誕生日会の翌日。
今日は昨日告知された通り俺たちの卒業試験が行われる。
いつもと違って家の外でやるとのこと。
我が家の馬であるカラヴァッジョに乗っていくとのことなので、
ロキシー先生はその準備をしている。
「外ですか……?」
兄さんは怯えたような声で聞いた。
「はい。村の外です」
「庭でやることはできませんか……?」
「できません」
「できませんか……」
今日の兄さんはいつもと比べて随分としおらしい。
「なぜかルディは外に出たがらないのよね……魔物が怖いのかしら……」
「この辺りじゃ滅多に魔物には遇いませんよ。それに、遇っても弱いですから。ルディでも倒せます。勿論、アルでも倒せますよ」
俺がカラヴァッジョを撫でていると父さんが兄さんに声を掛ける。
「ルディ、カラヴァッジョは凄く大人しいぞ~」
だが、兄さんは母さんの後ろに隠れてしまう。
「ははーん……」
それを見てロキシー先生はニヤニヤとしていた。
「さては怖いんですねぇ? 馬が」
「う、馬は別に怖くないですよ……?」
兄さんのその言葉がロキシー先生には強がりに見えたようだった。
「意外と年相応な所もあるんですね」
ロキシー先生は兄さんを抱え、馬に乗せた。
先生は兄さんの後ろに少しスペースを開けて乗る。
「乗ってしまえば、すぐに怖くなくなりますよ。ほら、アルも乗ってください」
俺は言われるままにロキシー先生と兄さんの間に開けられたスペースに飛び乗った。
すると先生は足で合図してカラヴァッジョを歩き出させた。
◆◆◆
家を出て少し経つと兄さんはもう怖がらなくなった。
兄さんのはあっさり克服できるトラウマだったようだ。
簡単に克服できるトラウマって、意外と多いんよな。
ものによるから一概には言えないんだけど。
「この辺りでいいでしょう」
家を出てから一時間程度は経っただろうか。
俺たちは地平線の付近まで続くほとんど何もない草原に辿り着いていた。
空気が澄んでいて、気をよく練れる。
先生はぽつんと立っている一本の木の傍にカラヴァッジョを停め、降りて手綱を幹に結んだ。
先生が兄さんを抱いて降ろすと、俺もひょいっとカラヴァッジョから降りた。
ロキシー先生が、真剣な眼差しで俺たちに向かい合った。
「これから私は水聖級魔術を使います。一度しか使いません。しっかりと見て、覚えて使ってください。それが卒業試験の内容です」
なるほど。それじゃあ昨日の夜完全に使えるようになった『アレ』が役立つな。
「秘伝だから人の居ない所でやるんですか?」
「違います。これから使う魔術は広範囲に雷を伴う豪雨を降らせるものなので、人や農作物に被害が出るかもしれないからです」
予想通りだな、こんな所まで来てるし。
「私は実演するために1分ほどで散らせますが、そうですね…………
1時間以上、降らせ続けることができれば合格としましょう」
前に出たロキシー先生は深呼吸して、詠唱を始めた。
「雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の王子よ。
我が願いを叶え、凶暴なる恵を齎し、矮小なる存在に力を見せつけよ!
神なる金槌を金床に打ち付けて畏怖を示し、大地を水で埋め尽くせ!
ああ、雨よ! 全てを押し流し、あらゆるものを駆逐せよ!
