ミヤコのとある稽古場
今ここでは獣耳と尻尾の生えた男女が二人いる、その二人は今竹刀を打ち合ってる。
パチン パチンと竹刀を打ち合う音が響き渡っており、優勢なのは獣耳の片側の一部分が欠けている少年のような見た目をした男の方だ。
「はっ……!!」
「くっ……!」
少年はトドメの一撃かの如く、竹刀を振り下ろす。すると女性の方は竹刀を落としてしまった
「1本……オレの勝ちだな」
「参りました……流石ですねフミヤ様」
──ー
稽古が終わりオレは水分補給をした後帰りの支度を進めている。
「ショウも腕を上げたな、以前より動きが早くなっている」
「……フミヤ様にお褒めいただき光栄です。これからも精進します」
先程まで稽古をしていたこの女性の名はショウという。彼女はミヤコの警らを担当しているミマワリ組というものに属しており、ショウはその中でもトップクラスの実力を誇っている。
「……いつも言ってるがオレに敬語を使う必要は無いんだぞ? オレはカミでは無いのだから」
「いえ、フミヤ様はミオ様に仕える立派なジュウシャ、そして実力もミマワリ組の者を上回っている……フミヤ様は尊敬に値する存在ですので」
相変わらず真面目な奴だ……それがショウの良い所ではあるが。まぁ本人たちがそっちの方が接しやすいと言うのであればオレも止める理由はない。
「ああ……それと、ミオもお前たちの活躍に期待していると言っていた」
「ミ……ミオ様が!? そ、そ、そ……そうですか……」
オレがそう告げるとショウは顔を赤らめ嬉しそうにニヤケ始めた……やはり分かりやすいなこいつ
──ー
「さて……これからどうするか」
稽古場を後にすると、オレは街をぶらぶらと歩いている。ここはヤマトで最も栄えている都市、キョウノミヤコ。ここには様々な店が存在しておりその中でオレは目を引くものを見つける。
「ん……これは? 七味唐辛子……だが普通のものと違うな」
「ああ、フミヤ様じゃないですか。この激辛オニ泣き七味どうですか」
「ふむ……興味深いな……一つ買うか」
オレは財布を取り出し七味を購入した
──ー
「いい買い物をしたな、早速今日の夕飯に試してみるか」
購入した七味を懐にしまいながらそんな事を呟き、オレは辺りを見渡す
「それにしても……相変わらずキョウノミヤコは賑わっているな。だからこそ……ケガレは集まりやすい。常に気は抜けないな……」
ミヤコのパトロールは常にミマワリ組の連中が行ってくれている。しかし、だからと言ってそれに頼りきりにする訳にもいかないからな。
「あ、フミヤ!」
後ろの方から聞き馴染みのある声が聞こえてきたので振り向く、するとそこには予想通りの人物の姿があった。
「む……ミオか」
こちらに駆けつけてきた黒髪でオレと同じく獣耳と尻尾を生やした少女、
「ミマワリ組の子達との稽古は終わったの?」
「ああ、以前より腕を上げていた。それと案の定……ミオの名前を出したらわかりやすい反応をしていたな」
「あはは……ショウってば相変わらずだなぁ」
さっきまでのやり取りから分かるようにショウはミオのことをかなり慕っている。それ自体は別に構わないのだが……残り2人の幼なじみを始めとした一部の存在にはとても強く当たっている……理由が理由なためあまり責めることは出来ないが。
「それで、どうした。オレに何か用か」
「うん、これなんだけど……」
「……これは、ムラサキマル。フブキの刀じゃないか。なぜミオが持っている?」
フブキ……イナリ一門のカミであり今はここから少し離れたシラカミ神社という場所にいる。フブキとそいつに仕えているジュウシャのマコトこそが残り2人の幼なじみだ。
「フブキってばこの間ウチとチカラクラベした時に忘れたみたいなんだよね……今頃無くしたとか言って慌ててるんじゃないかな……」
「……あいつ……! 人が手入れしてやってる刀を……次会ったら文句言ってやらないと気が済まないな」
ミオから伝えられた事を聞き呆れと怒りがごちゃまぜになってしまった
というわけだから武器を雑に扱われるとオレも黙っていられない、だがオレが言わなくても今頃マコトのやつにボロクソに煽られてるに違いない。いつものあいつららしくはあるが。
「だがまぁ一応……不備がないか確認はしておいてやるか」
「ふふ、やっぱりなんだかんだ優しいじゃん」
「……フン、誰に影響されたんだろうな」
何故かミオがニコニコしながらオレを見てくるんだが……まぁ別に悪い気はしないから良いか。これがマコトだったら絶対殴るが、理由はムカつくから。これに尽きる。
「あ、そうだ。それともう1つ……」
ワー
キャー
うわー
ミオが何が言いかけた時、後ろの方が何やら騒がしくなり始めた。気のせいでなければ悲鳴も聞こえてくる……まさか……!
