牢屋敷にはおぎゃりくらいしか娯楽がない 作:おぎゃる丸
どんな人にもお母さんは居るものです。
お母さんが居なければ生まれることなんてできないのですから、当然の話です。
けれど、ある男の子はお母さんを知りませんでした。
泣きながら探しても、お母さんは見つからなかったのです。
孤児院に入れられてしばらくそこで暮らしてもお母さんの代わりはいません。
どちらかと言えば小さい子をお世話することばかりで、それにも嫌気が差して、家出の準備をしている最中に知ってしまったのです。
男の子が来てから孤児院に多額の寄付が来るようになりました。
その代わりに男の子を特定の住所に近づけないでほしい。
そんな話を聞いてしまい、男の子はそのまま孤児院を飛び出してしまいました。
きっと、お母さんが自分を遠ざけている。そう思ったからです。
お腹が空いても眠くても寂しくても、ずっとお母さんを探し続けた先でついに、お母さんを見つけたのです。
ちょっとだけ自分にそっくりな妹と弟を愛おしそうな表情で見ていたお母さんを見て堪らず飛び出してしまったのです。
でも、見つけたお母さんはもうその男の子のお母さんではありませんでした。
◐
ここは、魔女になりうる因子を持つ少女達を監禁して共同生活を送る牢屋敷。
二人一組に与えられた部屋は囚人を捕らえておくための牢屋で、その一つでは、男女二人が相部屋になっている。
「メルルママー! おっぱいチュッチュッさせてぇーん」
「いや、それはちょっと……い、嫌です」
囚人番号657番
恐らく、日本全国おぎゃりスト協会主催のおぎゃりンピックが開催されていれば、彼が全種目で金メダルをその首にぶら下げていただろう。
「お前のせいで何人死んだ……?」
「ええと、沢山ですが……それが何か……?」
今までメルルの目的のために数え切れないほどの魔女になる可能性を秘めている少女達を監禁して、最終的には殺すか、冷凍保存するという末路を辿らせてきた。
自分の身勝手な目的の犠牲になった名前すら覚えられていない彼女達には、申し訳ないと思いつつも、どうでも良いとも感じていた。
「やばい! メルルマッマがチュッチュッさせてくれないせいで頭痛くなってきた!」
「い、いけません! よしよし……これで痛くないですからね」
膝枕のまま、頭を撫でられると痛みが引いていく。
これは比喩でも何でもなく、メルルの魔法のお陰で修復されていく。
何度か治療のついでにアキトの度し難い性癖を治せるか試したところ、不思議なことにメルルの魔法をもってしても彼の性癖は矯正できなかった。
「ど、どうしてアキトさんは私のことをママって呼ぶんですか……?」
「牢屋敷にはこれくらいしか娯楽がないから……」
「そんなことないと思いますけど……」
娯楽室も図書室も用意して、最低限の娯楽はあるはずなのだが、アキトにとってはそうでないらしい。
メルルには異性の考えることはよくわからなかった。
「そもそも嫌なら、膝枕なんて断れば良いんだよ」
「断ってますよね……?」
「じゃあ、俺は今どこに寝てる?」
自分の膝の上にはアキトの頭があり、それを退かせば良いだけなのだがメルルには何故だかそれができなかった。
「頭痛を訴えてる人を介抱するのは当然では……?」
「もう治してもらった」
「……」
アキトが勝ち誇った顔をしていると、メルルが無言で彼の頭を退かして自分のベッドまで戻ってしまう。
「……甘えられても、もうしません」
ヘソを曲げられてしまい、ピシャリとカーテンを閉められ、メルルにシャットアウトされてしまう。
まだおぎゃり足りない。
まだまだおぎゃっていたい。
この様子では頭痛を訴えてもメルルは出てこないだろう。
「あぁん! メルルママぁ……!」
この後、黙って寝ていたら一分ほど、おぎゃり許可が出た。
これ、二週目はヒロにおぎゃることになるんですかね(鼻ホジ)