**第12話「なにわの特異点!ソースの香りと邪販売矢(前半)」**
「いいか北斎! ここは天下の台所・大阪! 東京のコミケとは一味違う、なにわの熱気とアグレッシブな買い手たちが集う同人即売会の戦場だ! 我らが描き上げた至高の新刊『ブーディカお母さんの極上胃袋おもてなし』と『皇帝ネロの甘々虫歯奮闘記』を売り捌き、前回の雪辱を果たすのだ!」
「いよっ! 童子、景気がいい気合だねぇ! たこ焼きの匂いが漂うこの戦場なら、アタイの筆先から溢れ出たブーディカの母性溢れる肉感と、ネロちゃまの腫れ上がった愛くるしい頬っぺたのスケッチも飛ぶように売れるって寸法さ!」
大阪インテックスで開催されている巨大同人即売会。その一角にある壁サークルにて、ハンス・クリスチャン・アンデルセンと葛飾北斎(お栄)は、机の上にうずたかく積まれた同人誌を前に、高笑いを上げていた。
前回の「ブーディカの体内特異点」と「ネロの虫歯特異点」の騒動に懲りるどころか、それをそのままネタにして同人誌を勝手に爆誕・即刷りし、大阪の地に持ち込んでいたのである!
「はいらっしゃい! 皇帝ネロの歯茎を踏み荒らすプロテアちゃんの秘蔵カットも載ってるよーっ!」
と、その時――!
『ドゴォォォォォォォォン!!!!!』
サークルの机が、凄まじい衝撃とともに真ん中から真っ二つに叩き割られた!
「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」」
舞い散る同人誌の紙吹雪の中、鬼の如き凄絶な怒りのオーラを纏った二人の美女サーヴァントが立ちはだかっていた!
「……アンデルセン。北斎。私のお腹の中を勝手に漫画にしただけじゃなくて……今度は『お母さんの極上胃袋おもてなし』ですって……?」
包丁と肉叩きハンマーを両手に構え、目がまったく笑っていないブーディカ!
「うむ! 余の可憐な(そして激痛に悶えた)姿を許可なく同人誌にして頒布するなど、皇帝の威信に関わる大罪! 今日こそ二人まとめて余の剣のサビにしてくれるわーーーっ!」
右頬の腫れがようやく引いたネロ・クラウディウス(ネロちゃま)が愛剣を抜いてブチ切れる!
「ひっ……! げ、原作者への取材費(ロイヤリティ)なら後で払うと言っただろう!?」
「ア、アタイは頼まれて絵を描いた絵師だからね!? 責任者はこのクソガキだよ!?」
お互いに責任を押し付け合いながら逃げ惑う作家陣!
しかし、惨劇が起きるよりも早く、空間全体が「不自然な赤黒い霞」に包まれ始めた!
ジュワァァァァァァ……!
空間に充満し始めるのは――甘辛く濃厚な「お好み焼きソース」と「たこ焼きソース」、そして香ばしい「串カツの二度づけ禁止ソース」の強烈な匂い!
「な、なんですかこの匂いは!? 鼻腔を直接刺激する、圧倒的なナニワのソウルフードの芳香です!」
追いかけてきたマシュがデシュールドを構えながら叫ぶ!
「警戒しろマシュ! 大阪インテックス全体が、超高濃度の魔力で『なにわ特異点』へと塗り替えられていくぞ!」
藤丸立香が指令室からのダ・ヴィンチちゃんの悲鳴を伝えながら警戒する!
「フハハハハ! 逃げられんぞカルデアのゴミクズども! そしてこの俺をコミケで煮え湯を飲ませたヒロインXぁぁぁっ!」
ド派手な金ピカの豹柄スーツに身を包んだ男――あの転売ヤーの**バイヤン**が、派手な爆煙とともにドヤ顔で登壇した!
「バイヤン!? お前、前回のグリオークの爆発で宇宙の彼方に吹き飛んだはずでは!?」
立香が驚愕する!
「ふっ……転売ヤーの執念を舐めるな! 俺は大阪の商魂と限定版の怨念によって何度でも蘇るのだ! 今日はこの大阪特異点の地で、お前たちを完全撃滅するために『究極のレア召喚』を行いに来た!」
バイヤンが両手を広げると、ソースの海が渦を巻き、怪しげな黒い自動販売機が不気味に立ち昇った!
「出でよ! 鬼○の刃の無限列車編や幻魔の力を強引にチャンプルーした、我が最強の刺客――**『幻魔の邪販売矢(ジャハンバイヤ)』**!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……!
