カルデアハジケまつり   作:騎士誠一郎

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奥義14 カルデアの焼肉奉行は厳しい〜〜〜ッ!でもそれがいい!

「……反省文の提出、お疲れ様でした。皆さんの反省の弁、しかと受け取りました」

カルデアの大会議室。

未だ少しお説教の余韻を残しつつも、マシュ・キリエライトがうずたかく積まれた反省文の山を整え、ふぅと小さく息をついた。

だが、その空気は依然として重い。

連日の体内特異点騒動やコンプラ無視の激闘、そして何よりマシュの 雷鳴のようなお説教の嵐を浴び続けた面々は、魂が口から抜けかけたような顔で長机に突っ伏していた。

「ぬ……ぬぅぅ……指が完全にトコロテンの押し出し機から出た直後みたいにふにゃふにゃだぬ……。文字なんて一生分書いたぬ……」

「黙れ天の助! 俺なんか『サテライトキャノンは喉の奥で撃ちません』って漢字で千回書いたんだぞ! おかげでパッチ族の伝統の舞すら忘れたわ!」

どんよりと淀んだ空気。

このままではカルデアの士気どころか、明日からの特異点修復業務にも支障が出かねない。

そこで立ち上がったのが、我らがマスター・藤丸立香であった!

「みんな、本当によく頑張った! マシュも連日のツッコミと風紀委員長業、本当にお疲れ様! そこでだ……今日はみんなの苦労をねぎらい、マシュのご機嫌を最高状態まで回復させるために、特別企画を用意したよ!」

立香がバッと広げたのは、カルデア大食堂の特別貸切手配書!

「**『カルデア決戦仕様・超特上カルビ&ホルモン無制限・大焼肉大会』**を開催します!!」

「「「やっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!」」」

死に体だった会議室が一瞬で歓喜の渦に包まれた!

アンデルセンはペンを投げ捨て、北斎は歓喜のあまり墨汁を壁にぶちまけ、ボーボボと首領パッチは「肉! 肉!」と謎のドジョウすくい踊りを開始する!

「えっ……ま、マスター? 私のご機嫌をとるためにそこまで……? ふふ、でも……ブーディカさんの特製タレで食べる焼肉なら、少し惹かれますね……」

先ほどまでの厳しい表情が和らぎ、マシュの頬がほんのりと桜色に染まる。

「よし! それじゃあ大食堂へGOだ!」

【カルデア大食堂・特別焼肉フロア】

ジュワァァァァァァァ……ッ!!

香ばしい胡麻油とニンニク、そして熟成肉が網の上で踊る最高の脂の香りが、広大な食堂全体に充満していた!

各テーブルには無煙ロースターが設置され、霜降りの特上カルビ、厚切りタン塩、新鮮なハラミ、プリプリのホルモンが山のように盛られている。

「うひょー! 網の上に肉の山だぜーっ! 片っ端からロースターにぶち込んで、レアでもウェルダンでも生でも食ってやるぜーッ!」

首領パッチがトングを二本構え、狂喜乱舞で肉を網へ投げ込もうとした――その瞬間!

バシィィィィィィンッッッ!!!

「**甘い!! 甘すぎますわ、この愚か者めがッ!!**」

「ぎゃああぁぁぁぁっ!?」

首領パッチの手からトングが吹き飛び、床へ転がった!

そこに立ちはだかっていたのは――愛の重すぎる蛇神サーヴァント・**清姫**!

そして、袖を力強く捲り上げ、神聖なる威圧感を全身から放つ聖女・**マルタ**の二人であった!

「き、清姫!? マルタさん!?? なぜ焼肉のテーブルにそんな仁王立ちで……!?」

立香が肉を咥えたまま固まる。

「マスター……そしてハジケリストの皆様。焼き肉とは、単に肉を火に通して口に運ぶ作業ではありません。肉の部位、カットの厚み、脂のノリ、そしてロースターの火加減……その全てを完璧にコントロールしてこそ、至高の『愛』が生まれるのです!」

清姫が扇子をバッと広げ、目が一切笑っていない完璧な笑顔で宣誓する!

