「グオオオオオオン!!!!」
コミケ特異点の上空を覆う暗雲から、雷光とともに三つの首を狂乱させる巨竜――グリオークの咆哮が轟く! 氷・炎・雷の息吹が渦巻き、ポップだった空間が瞬く間に滅びの戦場へと塗り替えられていく。
「きゃあぁぁぁっ! 先輩、何ですかあの威圧感は!? 某・王国を崩壊させそうな勢いです!」
マシュがデシュールドを構えながら絶叫する。
「転売ヤーの往生際の悪さもここまで来ると病気だな! おいバイヤン、任天堂さんに怒られても知らんぞ!」
藤丸立香が指をさして叫ぶ横で、バイヤンは高価格タグのついた王冠を眩しく輝かせて高笑いを上げた。
「フハハハハ! 恐れ入ったかカルデアめ! このグリオークはコミケ限定の超レア召喚獣! お前たちなど一口で噛み砕いてくれるわ!」
「待ちなさい! その限定品召喚、見過ごすわけにはいきません!」
「……プロテアも、みんなを守る……!」
「ワンコも大盛り特売肉として参戦だワン!」
ドカーン! と爆煙を上げて乱入してきたのは、青いマフラーをたなびかせる謎のヒロインX、超巨大サーヴァントのキングプロテア、そして割烹着を着て包丁とフライ返しを構えたタマモキャット!
「X! プロテア! キャットまで!?」
立香が驚愕する。
「マスター、敵の解析はすでに完了しています!」
Xはスカウター風のメガネ(ただの伊達メガネ)をクイッと上げ、凄まじいキリッとしたドヤ顔で言い放った。
「あの巨竜の容姿、翼、そして圧倒的な暴力性……間違いありません! あの敵の属性(タイプ)は、間違いなく**『ドラゴンタイプ』**です!」
「「「ポケ○ンみたいな分析し始めたーーーっ!?」」」
立香、ビュティ、ヘッポコ丸のツッコミが大合唱となる!
「ふっ……属性が分かれば勝機はあります! ここからは特撮(ハジケ)の時間です!」
Xは懐から銀色のメガホンを取り出し、乾電池型アイテムをカチリとセット!
「**蒸着!!**」
『コンプリート! キャプテン・ギャバリオン!!』
まばゆい銀色の光が巻き起こり、わずか0.05秒でコンバットスーツを纏った宇宙ハンター『キャプテン・ギャバリオン』が誕生!
「メガホンで『覚醒せよ、キングプロテア!』です!」
メガホンの光線を浴びたキングプロテアが、まばゆい光とともに超成長! 三頭龍グリオークにも引けを取らない超巨大怪獣サイズへと巨大化した!
「すごい! プロテアちゃんがグリオークと互角の大きさになったよ!」
通信画面のロマニが声を弾ませる。
「フハハハ! サイズが大きくなられようが関係ない! 喰らえ、グリオーク!『あくのはどう』だ!!」
バイヤンがドヤ顔で命令を下す!
「グオオオオオッ!!」
グリオークの三つの口から放たれたのは、ドロリとした邪悪な漆黒の波動――まさに某モンスター育成ゲームの『あくのはどう』!
「くっ、ですがプロテアの巨体なら耐えられ――」
ギャバリオン(X)が叫ぼうとした、その瞬間!
ドガァァァァァァン!!!!!
「あぐぁぁぁぁぁっ!?」
なんと、漆黒の波動を浴びたキングプロテアが、まるで弱点を突かれたかのように凄まじい悲鳴をあげ、大きく膝をついて大ダメージを受けてしまったのだ!
「「「えぇぇぇぇぇーーーーーっ!?!?」」」
「な、なぜです!? なぜプロテアにそこまでのダメージが!?」
ギャバリオン(X)が目玉を飛び出させて動揺する!
「あ、アホかお前はーッ!!」
通信画面からダ・ヴィンチちゃんが頭を抱えて怒号を飛ばす!
