よく聞け、いいか、ここをローマ帝国とする!   作:とくめいのネロ

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前話までで、一部設定を変更しています。


バックステージ ⑤

皇歴2017年

 

ジルクスタンにて破格の同盟を結び、旧・嘆きの大監獄を我が『第二の巨大ローマ造兵廠』へと作り変えてから、早くも五年の歳月が流れた。

 

余も今や16歳!

可憐さはそのままに、溢れんばかりの気品と「王の覇気」、そして磨き抜かれた至高のプロポーションを兼ね備えた、誰もが息をのむ大人の美少女へと完璧なる成長を遂げていた! 見惚れるが良い凡夫ども!なに、恥ずべきことはない、余に見惚れてしまうのは是非もないよね!

 

だが、この五年……余の歩みは決して順風満帆なだけではなかった。

ジルクスタンでの「同盟成立」という大偉業を成し遂げた直後、余は苦渋の決断を下した。現地での実質的決裁者として、軍師ルキウス、生産拠点の長兼筆頭技術者のアルベルト、そして兵たちの指南役として副騎士長マルクスの優秀な三名を現地に残し、余自身は単身、ユーロブリタニアにある、オリンポスの離宮へと一旦帰還したのだ。

なぜか?

決まっている! 本国……皇帝シャルル・ジ・ブリタニアや、ユーロブリタニア大公の鬱陶しい監視の目を完全に眩ますためだ!

 

「ふあぁ……今日の夜会も実につまらんかったぞ! ルキウス、もっと美味しいお菓子を持ってまいれー!」

「殿下、ルキウス殿は現在、本国の財務省との折衝で不在でございます。代わりの給仕を……」

「ええい、使えん奴らめ! 余は部屋で歌の練習をする! 誰も近づくではないぞ!」

 

離宮オリンポスにて、余は徹底的に「我儘で放蕩な、政治に興味のない愚かな皇女」を演じ続けた。

夜な夜な部屋に引きこもり(実際は極秘の通信設備でジルクスタンへ指示を出していたのだが)、歌の練習と称して大音量の暴音(これは至高の讃歌だ!)を垂れ流すことで、警備兵や監視の目を一切寄せ付けなかった。

 

監視の者どもも、最初こそ疑わしい目を向けてきたものだが、数ヶ月も同じ行動をとっていると、次第に意識は変わってきていた。

「あの放蕩娘がまた何か騒いでおるか」と鼻で笑い、余のことを徐々に意識の外へと追いやっていた。

ふふん、見事な欺瞞作戦であろう!

 

一方で、余の留守を預かるジルクスタンでは、恐るべきスピードで「ローマ」の基盤が造り上げられていた。

シャムナとシャリオの全面協力のもと、我が優秀な部下たちは暗躍した。

 

KMF技術で立ち遅れていたジルクスタンに、アルベルトが持ち込んだ10年先を行く超技術を導入。さらに、隣国である大国・中華連邦の腐敗した高亥ら大宦官どもと、秘密裏に貿易を成立させた。

ジルクスタンの技術や研究成果と偽り、最新鋭(余たちからしたら数世代前のKMFの技術や現物)と引き換えに、中華連邦の莫大な物資、希少金属、そして広大な交易ルートを掌握した。

 

「我が君、中華連邦の大宦官どもは、金とKMFの旧式パーツ数点で簡単に釣れました。 あちらはブリタニアの先を行く最新技術を手に入れたとぬか喜びしているようです。」

通信の向こうで、ルキウスが冷徹な笑みを浮かべ、アルベルトが「ヒヒッ! このレアメタルがあれば『グラン・ローマン』の量産ラインが完璧に回ります!」と狂喜乱舞していたものだ。

 

こうして、表向きは「砂漠の貧窮した宗教国家」のフリを続けながら、地下深くに築かれた巨大プラントでは、昼夜を問わず規格外の軍備が整えられていた。

 

そして——今。

 

時はきた。

 

ついに、その時が訪れたのだ。

 