「左様! 肉の命をいただく以上、半生で焦がしたり、網の上に放置して脂を落としすぎたりするのは食材への暴涜! 焼き加減を制する者こそが、カルデアの食卓を制するのです!」

マルタが拳をゴキゴキと鳴らし、聖女とは思えない眼光で網を見下ろす!

そう……彼女たちこそ、カルデアにおける絶対不可侵の双璧――**『焼肉奉行』**であったのだ!!

「な、なんだってー!? 焼き肉を自由に食べさせてくれない気かよ!」

ヘッポコ丸が叫ぶ!

「問答無用! まずは第一陣――『薄切りタン塩』!!」

清姫がトングをまるで名刀のように閃かせ、網の端(※火力が最も安定しているゾーン)へ綺麗に円を描くようにタン塩を並べていく!

「タン塩は中央の強火で焼いてはなりません! 端の遠赤外線でジワジワと温め、表面にうっすらと肉汁が浮き出た瞬間に返し、レモン汁を三滴! これ以外は一切認めませんわ!」

「次は『厚切り上カルビ』だッ!」

マルタがトングを疾風の如く動かす!

「網の中央、最強火力ゾーンに投下! 表面をサッと炙って脂の甘みを閉じ込め、裏返して5秒! 6秒以上焼いた奴は……鉄拳制裁(タラスクの刑)だぁぁぁッ!!」

「「「厳しすぎるーーーっ! 焼き肉の自由がねえぇぇぇぇッ!!」」」

立香、ビュティ、ヘッポコ丸の絶叫が響き渡る!

だが、清姫とマルタの完璧すぎる焼き加減によってお皿に盛られたタン塩とカルビを一口食べたマシュの目が、パァァァッと輝いた!

「んんん~~~っ!! 外は香ばしく、中はトロけるようにジューシーです! 焼き加減が完璧すぎて、嫌なことが全部吹き飛んじゃいます……!」

「マシュさん……! ふふ、喜んでいただけて何よりですわ! さあマスター、次はお口直しの焼き野菜(ピーマンとカボチャ)です! 焦がしたら承知しませんわよ!」

「熱い! 熱いよ焼肉奉行たちの執念が!」

マシュのご機嫌は最高の笑顔へと向かって回復していくものの、ロースターを挟んだ「焼き加減の絶対防衛線」を巡る戦いは、次第に熱狂と混乱の渦へと巻き込まれていくのだった!

はたしてハジケリストたちは、焼肉奉行の鉄の掟を打ち破り、思い思いの焼き肉を食べることができるのか!?

大爆笑の後半へ続く!

 

「いいですか!? ホルモンは皮目から焼くのが鉄則ですわ! 脂身から焼くなど言語道断、ロースターが火だるまになって脂の旨味が灰に帰してしまいます!」

「そこだ清姫! サンカクバラの表面に肉汁の汗が浮き出た! 返せッ! 今だ、ジャスト3秒で回収しろぉぉぉッ!」

ジュワァァァァァァッ! カンカンカンッ!

トングとトングが火花を散らし、網の上で寸分の狂いもない「絶対焼き加減エリア」を構築していく清姫とマルタ。

その手腕によって生み出される肉は確かに絶品であり、マシュの顔からはすっかり笑みが戻り、頬を緩ませてモグモグとカルビを頬張っていた。

「んん~っ、マッスルに染み渡る美味しさです……! 焼き加減が神業すぎて、もはや芸術の域ですね!」

マシュのご機嫌が直ったのは大戦果であったが……テーブルの端で小さくなっていたハジケリストたちとマスター立香のストレスは限界突破寸前であった!

「くそっ……タレをどっぷりつけた上ロースを白飯の上にバウンドさせて、ご飯ごと口に駆け込みたいのに……! 5秒以上焼いたらタラスクの刑だなんて、自由がなさすぎるぬーッ!」

天の助がトコロテンの涙を流す。

「ふッ……焼き肉とは自由を喰らう儀式。奉行どもの独裁政治もここまでだぜ」

不敵な笑みを浮かべたのは、我らが首領パッチ!