「X、君のタイプ相性計算がガタガタだよ! あのグリオークはただの『ドラゴン』じゃない!『ドラゴン・あくタイプ』の複合属性だ! そしてキングプロテアの属性は、その巨体と霊体構造からして『じめん・ゴーストタイプ』に判定されているんだよ!」
「な、なにぃぃぃぃっ!?」
ギャバリオン(X)が絶句する。
「つまり……『あくタイプ』の技は、ゴーストタイプのプロテアに対して**【効果はばつぐんだ!】**になっちゃうんだよーーーーーっ!!」
「「「属性相性を勘違いしてたのかよーーーーーっ!?」」」
立香、ビュティ、マシュ、ブーディカの魂の叫びがコミケ特異点にこだまする!
「フハハハハ! 見たかカルデア! 我が転売召喚獣グリオークの『あくのはどう』はお前たちの弱点を的確に撃ち抜くのだ! とどめだグリオーク、最大火力の『かみくだく』でお前たちを全滅させてやれ!」
グリオークの三つの首が、巨大な牙を剥き出しにして、大ダメージで動けないキングプロテアとギャバリオン(X)に向かって襲いかかる!
「しまっ……プロテア! X! 絶対的大ピンチだーーーっ!!」
立香の悲鳴が響き渡る中、三頭龍の凶悪な牙が迫る――!
属性の罠と絶対絶望の危機を切り抜ける術はあるのか!?
カオスと大爆爆笑の後半へ!
「ハハハハ! 死ねぇ、カルデアのゴミクズども! グリオーク、『かみくだく』で肉片一つ残さず噛み砕いてやれぁ!」
転売ヤーのバイヤンが高笑いを上げる。三頭龍グリオークの三つの巨大な顎が、大ダメージを負って膝をつくキングプロテアとキャプテンギャバリオン(謎のヒロインX)へと襲いかかった!
「くっ……! 効果ばつぐんの前に、プロテアの巨体をもってしても耐えきれないというのですか……!」
ギャバリオン(X)が絶望の声をあげる。
「プロテア、大ピンチだーーーっ!!」
立香が叫んだその時――!
「待ちなさい! 主婦とサーヴァントの基本は、いつだって『栄養補給』なんだから!」
突如、割烹着姿のブーディカが前に躍り出た! 彼女が手にした巨大なバスケットから取り出したのは、溢れんばかりの新鮮な野菜と極厚ハムが挟まれた『特注・超巨大デカ盛りサンドイッチ』!
「はい、プロテアちゃん! これをお食べなさい!」
「……わぁ! ブーディカさんのお弁当……いただきます!」
プロテアが巨大な手でサンドイッチをバクッとひと呑み!
ゴクン……!
シュワァァァァァッ!!
「「「体力が一瞬で全回復したーーーーーっ!?」」」
立香、ビュティ、ヘッポコ丸の叫びが響き渡る!
緑色の回復エフェクトとHPゲージ満タンの音が響き、プロテアの全身から溢れんばかりの生命力がみなぎった!
「な、なんだと!? ただのサンドイッチで『全快の薬』並みの回復だと!?」
バイヤンが目玉をひん剥く。
「ふっ……素晴らしい栄養補給です、ブーディカ! 属性の不利は、新たな『ハジケ合体』で覆せばいいのです!」
ギャバリオン(X)が銀色のメガホンを構え、隣でフライ返しを構えていたタマモキャットに照準を合わせた!
「**覚醒せよ、タマモキャットーーーッ!!**」
「ニャンとーっ!? ワイルドな合体の予感だワンーーーッ!」
メガホンから放たれた極彩色の光線を浴び、タマモキャットが光の粒子と化してキングプロテアの巨大な両腕へと吸い込まれていく!
――ズドオォォォォォン!!
光が収まると、キングプロテアの左右の巨大な手が、タマモキャットのあのフワフワかつ凶悪な『肉球付き巨大手首』へと丸ごと換装されていた!
ここで、通信画面の向こうから、どこかで聞いたことのあるコミカルでハイテンションなナレーションボイスが響き渡る!
『説明しよう! タマモキャットと合体を果たしたキングプロテアは、キャットの野性味あふれる格闘本能を全身にアタッチメント! これによって従来の『ゴーストタイプ』から、熱き格闘魂あふれる**【かくとうタイプ】**へと奇跡のタイプチェンジを果たしたのだ! あくタイプ技のダメージは半減! 全国のちびっ子のみんな、応援よろしくね~!』
「「「昭和のタイムボカンシリーズの解説口調じゃねえかーーーーーっ!?!?あくタイプ半減の理屈が強引すぎるだろ!!」」」
マシュとブーディカの完璧にシンクロした魂の激怒ツッコミが、特異点全体を大激震させる!