「我が君……すべての準備が整いました。ジルクスタンで建造された全戦力、電磁サイレントコーティングと光学迷彩を極限まで展開し、本国ブリタニアやユーロブリタニアの警戒網を完全にすり抜け、ここオリンポス上空への展開を完了いたしました」

離宮の豪華な執務室。長髪をすっきりとまとめたルキウスが、洗練された動作で深々と礼をとった。

 

その隣には、油にまみれた作業着を脱ぎ捨て、誇らしげに胸を張るアルベルト。そして、一段と逞しくなった赤甲冑の副騎士長マルクスと、砂漠の修羅場を潜り抜けて洗練された将校の顔つきとなったバザルが控えている。

 

「うむ! ご苦労であった、皆の者! 五年……長かったぞ! この可憐な余が、愚かな皇女のフリをして退屈な日々に耐え忍んだのだ! 今日この日を、どれほど待ちわびたことか!」

余は真紅のドレスを豪快に翻し、バルコニーへと歩み出た。

 

「アルベルト! 兵器の仕上がりはどうだ!?」

「完璧でございます、ネロ殿下!」

アルベルトが眼鏡を光らせ、手元の端末を操作する。

 

「殿下の至高の美学と『皇帝特権』のご指導のもと完成した、我がローマの精鋭兵器群!

第一に、ローマ親衛隊専用にカスタマイズされた超高性能KMF『グラン・ローマン・カスタム』、計300機!

第二に、一般兵士用として量産された最新鋭KMF『ローマン・レギオン』、計1000機!

そして第三に……本国の既存航空機を遥かに凌駕する、我が軍の旗艦および機動拠点——空中飛行超大型戦艦『グランド・ローマ』を筆頭とする空中艦隊15機!

いずれも第7世代KMFすら凌駕する出力を誇り、フロートシステムを標準装備! 本国のナイトオブラウンズが束になってかかってこようと、文字通り踏みつぶせる王の軍隊でございます!」

「ふはははは! 素晴らしい! アルベルトよ、後で至高の歌を山ほど聴かせてせてやるぞ!」

「はっ!ありがたき幸せ! ……ぇ?」

 

余はバルコニーの淵に立ち、宙を見上げた。

一見すると、オリンポスの夜空には静寂な月光が注いでいるだけに思える。だが、余が右手で合図をした瞬間——

 

『ステルス・フィールド、限定解除! 指揮通信用インカムライン、全軍開通!』

 

ルキウスの号令とともに、光学迷彩と電磁遮蔽の内に隠されていた漆黒の夜空が、一瞬だけ揺らいだ。

外部の通信網や防衛レーダーには一切引っかからぬ暗号化回線を通じて、余たちだけの閉ざされた空間に、空を埋め尽くす超大型空中飛行戦艦『グランド・ローマ』をはじめとする空中艦隊が姿を現す。

 

静聖なる月光を浴びて鈍い光を放つ、鋼鉄の箱舟。

各艦隊の中では、それぞれ100機以上の隊列が静かにネロの言葉を待っていた。

 

300機の親衛隊機には、オリンポスからのネロ直轄の精鋭が乗り込み、1000機のレギオン部隊にもジルクスタンで鍛え上げられた精鋭たちが集う。

 

外部へ音を漏らさぬ極秘回線の中で、地鳴りのような勝吼えが響き渡る!

 

『「「「オール・ハイル・ローマ!!」」」』

『「「「オール・ハイル・ネロ!!」」」』

 

余は満足げにドヤ顔を浮かべると、風にドレスと金髪をなびかせ、バルコニーの最前線へと踏み出した。両目に宿る皇帝特権の源たる、朱色の鳥の紋様——ギアスが、怪しくも美しく発光する。

 

「聞き届けるが良い、余の至高なるローマ軍団よ!」

余は宝剣『原初の火(アエストゥス エストゥス)』を鞘から引き抜き、夜空へと掲げた。

回線経由で余の声が各艦隊に届く。

 

「今日この時まで、余は愚かな放蕩皇女を演じ、貴様らとともに力を蓄えてきた! ブリタニア皇帝のくだらぬ弱肉強食、ユーロブリタニアの醜い権力争い……へドが出るほど退屈な世を終わらせる時が来たのだ!

