「今日からこの学校に通うことになった天下麗華ですわ!席はそこの庶民!1つ後ろにどきなさい!」
「えー、はい。転校生の天下麗華さんです。朝霧君は大変だろうけど隣の席だし面倒見てあげるように」
「……ええ」
天下さんとカードバトルをした翌日。天下さんがこの学校に転校して来た。一応隣の2組の方が人数1人少ないのに1組の方に入って来る辺り天下さんの凄みを感じる。何なら天下さんの圧に驚いて素直に席を後ろに一つずつずらした子達全員にレアリティの高いカードを渡してるの凄い。しかも欲しがってる感じのレアカード。……わざわざボクの隣に来たのは何で?
「さあ!早速リベンジマッチをしますわよ!」
「……えっと、勝君に勝ったら勝負するよ」
「マサル……遊札マサルのことですか?
確かあなたに2回負けた以外は無敗でしたわね」
「あ、知ってるんだ。
たぶん良い勝負すると思うんだ。だから2人のカードバトルを見たいな」
お嬢様なのにデータキャラっぽいの、頭も良いのかな。なんかすでにクラスメイトの名前を全員把握してそうだし。何なら全員の戦績まで頭に入ってそう。
「天下さん、カードバトルの話は休憩時間にして下さい。
さて。みんなは5年生になったからクラブ活動でカードバトル部を選べば午後はずっとカードバトルが出来るし、それ以外の部活動もある。今日から1週間後までに部活動を決めるように」
そして天下さんにだけは丁寧語な先生から爆弾発言が飛び出す。カードバトル部に所属したら午後の授業全部出なくて良いって本当!?普通の公立小学校でもこうなのこの世界!?
あ、カードバトル部以外でも午後は成績良かったら部活動出来るんだ。そして流石に授業免除にはそのためのテストみたいなのを受けないといけないみたいだけど。前世の記憶のお陰で少なくとも高校生までの勉強は歴史以外完璧だからボクとしてはありがたい制度だね。
「よっしゃ!当然俺はカードバトル部に入るぜ!」
で、勝君はカードバトル部に入ると。この調子だと天下さんも入って、ボクも入ったら2人からひたすら勝負を挑まれそう。というか授業でもカードバトルのコマが多いし、一般教科が割食らってない?
……うーん、入る必要なさそうだし面白そうな部活動があったらそっちに行こうかな。というか小学校がここまでカードバトル一色になるとは思わなかったから今日とかはジュニアユースの方を見に行く予定なんだよね。
プロチームの下部組織で、中学生以下でプロになりたい人達が切磋琢磨するみたいだし、母親も賛成どころかジュニアユースのチームを探していたら「ここ行きなさい、ここ」と関東リーグで一番強いプロチームのジュニアユースを勧めて来たから進路は悩む。ただ中学校でカードバトル専門校に入るならわざわざジュニアユースに入る必要ないのかなあ。イマイチこの辺の事分かってないんだよね。
「今配ったプリントに希望する部活動を書いて提出なー。
それじゃあ、今日はカードバトルの授業からだ」
今日のカードバトルの授業はカードの種類についてだったけど、まず最初に魂のカードについて話される。……レイラから聞いてるからボクは分かっているし、魂のカードが多い人は精霊から聞かされているだろうけど、無地のカードを引いた際、この世界とは別の世界、精霊界に存在する相性の良い精霊達と契約をしてカードに落とし込んでいるとか何とか。
「つまり、魂のカードはその名の通り、魂の力を糧として精霊達と契約した結果作られるカードだ。子供だと大体3枚まで。超えると無地のカードを引いても汎用カードに書き換わる」
あ、白いカードって貴重だと思ってたけどそうでもないんだ。先生がパッと取り出した白いカードは、先生の手に触れるとあっという間にゴブリンコマンダーのカードに書き換わる。どんな未来技術が使われているんだろう。少なくともホログラムとかそういう系統の技術は前世超えてるからね。
「白いカードをパックで引かなくても、汎用カードと言われるカードを使い続けても魂のカードが出来上がったりするが、基本的に珍しいことだから早々魂のカードになるわけじゃない。あと、汎用カードが魂のカードとなる場合、カードの絵はそんなに変わらないことも多いのだが……魂によっては大きく変わることもある」
そして汎用カードの魂のカード化について話すと、クラスの9割はこっちの方を向いて来た。昨日のボクは魂のカード化したアリスを召喚して活躍させていたから仕方ないね。しかも本来は可愛らしい少女で胸なんて全然ないのに、ボクのアリスはめっちゃおっきかったし。
『クスクス、お兄さんは人気者ね』
「出て来ないで出て来ないで。
乗せないで」
なんというか、不思議な世界だなと思う。精霊は触れたり触れなかったりするんだけど魂が強いと触れるように実体化が出来るって感じなのかな。アリスが勝手に頭の上に出て来ては、その大きな胸を頭の上に乗せて来るんだけどレイラより軽い。2キロぐらいだからメアリーと同じかな?
