「……ふぅ。まさか勇者シリーズの反省文5000枚の隣で、勇者シリーズ全作品の鑑賞会を徹夜でやらされるとは思わなかったよ……」
秋葉原特異点から帰還したカルデアの食堂。
藤丸立香はクマのできた目を擦りながら、特製栄養ドリンクを啜っていた。
「ぬぅぅ……反省文の紙を噛みすぎて、僕のトコロテンボディが紙ナプキンになっちゃったぬ……」
天の助がヨレヨレになりながらテーブルに突っ伏す。
「黙れクソトコロテン! 俺なんか反省文の角で頭をすりおろして『大根おろし』になるところだったぜ!」
首領パッチが包帯を巻きながら叫ぶ!
「あはは……みんな災難だったね。でも、これで秋葉原も無事だったし、キングプロテアも元通りになって一安心――」
『ガガガガガッ!! 警報! 警報! 緊急事態発生! 超大型サーヴァント・キングプロテアの『体内(胃袋)』にて、高密度の魔力暴走および局地特異点を検知! 体内空間が侵食されています!』
ダ・ヴィンチちゃんの焦迫したアナウンスが響き渡ると同時に、食堂の壁がグラグラと激しく揺れ動いた!
「な、なんだってー!? プロテアの胃袋の中に特異点が!?」
立香が跳び起きる!
「う……うう……マスター……お腹がすっごく……痛いのです……」
廊下から、目を潤ませてお腹を押さえた超巨大なキングプロテアが覗き込んでくる!
「大変ですマスター! キングプロテアさんの胃液の分泌が止まり、内部で異物による魔力グリッドが形成されています! 直ちに体内にレイシフトして原因を排除してください!」
マシュが手帳と胃薬を掲げて駆け込んできた!
「よし、みんな! キングプロテアの胃袋へレイシフトだッ!」
【キングプロテア・第一胃袋エリア】
ミクロ化レイシフトの眩い光が収まると、立香たちが降り立ったのは――
「「「ええーーーーーっ!?!? 胃袋の中に立派なサッカースタジアムがあるーーーーーっ!?!?」」」
ビュティとヘッポコ丸の絶叫が、胃壁にこだまさせた!
そこには、広大な青々とした芝生(※プロテアの胃壁細胞)が広がり、眩しいナイター照明と観客席まで完備された、超巨大なサッカー場が鎮座していた!
「ハッハッハッハ! よくぞ来たな、カルデアの白血球どもめッ!」
センターサークルに仁王立ちしていたのは、巨大な注射器と顕微鏡の角を生やした悪の科学者――**ドクターバイキン王**!
そしてその背後には、禍々しいオーラを纏ったノロウイルス、ピロリ菌、インフルエンザ、そして大腸菌たちの凶悪な面々が並んでいた!
「「「我ら、プロテアの胃袋を占領し、全身を腹痛で支配する悪の病原菌チーム――**『病原菌イレブン(バイキン・イレブン)』**なりッ!!」」」
「病原菌イレブンだとーーーーーッ!??!?」
「フハハハ! この特異点は超次元サッカールールによって守られている! 貴様らが我らを倒し、プロテアの腹痛を治したくば……サッカーで我がチームに勝利してみせよッ!」
ドクターバイキン王が不敵にサッカーボールを指先で回す!
「サッカーだと……!? 望むところだ! 俺様の熱きサッカー魂を見せてやるぜ!」
首領パッチがスパイクを履いて拳を握り締める!
「よし! カルデアの平和とプロテアのお腹を守るため、即興チーム結成だ! **『カルデアイレブン』**、出陣ッ!」
立香の号令のもと、カルデアイレブンがピッチに勢揃いした!
* **FW(フォワード):** 藤丸立香、首領パッチ
* **MF(ミッドフィールダー):** ボーボボ、天の助、ヘッポコ丸
* **DF(ディフェンダー):** ビュティ、マシュ・キリエライト
* **GK(ゴールキーパー):** クー・フーリン(ランサー)
「へっ、サッカーだろうが何だろうが、俺の『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』でボールごとゴールにぶち込んでやるぜ!」
キーパーグローブをはめたクー・フーリンが不敵に笑う!