自動販売機がギゴガゴと凶悪な変形を遂げ、巨大なキャタピラと無数の缶ジュース型ミサイルランチャー、そして『売り切れ』の赤ランプを怪しく点滅させる凶悪な幻魔ロボットへと化けた!
「ジャハハハハ! 飲み物を買おうとした客の百円玉を呑み込み、おつりを出さずに『売り切れ』ランプを点灯させる……これぞ最強の絶望なり!」
「「「地味だけどめちゃくちゃ腹立つ攻撃性のロボットが出てきたーーーーーっ!?」」」
立香、ビュティ、ヘッポコ丸の怒涛のツッコミが大阪の空に響き渡る!
バイヤンのリベンジ、そしてソースの香気漂うなにわ特異点の猛威!
はたして立香たちはこの大阪の地で、バイヤンと邪販売矢を倒すことができるのか!?
大爆笑とハジケの後半へ続く!
「ジャハハハハ! 泣け! 叫べ! 百円玉を飲み込まれた挙句、ボタンを押してもぬるい缶コーヒーしか出てこない絶望にひれ伏すがいい!」
凶悪な自販機型幻魔『邪販売矢』が、胸の『売り切れ』ランプを点滅させながら、激しい電子音とともに大量の缶ジュース型ミサイルを全方位へ連射する!
「きゃあぁぁぁっ! ミサイルの弾頭が全部『冷やし中華はじめました』の看板になってます! 脈絡がありません!」
マシュがシールドを構えて身を挺して防ぐが、ソースの芳香と爆風に押されて後退を余儀なくされる!
「くっ……! 大阪のソウルフード特異点と自販機幻魔のコンビネーション、想像以上のカオスだ……!」
立香が汗を拭った、その時――!
シュバッ!
閃光とともに空を切る二つの影!
その手に輝くのは……なぜか不気味かつ威厳に満ちた、あの名作和風アクションゲーム(鬼◯者)でおなじみの**『鬼の籠手』**!
「待たせたな! 天下無双の剣豪、宮本武蔵――幻魔退治と聞いて黙っていられず、新世界の串カツ屋から駆けつけたぞ!」
「そして、ブリテンの王アルトリア・ペンドラゴンです。……あちらのたこ焼きの屋台に並んでいたのですが、ソースの香りを汚す邪悪な気配を察知し、参戦いたしました!」
「「「武蔵ちゃんとアルトリアさん!? しかも手首に『鬼の籠手』装着してるーーーーーっ!?」」」
立香とビュティがハモって叫ぶ!
「ふっ……幻魔を倒して魂を吸い尽くすには、文明の利器(SF)と剣術の融合こそが不可欠! アルトリア、行きますよ!」
武蔵がニカッと笑って構えをとる。
だが、二人が手にした獲物は……どう見ても普通の日本刀や聖剣ではなかった!
アルトリアが掲げたのは、某・ロボットアニメに登場する巨大剣を人間の手持ちサイズにダウンサイジングした、二本柄連結型の超光束兵器――**『エクスカリバー・レーザー対艦刀(アンビデクストラスフォーム)』**!
そして武蔵が構えたのは、両手に眩い光刃を形成する二刀流――**『アロンダイトビームソード』**と**『カラドボルグ対艦ビームサーベル』**!
「「「武器のチョイスが完全に『ガンダムSEED』の対艦刀とビームサーベルじゃねえかーーーーーっ!?!? 鬼武者要素とガンダム要素をごちゃ混ぜにするなーーーっ!!」」」
マシュの魂の激怒ツッコミが大阪の空に炸裂する!
「問答無用! 騎士王の剣技、受けてみなさい!」
アルトリアがアンビデクストラスフォームのレーザー対艦刀を頭上で高速旋回させる!
ブンブンブンブブブブッ!!
ドゴォォォォォォォン!!
「な、なんだこの超巨大な光の竜巻はぁぁぁぁっ!?」
レーザー対艦刀の回転から生み出された超高圧のビーム竜巻が、なにわの空を突き破る!
「グワァァァァァッ!? 転売の利益がァァァァァッ!?」
高台でドヤ顔をしていたバイヤンが、竜巻の圧倒的な風圧によって一瞬で遥か彼方へと吹き飛ばされていった!
「続いて私だ! 天真爛漫、二天一流の極意――分身!!」
武蔵がアロンダイトビームソードとカラドボルグ対艦ビームサーベルをクロスさせると、なんと残像とともに八体に分身!
