その後キュウビ様の部屋を後にしイナリ神社の廊下を歩いている
「その……さっきはごめん…ウチの為に」
「……それがオレの役目だ。お前は気にするな」
ミオちゃんは先程の事で罪悪感を抱いてるようだけど、それも無理もないだろう。幼少期のトラウマは……簡単には消えないよね、
「……」
ミオちゃんは相変わらず俯いたままだ、少し元気づけてあげないと……
「大丈夫だよミオ、4人で協力して子どもたちを見つけてあげよ!」
「ま……それにミオちゃんは気に病むことはないよ、天才で完璧で最強のボクがカッコよく迅速に子どもたちを……」
「お前は黙っていろ」
「そうだよ、マコトが強いのは知ってるけど調子乗らないの!」
「あれー? ボクの扱い酷くない?」
安心させてあげようとしたらフミヤ君とフブちゃんに怒られたんだけど、理不尽過ぎない?
「ぷっ……ハハハっ……!」
しかし、そのやり取りを見たミオちゃんは笑みを零した。
「みんな……ありがとね」
そう言ってミオちゃんは笑顔でボクらに感謝を述べた。少しは元気出たみたいで良かった。ボクが理不尽な扱い受けたのは癪だけど。
「ほら、この飴、ミオにもあげる!」
「うん……いただきます……甘っ……!」
「だよね! この飴ほんと元気でるよー! 2人も食べて!」
先程までボクらの中で少しばかり重い空気が流れていたが、ミオちゃんが笑ってくれた事でいつもの雰囲気が戻ってきた。
「どれどれ……? ほんとだ、美味し……」
「……そうか? 砂糖か練乳があれば」
「絶対言うと思ったよ」
──ー
その後フブちゃんはイナリ神社の巫女さんのご好意で両手いっぱいに持っていた飴を巾着に包んでもらいイナリ神社を後にし今は1度ミヤコの外に出た。
「よし、じゃあ捜査開始しよっ!」
「でも、イナリ一門はミヤコの外での捜索って言ってたけど……子供達はみんなミヤコの中でいなくなってるんでしょ? ……だとしたらミヤコの中にいる可能性が高いんじゃないかな?」
確かにミオちゃんの言う通りだろう、誘拐されてミヤコの外に連れ出されたという可能性もあるがその場合は目撃情報もあるはずだ。
「えっと……情報によると、今わかるのは子供たちのご家族、居なくなった大まかな時間くらいだね。これで探すのはちょっと骨が折れそう……」
「……もう少し情報が欲しいところだな」
「うーん……せめてボクらもミヤコの中の調査を出来ればいいのに」
いずれにしろ1度詳しくミヤコの中を調べた方がいい気がするけどボクらが調査したらダメなのかな?
「本当はイナリの子たちがご家族を尋ねようとしたんだけど……ダメだったみたいで」
「どうしたの?」
「……みんなミマワリ組に追い返されたって」
「あぁ……なるほど……」
するとミオちゃんとフミヤ君は分かりやすく頭を抱えた。
ミマワリ組のヒト達はどうもイナリ一門には当たりが強いんだよね。もちろん皆がそうって訳じゃないんだけどね。……ってなるとイナリ一門の子達を追い返したってのはうん……すごい心当たりがある
とは言っても情報を得ることができないんじゃ……
「こうなったら……むむむ」
「ん、なにしてんの」
「ミヤコの話題に聴き耳を立ててるの! こうなったら情報は耳で稼がないと」
するとフブちゃんは狐耳に手を当て上半身を左右にクルクルさせ始めた。またそうやって訳わかんないことして……
「むっ……! FOXレーダーに感知!」
「何かあったの?」
「ヒトビトの助けるを求める声が聞こえたの! すぐ行かなきゃ!」
「ちょ……! あぁもう……! ほんとに忙しいなもう……って早くない!?」
フブちゃんはボクら3人を置いて走り去って行ってしまった。こういう時ボクより早くなるの辞めて欲しいんだけど。
「全く……フブキってば……早く追いかけないと」
「ああ……方向的にミヤコの中だろう」
その瞬間だった
……ダッ!
背後から2つの影がこちらに飛び出してくる
「……っ……!」
そのヒトの形をした奴らはこちらに向けて攻撃を仕掛け……
ガキィン!!
