「見つ、からないーいっ」
影森ジンの執務室。そこは全国各地からツガイと関係するであろう情報を集めた、民俗学的にとんでもなく価値のある空間。
そこで色姫はバタンと倒れた。
人からツガイになった例など中々見つからない。
「コーヒーです。どうぞ」
「ありがとうございます」
そんな色姫にホットのコーヒーを差し出したのはこの部屋の主である影森ジン。強面だが誠実な男だ。
「想像以上にテケテケさんはレアケースなようですね。影森の力を使ってもここまで情報が見つからないとは……」
二人の視線の先にはジンのツガイの片割れであるアイちゃんと戯れているケタケ。
見た目深海魚と胴体泣き別れの少女。絵面は不気味極まれりだが主二人からしてみれば微笑ましい光景だった。
しかし現実に向き合わなければいけない。
進捗は未だゼロと言って等しい。社会科に特に興味を持っていない色姫が各地の伝承の知識を付けたくらいだ。
「お前滅茶苦茶レアだったんだな」
「ケテテテテ」
ムフンと胸を張るケテケテ。
レア度で言えば某運命ゲームの星5くらい。
「やっぱり、左右様に話聞きたいな」
長く存在していて、人間が対話することができる神様などそういない。左右様ならば何か知っているかもしれないという期待が色姫にはあっは。
愚痴るように呟いたそれにジンは少し固まる。
そして五秒のタメの後、意を決したように口を開いた。
「色姫君はアサちゃんやユル君のことをどう思っています?」
パラパラ捲られていた紙の音が消えた。シーンとした時間ができあがる。
アイちゃんもケテケテも戯れるのを止め、主の方を気遣う。ツガイ使いにとって昼と夜の双子の話は生半可な態度でできるものではない。
自然と場の空気は引き締まる。
正直な話をすればジンは双子の話を色姫にするのは反対だった。巻き込まれた客人に誠実さは欠けてしまうかもしれないが、知らない方が行きやすいことは沢山ある。双子の話はその最たる例だ。
それを無理矢理聞かされた色姫が双子に対して何を思うのか。
ジンは知っておかなければならない。どれだけそれが大人の勝手な都合であろうと知らなければならない。
「放っといてあげたらいいのにと思いました」
「人が抱えれるのは自分の腕の中に入るくらいのものだけなのに。みんなそれを超えたものを欲しがってる」
「馬鹿だと思いました」
テテの手をにぎにぎと掴んで離してを繰り返しながら、色姫は続けた。
「力が手に入ったら全て解決なんてある訳ない。世界はそんな単純じゃない」
「みんな馬鹿だ。他の人と違うものが見えてる癖して、他の人が見えてる、自分たちにも見えてるはずのものを見えてない」
色姫の言葉はジンの胸にとすんと入ってくる。
─そうだ
ジンはどこか安心した。
アサ達を取り巻く現状を馬鹿だと言ってくれたのが一般人の少年だったことに喜んだ。
影森は身内には優しい。が、一歩外を出れば社会のどうしようもないモノばかりを相手にすることになる。
しかし真っ当に親から愛され、他のために動ける少年が、 バカバカしいと言ってくれた。
「ありがとうございます」
「Mなんですか」
「違います」
結構扱き下ろしたはずなのに、怒るどころか感謝が返ってきて流石に色姫も戸惑う。
─しかし、手に余るものを抱えようとしているのは貴方もでは
色姫という少年は十四歳。未だ中学生。友達のために奔走する子供。
顔立ちは未だ幼く、声は声変わりしたばかりなのだろう。
このいないけな少年を巻き込んでしまっている。言い訳をすれば仕方がないことだで済む。運が悪かったで済む。
巻き込んだ。
これを忘れてはいけないとジンは心に杭を打ち込んだ。
双子の話はこれで終わりだ。と部屋の全員が口に出すまでもなく感じとった。
またパラリパラリと古文書を捲る音が空気に吸い込まれ、ツガイ達は戯れだした。
「今度田寺と会わなければなりません。」
「そんなんですか」
なんてことないように言ってみるが、色姫は内心ジンに同情していた。
色姫の目から見てジンと田寺の相性は余り良くない、寧ろ悪いと言ってしまってもまかり通るだろう。
どちらも、心の真ん中に誠実さがあることに変わりはない。が、ピシッと、きちんとしているジンとへらへらしている田寺ではそりが合わないのだろう。
色姫としては田寺に悪い印象はない。一般人なのに裏の話を聞かされた色姫に気遣っていたし、双子の力を使って天下をどうこう──などとは考えていないだろう。
が、それは外様である色姫の考えていることだ。ジンからすれば元々敵対している相手であり、いけすかない相手であり、油断してはならな相手なのだ。
強面がデフォルトの彼だが、田寺の話題になると尚更険しい顔になってしまっている。
それが何だかおかしく笑ったかそうだったが、真面目な雰囲気はまだ続いているので色姫は吐き出しそうになるのを我慢するしかなかった。
「その時に色姫君が左右様に話を聞くことができないか交渉してみます」
「いいんですか⁈!」
それを聞いた色姫は面白いがるどころではない。
できることなら是非とも左右様にお話を聞きたい。
しかし影森と田寺がいる陣営は対立している。田寺個人とは協力関係にあるとはいえ、影森から頼み事をするのは些か不味いではないか。
そう考えたからこそのいいんですか。
「ええ、必要ならそうすべきです。可能性はある。ツガイ関係での問題の解決も影森の仕事です。やれることは、やりましょう」
「ここまで珍しい事例だと私たちとしても前例があった方が今後似たようなことでの対応がし易くなる」
誠実。
影森ジンという人間を色姫が現すのにこの言葉ほど似つかわしい言葉な無いだろう。
この一言に尽きる。
「ありがとうございます。ジンさん」
「いえいえ、私たちにも必要なことですから」
なんなきゃいけね」こと多すぎー。小説読めないアニメ見れない映画見れないよー。ちいかわの映画見たいー。
感想くれー。