「東村だとか影森だとかごちゃごちゃ面倒くさい」
「どつちだろうが俺の首を撮りたい奴は取りに来い!」
「ただし全員返り討ちにした上で情報を搾り取らせてもらう……ってな!」
黄金色の髪に強い意志を宿す紅き瞳を持つ少年、ユルが啖呵を切った。
夜と昼を別つ双子の片割れ。その身に封の種を宿す者。
勝手な大人たちに翻弄され続けた少年の覚悟を決めた宣誓。
空気が震えた。
ユルよりも遥かに長く薄暗い、血に濡れた道を歩いてきた者たちをして、ただ封を持つ可能性があるだけの子供などと口が裂けても言えない覚悟があった。
「──」
「────っ!」
「───」
「────」
─気まずい
明らかに裏の世界の話が繰り広げられている。
ケテケテと契約してツガイ使いになったとはいえ色姫は一般人。
知りたくない。
知る必要はない。
知っていたら絶対もう一般人として生きられない情報。
「助けてぇ」
「テテテ」
「ケケケ」
色姫は土壇場で覚悟決められるタイプの人種であり、土壇場でじゃない場でのこういう恐ろしい話は普通に無理だ。
深夜徘徊が趣味なだけの何ちゃって不良にはまじもんの話はきつすぎる。
─ご飯は美味しいんですよ! でもね、そういう話にならんから部外者入れないでくださいよッ
「そういやさぁ、その子ってどういう立場なの?」
話が一区切りついたのか、田寺と言われていたへらへらした雰囲気を纏う癖に根っこにある誠実さを感じさせる男が色姫に注目を当てた。
─やめろください
「うちの客だ。昔面倒見た奴からの紹介での、ツガイ関係の問題はうちが一番可能性がある」
「え? じゃあ一般人じゃない⁈ 可哀想でしょさっきの話聞かされちゃぁ」
「まあ、だが昨夜の襲撃でうちのもんを助けてくれたらしいからな、何も話さないのも誠実さを欠くじゃろうて」
田寺ははーっとため息を吐いた。
─絶対身内として丸め込む気だろ
ツガイ使いは少ない。だが少ない人数の全てが一騎当千になり得る可能性を秘めている。
まずツガイ使いは基本的にツガイが見えない相手に圧倒的な有利だ。戦闘ツガイでなくても、見えていない者ならば容易く倒せる。
それに何かの間違いで神級と契約すればただの人間が戦車と同等以上の戦闘能力を持つようになる可能性まである。
故にツガイの存在を知る組織はどうにかしてツガイ使いを身内に引き込もうとする癖がある。
─まあ外部協力者くらいかな……
「うむ、起きたか」
「知ってるのか左さん?」
「昨夜見た。己が身一つで鬼に立ち向かった中々勇ましい男子だ」
「鬼に⁉︎ それは凄いな!」
「何じゃ昔会った鬼退治の坊主を思い出すのぉ」
わいわいと盛り上がる東村トリオ。
その会話の中の違和感を田寺は見つけてしまった。
「あれ? 君ツガイ使いだよね。ツガイの相手って自分のツガイに任せなかったの⁈ 」
田寺が驚くのも当然だ。
ツガイの相手は基本ツガイ。勿論例外や、やりようはある。
だがそれでもツガイは人間が生身で相手できる存在ではない。
ユルが契約しているツガイの左右様を見れば分かるだろう。
純粋な暴力としては勿論、空も飛べる。岩の如き硬さ。
ツガイは人間が相手するには理不尽すぎる。
「テケテケは女の子だから」
─かっこよッ
可憐な顔から放たれる男前な言葉に今回ばかりはみんなの心中が一致した。
狩り人マインドな者はそれでこそ男だとうんうん頷いた。
必要だから戦う組はたまにいる野生のカクゴがんぎまりマンに頭が痛くなった。
戦いをしない者は一般人って何だっけと途方にくれた。
「改めて、影森さん。僕の友達のテケテケが成仏する方法を探すのを手伝ってもらいってありがとうございます」
場が色姫の話題に移るやうだったので、協力してくれるという影森の当主に改めてお礼をする。
「あんまし畏まらんでいい。こちらとしてもうちのゴタゴタに巻き込んですまんかったな。人間からツガイになる例はほば無い。こっちも貴重な情報が得られるんだ。お互いウィンウィンじやからの」
「それでも、やっぱりありがとうございます。そしてよろしくお願いします」
「うんうん、よろしくな」
影森ゴンゾウは左右様などの他のツガイと戯れている色姫のツガイ、ケテケテを見る。
別にケテケテのツガイが珍しいわけではない。全国各地で似た様な都市伝説は噂になり、それを元にしたツガイが生まれることはよくあることだ。
しかし噂の大元。実際に悲惨な目に遭ってしまった人間がツガイになった例などほぼ無い。
オシラサマなんかは伝承では人と馬が神様になったツガイだと言われているがその真相を把握する術はない。
ゴンゾウとしても目の前の若者を手助けしてやりたいという思いも勿論あるが、稀有な事例のデータを収集できるという打算もあった。
─しかし運がない、いや逆にあるのか?
同情することがあるとするのならば、アサとユルが生まれた時にツガイと関わりを持ってしまったこと。否が応でも二人を取り巻く騒乱に巻き込まれる。
─まぁ、聞いた話素質はある様だし稽古でもつけてやろうかの。此奴も男じゃ、女の前では格好つけたいだろうしの
影森家当主、影森ゴンゾウ。思いやり有り、打算有り、清濁併せ持つ彼は目の前に広がる未来を歩む者たちの歩む道のりに幸あれと思うのだ。
ちょっと適当になったかも
感想くれー