「もしかして……ケガレなんじゃ……! 行こうフミヤ!」
「ああ……!」
オレが発するより先に、ミオはオレに指示を出した。それを聞いたオレはすぐさま飛び出す。
──ー
「やはりケガレだったか……」
オレ達が駆けつけた先には予想通り、そこにはヒトを取り込んだケガレの姿が。取り込まれたのは女性か、なんにせよ直ぐに祓わなければ……
「ミオ、お前はみんなを安全な所へ、カミであるお前がやるのが効率がいい。その間ケガレは俺が引き受ける」
「分かった……! でも無理はしないでね?」
キョウノミヤコは常に人が賑わっている。それはケガレが発生した時も例外では無い。この場合の最優先事項は周りのヒトビトの安全を確保する事。だからこそこうやって手分けして行う必要がある。
それに、もう少ししたらミマワリ組の連中も駆けつけるだろうから問題ない。
……それより、これくらいのレベル、一人で祓えなければジュウシャは務まらないからな。
ケガレはオレの姿を捉え睨みつけている、おそらく様子を伺っているんだろう
ならば、先手必勝だな……!
頭の中でそう思考した瞬間、オレはケガレに向け飛び出す
「っ……はっ!」
飛び出したオレを見たケガレは一瞬同様するも、すぐさま攻撃態勢をとる
「一撃で仕留めた方がいいな……」
大剣の刃を上へ向け、刃の部分に土を纏わせていく……そしてみるみる大きさを増していき……それは自身の身長を上回る大きさへと変化する
オレはその大剣を、ケガレに向けて振り下ろす
「
土を纏った大剣をケガレに叩きつけ直撃させる。
「……よし! 祓わせてもらう!」
攻撃を受けケガレが怯んだ隙を狙い、オレはケガレバライの力を放つ。するとケガレは消滅していき取り込まれていた女性の姿が現れる
「……怪我は無い、何とか終わったか」
この様子だとあと数分もすれば目覚めるだろう。何事もなく終わって良かった
それにしても、
「フミヤ! こっちは大丈夫……ってすごい! もう祓ったの?」
と、思っていたら後ろの方から声と足音が聞こえてきたので振り返る、そこにはミヤコのヒトビトを避難させ終わったミオ、そして騒動を聞き駆けつけたミマワリ組の連中の姿が目に入った。
「ああ、小さいケガレだったから一人でなんとかな。それに……これくらい一人で祓わないとあの自意識過剰に何言われるか分からないからな」
「自意識過剰……あ、マコトの事ね……あはは」
マコトの名を聞いたミオは乾いた笑い声を浮かべる。あいつの態度にはいつも悩まされてるからな。もう慣れたしそれがあいつらしくはあるがな。
──ー
「っ……」
「無事か?」
「……あれ……私……って、ミオ様とフミヤ様!?」
「ケガレに冒されてたんだよ、もう大丈夫?」
数分後、女性は目を覚ました。目覚めた瞬間オレ達の姿を見て驚かせてしまったようだが……この様子だともう身体に異常はないだろう。
「そうだったんですね……すみません……私……最近ダイエットしてるけど上手くいかなくて……周りの子は可愛い子ばかりだから焦ってしまって……」
「ケガレの原因はそれか……お前の努力を否定するつもりはないがあまり根を詰めすぎるな」
原因が判明し、女性に軽く忠告する。するとその女性は俯いてしまった。……しまった、落ち込ませてしまったか。
「ヒトにはそれぞれの魅力がある、少なくともオレはお前が醜いとは思わない。むしろ綺麗だと思うぞ」
「っ……!! ふ、フミヤ様! ありがとうこざいます」
オレはなんとか慰めの言葉をかけた、女性は落ち込みから回復したようだ……何故か顔が赤くなっているが
「フミヤってばまたそういう事言う……」
「…………何の話だ?」
後ろでこのやり取りを見ていたミオがそんな言葉を漏らす……何故オレが悪いみたいな目で見てくるのだろうか
──ー
「そういえばミオ、先程は何を話そうとしていたんだ?」
「あ……そうだったね、フミヤは知ってる? 最近、キョウノミヤコの子供たちが行方意不明になってる事なんだけど……親御さん達も心配してるみたいで」
「っ…………」
その言葉を聞いた瞬間、オレの脳裏にとある出来事がよぎった。
「…………まさか……」
「……だからこの事をフブキ達にも……って、どうしたの?」
「いや……なんでもない。その件についてはオレも気にかけておく」
「そう? ならいいんだけど……」
オレの様子を見たミオに問いかけられたが何とか誤魔化した、要らぬ心配をかける訳にはいかないからな……それに、おそらくだが今回の件とオレの頭に過ぎった事はまた別の事だろう。何故ならアレは……いや、今この事を考えるのはよそう。
