ガッチャ!俺だけ楽しいデュエルだったぜ!(クズ) 作:フォイオ
「限界バトル叩きつけて〜♪」
とある少年2人が向かい合い、左腕に嵌めたディスク状の機械を構え、デッキからカードという名の剣を抜く。
最新のソリッドビジョンで投影されたモンスターが宙を舞い、大地を駆け抜ける圧倒的な光景は見るものの脳を焼いた。
そのゲームの名はデュエルモンスターズ。何千何万枚とあるカードの中から40〜60枚(+EXデッキ15枚)で自身のデッキを構築し戦うカードゲーム。
今や世界中で空前の大ヒットを遂げたこのゲームの勢いは止まることを知らない。とある国では自身のデッキを登録しなければ住民登録すらできないらしい。また、国家間の紛争ですらデュエルモンスターズで解決するのが常識。
それほどまでにデュエルモンスターズは世界を支配していた。
世はまさにデュエルモンスターズ最盛期。
「チッ!歌ってられるのも今のうちだ!俺はアンティークギアゴーレムをアドバンス召喚!見ろ、遊城十代!これが俺のデッキのエースモンスターだ!」
やや目つきの悪い少年がニヤリと笑いながらカードをディスクに叩きつける。召喚されたのは攻守3000のレベル8モンスター。とある時代でデュエルアカデミアの教師が使っていたエースモンスターだ。
「あ、神の宣告で召喚を無効にして破壊するわ」
それを無情にもカウンター罠で破壊し墓地に送るのは少年の対戦相手である赤い制服を着た少年。
「ギャアアアアア!俺のエースモンスターが?!」
「じゃあ、俺のターンドロー。バトルフェイズに入ってサンライザーとフレイムウィングマンでダイレクトアタック」
「ぐぁああああ!」LP4000→0
「ガッチャ!俺だけ楽しいデュエルだったぜ!」
目つきの悪い少年はソリッドビジョンで投影されたモンスターたちが放つ衝撃で泡を吹いて気絶していた。赤い少年は気絶した男に向かって割とマジで最低なセリフを吐き捨て決めポーズを決める。
「じゃあ、優勝商品と賞金は頂いていくぜ」
『十代……君、ほんと容赦ないよね』
「デュエルはいつでも真剣勝負。だろ?ユベル」
赤い少年 遊城十代は虚空にぶつぶつと喋りかける。あぁ、また始まったと観客が呆れて見ている。デュエルの腕は一流だが遊城十代は少し頭がおかしかった。空想上のイマジナリーフレンドを作り出すレベルで。
「この世界に来てからはずっと楽しいな!デュエルだけしてられるなんて最高だぜ!次は日本に行こうぜ、ユベル!」
『僕が止めても行くくせに……はぁ、ほらさっさとタクシーでも借りて空港に行こう』
「そうこなくちゃ!」
遊城十代はデュエル会場から爆速で出ていき、外でタクシーを捕まえて空港に向かう。タクシーで爆睡をかます彼の寝顔をイマジナリーフレンドユベルはまるで恋する乙女のような顔で見つめていた。ちなみにイマジナリーフレンドユベルは遊城十代の圧倒的想像力である程度の自我は持っている。恐ろしいね。
「へい、十代!着いたぜ!」
「んがっ……おぉ!ここが世界最大のデュエル空港!空港のチケットすらデュエルに勝たないと買えないって噂は本当かな?!」
「おう、タクシー運転手20年の俺でもこのクソったれ空港のせいで外国に旅行にすらいけないんだぜ!行って打ちのめされてきな!」
「いくぜいくぜいくぜいくぜー!!!」
十代がカバン片手に空港に走り出す。
「くっ!このデュエリスト強い!」
「ガッチャ!俺だけ楽しいデュエルだったぜ!」
チケットを速攻で勝ち取り、彼は飛行機に乗った。機内食で食べるのはもちろんエビフライ。彼の大好物だ。
「むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ」
彼が食事に夢中になっている間に説明しよう。彼、遊城十代はガワこそ遊城十代だが中身はデュエル狂いの元一般サラリーマン。なんやかんやで死んだ彼はこの世界に遊城十代として転生したのだ。
使うデッキはもちろんHERO……と言いたいところだが、彼は見た目十代だが、中身は現代遊戯王に毒されたリアリスト。キラーチューンやらドラゴンテイルやら烙印やら気分でその日使うデッキはコロコロ変わる。
「着いたぜ、日本!」
いや、待て。話はまだ終わってな「デュエル!デュエル!」うるせぇ!
