うなーっ!」
立香の魂の叫びが轟く!
すると突然、部屋の照明が落ち、ボーボボたちにスポットライトが当たった。
バックで流れ始めるノリノリのヒップホップリズム。
親亀の甲羅の上に子亀、孫亀が乗ったカメの衣装を身にまとったボーボボたちが、マイクを握り締め出す。
「YO! YO! 俺たちカメファミリー! 甲羅の上でハジケるストーリー!」
「特異点? 知らねえ! マルハーゲ? 帰れ!」
「カルデアのマスター、ツッコミお疲れ! 今日の晩飯、カメの甲羅焼き〜♪」
ラップに乗せて踊り狂うハジケリストたち!
「「「もう帰れよお前らーーーーーッ!!!!」」」
ビュティ、立香、マシュ、そしてカルデアに居合わせた全サーヴァントの全員一致した怒号のようなツッコミが炸裂!
その巨大なツッコミの衝撃波によってタコ焼き空間は粉々に打ち砕かれ、カルデアには(一応の)平和と、全員の凄まじい疲労感が残されたのだった。
(第1話・完!)