もちろん先生に怒られて直ちにしまいなさいと言われる。アリスも恰好だけで青少年の性癖歪めて来そうな服を着てるし、あの体型だからね。
授業が終わって放課後になると、即座に勝君へ勝負を挑みに行く天下さん。その勝負を見届けようかなと思ったんだけど、今日はジュニアユースの見学をするって監督の人に伝えてるし、結果だけ明日に教えて貰ったら良いかな。ボクの予想だと勝君が勝ちそう。飛行持ちのカード多いし、勝君の魂のカード達も無敵城塞ガーディアンナイトに劣らないぐらいには強いと思う。
「翔太!こっち!」
「あ、お母さん。ただいまー」
「今日は東京スパロージュニアユースの入団試験日なんだから早く帰って来てって言ったでしょ!
早く車に乗って!」
学校から出てすぐの通りで、今世の母さんに捕まって車に乗せられる。若干毒親っぽい感じが昔はあって、小学1年生の時にはお勉強の方の塾とカードバトルの方の塾に両方行かされたんだけど、塾の方は寝てても満点とってたら塾の先生から勘弁してくれと言われて、カードバトルの塾の方は先生が10連敗ぐらいして心折れちゃったから両方1ヶ月もしないうちに辞めることが出来た。
その後は仕事が忙しくなったのかあまり干渉はして来なくなったんだけど、ジュニアユースの見学をしたいという話になったら仕事が忙しいのに車使って学校まで迎えに来る辺り良い親だと思う。前世云々の件は両親には話してない。生真面目に話して親子関係をぶち壊す趣味はないよ。
「あれ?入団試験?見学じゃないの?」
「施設見学するのにも試験があるの!そこで見出されたら入団まで出来る試験なの!ほんと何も聞いてないんだから」
ちなみにボクのスマートフォンみたいな通信端末は強烈なセーフティがかかっていて何を検索しても回答がないレベルでロックがかかっている。過保護過ぎるのとレイラやレヴィやメアリーが居る以上、この手のセーフティに意味は何もないんじゃないかな。サリーとか存在がR18だし。
車でかっ飛ばされること30分。レイラの魔法で仕事のストレスが0になった母さんにニコニコ笑顔で送り出された施設は巨大なビルだった。……ジュニアユースと、ユースの施設も兼ねているから大きいのは分かるんだけど、田舎にあるショッピングモールぐらい大きくない?そんなにカードバトルの練習するスペースって必要?
「というかこういう時に母親ってついてくるものなんじゃないの?」
『マスターのお母様はそのまま仕事場まで戻りましたよ』
「嘘でしょどうやって帰るの……」
中に入ると、そこは色々とトロフィーとか優勝カップとかが置いてある広いエントランスで受付のお姉さんがボクに気付くなりこっちこっちと手招きしてくれた。
「朝霧翔太君で間違いないですね?
このあとジュニアユースチームの監督とカードバトルを行いますが、その前にデッキ登録をお願いします」
「はい」
デッキ登録は小さいカード屋の大会とかでもあって、デッキのカードを全部登録するわけなんだけどデッキを専用の機械の上に置いたら30秒で終わるのでそんなに手間じゃない。このデッキ登録したカード以外を使うと反則なんだけど、魂のカードの効果が書き換わったり汎用カードが魂のカード化する時には見逃される。
それで入団試験を受けることになったんだけど、メアリーを3体と水スライムを並べてレヴィでレイラをサーチしてアリスを蘇生するだけの簡単な作業で終わった。無敵城塞みたいなレベルのカードは出て来なかったし、ジュニアユースチームの監督さんが白目剥いてたから相当ヤバイデッキになってるんだと思う。
結果は合格。しかも特待生とやらになったので月謝は払わなくて良いらしい。送り迎えとかもしてくれるらしいし、何というか、カードバトルの世界だなあって思ったよ。