「いいか藤丸、ゲームってのはなぁ……魂の削り合いなんだよ!」
カルデアのマスター居住区。
畳の上にどっかりと座り込んだボボボーボ・ボーボボが、レトロゲームのコントローラーを凄まじい連打速度で叩いていた。画面に映っているのは、なぜかファミコン風のドット絵で描かれた『マシュの冒険』という謎のクソゲーである。
「いや、魂削る前にコントローラーの十字キー折れかかってますからね!? っていうかボーボボさん、それどこから持ってきたソフトなんですか!?」
藤丸立香が身を乗り出して突っ込む。その隣では首領パッチがテレビの裏側でコンセントを齧り、天の助がカセットの端子に息を吹きかけすぎて唾液まみれにしていた。
「ぬぬ~! 風を吹き込めばバグが直る~!」
「直るか! ショートして煙吹くだろ!」
ビュティが頭を抱えて叫ぶ中、部屋の隅でパイプ椅子に座っていたマシュ・キリエライトが、ふいに「……うっ」と胸を押さえて倒れ込んだ。
「先輩……なんだか、お腹の奥が……すごく熱くて、重いです……」
「マシュ!?」
立香が慌てて駆け寄る。その瞬間、カルデアの緊急警報が赤く点滅し、通信モニターにダ・ヴィンチちゃんの青ざめた顔が映し出された。
「大変だ藤丸くん! マシュちゃんの体内に……前代未聞の超極小規模『霊峰級・生体特異点』が発生したよ!」
「「「体内に特異点ーーー!?」」」
立香、ビュティ、そして通信のロマニがハモる。
「先日の『原稿用紙特異点』での口腔内爆発と、ハジケリストたちが持ち込んだ謎のゲームデータが奇跡の悪魔的融合を起こしたんだ!」
ダ・ヴィンチちゃんが汗を拭いながらキーボードを連打する。
「マシュちゃんの胃袋から小腸にかけての空間が、完全に『不思議のダンジョン』化している! さらに悪いことに……マシュちゃんの生体データとゲームのクリア条件が同期しちゃってるんだよ!」
「同期……って、どういうことだよ!?」
「つまり……**【制限時間1時間以内にダンジョンをクリア】**しないと、マシュちゃんの生体活動が停止して、内部の特異点ごと**【全員ゲームオーバーで消滅】**する!!」
「「「ナ、ナンダッテーーーーーーっ!?」」」
あまりの衝撃展開に、ロマニは持っていたドーナツを落とし、首領パッチはショックのあまり自分の頭のトゲを全部吹き飛ばした。
「そんな……1時間だなんて! マシュを助けるにはどうすればいいんだ!?」
立香が叫ぶと、ボーボボがアフロから『ミクロ化光線銃(※おもちゃの水鉄砲)』を取り出した。
「案ずるな少年。マシュの口から飛び込んで、胃袋のボスを殴り倒せば解決だ!」
「安直だけどそれしかないのかよ! よし、ミクロ化してマシュの体内へ突入だ!」
「待ちなさい! その限定的かつ絶望的なミッション、私たちが手伝うわ!」
「……プロテアも、マシュさんを助ける……!」
突然、部屋の扉を蹴破って現れたのは、青いマフラーをたなびかせる『セイバーの天敵』謎のヒロインX! そして、本来なら巨大すぎて室内に入れないはずが、なぜか等身大サイズ(それでもでかい)に縮小した超巨大サーヴァント、キングプロテアだった!
「X!? プロテア!? なんで君たちが!?」
立香が目を丸くする。
Xはジャキッとエクスカリバー・モルガン風のライトセーバーを構え、キングプロテアは愛らしい笑顔で力強くガッツポーズを作った。
そして、二人は息をぴったり合わせて熱く叫んだのである!
「「私たちの協力プレイで、マシュさんをノーコンティニューでクリアしましょう!!」」
「名フレーズっぽく言ってるけど、ゲームオーバーになったらコンティニュー以前に全滅するんだよ!」
立香の怒涛のツッコミが飛ぶ!
ミクロ化光線(※ボーボボの水鉄砲から出た謎のピンクの液体)を浴びた立香、ボーボボ、首領パッチ、天の助、ビュティ、ヘッポコ丸、X、キングプロテアの一行は、小指の先ほどのサイズに縮小。
「あーん」と口を開けたマシュの口腔内へとダイブした!
ゴクン……!