彼は背中に隠していた怪しげな急須から、極彩色の不気味な泡を立てる液体を、清姫とマルタの湯呑みへとこっそり注ぎ込んだ。

「おい首領パッチ、何すんだよ!?」

ビュティが焦って小声でツッコむ。

「フフフ……これはハジケ村に伝わる秘伝の猛毒お茶……その名も**『ペナル茶(ティー)』**だ!! どんな強者でも、一口飲めばお腹の中でハジケ粒子が大暴走を起こすぜ!」

「名前も見た目も絶対にヤバいだろそれ!!」

しかし、熱弁を振るう清姫とマルタは喉の渇きを覚えていた。

「ハァハァ……焼き肉の指導とは、命を削る聖戦(カタルシス)……! 喉が渇きましたわね、マルタさん」

「ああ、お茶でも飲んで呼吸を整えるとしよう」

二人は疑いもせず、首領パッチの仕掛けた『ペナル茶』を豪快に飲み干した!

ゴクッ……ゴクッ……。

「ふぅ……さて、次はハラミの焼き方ですが――」

ピキィィィィィンッッッ!!

その瞬間、二人の動きがピタリと止まった。

清姫の顔面が青から紫へ、マルタの眉間には見たこともないレベルの冷や汗が吹き出している!

「……っ!? な、なんですのこの……お腹の底から湧き上がる、天地開闢のような大洪水のごとき激痛は……っ!?」

「くっ……! 腹の中に……タラスクが暴れ回っているような超重圧……! な、不覚……!?」

「「**ト、トイレぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!**」」

二人は両手でお腹を抱え、ロースターの網を飛び越えて、光の速さで大食堂の公衆トイレへと一直線に突撃していった!

バーンッ!!(トイレのドアが爆音とともに閉まる音)

「「「行ったーーーーーっ!??!」」」

静まり返る大食堂。

首領パッチが勝ち誇った顔でトングを高く掲げた!

「ハハハハ! 勝った! 焼き肉の自由は俺たちの手にあるぜーッ! 野郎ども、宴の始まりだぁぁぁッ!」

「「「おーっ!!!」」」

そこからの焼き肉大会は、まさに混沌(カオス)そのものであった!

「ウェルダン超えの炭化カルビ! タレに漬けて白飯に3連バウンドだぁぁぁッ!」(立香)

「ホルモンを炎上させてファイアーダンスだぬーッ!」(天の助)

「高級ハラミをそのまま丸呑みです!」(ヒロインX)

焼肉奉行のいなくなったテーブルで、立香たちはタレを飛ばし、肉を焦がし、思い思いの「最高の焼き肉」を心ゆくまで堪能した。

マシュも「もう、皆さんったら……」と苦笑しつつ、自分で焼いたカルビを美味しそうに頬張り、大食堂は笑顔と歓声に包まれたのだった。

――約一時間後。

満腹になり、お腹をさすりながら幸せな余韻に浸っていた立香たちの前に、のっそりと影が落ちた。

そこには――

お腹の激痛をなんとか乗り越え、やつれつつも**全身から地獄の業火のような怒りのオーラ**を放つ清姫とマルタが仁王立ちしていた。

「……ふふふ……『ペナル茶』……ですのね……?」

目が血走り、扇子を握りつぶす清姫。

「聖女の腹を壊し、神聖なる焼肉の宴を混沌に陥れた罪……タラスクの百倍の鉄拳でお説教だぁぁぁッ!!」

腕まくりをして拳を鳴らすマルタ。

「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!??!」」」

~3時間後~

カルデアの大食堂には、正座させられて正体不明の正論お説教を叩き込まれる首領パッチ、天の助、そして巻き添えを喰らった立香たちの姿があった。

「うぅ……お腹はいっぱいになったけど、説教でお腹が痛いよ……」

立香が泣きそうな顔で呟く。

「ふふ、でも……とっても楽しい焼き肉でしたね、マスター!」

お説教の横で、マシュが心の底から満足そうな、最高の笑顔を浮かべていた。

(第14話・完! 第15話へ続く!)

 

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