「あががががが……っ! む、むのー! 歯が……余の美しい前歯と奥歯がぁぁぁぁっ!?」
カルデアの医務室に、皇帝ネロ・クラウディウスの悲痛極まりない叫び声が響き渡った!
両頬を大きく膨らませ、真っ赤なドレスの胸元を抑えてベッドの上で転げ回るネロちゃま。そのお口の中をサンソンやダ・ヴィンチちゃんが恐る恐る覗き込む。
「これは……重症だね。ネロ、君は昨日、ブーディカちゃんから貰ったお菓子や甘いケーキを食べたあと、歯を磨かずにそのまま新作ゲームを徹夜でプレイして寝ただろう?」
ダ・ヴィンチちゃんが呆れたように腕を組む。
「うぐっ……! う、余としたことが……ゲームの裏ボスに夢中になるあまり、歯磨きという日常の儀式を怠ってしまったのだ……! あたたた……!」
「ダメですよネロさん! いくらサーヴァントでも、毎日のオーラルケアを怠れば虫歯菌の格好の標的です!」
マシュが眼鏡をキラーンと光らせて注意する。
しかし、事態は単なる虫歯では済まなかった。
ビビビビビッ! 警報音!
『警告! 警告! ネロ・クラウディウスの右下奥歯内部にて、高濃度の魔力反応および微小特異点を検知! このままではネロの口腔内からカルデア全体へ虫歯菌が氾濫します!』
「「「虫歯が特異点化したーーーっ!?」」」
藤丸立香、マシュ、そしてたまたま居合わせた謎のヒロインXとキングプロテアの悲鳴がハモる!
「フッ……ネロの歯の危機とあらば、この宇宙最強のセイバー・ヒロインXが黙っていません! 立香、ミクロ化光線の準備を!」
「プロテアも行く……! ネロさんの歯をむし歯菌から守る……!」
こうして、ミクロ化光線を浴びて縮小した立香、マシュ、ヒロインX、キングプロテアの四人は、ネロの巨大な口の中へと突入した!
【ネロの右下奥歯・特異点内部】
「……ここは……まるで巨大な採掘工事現場ですね……!」
マシュがシールドを構えながら周囲を見回す。
そこは、白く巨大なエナメル質の建造物(歯)が整然と並ぶ世界。しかし、その至る所にドリルやツルハシを持った黄色いヘルメット姿の怪しい男たちが群がり、凄まじい音を立てて歯を削り倒していた!
カンカンカン! ズガガガガ!!
「ワッハッハ! 削れ削れーっ! この美しき皇帝の歯を全て削り尽くし、巨大な『虫歯帝国』を築くのだ!」
胸に「虫歯建設株式会社」と書かれたスーツを着た男――CEO(最高経営責任者)が高笑いを上げている!
「あいつらは……NHKの名曲にも登場する、伝説の**『虫歯建設株式会社』**の社員たち!?」
立香が驚愕の声をあげる!
「おのれ、他社の教育番組のキャラクターを無断で悪用し、ネロさんの歯を害するとは……万死に値します!」
ヒロインXが聖剣を抜く!
「フハハハ! カルデアの邪魔者どもめ! まずはあの生意気なシールド娘から消してやる! 社員ども、一斉射撃だぁ!」
CEOの号令とともに、無数の虫歯社員たちがドリルや虫歯菌ビームをマシュに向かって一斉に放った!
「させません! 『宝具展開』――!」
マシュが巨大なデシュールドを構え、完璧な防御体勢をとる!
――が、その瞬間!
カチャッ……!
マシュが抱えていたシールドの裏側から、何やら怪しげな小型メカパーツが自動でシャキーンと展開!
『ダ・ヴィンチ特製・シールド内蔵型秘密兵器――ハーモニカ砲、発射!』
ピロロロロロ~~~~~ン♪
「「「ハーモニカの音色とともに極太レーザーが出たーーーーーっ!?」」」
突如としてシールドから奏でられた軽快なハーモニカの音色とともに、超高出力の光粒子ビームが発射!
ビームは虫歯社員たちを一瞬で吹き飛ばし、CEOの胸をダイレクトに撃ち抜いた!
ドガァァァァァン!!
「グワァァァァァッ!? なんだその隠し武装はぁぁぁっ!? シールドの裏に勝手にハーモニカ型の砲台を仕込むなアァァァァッ!?」
CEOが爆煙に包まれながら悲鳴をあげる!
「えっ……!? 私、こんな武装起動していませんよ!? ダ・ヴィンチさん、また私のシールドに勝手な改修を……!」
マシュが青ざめて叫ぶ!