「お、大徳寺先生!こんな所で何してんだよ!」
それは大徳寺先生じゃない!ただの野良猫だ!
「にゃおー」
「あ、待てよ!大徳寺先生!」
十代は野良猫を追って裏路地をパルクールで駆け抜ける。それを見て驚いた猫は全速力で走るもあっという間に彼に捕まった。
ちなみに一般的な猫が全速力で走ったときの最高速度は、時速約48〜50キロメートル。それに追いつけるのは彼のデュエルマッスルのおかけだ。もちろん、デュエリストなら楽勝だよな。
「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンで小娘に攻撃!ダークメガフレア!」
「きゃああああ!」
「ん?」
路地裏の奥で悲鳴がこだまする。いち早く反応した十代は大徳寺先生(ただの野良猫)を抱き抱えながら、声の発生源へと向かう。そこには全身トゲトゲのだっさい世紀末モヒカン野郎とデュエルの衝撃で半裸になった少女がいた。
「へっへっへっ、デュエルハンターごときが俺に勝てると思ったか?!」
「くっ、殺せ!」
「まずはしっぽり楽しませてもらうぜ!ギャハハハ「デュエルアンカーオン!」な、なんだ?!」
世紀末野郎のデュエルディスクにチェーンが巻きつき拘束する。チェーンの元を辿っていくとそこには破天荒デュエリスト遊城十代がいた。
「てめぇ!これはどういうつもりだ!」
「くぅー!一度やって見たかったんだよな!デュエルで拘束せよ!ってやつ!」
「おい、聞いてんのか?!」
「行くぜ、俺のターン!」
「だめだ、聞いてねえ!」
「あ、あなたは一体?」
ボロボロで地面に倒れ伏す美少女デュエルハンターは疑問を口にする。しかし、質問を受けた十代はというとデュエルにのめり込んでいた。
「俺はマジックカードHEROアライブを発動。ライフを半分払ってデッキからモンスターを特殊召喚!」
「おいおい、死ぬ気かよ?いきなり、ライフ半分なんて馬鹿げてるぜ☆」
「ウォオオオオオオオオオ!展開長いからカット!遊城10倍速だぜ!」
あっという間に展開を終えた十代のフィールドにはC・HEROカオス三体。ダークロウ一体。ブルーディー一体という激キモ制圧盤面が完成していた。
「はぁ!?なんじゃこりゃ?!と、とりあえずサンダーボルトだ!」
「あ、神の宣告で無効っす」
「なら、ライトニングストームだ!」
「カオスで無効っす」
「モンスター効果を使ったな!三戦の才発動!」
「2体目のカオスで無効〜」
「も、もうやめてくれぇえええええ!」
「ひ、ひどい。対話すらしないなんて……」
あまりにも制圧がキツすぎてモヒカン野郎は失神して泡を吹いた。十代の勝利!
「ガッチャ!俺だけ楽しいデュエルだったぜ!」
また最低なクズ台詞を決めた十代(笑)。お前もう○ねよ。
「私はデュエルハンターライアよ。助けてくれてありがとう。アイツは闇のデュエリスト モヒ・カーン。長年の宿敵だったの。あなたの名前を聞かせてくれる?」
倒れ伏していたデュエルハンター(黒髪ボインボイン美少女)が起き上がり、大事な所を腕で隠しつつお礼を言う。
「あ。知らない人とは喋るなってユベルが……その、すみません」
十代はスンとした顔で対応してその場を後にした。デュエルが恋人万年童貞の彼に三次元の女はキツかったのである。
「ま、待ちなさいよ!」
「墓地闇三体ダムド〜」
これは十代の見た目で転生したデュエル狂いが成すイカれコメディデュエルストーリー。続編はたぶん続かない!続くか反響次第だ!
「だから、待ちなさいってば!」