「フハハハハハ! 見よ、ファラオの新たなる余興を! 我が威光と悪魔の戯れが融合せし、完璧なる同人原稿の完成である!!」
カルデア地下の娯楽室にて。
王冠を眩しく輝かせたオジマンディアスが、高らかな笑い声とともに一冊の出来立てホヤホヤの原稿用紙(同人誌)を机に叩きつけた。
「ひゃっはー! 最高ですねぇ、ファラオ! 先日の『マシュちゃんの体内ダンジョン事件』のレポートを元に、今度は対象を『聖女ジャンヌ・ダルク』に置き換えて描いてみましたよ! 題して『聖女の体内は生体迷宮~口蓋垂(のどちんこ)を撃破せよ~』! 爆発的に売れること間違いなしです!」
ハサミをシャキシャキと鳴らしながら、怪しい笑みを浮かべるメフィストフェレス。
だが、彼らは完全に忘れていた。カルデア内にはいまだ『ハジケ粒子』が濃密に残留しており、妄想や原稿がそのまま現実に干渉するという悪夢のジンクスを!
――ゴゴゴゴゴゴ……!!
「な、なんですかこの凄まじい魔力反応はぁぁぁ!?」
同人誌から溢れ出た邪悪なピンク色の光が、カルデアの廊下を駆け抜けていく!
「―—警報! 警報! 聖女ジャンヌ・ダルクの体内に、超危険度級の『口腔内生体特異点』が発生! 繰り返す、ジャンヌの口の中がダンジョン化した!!」
指令室に響き渡るダ・ヴィンチちゃんの悲鳴。
ロマニ・アーキマンは落としたドーナツを踏んづけながら、モニターの数値を二度見した。
「また体内ダンジョンかよぉぉぉ! しかも今度はジャンヌの口の中だって!? オジマンディアスとメフィストフェレスが書いたクソ同人誌のせいで、ジャンヌの口腔内構造が完全に組み換えられてるよ!」
「先輩……! ジャンヌさんが大変です!」
マシュ・キリエライトが指をさす。
指令室の特設ベッドの上では、本来の聖女であるジャンヌ・ダルクが「あ、あ~ん……」と口を開けたまま、意識を失って白目を剥いていた。そのお口の奥からは、禍々しい暗黒のオーラと「デロンデロン」という不気味な生体音が漏れ出している。
「あわわわわ! ジャンヌの口の中が……まるで『ラストダンジョン』みたいになってるわよーッ!?」
ビュティが叫ぶ。
「説明しよう!」
通信画面のダ・ヴィンチちゃんがメガネを光らせる。
「ジャンヌの口腔内は、喉の奥に鎮座する**【口蓋垂(のどちんこ)】**がラスボスとして君臨する超高難易度ダンジョンと化している! 制限時間内にこの口蓋垂ボスを撃破しなければ、ジャンヌは永遠にお菓子も食べられず、声も出せないまま特異点ごと消滅する!」
「「「そんなバカなーーーっ!?」」」
藤丸立香、ビュティ、ヘッポコ丸のツッコミがハモる!
「フッ……聖女の口の中か。面白ぇ、俺の鼻毛で喉の奥を突っついてやるぜ!」
ボボボーボ・ボーボボがアフロから『巨大な耳かき』を取り出す。
「喉突っついたら吐くだろ! 余計悪化させるな!」
立香の即座のツッコミ。
「待ちなさい! 聖女の尊厳と喉の平和を守るため、今回もこの私が一肌脱ぎます!」
ジャキーン! とライトセーバーを構えて現れたのは、コンバットスーツ(ギャバリオン)の予備パーツを装着した**謎のヒロインX**!
「そして、私も行きます! ジャンヌさんの口の中を荒らす不届き者は、選定の杖で徹底的に叩き潰します!」
選定の杖をグルグル回しながら、やる気満々で並び立つ**アルトリア・ペンドラゴン(キャストリア)**!
二人は顔を見合わせると、バシッとキメポーズを作って叫んだ!
「「私たちの最強協力プレイで、ジャンヌさんの口腔内ダンジョンをノーコンティニューでクリアしましょう!!」」
「またその決めゼリフか! しかもキャストリアまで乗っかるな!」
立香のツッコミが冴え渡る!
ミクロ化光線を浴びた立香、ボーボボ、首領パッチ、天の助、ビュティ、ヘッポコ丸、そしてXとキャストリアの一行は、ジャンヌの開かれた口の中へとダイブした!
「うわあぁぁぁぁぁっ!?」
白い歯の城壁を潜り抜け、たどり着いた舌の上の世界。
そこは、ピンク色の粘膜が波打ち、味蕾(みらい)が不気味な異形の花のように咲き誇る、おどろおどろしい生体迷宮だった!
