やっぱ左様右様ってかなり格が高いっぽいよね。
その二人が旅の坊さんと協力しなければいけなかった手長脚長の全盛期って……
─何でこうなった
色姫は首を傾げる。
右を見る。猿と蟹が大暴れ。
左を見る。鬼2体が大暴れ。
前を見る。あんまり脳に良くなさそうな黒と白の触手が暴れている。
オカシイ。
ここは影森家のお屋敷。無茶苦茶にヤベェい人たちの拠点のはず。
では先程から影森の人が叫んでいる言葉は?
敵襲。
敵が襲って来たと書いて敵襲。
普通、そこら辺のヤクザより恐ろしいことをしてそうなこの家に襲撃をかます馬鹿がいるか?
「いたからこんなってるんだけどさ」
どこで歯車が狂ったのか。
空港を出れば直ぐに影森の人が待っていた。
紹介状は確かに届いていて、おぢに感謝した。
そのまま黒塗りの車に乗せられて、ごめんなさいねーとある程度行ったところで目隠しをされた、
まあ最終的に何もされなかったから良いのだが。
「親方様が帰って来るまでお待ち下さい」
と言われてお茶やら菓子やらまぁ高そうな物を出してもらって、ありがたくケテケテと食べていたらこうだ。
「頭おかしいんじゃないですか」
「テテ⁈」「ケケ‼︎」
一人だけツガイと一緒にいる男に色姫が馬鹿を見る目で言葉の刃を投げた。
「ああんッ」
男、鬼、鬼。3つの顔がぐりんと色姫の方を向き、合計六つの目玉が色姫を見つめる。
「ちょっ、お客さん! 何やってんですか逃げなきゃ」
「おい、ガキ! 俺の頭が何だってぇ!」
一緒に避難してた人が色姫の前に立って壁になろうとてくれる。
男と鬼はドスドスと大声を出しながら近づいてくる。
─だからどうした
色姫はそこそこに切れていた。影森さんは良い人達だった。子供一人の戯言と聞き流さず、色姫達のやろうとすることに理解を示してくれた。
これからお世話になる良い人達だ。
それをこいつはドカドカと踏み込んで来て、好き勝手に暴れている。
影森の人達が逃げて、目の前の馬鹿野郎が我が物顔でドシドシと人様の家を踏み躙っている。
─道理に合わない
「人様の家に勝手に入っちゃいけませんって知らないのかよハゲ!」
「俺はハゲじゃねぇ! やっちまえ。ベージュ鬼! 黄土鬼!」
─色のチョイスが微妙
主に命令された鬼達は棍棒を振り上げる。先程まで家屋を壊していた物だ。人間が喰らえばひとたまりもない。
しかし色姫は鬼の方へ行く。
ほぼ同時に棍棒は振り下ろされた。ブンと空気を跳ね除けながら、色姫を襲う。
「?」
「?」
鬼達は首を捻った。肉を潰した感触が無いからだ。
「馬───」
色姫は鬼達の攻撃を潜り抜けて、男の元まで辿り着き、金的に蹴りを放った。同じ男としての同情などなく、全力だった。
遅れて鬼達は色姫が後ろにいることに気づき、棍棒を投げようとする。
が、それをケテケテは許さない。
テテとケケが鬼達を挟み込む。
そしてお互いの断面をお互いに向けた。
すると不思議なコトが起きるのだ。無情なコトが起きるのだ。
何故ケテケテは上半身と下半身に分かれているのか。
それは列車に引き裂かれたからだ。
これは過去の再現。
ケテケテの上半身と下半身の間には列車が通るはずなのだ。
ガタンゴトン。ガタンゴトン。
どこからともなく音が鳴る。
姿は無い。
それでもここに在る。
ここに来る。
「プギャっ」「がバッ」
姿なき列車が鬼を轢いた。
指一つ動かす様なちょっとの抵抗すら許さずに轢き潰さた。
一瞬。
ツガイ使いの傭兵として裏の世界で田寺程では無いにしろ名を上げていた男が、遡れば室町時代まで遡る古強者の鬼がこの一瞬で倒れた。
それを成したのは十四歳の少年と都市伝説となってしまった人からツガイになった少女。
喧騒が止み、敵も味方もこの場にいる全てが二人に注目していた。
味方はまさかこんなにも強いツガイだなんて思っていなかった。
敵はまさかの戦力。事前に渡されていた情報にないイレギュラー。
敵は全員がこう考えた。あいつをどうにかしなければ。
味方、つまりは影森の非戦闘員はこう考えた。彼らを中心に戦えば切り抜けられる。
「けひゃゃひゃひゃびや!!」
「オスンジャネーゾ! ゼツダタイニオスンジャネーゾ!」
猿と蟹が我こそはと動き出した。
猿が蟹を擽り、蟹が変形する。丸で日曜朝に放送される戦士達が持つ様な、盾と鋏が合体した様な姿になった蟹を猿が装備し、踊り出た。
さあどうでる。
敵も味方もどちらも同じ事を考えていた。
─お客さんに合わせるぞ
─あぁ!
─腹くくりました
非戦闘員とはいえ、ツガイ使い。ツガイ使いでないものと比べれば戦える。
更に客であり、まだ子供の色姫が戦ったのだ。大人であり、影森への恩がある自分たちが戦わない訳にはいかない。
敵の方はそんな人情は欠片もなかった。
裏社会で有名だった男をたおした奴を倒せば報酬が上乗せされるかもしれない。この場ににいるツガイ使いは今更引くことなどできない根っからのクズばかり。
負ければそれは死に直結している。黒谷フユキの閻魔帳でバラされたら人情家ぶってる影森にぶち殺される様なことしかしてない。
あのガキを殺して、あの強そうなツガイを奪う。
そんな下卑たことさか考えられない、救えない者たちの集団だった。
色姫が動く。
テケテケが動く。
「ばたんきゅーッ」
そして二人同時に倒れた。
「は?」
「へ?」
あの列車攻撃はぶっつけ本番で、何かやればできたみたいな代物。代償は二人の精神力。
案の定き限界を超えてしまった色姫とテケテケは二人仲良くここ一番というところで倒れてしまったのだ。
「え〜⁉︎」
そして覚悟は決めたは良いもののやっぱり弱い影森の非戦闘員は元からピンチだったというのに更にピンチになってしまう。
「やっちまえ!」
それとは正反対につけ上がったのは敵。
鴨が目の前で身を捧げた様にも見えたのだろう。
ケヒヒと下卑た笑いが自然と浮かび上がっている。
影森の者たちの足が震える。
当たり前だ。怖い。恐ろしい。
命を奪おうとされているのだ、当たり前だ。
それでも大人たちは子供を守ろうと身を乗り出した。自分たちのために怒ってくれたのであろう子供のために、両の腕を大きく広げた。
「ふん!」
そういう良き者たちを神は見ている。
拳一発。それだけで彼らを襲っていた邪な者共が蹴散らされた。
「中々勇ましい男子だ。良いな」
ソレは正しく勇ましき獅子の片割れ。紅と白の立髪を持つ女君。封を諌める者。
名を左。
東の村の守り神、左様。
色姫は割とプッツンするとグイグイいく東方仗助タイプ。
感想くれー