よいか! これは——征服ではない、建国である!!」

 

限定展開された戦艦『グランド・ローマ』の船体から、長さ数百メートルに及ぶ巨大な帝国旗——深い赤地に眩い金糸で描かれた鷲の紋章が全兵士のモニターへ重厚に映し出された。

 

「今この瞬間をもって、余は神聖ブリタニア帝国との決別を宣言する!

ここに掲げるは、美と情熱と至高の愛が支配する新時代——”ローマブリタニア帝国”である」

ローマの赤が映える。

 

「ローマの軍勢はこれより、電磁サイレントコーティングを全開にし、夜の闇に紛れて帝都へ忍び込む!」

余は不敵に口元を吊り上げ、宝剣の先をまっすぐに指し示した!

 

「進撃の目的地はただ一つ——本国、ブリタニア帝都ペンドラゴン!!

防衛網を完璧にすり抜け、シャルルが間抜けな面で寝こけている隙に、その喉元へ一挙に牙を突き立ててやるのだ!

愚かな本国やユーロブリタニアどもが気づいた時には、すでにペンドラゴンは余の手の中にある!

全軍、光学迷彩・音響遮蔽を展開し、静かに出撃を開始せよ!」

 

『オォォォォォォォォォッ!!!』

 

全艦隊が、音もなくエンジン出力を同調させ、無言の熱狂とともに再び完全な光学迷彩と電磁サイレントコーティングの闇へと溶け込んでいく。

外部には一切の警報も鳴らず、ブリタニアの警戒網も、ユーロブリタニアの監視も、何一つ異常を察知していない。完璧なる欺瞞のまま、夜の闇を滑るように進む「不可視のローマ軍団」。

 

偽りの放蕩劇は終わりを告げた。

 

○

 

静まり返る夜の闇の中、オリンポスの宙域から「影」が滑り出した。

 

ネロ・ロ・ブリタニアが率いる1300機のKMFと超大型空中飛行戦艦『グランド・ローマ』を筆頭とする航空艦隊。それらは最新の光学迷彩と電磁サイレントコーティングを全開にし、音もなく夜空へと飛び立った。

 

オリンポスから神聖ブリタニア帝国の首都ペンドラゴンまでは、最高速を誇る浮揚航空艦を駆使したとしても、急行して半日は要する長距離航路である。どれほど機動性に優れた先進兵器であろうと、軍勢が一挙に移動すれば大気の歪みやわずかな熱源反応から防衛レーダーに察知されるリスクは跳ね上がる。

 

ゆえにネロ陣営が選んだのは、徹底された「隠密行軍」であった。

空へ飛び立った軍勢は、高度数千メートルの上層雲の隙間へと潜り込んだ。昼間は広大な雲海と太陽光の乱反射を利用し、レーダーのみならず肉眼による監視をも完全に遮断。

熱反応もアルベルト特製の排熱拡散装置によって空中に拡散され、神聖ブリタニア帝国が誇る世界最高峰の早期警戒網すら、その頭上を通り過ぎる巨大な暗雲をただの自然現象としてスルーしていた。

 

本国ブリタニア、ならびに広大な領域を治めるユーロブリタニアの軍上層部は、この時まさか自国の「放蕩皇女」が1000機を超えるKMFを載せた航空艦の軍勢を率いて自国の喉元へ向かっているとは、夢にも思っていなかったのである。

 

——そして、オリンポス出発から丸一日が経過した、翌日の夜。

 

漆黒の闇に包まれた帝都ペンドラゴン上空。宮殿や高層ビル群の絢爛豪華な明かりが眼下に広がるその至高の夜景を見下ろす位置に、ローマ軍団は静かに到達していた。

 

「——全軍、光学迷彩・ステルス・フィールド解除。制圧作戦『ローマの威光』を開始せよ!」

 

暗号化回線を通じて、軍師ルキウスの冷徹な号令が全機・全艦へ飛ぶ。

次の瞬間、ペンドラゴン上空の夜空が激しく歪んだ。

 