詠唱が進むにつれ、次第に雲が集まって来た。
そして詠唱が終わると一瞬にして空が暗くなる。
俺はこの目で
雲の中で光っていた稲光が空気を切り裂き、落ちた。
凄い轟音だ。近くの木に落ちたの、か……
「「あっ」」
俺とロキシー先生が気付いたのは同時だった。
積層雲が散っていき、風も雨も止んだ。
ロキシー先生が木の傍で煙を上げ倒れているカラヴァッジョを見て顔を真っ青にしている。
「あわわわ……ど、どうしましょう!?」
「先生、とりあえず俺が治癒魔術を」
俺はすぐにカラヴァッジョへ駆け寄り、手を当てて中級治癒魔術を使う。
「エクスヒーリング」
即死ではなかったので治すことができた。
危なかったぞ、マジで。
カラヴァッジョは父さんが毎日丁寧に手入れをして、たまににこやかな顔で遠乗りに出かけていく愛馬だ。
俺も何度か手入れを手伝わせてもらったり、乗ることもあったから俺も愛着がある。
2年間一緒に暮らしてきた先生はそのことをよく知っているだろう。
「ふ、ふぅ……ありがとうございます、アル。危ない所でした……こ、この事は内緒にしていただけますか……?」
ロキシー先生は涙目になっていた。
今回はその可愛さに免じて、許してあげましょう。
「……はぁ、分かりましたよ」
「僕も言ったりしません」
「お願いします……」
先生は頬を両手で叩き、切り替える。
「さて、まずはどちらがやりますか?」
「僕がやります」
「分かりました。カラヴァッジョとアルは私が守っておきます。」
ロキシー先生は『
これならまあ、あの雷雨にも耐えられるだろう。
兄さんは離れた場所で、昨日貰った小さな杖を天に掲げ、詠唱を始める。
「雄大なる水の精霊にして! 天に上がりし雷帝の王子よ!
我が願いを叶え! 凶暴なる恵を齎し! 矮小なる存在に力を見せつけよ!
神なる金槌を金床に打ち付けて畏怖を示し、大地を水で埋め尽くせ!」
先ほどと同じように、雲が集って……
……違う。さっきロキシー先生がやった
詠唱がまだ終えられていないのに、もう暴風雨が吹き荒れ始めた。
「ああ、雨よ! 全てを押し流し、あらゆるものを駆逐せよ!
魔力の流れを視ていると、あることが分かった。
あれは科学知識を元に作られた積乱雲だ。
強い上昇気流と大気の温度差をうまく作り出し、魔力で制御し維持を続けなくとも1時間以上保たれるようになっていた。
「先生。アレ、もう制御必要無くなってますよ」
「えっ?」
ロキシー先生は困惑したような声を上げた。
「今、視てるんです、魔力を。あの雷雲、魔力で制御しなくとも保たれるように雲の動きを作り上げてます」
「魔力を見てるって……アルは魔力眼を持っているんですか?」
「え?」
なにそれ。HUNTER×HUNTERの凝みたいに魔力を使ったら魔力が見えるようになる技なんだけど、それ魔眼とかじゃないの? もしやこれ無詠唱以上に知られてない技とか?
「ま、まあそれはいいです。ちょっと見てくるので
「分かりました」
◆◆◆
結果から言うと、兄さんは卒業試験に合格した。
あれだけできれば十分だろうとのことだ。
そして、次は俺の番だ。
俺は昨日貰った小さな杖をペン回しのように指でくるくると杖を回しながら取り出して、杖を握った。
兄さんと同じやつも作れるけれど、それじゃあ面白みに欠ける。
だから、さっき見た『アレ』を起点にしてやろう。
俺は、杖を握る右手とは反対の、左手の人差し指と親指をくっつけて、とあるイメージをしながら離していく。
すると、指先と指先の間に小さく電流が流れた。
左手を握り、指鉄砲にして天へ向ける。
右手に持つ杖の先ををくーるくーると回して俺の周りを回るように小さく風を起こす。
そして、放つ。
雷鳴が轟き、稲光が天へと昇る。
轟音を響かせた電流は、ある程度の高さで広がり、その周囲で目に見えて風が廻り始めた。
左手を下ろし、代わりに右手に持つ杖を掲げる。
そして
廻る風はその水蒸気を巻き込んで、雲となっていく。
そこに電流が乗り、廻る速度はどんどん増していき、その大きさも肥大化していく。
ゴロゴロと、肥大化した雲の中を雷が巡り、音を立てながら燻っている。
俺は先生たちがいるのとは反対にある遠くの木に杖を向けた。
「
俺がそう唱えると雲の中で燻っていた
そして、次の瞬間。
紫色の轟雷が、俺が杖を向けていた木を一直線に貫いた。
オリジナルの魔術です。ノリで作りましたが多分王級くらいの威力してます。
そして一点集中していて周囲を巻き込みにくいので
アルヴィスの魔力量ってどのくらいだと思う?
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ルディよりかなり少ない
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ルディより少ない
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ルディと同じくらい
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ルディより多い
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ルディよりかなり多い
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ラプラスは越えてる