二シン合体の魔法少女! 作:ももはね
書き溜めのなくなったライブ感をお届け
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「あっは〜、優秀だってことで配属されたのにぃ、一週間も保たず増員されるのってぇ……どんな気持ちですかぁ〜?」
魔法少女協会、その施設の中で甲高い人を苛つかせる声が響いた。
場所は医務室、清潔なベッドと簡易的な救急具もある。病院と比べれば遥かに貧弱な設備だが、最低限命を繋ぎ止めることはできるだろう。そこのベッドに横たわるのはヒナタとヒバナの二人で、その近くで立ったまま「けひゃけひゃ」と笑っているのはまた別の魔法少女であった。
髪と瞳はピンク色。桜というより、蛍光色に近いピンク色だ。
彼岸花の柄が描かれた小袖に、腹の辺りで帯を巻いて以下は赤い袴を履いている。大正期のハイカラな和服のような格好だ。その上に純白の白衣を纏っている。
さらに、首元には聴診器を提げており、時代錯誤でチグハグなヤブ医者のような格好であった。
身長は二人よりも低く、顔つきはまだ幼さが残っている。だが、その顔は二人を嘲笑するかのように歪められていた。
「ねぇねぇ先輩ぃ、教えてくださいよぉ〜?」
「うっざいわね……」
「感謝はしていますが、どうしてそう人を煽るのか……」
嘆いた二人はそれから目を逸らして自身の傷口を眺めた。飛蝗の魔獣との戦いによって傷付いていたその体はまるで逆再生するかのように治っていく。それを見て笑みを一段緩めた白衣の少女は真面目な顔で改めて二人の全身を観察する。
「……うん。これで
話しながら少女の体が光に包まれ、霧散。白黒の協会制服に身を包んだ少女が姿を現す。その手には『魔法の杖』が握られていた。
「回復効果のある魔法の中でも最上位の再生能力、【元に戻す魔法】。相変わらず強力ですね」
ヒナタが傷のあった箇所を眺めながら感心して呟く。
自然に関する魔法や魔力そのものを変化する魔法など、魔法少女の魔法はシンプルな物が多い。ヒバナとヒナタ、炎と結界はその典型例だ。探せば腐るほど似た魔法の持ち主が見つかるだろう。
それに対し、まさしく魔法のような奇跡を引き起こす特殊な魔法はかなり希少だ。一応、サキの合体もこれに属している。
「けひゃっ、まあこれでご飯食べさせて貰ってますからね〜。先週も地方で起きた災害現場で治して周ってましたから〜。ちゃんぽん美味しかったなぁ」
「私たちの後輩なのに、先に現場入りしてるものね。そんな天才魔法少女様が、どうしてこんなところに来たのよ?」
ヒバナの言葉にヒナタも無言で頷いて同調する。それに少女はけひゃっと笑みを深めた。腕を広げ、小さな体を大きく威張り、高慢な笑みを見せつける。
「私、
一瞬の静寂──ヒバナの声が響いた。
「は、はぁー!? あ、アンタがここに!? なんでよ!」
寝ていたのに体を起こしてまで叫んだヒバナに、メイコは露骨にがっかりした顔で肩を落とす。
「……何ですかヒバナ先輩。嫌なの? 私がいると」
低い声音。明らかな不機嫌を隠しもしない語気にヒバナは言葉を詰まらせ「あ、えっと?」なんて狼狽えながら興奮していた心を落ち着かせて言葉を改めた。
「い、嫌じゃないわよ。アンタのことは大事に思ってるし。でも、ただでさえ回復能力って希少なのに、その中でも優秀なアンタをこんな田舎に配属するなんて信じられなくて……」
「ええ。メイコなら何処でも引くて数多……というより、全国海外に至るまで申し出は出されていますよね? 協会も、こんなところで燻らせることを良しとするとは思えないのですが」
心底理解できぬ、と言いたげな二人。その過程でこの町を
「い、一応ここって先輩たちの持ち場でもあるんだよね? なんでそんな卑下するんですか……?」
「私たちも優秀だけどまだ二流。ここに来たのは一人前になる為の試験みたいなものだし。重要施設が一つもないんだから、お世辞にもここは都会だなんて言えないでしょ。私たちみたいな、見習いの試験にピッタリなのよ。勿論、やるなら本気でやってるけどさ……アンタはもうプロとも共同でやってるじゃない」
それにメイコは「チッチッチッ」と指を振りながら舌を鳴らす。そして高説でも垂れるように小さな胸を張ってみせる。
「一人でも色々とできるように成りたいなぁ、そうじゃないと自信無くしちゃうなぁ、もう引退するかもなぁ、って言ったら、許可が降りたんだ〜!」
「「……」」
メイコは「いえぇい!」とダブルピースで楽しげに、二人は「(脅した!?)」と絶句する。
メイコの魔法は非常に強力で替えが効かない……とまでは言わないが、中々見つかるものではない。世界でも有数の魔法少女大国である日本国内ですら有数の才能。海外では国によっては徹底的に管理されることもあるほどの能力である。万が一、それを逃しでもしようものなら……上司は胃を痛めながらメイコを見送っていた。
「……まあ、それにですよ」
メイコは表情を消し、真面目な顔で。
「『鉄食い蜥蜴』、『分裂飛蝗』共に新種の魔獣ですね。軽い調査が入ったそうですが、どちらも二級と判定が出されました」