「いいですか皆さん! これはただのサッカーではありません、超次元超武闘派サッカー(某・イナズ◯イレブン)のノリです! 必殺タクティクスと必殺技の応酬になります、気合を入れていきましょうッ!」
マシュが審判の笛を握り締めながらチームを鼓舞する!
ピピーーーッ!!
胃袋スタジアムに響き渡るキックオフの笛!
プロテアの体内を舞台にした、過去最大の超次元体内サッカーバトルの火蓋が切って落とされた!
果たしてカルデアイレブンは、病原菌イレブンの凶悪な必殺技を破り、プロテアのお腹を治すことができるのか!?
超ハイテンションとカオスの後半へ続く!
「ハッハッハ! 走れ病原菌ども! カルデアのヌルい白血球どもを胃液の底へ叩き落としてやるのだッ!」
ドクターバイキン王のダミ声が、キングプロテアの胃袋スタジアム全体に響き渡る!
ピピーッ!
前半開始直後から、試合の主導権を握ったのは圧倒的な感染力を誇る「病原菌イレブン」だった!
フォワードのピロリ菌が、胃壁の摩擦を無視した高速ドリブルでミッドフィールダーのヘッポコ丸と天の助をあっさりと抜き去っていく!
「ぬわぁぁぁぁっ! 相手のドリブルがぬるぬるしすぎて、僕のトコロテンボディじゃ引っかからないぬーッ!」
天の助が芝生の上を無様に滑っていき、胃液のプールへダイブ!
「甘いぞカルデア! これぞ我がチームの必殺タクティクス――**『ピロリ・ヘリコバクター・クラッシュ』**だぁぁぁッ!」
ピロリ菌が激しく身体を回転させると、ピッチ全体に毒々しい紫色の旋風が吹き荒れた!
ボールはど禍々しい魔力を纏い、まるで巨大なドリルと化してゴールへと急降下していく!
「くっ! 必殺シュートが来るぞ! クー・フーリン、頼んだ!」
立香が叫ぶ!
「へっ! キーパーを舐めるなよ! 俺の守備力はカルデア一……いや、この胃袋の中で最強だッ! **必殺キーパー技・『ゲイ・ボルク・ガルド』**ッ!!」
クー・フーリンがゴール前でド派手に跳躍!
赤く輝く魔槍を黄金のゴールキーパーグローブに持ち替え、強烈な一撃でシュートを弾き返そうとする――!
ズドォォォォォン!!
「なッ!? ぐわぁぁぁぁっ!??!」
しかし、必殺シュートの圧倒的な「胃炎エネルギー」の前に槍のバリアが粉砕され、クー・フーリンはゴールネットごと後ろの胃壁へと激突!
ピピッー! 『ゴール! 病原菌イレブン、先制! 1—0!』
「「「クー・フーリンが即死したーーーーーっ!?!?!?」」」
ビュティと首領パッチの叫び声が響き渡る!
「フハハハ! 我ら病原菌イレブンのシュートは、胃壁の粘膜を直接攻撃する毒シュート! どんな英雄だろうと防ぐことは不可能なのだッ!」
ドクターバイキン王が高笑いを上げる。
試合は後半戦へと突入しても病原菌イレブンのペース。
次々と繰り出される超次元必殺技――『ノロ・エピデミック・パス』や『大腸菌・デスゾーン』の前に、カルデアイレブンは失点の危機に何度も晒され、まさにギリギリの攻防戦を強いられていた!
「くそっ……! このままじゃプロテアのお腹が破壊されて、僕たちも胃液で溶かされちゃうよ!」
息を荒げる立香。
その時、頭にタンコブを作ってゴール前から這い上がってきたクー・フーリンが、ニヤリと不敵で邪悪な笑みを浮かべた。
「……おいマスター。超次元サッカーってのはな……『技の名前にインパクトがあって、審判が見てなけりゃ何をやっても勝ち』なんだろ?」
「え? いや、まあイナズ◯的な世界の基本理念としてはそうかもしれないけど……って、クー・フーリン、その目は何かロクでもない猿知恵を思いついた目だぞ!?」
クー・フーリンはポケットから怪しげな「胃薬」と「激辛キムチ」を取り出すと、首領パッチとボーボボに耳打ちした。
「よし野郎ども、反撃開始だ! 必殺タクティクス――**『ランサーの猿知恵・超胃酸逆流(リバース)アタック』**いくぞッ!」
「オウよッ!!」
クー・フーリンがボールを拾い上げると、なんとキーパーの分を弁えず相手陣地へ猛ダッシュ!
