「な、何故…。何故こうなったあああああああああああ!?!?!!?」
深い森の奥、一人の幼女がそう悲しみの声を上げた。
彼女の名はターニャ・フォン・デグレチャフ。異世界転生した元サラリーマンにして、神こと存在Xによっていくら戦果を挙げても責任だけしか上がらず後方勤務の夢から遠のき続けている不遇な幼女である。
事の始まりは約数分前。戦闘が終わり陣地にて部下と今後について語り合っていると存在Xの時間停止による干渉が起きた。普段なら一人存在Xと平行線の問答を繰り広げるはずだったが一つだけ違うのはなんと部下の面々まで時間干渉を受けているということだ。
「しょ、少佐!?これは一体!?」
「何が起きているんだ!?」
「見てください。雪が空中で静止してますよ!?」
突然の事態に地獄ともいえる戦争を経験したヴィーシャやヴァイス、グランツらは慌てふためいている。
『貴様を別の世界に飛ばす』
いつぞやのくるみ割り人形に乗り移った存在Xはそうターニャに告げた。
『これだけ過酷な環境に放り込めば少しは信仰心が芽生えるかと思っていたが、どうやら私の見立てが甘かったようだ。貴様は改心のそぶりを見せるどころか、率先して私の意図に反することばかりする』
「言ってくれる。そもそも、次の転生は無いと言ったのはそちらでしょうに。自ら課した約束一つ守れないとは、どの面を下げてアダムとイブを楽園から追放されたのやら」
『誰が転生させると言った?』
「は?」
『貴様はその姿のまま、世界が変わるだけだ』
その言葉にターニャは身をたじろいだ。
「あ、貴方は何者ですか!?少佐に何を言っているのですか!?」
『私はこの世界の神だ。君たちが信仰の祈りを捧げるとき力を分け与えている存在だ。このものは前世で神への信仰心が欠如しているためこの世界に生まれ変わらせたのだ。だが、改心するどころか神である私に唾を吐きかけるような真似をする。故に罰を与えるのだ!!』
「お、お待ちを!!少佐殿は厳しいところはあれど誰よりもまっすぐなお方です。そのようなものに罰を与えるなどあまりにも!!」
神の宣言にヴァイスは恐れながらも反論の意を述べた。
『いいや。こやつを改心させるため運命を捻じ曲げ戦火の中を潜らせ続けた。だが、それでもこやつは神を敬わない』
「え、今何と…?」
「運命を捻じ曲げて、戦火を潜らせ続けた…!?」
「ま、まさか、戦争が終結しないのは…」
「貴様、存在X!!!!やはり貴様のせいだったのか!!!!?」
『全ては信仰の為だ。神への祈りの元私は平等に人間に祝福と力を与える。だが、神を信じず媚びずそれどころか唾をかけることは許さん!!!!子が親に逆らわぬように貴様ら人間も神に逆らうな!!!!!』
余りにもん理路整然としたその発言にターニャたちは呆れかえっていた。
「まさか、このような矮小な存在が神だったとは」
「あの時の少佐の言葉がよく分かった。こんな奴豚の餌にした方が千倍マシだ」
「だな」
そこにはもう神への信仰心などかけらもなくただ力だけ持った矮小な存在への畏怖だけがあった。
『もうよい。前に貴様が言っていた通り、本当に文明のない世界を用意してやったのだからな。『科学が発展し満ち足りた世の中では信仰は生まれない』だったか?せいぜい自らの行いを反省し、悔い改めるがいい』
そう告げるとターニャ達は誰もいない森の奥地に放り出されていたのだ。
何の反論もできずにほっぽり出されたターニャは天を仰ぎただ一言、
「存在Xめええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」
と大声で叫ぶのだった。
そして冒頭のセリフに至るというわけである。