魔法少女協会はこれまで発見した魔獣について調査、研究に日夜労力を割いている。そして、それらには危険度を基準として上を一級から、下を五級として割り振っていた。
参考までに、純粋な戦闘能力だけでの階級と想定した場合、『魔法の杖』なし魔力強化のみの平均的な魔法少女が四級、『魔法の杖』及び『魔法服』あり魔力強化のみの平均的な魔法少女が三級、あとは魔法少女本人の才能によってブレがある。
二級の魔獣と言えば、杖持ちの平均的な魔法少女が三人以上居て比較的安全な討伐が可能とされているほどの怪物。
「国内外問わず、最近は以前より強力な魔獣の出現数が増えているらしくてですね〜。この辺はそれが顕著っぽくて。ちょうど先輩たち以外に協会の魔法少女は居ませんし、増員は予定されてたんです」
表情を緩めたメイコは、
「まぁつまりぃ〜、先輩方も強いですけど、それだけじゃあ力不足だってことで〜す。おわかりですか〜?」
改めて、態度を崩してそう締め括った。
その言葉を受けて二人は小さく頷き、ヒナタは顔を暗くした。
「あの黒と桜色の魔法少女についてですが……そちらは?」
渾身のキメ顔を無視されたメイコはムッとしつつも顎に指を当てて思い返す。
「んー、よくわかってないみたいですねぇ。というか! それってお二人の仕事ですよね〜? サボったんだ〜?」
「違うわよ。拒否られたの。協会所属じゃない以上、民間人だもの。無理に迫るのは外聞が悪いでしょ。ただでさえ協会ってヒトの受け悪いんだし」
「あらま、入ってないんですね〜。なんでだろ?」
「いいから。少しでも教えてください」
食い気味の低い声音。明らかに不機嫌なヒナタに、メイコは若干ビビりながら彼女──は怖いので、ヒバナへ向かってから首を傾げた。
「うぇ? な、何かあったんですか〜?」
ヒバナはそんな二人の様子に溜息を溢しつつ、どちらにも配慮すべきであるなと言葉を選ぶ。
昨日は戦闘直後なのと死人を目の前にしたこともあって、今更だけれど頭に血が昇っていたと自覚した。あの場でサキへ向かって放った言葉は、少なくとも
彼女にとって、昨日のことは魔獣相手に覚悟が足りず殺し損ねたことと、サキへの無遠慮な言葉とで、二重に思い出したくない黒歴史となっていた。
「色々よ。別に本気で
「……?」
首を傾げに傾げるメイコはヒナタから向けられる目力に負けて必死に頭を回転させる。いい加減に情報を口にしないと殺されるのではないかと思うほどの気迫であった。
「と、とは言いましても、本当にないんですよ〜。情報班がザコザコって訳じゃなくて、魔法服の認識阻害もありますしぃ」
「……しょうがないですね」
「ま、とりあえず!」
ピッカーン、とメイコは『魔法服』を展開させた。
「これからは無敵の魔法少女、メイコちゃんが付いてるから、この辺の魔獣に苦戦しちゃうお二人も安心して守られてくださ〜い!」
挑発的な言葉、顔もニヤニヤとしている。だが、嘲笑や侮蔑はない。それっぽいだけで、それがないことを二人は知っていた。あるのは本心からの『安心して欲しい』という気持ちだけだ。捻くれ過ぎて原型がなくなっているだけで。
──『ど、どうすればお二人みたいに強くなれますか!』
──『はいっ! 私も最近はやっと魔法が使いこなせるようになってんです! 見てください。全身に魔力を纏って、それを常に元に戻し続けることで殆どの衝撃を無効化できるんですよ!』
──『けひゃっ、せんぱーい。まぁた私が勝っちゃいましたね〜? がんばれがんばれ、後輩に負けないよう頑張ってくださいよ〜』
──『ゔぇぇえ!? どうしてお祝いしてくれないですか!? 私の誕生日だったんですよ!? 薄情者! きらい、じゃないけど好きじゃないかも!』
昔は素直だったのだ。いつの間にか、何故だかグれてしまったけれど。それでも、根が素直なのに変わりはないし、可愛い後輩にも変わりはないのだ。
「上等よ。次の模擬戦覚えておくことね。遅延に遅延しまくってガス欠させてやるわ」
「っうぐ」
「私も。メイコちゃんの防御力は最高級ですが、攻め手に欠けますからね。持久戦なら燃費の良い私が上です」
「っうぐぐ」
メイコはベッドの一つに顔を埋めて黙り込む。
昨日の怪我で寝たきりだったヒバナは、およそ半日ぶりに立ち上がって軽く体を解しながらその小さな背中に手を乗せた。
「アンタが居るだけで現場の生存率は爆上がりだもの。頼りにしてるわよ」
ヒナタもまた、立ち上がるとヒバナの手の上に重ねて手を置いた。
「最近はお互いに忙しくて中々会えませんでしたからね。久しぶり会えて、お話できて、嬉しいですよ。メイコちゃん」
メイコはニヤけた口元を腕で隠すように目だけを上げた。
「けひゃ……もしかしてぇ……先輩たち、私のこと大好きなんですかぁ〜?」
「まあ、どちらかと言えば好き側ではあるけど」
その言葉を聞いて、調子に乗ったメイコはがばっとヒバナへ抱きついた。
「けひゃひゃっ。そんなに好きならぁ、キスさせて上げてもいいですよ〜?
「調子乗んな」
ヒバナチョップ。
「あひぇっ」
。 以下作者の独り言 。
メイコは元々は魔法がうまく使えず落ちこぼれで虐められていた。そこを二人に助けられたことで懐いた。
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