「カチカチカチ……!?(照準が絞れない邪販売矢)」
「切り刻む! 幻魔のコアごと、パルマフィオキーナでフィニッシュだぁぁぁっ!」
武蔵の本体と分身が一斉に肉薄! 二刀流の光刃で邪販売矢を十文字に切り裂いた直後、武蔵は左手を前に突き出し、掌から掌底破城砲(パルマフィオキーナ)の光束爆発を直接叩き込んだ!
ドガァァァァァァァァン!!!!!
「ジャハハハハ……!? 鬼の籠手とSFビーム兵器のチャンプルー攻撃……反則だろぉぉぉぉっ!?」
邪販売矢は自販機の形を保てなくなり、大爆発とともに跡形もなく消滅!
ソースの香気漂うなにわ特異点は光となって崩壊し、大阪インテックスには平和な同人即売会の熱気が戻ってきたのだった。
【特異点消滅後・インテックス大阪の裏手】
「……ふう、なんとか解決したね」
立香が安堵の息をつく。
だが、本当の地獄はここからだった。
正座させられたアンデルセンと北斎の前には、鬼の形相のブーディカとネロちゃまが立ち塞がっていた。
「……二人とも。無断で私やネロちゃんの同人誌を作った罰として、今日から一ヶ月間、カルデアの厨房の手伝いと、特製のお説教コースです」
「うむ! 余の可憐な姿を汚した罪、たっぷりと償ってもらうぞ!」
「ひぃぃぃっ! 許してくれブーディカお母さん!」(アンデルセン)
「アタイが悪かったからハンマーを下げてくれぇぇっ!」(北斎)
そして、その少し離れた場所では――
「アルトリアさん! 武蔵さん!」
眼鏡をギラリと光らせたマシュが、手帳と「サンライズ作品・カプコン作品のコンプラ整合性ガイドライン」を手に仁王立ちしていた。
「いくら特異点を解決するためとはいえ、鬼武者の『鬼の籠手』を装備しながらガンダムSEEDの『レーザー対艦刀』や『パルマフィオキーナ』を乱用するのは、著作権と世界観の混同において大問題です! 徹底的にお説教を行います!」
「うぐ……! マシュの正論の刃が、エクスカリバーより心に刺さります……」(アルトリア)
「あはは……串カツの二度づけ禁止くらい厳しい説教だな……」(武蔵)
マシュの厳格なお説教の前に、タジタジになって正座する二大剣士。
そんな大騒動の傍らで、喉の渇きを覚えたボボボーボ・ボーボボが、会場の隅に残っていた普通の自動販売機に百円玉を投入した。
「ふぅ、激しいハジケで喉が渇いたぜ。コーラでも飲むか」
ガトン……。
出てきた缶をパカッと開け、豪快に飲み干すボーボボ!
……しかし!
「ぶふぉっっっっっ!??!!?」
ボーボボが吹き出したのは、漆黒のコーラではなく……見るからにドロドロとした緑色の不気味な液体!
そう、それは某・テニス漫画でおなじみ、飲む者を即死(胃洗浄)へと追いやる伝説の激痛ドリンク――**『乾特製・野菜汁』**であった!!
「ぐあぁぁぁぁぁっ!? なんだこの味はぁぁぁっ!? 喉が、胃が、魂が腐食していくぅぅぅっ!?」
あまりの不味さと苦悶に、ボーボボが泡を吹いてその場に倒れ伏す!
そこへ、たまたま通りかかったマルハーゲ帝国の刺客である魔女風のハジケリストが嘲笑いながら現れた。
「ハッハッハ! 苦しめボーボボ! その隙に息の根を止めてやる――」
「これでも飲んでろぉぉぉぉっ!!」
倒れていたボーボボが、残りの『乾特製野菜汁』を激痛の勢いで魔女の口へ強引に流し込んだ!
ゴクッ……ごっくん。
魔女「……っ!?!?!?」
数秒の静寂の後――
魔女の顔面が緑色から紫色、そして漆黒へと目まぐるしく変化!
「お、お腹がぁぁぁぁぁぁっ!? 腸内環境が崩壊するぅぅぅぅっ!?」
魔女は両手でお腹を押さえ、目にも留まらぬ超高速のダッシュで会場の公衆トイレへと一直線に突撃!
ガラガラガッシャーン!!(トイレのドアが激しく閉まる音)
「「「敵がトイレに直行して自滅したーーーーーっ!?」」」
立香、ビュティ、ヘッポコ丸のズッコケツッコミが夕空に響き渡る!
お説教される作家陣と剣士たち、トイレから聞こえる魔女の悲鳴、そして倒れるボーボボ。
カオスと大爆笑に包まれた大阪の夜は、大盛況(?)のうちに幕を閉じたのであった!
(第12話・完!)