だが、煙の中から立ち上がったCEOは、ボロボロになりながらも狂気の笑みを浮かべた!
「フハハハ……甘いぞカルデア! 我が社の技術力はこんなものではない! 出でよ、我が社が誇る最終兵器!」
CEOが空に向かってメガホンを掲げ、叫んだ!
「**覚醒せよ、ワイバーンーーーッ!!**」
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!
ネロの口腔内が不気味な紫色に染まり、次元のひずみから圧倒的な質量を誇る巨躯が降臨する!
それは、ドラゴンなどという生易しいものではない――某・小型ロボット作品に登場する、狂乱の超巨大殺戮兵器――**『キラードロイド・ワイバーン』**であった!
「キュオオオオオオオン!!!!」
金属音を響かせ、巨大な翼と凶悪なビーム砲を備えたキラードロイド・ワイバーンが、ネロの歯茎を踏みにじりながら咆哮する!
「な、なんですかあの巨大ロボットは!? ワイバーンって言っておきながら完全に『ダンボール戦機』のキラードロイドです!」
マシュの悲鳴が響く!
「クックック……! このキラードロイド・ワイバーンでお前たちをネロの歯もろとも粉砕してやるわぁぁぁ!」
絶対絶望の巨大ロボ降臨!
ネロの虫歯特異点を舞台に、かつてない超スケールのロボットバトルが幕を開ける!
はたして立香たちはこの危機を乗り越えられるのか!?
大爆爆笑の後半へ続く!
「キュオオオオオオオン!!!!」
ネロの右下奥歯に広がる特異点空間。そこに降臨した殺戮兵器『キラードロイド・ワイバーン』の巨体が、エナメル質の台地を揺らし、不気味な赤色レーザーを撒き散らす!
「フハハハハ! 見たかカルデア! 我が虫歯建設株式会社の誇る最終兵器・キラードロイド・ワイバーンの威力を! ネロの奥歯もろとも、お前たちを塵にしてくれるわ!」
CEOが高笑いを上げる!
「くっ……! ワイバーンと名乗りながら、見た目も殺傷能力も完全に『ダンボール戦機』の絶望的な敵役です!」
マシュがシールドを構えて身構えるが、ワイバーンの放つ凄まじい風圧に押し戻される!
「ええい、他社のプラモデルやゲームのパロディばかりで……尺が持ちません! こうなったら、こちらも『特撮の魂』で対抗するまでです!」
謎のヒロインXが前に踏み出し、銀色のメガホンを高く掲げた!
「**蒸着!! キャプテンギャバリオン・インフィニティ!!**」
その瞬間! どこからともなく、どこかで聴いたことのある神聖かつどこか呆れたような少女の声(キャストリア)によるナレーションが、空間全体に響き渡った!
『説明しよう! “蒸着”――それは、ギャバリオンシステム発動のコマンドなのだ! では、その超絶怒涛の蒸着プロセスを、もう一度最初からじっくり見てみよう!』
(※ここでBGMとともに一旦画面が暗転し、超スローモーションで蒸着プロセスが再再生される!)
『蒸着コマンドを受けた瞬間、臨界点を越えたエモルギーがメガホン内に凝縮された高濃度魔力と融合!』
「**蒸着!!**」(Xのドヤ顔カットイン!)
『わずか1ミリ秒でコンバットスーツへと投射成形され、コンプラのギリギリを攻めながら蒸着を完了するのだ!』
『ガチャコン! セイバー、アクティベート!』
メガホンから響き渡る重厚かつスタイリッシュな機械音声!
「「「ナレーションの演出が完全に昭和の『宇宙刑事』だし、音声のアナウンスのCVが私の声と同じ系統のキャラだからって、声優ネタで乗っかるんじゃないよーーーーーっ!!!」」」
マシュの魂の声優ネタツッコミが大爆発! 特異点の空間をビリビリと震わせる!
「ふっ……声優ネタのツッコミなど、インフィニティとなった私には届きません! プロテア、仕上げです! ところ構わず叫びますよ!」
ギャバリオン・インフィニティ(X)がメガホンをプロテアに向けた!
「**覚醒せよ、キングプロテアーーーッ!!**」
「……プロテア、覚醒する……!」
プロテアがまばゆい光を放ち、ネロの口内で超巨大化!
……と、その時である!
『シュッ! シュッ! ポッポー――――ッ!!』
突如として、空間の亀裂から黒煙を吹き上げながら猛スピードで突進してきたのは、どこかで見たことのある極彩色の超特急――**『無限列車』**!!