雲を突き破り、突如として姿を現したのは、深紅と金で彩られた巨大な空中戦艦と、その周囲を埋める航空艦隊。

 

『な、何だ!? 雷か!? いや、空に何かいるぞ!!』

『全軍に通達! 上空に未確認の大型航空艦を感知! 識別信号なし! リフレインの密輸組織か!?E.U.が仕掛けてきたか!? いや、規模がおかしい!!』

 

突如として天から舞い降りた「真紅の軍団」に対し、帝都ペンドラゴンの防衛司令部は大混乱に陥った。敵の侵入を報せるサイレンが警報音を撒き散らし、サーチライトの光軸が乱雑に夜空を交差する。

 

完全なる不意打ち。

 

歴史上、一度として敵国の侵攻を許したことのない神聖ブリタニア帝国の心臓部ペンドラゴンが、手も足も出ない完璧なタイミングで奇襲を受けた瞬間であった。

 

慌てて迎撃に立ち上がったのは、帝都を守る近衛兵団や、都心の警備部隊、首都防衛騎士団であった。彼らが緊急発進させた主力機は、第5世代KMFである『サザーランド』。

一部の隊長機に『サザーランド・カスタム』が混ざる程度の、現状のブリタニアにおける標準的な戦力である。

 

だが、空から舞い降りてきたローマ軍の足元にも及ばないことは、交戦が始まった瞬間に明白となった。

 

「フハハハハ! 遅い、遅いぞ旧時代ども! 我が『グラン・ローマン・カスタム』の機動力についてこれるか!」

 

ローマ親衛隊の先陣を切ったのは、かつて大監獄の獄卒(元山賊)を率いていたバザルであった。彼の駆る親衛隊専用機『グラン・ローマン・カスタム』が背部のフロートユニットを炸裂させ、漆黒の夜空を縦横無尽に疾走する。

 

サザーランドのパイロットたちがアサルトウエポンを撃ち尽くすが、グラン・ローマンは超高度な運動性能でそれらを紙一重で回避。

サザーランド側のセンサーが捉えきれない速度で背後に回り込むと、衝撃波を伴う一撃でサザーランドの四肢を正確に破壊し、コクピットを一切傷つけずに脱出装置(エジェクト・シート)を強制起動させた。

 

「な、何なんだあの機体は!? 動きが速すぎる! 弾が当たらない!!」

「フロートシステムだと!? 空を飛ぶKMFなど、一部の実験機だけのはず……! なぜこんな数が!?」

現場のブリタニア兵たちは絶望に打ちひしがれた。

 

現在、極東のエリア11(日本)において、ロイド・アスプルンド伯爵が開発した特別派遣嚮導特別推進部隊の『ランスロット』——第7世代KMFと呼ばれる規格外の超技術機が稼働している。しかし、いまペンドラゴンの上空に突如現れたローマ軍団の機体群は、その『ランスロット』と同等、あるいはそれを凌駕する第7世代以上の性能を保持していた。

 

しかも、それが単機ではない。

親衛隊専用機『グラン・ローマン・カスタム』が300機。一般兵士用の量産型『ローマン・レギオン』が1000機。

合計1300機もの「ランスロット級」の怪物が、圧倒的な連携と数で空から押し寄せてきたのだ。

 

これはもはや「戦闘」ではなかった。一方的な「蹂躙」である。

 

サザーランド隊が放つスラッシュハーケンは軽々と切り払われ、事実上の主力兵器であるライフル射撃は高出力の位相転移装甲(あるいはアルベルト特製の局所バリア)に阻まれて火花を散らすだけ。

ローマ側の『ローマン・レギオン』が放つ一撃は、サザーランドの装甲を豆腐のように易々と引き裂いていった。

 

しかし、この圧倒的な暴力の嵐の中で、一つだけ奇妙な光景があった。

ローマ軍の激しい攻撃により、次々と撃破されていくブリタニア側のKMF。だが、その勢いとは裏腹に、ブリタニア側の死傷者は少なかった。

 