そこへ首領パッチが「激辛キムチ」をボールに塗りたくり、ボーボボが自身の鼻毛をボールにぐるぐる巻きにして巨大な爆弾へと変貌させた!
「な、なんだあのルール無用の凶悪なボールはぁぁぁっ!?」
病原菌イレブンが青ざめる!
「食らいやがれぇぇぇッ! 必殺・合体シュート――**『ファイヤー・バスター・鼻毛・ド根性・インペリアル・スパイラル・ゲイボルク』**アァァァァッ!!」
ドバアァァァァァァンッッッ!!!!
もはやサッカーボールとしての形を留めていない「激辛&鼻毛&魔槍」の超質量塊が、音速を超えて敵ゴールへ一直線!
「ひぇぇぇぇっ!? 守備技・『抗生剤バリア』――」
病原菌イレブンのゴールキーパーが防ごうとするも、キムチの激辛成分とボーボボの鼻毛カオスパワー、そしてクー・フーリンの強引すぎる推進力の前に一瞬でバリアが蒸発!
ズドババババババババッ!!!!
ゴールネットどころか、敵の病原菌イレブン全員をまとめて巻き込みながら、ボールは胃袋スタジアムの彼方へと爆破飛散していった!
ピピッー! 『ゴール! 100—1でカルデアイレブン、超大逆転勝利ー!!』
「「「得点の加算方法も滅茶苦茶じゃねえかーーーーーっ!?!?!?」」」
敵チームは爆風とともに消滅し、キングプロテアのお腹の痛みが一瞬ですっきりと引き、体内特異点は完璧に消滅したのだった!
【特異点修復後・カルデア救護室前】
「……ふぅ! クー・フーリンの無茶苦茶な猿知恵のおかげで、プロテアのお腹も治って無事に全員生還できたね!」
立香が胸を撫で下ろす。
だが――。
廊下の先から、ズシン……ズシン……と重苦しい足音が近づいてきた。
そこに立っていたのは……
冷たく光る眼鏡を掛けた**マシュ・キリエライト**。
般若のような笑みを浮かべて蛇のオーラを纏う**清姫**。
そして、愛用のタペストリーを固く握り締め、拳の関節を『ボキボキ』と鳴らす**マルタ**の三人であった。
「「「……クー・フーリンさん。そしてマスター」」」
「「「ひっ……!??!」」」
クー・フーリンと立香の背筋に激痛のような冷や汗が走る!
「聞いていましたよ……超次元サッカーに託けて、キムチを塗りたくったボールを投げつけ、鼻毛で暴れ回り、某・超次元サッカーアニメの必殺技名を適当に合体させてルールを壊滅させたそうですね……?」
マシュの手帳がメキメキと音を立てる。
「あらあら……プロテアさんの胃の中でそんな不衛生で暴力的なハジケ行為をなさるなんて……夫(マスター)を唆した罪、この清姫がじっくりと『愛の鉄拳焼き』で清めて差し上げますわ♡」
清姫の瞳から光が消える!
「手加減なしよランサー……! サッカーとは清き汗と友情のスポーツ! それを猿知恵のラフプレイで汚すとは、主の教えに反する悪行! 聖拳の洗礼を受けなさいッ!!」
マルタの鉄拳から聖なるオーラが爆発する!
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!? お前らサッカーのルール知らねえだろ! 助けてくれマスターーーーッ!!」
クー・フーリンが脱兎のごとく逃げ出すが、清姫の炎とマルタの音速ストレート、そしてマシュの厳格なお説教シールドに挟まれ、一瞬で捕獲された!
「あ、あはは……まあ、プロテアのお腹が治ったから……一件落着、かな……?」
凄惨な「お説教&鉄拳制裁」の現場からそっと目を逸らし、立香は引きつった笑顔で苦笑いするしかなかったのだった。
(第18話・完! 第19話へ続く!)