──ー
その後、色々後処理を済ませ、オオカミ神社にある自室へと戻ってきた。ここではオレが武器の手入れをする為に必要なものが一通り揃っている。
「異常は無しか……全く……フブキのやつめ」
軽く愚痴を零しつつも、ミオから渡されたムラサキマルの手入れがたった今終わった所だ。
手入れを済ませたオレは部屋を出た瞬間偶然にもミオと遭遇した。この感じを見るにオレに何か用でもあるのだろうか。
「あ、フミヤ。ムラサキマルは大丈夫だったの?」
「少し埃かぶっていたくらいだ、問題ない」
いずれにしろフブキのやつには文句を言わせてもらうがな
「そっか、なら良かった。ご飯作ったけど食べる? お腹すいたでしょ?」
ミオにそう言われ自分が空腹である事に気づく。もうこんな時間だったのか。
「そうだな……頂こう。試したいこともあった所だ」
ミオはオレの言葉に疑問を浮かべたような表情をしている。
そんなミオと共にオレは食卓へと足を運ぶのだった
──ー
「焼きそばか……」
食卓へ向かうとそこにはミオの手作りの焼きそばが置いてあった。食欲を唆る色でオレの空腹は刺激された。
「えへへ、ウチの自信作なんだ」
「そうか、なら遠慮なく食べるとしよう」
「うん! 召し上が……!?」
オレは
「……こんなものか、いただきます……。む……この激辛オニ泣き七味……悪くないな、マヨネーズをもう少し足してみるか……」
さすがに七味は入れすぎたようだ……しかしここから更にマヨネーズを追加すれば上手く中和されるだろう。そう思い更にマヨネーズを追加する……む、もうすぐこのマヨネーズが無くなるな。まぁ部屋に大量に保存してあるから問題ないだろう。
「あ……あ……」
「ん……予想通りだ。やはり相性はいいな……ん? どうしたミオ、お前も食べるか?」
何故かミオはこちらを見て唖然とした顔で震えている、もしかしてミオもこのアレンジが気になるのかと思いそう声をかけたのだが……
「…………フミヤのバカァ!!!」
突如、オレの頭にミオのゲンコツが直撃し思わず頭を抑えマヨネーズ等を落としてしまう
「痛っっっっっっ!!!! 何すんだいきなり!」
「作った料理に調味料入れすぎるなっていったでしょ!!」
ミオは声を荒らげながらオレに怒鳴りつける。そういえば以前もミオとマコトが作ってくれた料理に対し、調味料を入れすぎだと怒られたことがあるな……最近は即席で済ませ尚且つ一人で食べていたからすっかり忘れていた。
「そういえばそんな事もあったな……だがより美味しく食べれた方がいいだろう。こっちの方がオレ好みだし何よりこれはオレの皿……」
「そういう問題じゃない!! この味音痴!!!」
オレは何とかミオを説得しようとしたがそれでもミオの怒りは収まることは無かった
「もうこれは没収するから!! どうせ部屋にもあるんでしょ!!! それも没収するよ!」
ミオはオレの足元にある調味料を取り上げオレの部屋に向かおうとする
「なっ……待て! せめてマヨネーズだけは……」
「なにか文句ある?」
「……いや、無い……済まなかった」
没収を阻止しようとしたがミオの圧に負け大人しく引き下がった。……こうなったミオには勝てん。
「……フン! 全くもう……普段は頼りになるのに……」
ミオは愚痴を零しながらオレの部屋に向かい始めた。備蓄してある調味料が無くなる事、明日から薄味生活になってしまうことに頭を抱えつつも目の前にあるマヨ七味胡椒盛りの焼きそばを食べる
……やはり濃い方が美味いな。今度バレないように調味料を追加する方法を考えておくか……
カミ
アヤカシが良いイワレを集めてなった存在。より強大なワザを使用することが可能でありヒトビトから慕われ皆を救う存在。
ケガレを払うため日夜奔走している
ジュウシャ
この作品オリジナルの存在。(2026年8月28日現在)カミに仕え、サポートする役割。誕生経緯は基本カミと同じである。
また戦闘力はカミをも上回るジュウシャも存在する。
カミとなったものは必ずジュウシャを付けなければならないという決まりはなくカミの希望、そして希望された者の同意よって決めることが出来る。
アヤカシ
イワレが溜まったヒトやケモノなどが進化した存在、ワザと呼ばれる特殊な力を扱うことが可能。
また、“ワザを扱う事が出来るのはアヤカシ、カミなどとヒトならざる者のみで本来はヒトに扱う事は出来ない。しかし昨今、例外と思われる存在が確認された”
※1部公式、及びpixivからの抜粋。また、独自解釈あり。