「全機、殿下のご命を忘れるな! 殺すな、無力化に留めろ!」

副騎士長マルクスの野太い声が通信回線を駆け巡る。

 

「武器の破壊、駆動部の切断、ならびに脱出装置の強制起動! パイロットを死なせるな! 命を奪うのは至高のローマの美学に反するぞ!」

「「「イエス・マイ・ロード」」」

これこそが、総司令官ネロ・ロ・ブリタニアが全軍に命じた鉄則であった。

ネロは事前にハッキリと部隊に命じていたのだ。

 

『よいか! 余が目指すのは血生臭い殺戮ではない! 凡夫どもを余の圧倒的な美と武力でひれ伏させ、至高のローマへと導くことなのだ! 無駄な殺生は余の美学が許さん! ブリタニア兵はもちろん、貴族や皇族であっても無力化と身柄の確保に留めよ!』

その厳命を忠実に守り、ローマ軍の兵士たちは驚異的な精度でサザーランドの武装や脚部だけを狙い撃ちにし、あるいはコクピットブロックのみを安全に切り離して地上へ落下させていた。

 

サザーランドのパイロットたちは、死を覚悟した瞬間、ポーンと脱出装置で夜空へ放り出され、パラシュートで無傷のまま都心の公園や道路へと着地することになる。

『な……何なんだ奴らは……! 』

『手加減されている!? 』

生かされたブリタニア兵たちは、恐怖と困惑の混ざり合った表情で空を見上げるしかなかった。死への恐怖よりも、手も足も出ずに完膚なきまでに無力化される圧倒的絶望が、帝都の防衛隊を支配していく。

 

地上では、近衛隊の歩兵部隊や貴族たちの私兵が右往左往していたが、上空から降り立ったローマ親衛隊の重甲冑兵や身分は隠しているがジルクスタンの兵士たちによって、あっという間に武器を取り上げられ、手枷をはめられて捕縛されていった。

 

「ひえっ……! ぶ、無礼であるぞ! 私は伯爵家の……!」

「黙って座ってな! ネロ殿下のお優しいお心遣いに感謝しな! 命があるだけ儲けものだ!」

豪華な屋敷から逃げ出そうとした貴族たちも、皇族の宮殿を守っていた近衛兵たちも、手際よく縄で縛られて一箇所に集められていく。

 

 

「見事な手際ですね、マルクス殿。殿下の『殺さず無力化せよ』という勅命、見事に果たされています」

旗艦『グランド・ローマ』のブリッジで、ルキウスが眼鏡の奥の瞳を細め、戦況モニターを見つめながら呟いた。

 

『すべてはネロ殿下の至高の威光のおかげだ』

マルクスが通信越しで応える。

 

「相手を殺さずに戦意だけを挫く……これこそが真の王の戦いというもの。敵の兵士すらも、いずれは殿下の寛大な御心に打たれ、我がローマの民となるのだからな!」

「それにしても、サザーランド相手だと『ローマン・レギオン』はオーバースペック過ぎましたね、大人の軍隊が赤子の玩具を捻り潰しているようです!」

作業着姿のアルベルトが、モニターに映る一方的な戦況を見て歓喜の声を上げる。

 

帝都ペンドラゴンの防衛網は、作戦開始からわずか一時間も経たないうちに完全に崩壊した。

主要な防衛拠点、軍の司令部、通信タワー、そして皇族たちの居住するエリアまでが、完璧にローマ軍の制圧下に置かれたのである。出撃した数百機のサザーランドは全機が無力化され、死者は数名、怪我人もわずかという戦争の常識を変える偉業が達成されつつあった。

 

そして——

 

○

 

ネロは地上を歩いていた。

懐かしきブリタニア帝都を。

 

しかし、感慨深いと感傷に浸っているわけではない、自身は最優先たる目標を遂行するため、1人行動していた。

 

足を止めた。

 

この帝都には似合わない古い神殿が、ネロの前に静かに、しかし大きく、ネロを待ち受けているように佇んでいた。

 




かなりダイジェストで進めます。
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