「なっ……!? 無限列車がなんでネロさんの歯の中に走ってくるのよーーーっ!?」
立香が目玉をひん剥く!
「今です! 合体(オーバークロス)ですよ、プロテア!」
ギャバリオン(X)が叫ぶ!
「**オーバークロス! キングプロテア!!**」
メガホンから、超ノリノリの合体アナウンスが響き渡る!
『キングプロテア、無限列車、オーバークロス合体しま〜す!!』
ガシャン! ガシャン! ガシャン!!
全5両編成の無限列車が空中へと跳躍し、パーツごとに見事な分解・変形を開始する!
『説明しよう! まずは客車の1号車と2号車がキングプロテアの武装へと変形! 1号車は3パーツに分解し、右腕のギガトンナックルと左腕のシンゴウシールドとなって完璧に合体! 2号車は高機動バックパックに変形し、背中へと装着!』
『さらに3号車と4号車は、外付けのマニューバスラスターユニットに変形してプロテアの両足へ合体! そしてメインの機関車が、超大口径ビームカノンに変形して右肩へドッキングだ!』
『――キングプロテア・パーフェクトモード!!』
「「「シンカリオンのオーバークロス合体のアナウンスと変形機構をそのまま移植するんじゃねえーーーーーっ!?!? 玩具化前提みたいな合体音ならすなーーーっ!!」」」
マシュのシンカリオンネタへの怒りの激怒ツッコミが炸裂する中、重武装を纏ったキングプロテア・パーフェクトモードが立ち上がった!
――ズドォォォォォン!!
「あがぁぁぁぁぁぁぁっ!??!!?」
その瞬間、外の世界(現実)でベッドに横たわっていたネロちゃまが、激痛で目玉を飛び出させてのけぞった!
「な、なんだこの激痛はぁぁぁっ!? 歯茎の中で巨人が暴れ回って、奥歯が踏み潰されているような地獄の痛みが走るぞぉぉぉっ!?」
「プロテアちゃん! 踏みしめるたびにネロちゃまの歯茎に激痛が走ってるよ! 気をつけて!」
立香が叫ぶ!
「……でも、プロテア、倒す……! 『パーフェクトグランクロス』ーーーッ!!」
ネロちゃまの痛みを一切顧みず、プロテアは右肩の機関車型ビームカノンと全身のスラスターを一斉開放!
『限界突破! パーフェクト・グランクロス・発射ぁぁぁぁぁ!!』
ズゴオォォォォォォォォォン!!!!!
圧倒的な質量の極太ビームが、キラードロイド・ワイバーンと虫歯建設株式会社のCEOを一網打尽に蒸発させた!
「グワァァァァァッ!? ロボットアニメと特撮のパロディが多すぎて処理しきれねぇぇぇぇぇっ!?」
爆煙とともにCEOとワイバーンは消滅! ネロの奥歯の特異点は見事に消滅したのだった!
【数時間後・カルデア医務室前】
特異点から無事に帰還した一行。
しかし、ネロちゃまは右頬を漫画のように超巨大に腫れ上がらせ、シクシクと泣いていた。
「うぅ……虫歯は治ったが……プロテアに踏み荒らされた歯茎が激痛で……余の美顔が台無しだ……」
サンソンに引きずられるようにして、歯医者(カルデア歯科室)へと連行されていくネロちゃま。
そして、医務室の廊下では――
「ヒロインXさん! キングプロテアさん!」
眼鏡をギラリと光らせたマシュが、手帳と「著作権法および声優ネタ自重ガイドライン」を手に、二人の前に立ちはだかっていた。
「いくらネロさんの虫歯を治すためとはいえ、宇宙刑事、ダンボール戦機、シンカリオン、鬼滅の刃のパロディを節操なく全部乗せして解決し、挙句の果てに患者の歯茎を踏み荒らすなど、カルデアの風紀委員として断じて許せません!」
「うぐ……! マシュさんの正論の説教が、ギャバリオンの装甲を突き破って痛いです……」(ヒロインX)
「プロテア……反省文書く……」(キングプロテア)
マシュの怒りのお説教の前に、正座して小さくなるXとプロテア。
「ははは……今回も大騒動だったね」
立香が苦笑いしながら夕空を見上げる。
「本当よ! もう虫歯の特異点なんてコリゴリだわ!」
ビュティが呆れ顔で頷く。
ネロちゃまの悲鳴と、マシュのお説教声、そしてハジケリストたちの笑い声が響き渡る中、カルデアのドタバタな一日は終わりを告げるのだった。
(第11話・完! 第12話へ続く!)