「うわあぁぁぁぁぁっ!?」
食道をジェットコースターのように滑り落ち、たどり着いたのは――怪しく蠢く生体組織の暗黒大迷宮だった。
壁はピンク色の胃粘膜でできており、足元からは脈動する重低音が響いてくる。天井からは粘着性の消化液がポタポタと滴り落ち、道が歩くたびに勝手に再構築されていく。
「な、なにこれ……!? 人間の体内なのに、本当にランダム生成される『不思議のダンジョン』みたいになってるわ!」
ビュティが壁に抱きつきながら叫ぶ。
「ぬぬぬ~! 胃酸の海だ! 私のトコロテンボディが絶妙に溶けて、いい感じのジュレになってしまうではないか~!」
天の助がプルプルしながら消化液に浸かっている。
「浸かってんじゃないわよ! 溶ける前に上がってきなさい!」
「マスター、前方に敵影です!」
Xがライトセーバーを構える。
暗闇の奥から現れたのは、胃粘膜と白血球が融合してできた謎のモンスター群――『イサン・ドッグ』と『ハジケ胃粘膜ゾウ』!
「命のタイムリミットまで、あと55分!!」
通信画面のダ・ヴィンチちゃんがカウントダウンを告げる。
「よし! プロテア、X、ボーボボ! 一気に突き進むぞ!」
立香が指を突き出して叫ぶ!
「了解です! この階層の敵は、私の『愛(物理)』で踏み潰します!」
キングプロテアが等身大の足でドスンと踏み込み、胃粘膜モンスターを一網打尽にしていく!
「セイバー絶対殺すマンの私に隙はありません! 切り刻みます!」
Xの二刀流が閃き、道を切り開く!
だが、ダンジョンの深部へと進むにつれ、壁の脈動はさらに激しさを増し、迷宮の構造はより狂気を孕んだ「ハジケ空間」へと変弾していった。
「ふははは! 甘いぞカルデア! この『マシュ体内ダンジョン』の最奥には、お前たちの想像を絶する『真の恐怖』が待ち受けているのだ!」
迷宮の壁から、不気味な顔が浮かび上がる。マルハーゲ帝国の新たな刺客の影!
そして、残り時間は刻一刻と削られていく――!
「くっ……1時間以内に最深部のボスを倒さなきゃ、本当にマシュが消滅しちまう! 急ぐぞみんな!」
「フッ……焦るな少年。ハジケリストの胃袋攻略法を見せてやる」
ボーボボが静かにアフロへ手を伸ばした。
マシュの命を懸けた、1分1秒を争う体内攻略レース!
狂気とタイムリミットが交錯する後半へ――!
「タイムリミットまで、あと十五分だよ! 急ぐんだ、藤丸くん!」
通信越しに響くダ・ヴィンチちゃんの悲鳴にも似た叫び。
胃粘膜の迷宮と小腸の螺旋階段を疾走し、立香たちがたどり着いたのは――マシュの心臓部。だが、本来なら生命の脈動を刻むはずの聖域は、赤黒いノイズと禍々しい時空の歪みに覆われた、まさに「魔空空間」のような狂気の異次元と化していた!
「な、なにこれ……! 心臓の中なのに、宇宙みたいな暗黒空間になっちゃってるじゃないの!」
ビュティが叫び、ヘッポコ丸がガス弾の警戒態勢をとる。
「ぬ〜! 血管がまるで異次元のハイウェイだ〜!」
天の助が明後日の方向を指差した。
その異空間の最奥、暗黒のプラズマが渦巻く中心から、ぬくぬくと巨大化する影が立ち上がる。紫色の巨大な王冠をかぶり、手にバイキン槍を握った巨大な悪魔――『ドクターバイキン王』だ!
「ハハハハハ! 遅かったなカルデアのゴミクズども! このドクターバイキン王様が放つ『超絶毒素バイキンガス』により、マシュの心臓はすでに麻痺しつつある! あと十分で、この体内ダンジョンは崩壊し、お前たちもろともゲームオーバーだ!」
ドクターバイキン王が槍を掲げると、部屋いっぱいに赤紫色の毒ガスが噴出!
「くっ……! 息が……マシュのバイタルが急速に低下していく!」
立香が胸を押さえて膝をつく。
その時――沈黙を守っていた謎のヒロインXが、懐から突如として銀色に輝く『特製メガホン』を取り出した。そして、ベルトのホルダーから単一乾電池のような謎のキーアイテムを抜き差しし、メガホンにカチリとセットする!