「な、なにこれ……! 舌の上なのに、まるで湿地帯のダンジョンじゃない!」
ビュティが悲鳴をあげる。
「ぬぬぬ~! 唾液の海ぬ! 私のトコロテンボディが聖女の唾液で浄化されてしまうぬ~!」
天の助がプルプルしながら白光を放ち始めている。
「浄化されてんじゃねえよ! さっさと進むぞ!」
奥へと進む一行の前に、粘液から生成されたモンスター群――『シタノウエ・ゾウ』と『ハジケ虫歯菌』が立ち塞がる!
「ふはは! ここは通さんぞ! ジャンヌの口蓋垂様は我ら虫歯菌軍団が守る!」
「邪魔です!『協力プレイ』の邪魔をする敵は、まとめて一滅!」
謎のヒロインXの二刀流が閃き、ライトセーバーの電子音が響く!
「魔術行使! 聖女の唾液を弾くバリアを展開します!『希望のカリバーン』!!」
キャストリアが杖を掲げると、美しい青い魔術陣が展開し、襲いかかる粘液モンスターたちを容赦なく吹き飛ばしていく!
「おお! Xとキャストリアのコンビネーションが凄まじい!」
立香が感嘆の声をあげる。
だが、ダンジョンの最奥――咽頭(いんとう)の巨大な門の向こうから、凄まじい重低音と地鳴りのような「プルプル」という振動が伝わってきた。
「見ろ……あれが、このダンジョンの真の支配者……!」
頭上を見上げた一行が目にしたのは、天井(軟口蓋)から巨大な振り子のようにぶら下がり、邪悪な赤い目をギラつかせた超巨大な怪物――**【魔王・口蓋垂(のどちんこ)】**の姿だった!
「ギニャーッハッハッハ! よくぞ来たなカルデアの虫ケラども! この私を倒さねば、ジャンヌは一生『おえっ』となり続けるのだ!」
「「「ラスボスがダイレクトすぎるだろーーーーーっ!?」」」
制限時間はあとわずか!
聖女の喉の奥で繰り広げられる、前代未聞ののどちんこ攻略戦!
大爆笑と狂気の後半へ――!
「ギニャーッハッハッハ! 無駄だ無駄だ! この『魔王・口蓋垂(のどちんこ)』の振り子運動による絶対防壁を破る術など存在せん! ジャンヌの咽頭反射(おえっとなるやつ)を誘発させ、お前たちを胃酸の海へ引きずり込んでやるわ!」
天井から巨大な振子のように揺れる魔王・口蓋垂が、粘液の衝撃波を全方位に放つ!
粘着質の波が舌の上の湿地帯を呑み込み、立香たちは足を取られて体制を崩した。
「くっ……! なんて理不尽かつダイレクトな攻撃なんだ! このままだとジャンヌの咽頭反射が限界を迎えて、全員まとめて吐き出されて全滅するぞ!」
立香が必死に叫ぶ。
「ぬぬ~! 私のトコロテンボディが喉の奥に引っかかって、さらに『おえっ』を加速させているぬ~!」
「引っかかってんじゃねえよ! さっさと奥から退きなさい!」
ビュティの叫びが響き渡る。
その狂気と混沌の渦中、謎のヒロインXが静かに銀色のメガホンを構え、ホルダーから単一乾電池型のキーアイテムをカチリとセットした。その瞳には、銀河を背負うヒーローの熱き光が宿っている。
「……やむを得ません。聖女の喉の平和と、ノーコンティニュークリアのために……二度目の特撮(ハジケ)を解禁します!」
Xはメガホンを高く掲げ、朗々と叫んだ!
「**蒸着!!**」
『コンプリート! キャプテン・ギャバリオン!!』
まばゆい銀色の光が口腔内を包み込み、わずか0.05秒でコンバットスーツを纏った宇宙ハンター『キャプテン・ギャバリオン』が誕生する!
「ふっ……これで終わりではありません。キャストリア、私の声に魂を委ねなさい!」
ギャバリオン(X)がメガホンをキャストリアに向け、スイッチを押し込んだ!
「**覚醒憑依せよ、キャストリアーーーッ!!**」
「えっ……えええーっ!? ひゃああああっ!?」
メガホンから放たれた虹色の光線がキャストリアを直撃!
キャストリアの身体が光の粒子となり、ギャバリオン(X)の胸の装甲へとスルスルと吸い込まれていく!
二人の魔力と存在が融合し、銀色のコンバットスーツに王冠のような青い装飾と選定の紋章が浮かび上がった!
ここで、通信画面の向こうから、重厚でシリアスな「あの特撮」風のナレーションボイスが響き渡る!