ボクはそれを大鎌で受けとめる。
「…………」
攻撃を防がれたと分かった瞬間、奴らは体制を立て直す為か一度後ろへと飛びボクらから距離をとる。
「マコト!!」
先程までとは空気が一変し、全員が状況を察する。そして心配したミオちゃんがボクに心配の声をかけてくれた。
「こっちは大丈夫!! 二人はフブちゃんを探して!」
「でも……!」
「……相手は二体だ。辺りに他に潜んでる気配も無い。ならばマコト一人でも問題ない、それよりオレ達はフブキやミヤコに何かあった時のためにそちらに向かった方がいい」
「そーゆーこと、そっちは任せたよ」
心配してくれるミオちゃんに対しフミヤが告げる。実際フミヤ君の発言は正論であり、もしかするとミヤコにも襲撃してる可能性がある。なのでここでボクらは分散するべきなのだ。ってわけでボクもそれに賛同する。
「わかった……! 気を付けてね!」
そしてミオちゃんもそれに納得してくれたような態度を見せ二人はフブちゃんが走っていったのと同じ方向へと向かった。
この様子を見ても動じないあたり、奴らは完全に狙いをボクに限定してるとみていいだろう
「さてと……早速出たね、
……と、目の前にいるヒトならざるものに向けそう放つ。
ヒトマガイ
こいつらをボクらはそう呼んでる。こいつらはヒトの形をしているが目や口は無く髪も生えていない、全身が濁った黒に染まった存在である
「「…………」」
「相変わらず……喋れないか。知ってたけど」
見ての通りヒトマガイは言葉を発することが出来ずボクやフブちゃん達を狙っている……ということ以外は全てが不明である。
言ってしまえばアニメや漫画に出てくる戦闘員Aのようなものであるが、こんなんでも強さはそこらのカミを上回っており、
幸いにも現れる際は一度に多くて四体程のものであり今のところヒトマガイによる被害は出ていない。
強いて言うならフブちゃんが先手必勝とか言って突撃したら思い切りカウンターされたくらいかな、大事に至らなくて良かったよほんと。
「ま……早いとこ終わらせちゃおっか。フブちゃんのとこに行かなきゃいけないし……二体だけならすぐ終わるし」
ボクがそう呟いた瞬間、こちらの動きを伺ってたであろうヒトマガイが取り出し二方向に散らばる。
二対一、数的不利であるがボクは動じることはなかった……その理由は1つ。
「それに……君ら相手なら手加減しなくて済むからね。ケガレバライより全然楽だよ」
ケガレバライと違い
なんて考えているとヒトマガイはそれぞれボクの目の前に接近しており二体同時に攻撃をしかけてきた。
「よっ……えいっ……!」
しかしボクは二方向からの連撃を交わし続け、時には防いだり弾き返す。
避け続けているが攻撃が止む気配はない、にしても息はピッタリなんだよな……喋れないだけで意思はある……もしくはそういう風に作られたか。
「ま……おそらく後者だろうね」
どこの誰が作ったのかなんて全く分からないけど、ボクらを狙ってるって事は……カミやジュウシャを恨んでる奴の仕業って事かな? とはいえ立場上悪事を働くタイプの層から恨まれるのは仕方ないけど……
まぁそれが天才で完璧で最強のボクに嫉妬した奴が仕掛けてきたとか……? 有り得るな、ボクってば才能の塊だし
「ま……いずれにせよ……ボクの相手じゃないね……」
なんて考え事をしつつも、ボクは攻撃をしかけてくるヒトマガイの腕を二体とも掴む。
「これを……こうっ!」
そして腕を掴んだまま振りかぶり、近くにある岩に思い切り投げつけた。
岩に投げつけられたヒトマガイ達は立ち上がりすぐ攻撃を再開しようとしてるが……そうはさせない
なぜならもう既にトドメを指す準備は出来ているからだ
ボクは指で銃のポーズを取り、真っ直ぐ伸ばした人差し指の先に闇のエネルギーが込められていき……
「……デビルズフェイタルショット」
溜めたエネルギーをヒトマガイへ向け放出し、それを見たヒトマガイ達は避けようとしたが既に遅く……
ドガーーン!!