「……やむを得ません。マシュさんの命と、この世界(ゲーム)の平和を守るため、私の真の姿を解禁します!」
Xはメガホンを天にかざし、朗々と叫んだ!
「**蒸着!!**」
『コンプリート! キャプテン・ギャバリオン!!』
まばゆい銀色の光がXを包み込む! 通信画面のダ・ヴィンチちゃんが「ここで解説に入らせてもらうよ!」と実況を始めた。
「説明しよう! 謎のヒロインXが『蒸着』と叫ぶと、コンバットスーツ形成粒子がわずか0.05秒で全身に電着! 銀色に輝く宇宙ハンター『キャプテンギャバリオン』へと超進化したのだ!」
光の中から現れたのは、全身を銀色の宇宙合金鎧で包み、バイザーがピキーンと光るX――いや、キャプテンギャバリオン!
「なんなのその特撮ヒーローみたいな演出と解説はーーーーーっ!?」
立香とビュティのツッコミがハモる!
しかしギャバリオン(X)は動じない。銀色のメガホンを構え、隣に立つキングプロテアに向かって叫んだ!
「覚醒せよ、キングプロテア! 本来の巨大なる姿を解き放つのです!」
「……うん! プロテア、おっきくなる……!」
プロテアの体が眩い光とともに急成長! 等身大サイズから、心臓の魔空空間を埋め尽くすほどの超巨大怪獣サイズへと巨大化した!
さらにギャバリオン(X)は手元のメガホンを「カシャカシャッ!」と複雑に変形させ、超ハイテクな『銀色の宇宙バイク』へと変貌させた! そのままプロテアの頭上へと跳躍し、バイクごとプロテアの頭部アンテナへガチリと装着(ドッキング)!
「ドッキング完了! プロテア・ギャバリオンモード、起動!!」
「頭にバイク乗せたーーーーーっ!? 合体の仕方が雑すぎるだろ!!」
ヘッポコ丸の魂のツッコミ!
「おのれ、小細工を! 出でよ、バイキン軍団!」
バイキン王が叫ぶと、無数の雑魚バイキンたちが群れをなして襲いかかる。
「一瞬で散らしなさい! 【ギャバリオンブレード】!!」
ギャバリオン(X)が銀色の光剣をひと振りすると、放たれた巨大な三日月型の斬撃がバイキン軍団を丸ごと一閃! ドカァァンと大爆発を起こして全滅させた!
「残るは貴様一人です、バイキン王! プロテア、ファイナルアタックです!」
「……うん! みんなの想いを、光に変えて……!」
プロテアとギャバリオン(X)が、左右の手首を交差させ、腕を十字に組む!
そのポーズは……どう見ても伝説の光の巨人の『あの光線』!
「「**グランドエモーショナルバーストーーーッ!!**」」
ジュワァァァァァァァン!!!!!
腕から放たれたのは、見事なまでに青白く輝く純度100%のスペシウム光線!
極大のビームが魔空空間を切り裂き、ドクターバイキン王を真っ正面から貫いた!
「グワァァァァァァァッ!? 発射ポーズと光線が完全にウルトラ○ンじゃないかぁぁぁぁぁッ!?」
バイキン王の悲鳴とともに、体内ダンジョン全体が眩い光に包まれる!
『GAME CLEAR!』
電子音が響き渡り、空間が急速に崩壊を始めた。
「脱出するぞーーーっ!」
ボーボボがアフロから取り出した非常用脱出ロケットに全員が飛び乗る!
――ポンッ!!
「「「ぶはっ!?」」」
次の瞬間、立香、ヘッポコ丸、ビュティの三人は、カルデアの畳の上へと勢いよく排出された。
「はぁ……はぁ……出られた……!」
立香が息を整える。
隣を見ると、目を覚ましたマシュが「……あれ? なんだかすっきりしました」と首をかしげていた。体内の特異点も消滅し、バイタルは完全に正常だ。
ホッとしたのも束の間、立ち上がった立香、ヘッポコ丸、ビュティの三人は、すうっと息を合わせ、カルデアの天井を突き破らんばかりのハモリで叫んだ!
「「「**特撮とアニメのパロディを怒涛の勢いで詰め込んで強引にクリアするんじゃねえぇぇぇぇぇーーーーーッ!!!!**」」」
(第4話・完!)