『解説しよう! 覚醒憑依とは、銀河の意思と選定の杖の魔力が奇跡の融合を果たした超常現象である! ヒロインXのスーツにキャストリアの精霊魔力が直接憑依することにより、装甲の耐久値は100倍に跳ね上がり、必殺技の威力は概念そのものを書き換える領域へと達するのだ! いけ、キャプテン・ギャバリオン! 聖女ののどちんこを打ち砕くのだ!』
「「「ナレーションの語り口調まで完全に某・宇宙刑事の最新作じゃないですかーーーーーっ!?!?」」」
通信画面の隅っこで、いつの間にか体調が回復していたマシュが、前髪を逆立てんばかりの大迫力でツッコミを叩き込んだ!
「そもそも『覚醒憑依』ってなんですか!? キャストリアさんを装備扱いしないでください! 聖女の口腔内で他社の特撮パロディを全力で展開するのは、カルデアの風紀的にもコンプライアンス的にも完全にアウトです!!」
マシュの魂の激怒ノリツッコミが、ジャンヌの口の中にこだまする!
しかし、覚醒憑依を果たしたギャバリオン(X+キャストリア)は、マシュのツッコミを1ミリも気に留めることなく、銀色のメガホンを両手で力強く構えた。メガホンの先端に、選定の魔力と宇宙エネルギーが極限まで集束していく!
「聞こえますか、魔王・口蓋垂……! これが、私とキャストリアの『エゴイズム』の輝きです!」
メガホンのトリガーが引かれる!
「「**エゴイズム・カリバーンーーーーーッ!!**」」
ズドオォォォォォォォン!!!!!
メガホンの口から放たれたのは、青と銀が複雑に交錯する極大の極太破壊ビーム!
極彩色の光の濁流が、魔王・口蓋垂の防壁を粉砕し、ダイレクトに直撃!
「グワァァァァァッ!? 技名に『エゴイズム』って入ってるのに、やってることがただの極太ビーム照射じゃねえかぁぁぁぁぁッ!?」
魔王・口蓋垂の断末魔とともに、口腔内ダンジョン全体が粉々に打ち砕かれ、眩い光の渦の中へ呑み込まれていく――!
『GAME CLEAR!』
【カルデア・中央指令室】
「……ゴホッ! ケホッ……! う、ううん……?」
ベッドの上で目を覚ましたジャンヌ・ダルクが、胸を押さえて身を起こした。
その口腔内から怪しい魔力反応は完全に消え去り、喉の違和感も跡形もなく消滅している。
だが、ジャンヌの目の前には、ヘラヘラと笑いながら冷や汗を流すオジマンディアスとメフィストフェレスの姿があった。その手には、怪しい同人原稿『聖女の体内は生体迷宮』が握られている。
「……ファラオ。メフィストフェレス」
ジャンヌの周りに、ドロリとした漆黒(※怒り)のオーラが立ち上る。その手に握られているのは、聖旗……ではなく、激怒の炎を纏った巨大な正座用マットだ。
「人の口の中を無断で同人誌のダンジョンにしてくれたみたいですね……? 主の御心にかけて……**正座して朝までお説教です!!**」
「な、なに!? ファラオたるこの我が正座だと……!? 無礼千万――グハッ!?」
「ひやっはー! 聖女様のお説教タイムだーッ!(正座させられながら)」
オジマンディアスとメフィストフェレスが、ジャンヌの怒号とお説教の嵐によって正座の姿勢に固定され、おとなしく説教を受け始めた。
その横で、ミクロ化から戻ったヒロインXとキャストリアが、誇らしげに胸を張っていた。
「ふふん、見事なノーコンティニュークリアでしたね、キャストリア!」
「ええ、Xさん! 私たちの『覚醒憑依』のチームワークは完璧でした!」
ドスドスドス……!
二人の後ろに、鬼の形相となった立香とビュティ、そしてヘッポコ丸が影を落として立ち塞がる。
「あのさぁ……二人とも……」
立香が引きつった笑顔で二人の肩を掴む。
「「「**毎回毎回、他社の特撮ネタと合体技で強引に解決しようとするんじゃねえぇぇぇぇぇーーーーーッ!!!!**」」」
「ギャバリオンって何だよ! 覚醒憑依ってなんだよ! キャストリアをメガホンで吸引するな!」(ビュティ)
「エゴイズムカリバーンもただのビームじゃねえか! ネーミングセンスを特撮に寄せるなーっ!」(ヘッポコ丸)
三人の怒号のような怒涛のツッコミ衝撃波が炸裂し、ヒロインXとキャストリアは「ひやぁぁぁっ!?」と悲鳴をあげて吹っ飛んでいった。
遠くで繰り広げられるジャンヌのお説教と、ハジケリストたちの狂気のカメダンス。
混沌を極めるカルデアに、またしても(一応の)平和が訪れるのだった。
(第6話・完! 第7話へ続く!)