「先輩! ナレーションのノリが完全に往年のタツノコプロです! しかも合体によってタイプそのものを強引に書き換えるなんて、カードゲームやRPGの根本的なルール違反です!」(マシュ)
「そうよ! それにキャットちゃんを腕パーツ扱いにするなんて、調理師免許を持つ者としてのお手伝い精神が間違ってるわよーっ!」(ブーディカ)
二人の至極正論なツッコミを完全に無視し、ギャバリオン(X)はプロテアの頭上でメガホンを高く掲げ、キリッとしたドヤ顔で叫んだ!
「いきますよ、プロテア! キャット! びっくりドッキリの、超必殺技の発動です!」
「「**必殺ファンクション!!**」」
メガホンのスピーカーから、重厚な機械音声のアナウンスが響き渡る!
『アタックファンクション――ストライクレーザークロー!!』
プロテア(&キャット)の両手の肉球から、シャキーン! と波長を合わせた緑色の極太レーザー爪が超巨大に展開!
「喰らいなさい!『あく・ドラゴンタイプ』を粉砕する、格闘の光!『ストライクレーザークロー』ーーーーーッ!!」
「「**ストライクレーザークローだワン(だぬ)ーーーーーッ!!**」」
プロテアとキャットが叫びながら、巨大なレーザー爪を振り下ろす!
ズバァァァァァァァン!!!!!
「グワァァァァァッ!? 技名と演出が完全に○イドとダン◯ール◯機のチャンプルーだぁぁぁぁぁッ!?」
三頭龍グリオークの三つの首と、転売ヤーのバイヤンが、レーザー爪の十字斬りによって一網打尽に切り裂かれ、超巨大な大爆発とともに空の彼方へと吹き飛んでいった!
『GAME CLEAR!』
ポップなコミケ特異点は光となって崩壊し、東京ビッグサイトにはいつもの夏の熱気と(一応の)平和が戻ってきたのだった。
【コミケ終了後・ビッグサイト西館の裏手】
夕陽が赤く染めるコミケ会場の隅。
そこには、正座させられて涙目になっているオジマンディアスとメフィストフェレスの姿があった。
「いいですか、ファラオ! メフィストフェレス! 同人誌を売るなとは言いませんが、人の口腔内を勝手にダンジョンにした淫靡な本を壁サークルで大量頒布するのは、主の教えにもコミケのマナーにも反します!」
ジャンヌ・ダルクが激怒の炎を纏いながら、正座用マットを手に朝までのお説教を継続している。
「くっ……ファラオたる我が……またしても正座で説教を受けるとは……」
「ひやっはー! 二日連続の正座でお膝がガクガクですぞーッ!」
そして、その少し離れた場所では――
「ヒロインXさん! タマモキャットさん! プロテアさん!」
マシュが眼鏡を光らせ、手帳を掲げながら、三人の前に仁王立ちしていた。
「毎回毎回、特撮や他社の名作ゲーム、果てはタイムボカンシリーズのパロディを節操なく詰め込んで強引に解決するのは、カルデアのサーヴァントとして、そしてコンプライアンス的に大問題です! 『覚醒せよ』と言えば何でも合体していいわけではありません!」
「う、うぐ……マシュさんの正論の刃が、エクスカリバーより痛いです……」(ヒロインX)
「ワンコは美味しそうにお肉を炒めていただけだワン……」(タマモキャット)
「プロテア……反省する……」(キングプロテア)
マシュのお説教じみた正義のツッコミの前に、タジタジになって頭を小さく丸める特撮&合体トリオ。
「ははは……みんな、お疲れ様」
夕焼け空を見上げながら、立香が疲れた笑顔で呟く。
「全くよ! でもこれで、やっと静かなカルデアに戻れるわね!」
ビュティが胸を撫で下ろす。
「ぬぬ~! 次は私の『トコロテン特異点』の始まりだ~!」
「始まるなアァァァァァーーーーーッ!!」
立香とビュティ、ヘッポコ丸の三人の完璧なシンクロツッコミが夕空にどこまでも高く響き渡り、狂乱と爆笑のハジケカルデア劇場の第8話は、盛大な大爆笑とともに幕を閉じたのだった!
(第8話・完!)