思い切り直撃し爆発を起こす
「よしっ……二体まとめて撃破完了……周りにヒトが居なくて助かった」
爆煙がおさまるとそこには身体が崩れ去っていくヒトマガイの姿があった。
「……倒す度にこれ見せされるの……後味悪いんだよねー」
喋ることもせず意思もなく、ましてや敵である存在とはいえヒトの形をしたものが目の前で無惨な最期を遂げるというのはいつ見ても気分のいいものではない。
それより……フミヤ君の言う通り近くに気配はない……これ以上増えることはないかな。
……また手がかりはなしか……いい加減真犯人にたどり着きたいんだけどな。
「ま、いいや。それよりみんなのこと追いかけよっ!」
──
ヒトマガイを撃破したその後、みんなのことを追いかけていると……
「あ! 来たよ!」
ミヤコの中を散策してるとそこにはフブちゃん達に加えてミオちゃんとフミヤ君の姿があった。
「お、いたいた……そっちは何事も無かったの?」
「うん、大丈夫だったよ。フブキが飛び出したのもケガレを察知したのが理由だったみたいでそれも解決したから」
「なんだ、飛び出す前に言ってくれればいいのに」
「えへへ、困ってる人をほっとけなくてつい……」
相変わらずヒト騒がせなカミサマなんだから、まぁこの感じだとこっちにヒトマガイが現れたってことは無さそうかな
「それより! ヒトマガイ出たんでしょ?! 大丈夫? 爆発した音も聞こえたけど……」
二人から聞いたのか、フブちゃんはボクにヒトマガイと遭遇した事を心配してくれてる。
「もちろん一人で倒したよ、だってボク天才じゃん?」
「うわぁ……素直に感謝したくない……」
「なんでさ」
「嘘だよ、いつもありがとうね」
「……ん」
お約束の雑な扱いかと思ってたらフブちゃんは笑顔でボクに感謝を伝えてくれた。感謝されるのはいい気分だけど不意打ちはちょっと動揺するから辞めて欲しい。
「……ちなみにだが、ミマワリ組のショウと会ってその際フブキと一悶着あってな」
「え、何があったの」
「私がケガレバライしようとしたら向こうも祓おうとしてたみたいでタイミング悪く衝突しちゃって……結局ショウさんに先越されちゃったんだよね」
「それでその後フブキに酷いこと言ってたんだよね……ごめんね? ウチ達が注意しておくから」
「大丈夫だよ、気にしてないから……2人とも守ってくれてありがとね?」
今のやり取りから察するにイナリ一門を追い返したという人物もショウさんのことで間違いないだろう。ボクの予想通りだ。ショウさんはフブちゃんに限らずイナリ一門全員に当たりが強いんだよねぇ……。その度にミオちゃん達に注意されてるみたいだけど。ボクにもあまり良い印象は持たれてないんだよね。あくまでヒトだからフブちゃん達よりはマシな扱いだけど。
「あ……でもいい事もあったんだよ。ね?」
「うん、ほらこれ。捜査資料の写しだよ。ショウが渡してくれたの」
そう言いながらミオちゃんはミマワリ組 備忘録と書かれた一通の封筒を取り出した。
「そっか……それがあれば少しは捜査が進められるね」
「それで……ヒトマガイについては?」
「難なく倒せたけど……今回も何も分かんなかったんだよねー」
ヒトマガイに関しては現れては倒す、現れては倒すの繰り返しで裏にいるであろうヒトマガイをボクらの前に送り付けたであろう人物については未だに分かっていない。
「そっか……ほんとになんなんだろうねあれ」
以前、ヒトマガイを倒さず弱らせて拘束し、検査にしてもらった際
その時、更に詳しく調べようとした瞬間ヒトマガイの体が崩れ去った事があった。それが調べられるのを防ぐためかヒトマガイの特性かは不明である。
「いずれにしろ……変わらず警戒しておく必要があるな。ヒトマガイを相手できるのはオレ達しかいないからな」
「ごめんね……? いつも守ってもらって」
「うん……ウチらもせめて簡単に倒せるくらい強かったらいいんだけど」
フブちゃんとミオちゃんは申し訳なさそうな顔でそう言った。
「気にしなくていいよ、それがボクらの役目なんだし……それよりも」
「うん……子供達のことが最優先だもんね」
そんなやり取りをしつつ、操作資料の写しを手にボクらはミヤコにて聞き込みを始めていくのだった
ヒトマガイ
この作品オリジナルの存在(2026年10月10日現在)
全身が濁った黒に染まっており会話能力を持たず顔のパーツが存在しないヒトの形をした何か。
全身にレイリョクが施されており、並のカミをも上まわる戦闘能力を持つ。ケガレに比べかなり低頻度ではあるもののフブキやマコト達の前に現れ襲いかかってくる。ケガレやヨウカイの類いではなく誰が何の目的に作ったのかは不明。(※ホロの花札にて登場する“マガイ”とは別物)