従順な巨人と嬌声の美姫   作:岩塩ゴロゴロ

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ちょっとだけ続けてみました。


第2話

「従順な巨人」――それが俺の英霊としての名だ。かつて奴隷だった男が、主人を守り抜いた逸話から生まれた呼称。映画のタイトルにもなり、後世にそう刻まれた。

ロストベルトNo.7、ナウイ・ミクトラン。あの地でORTを前にした時、俺の内側から湧き上がったのは恐怖ではなく、静かな覚悟だった。主人を守る。ただそれだけの衝動が、俺の体を巨大化させた。ORTの触手が空を切り裂き、大地が悲鳴を上げる中、俺は立ちはだかった。

 

「行け」

 

短く、マスターに告げる。ORTの一撃が俺の肩を砕くが、構わずに拳を振るう。倒れても、膝をついても、立ち上がる。奴隷だった頃の俺は主人を守りたいと思って無かった。だが、今は違う。

 

俺が稼いだ時間は、後に「ORT戦における最大のロスタイム」としてカルデアの記録に刻まれた。マスターたちはその時間で準備を整え、最終的にORTを打倒する。俺はその戦いで消滅したが、悔いはなかった。主人を守れたのだから。

 

カルデアに召喚された俺は、そのまま戦力として組み込まれた。マスターは俺を「壁」として運用する。敵より巨大化し、攻撃を一身に受ける。宝具『主守の巨躯』は、敵よりも大きくなることで主人への攻撃を遮断する。ゲーム上では自身にターゲット集中と被ダメージカット、防御力アップを付与する単体宝具だ。

 

しかし、妻であるリリアと共に編成し、彼女の宝具『嬌声絶叫・黎明の安眠妨害』の直前に俺の宝具を選択すると、その性質は一変する。

 

「夜はこれからよ、あなた」

 

リリアが艶やかに微笑む。彼女の腹部は臨月のように膨らみ、二十人の子供たちが彼女を囲む。俺の宝具は『主守の巨躯』から『閨闘守護・終夜の絶頂咆哮』へと変化する。

 

その効果は攻撃的だ。自身に付与されるバフは攻撃に特化したものに変化し、さらにリリアにも同様のバフを配布する。リリアの宝具が放つ嬌声の衝撃波は、通常時でも敵味方の強化を回収し、弱体化を撒き散らして敵全体に超強力な攻撃を叩き込む。だが、俺の宝具が先行することで、その威力は文字通り最上位に達する。高難易度クエストですら、このコンビネーションの前では沈黙するしかない。

 

これは生前の逸話の再現だ。俺との夜の営みが、リリアを翌朝も絶好調にさせた。彼女の声は屋敷中に響き渡り、使用人たちを寝不足にさせたが、当の本人は常に溌剌としていた。あの嬌声が、今や宝具として敵を粉砕する。

 

「あなたがいれば、私はいつだって絶好調よ」

 

戦闘後、リリアは俺の腕にしがみつきながら笑う。彼女の周りでは、二十人の子供たちがはしゃぎ回っている。マスターは耳を塞ぎながらも、感謝の言葉を口にした。

 

「君たちがいなければ、ORT戦は乗り越えられなかった。ありがとう」

 

俺は黙って頷く。言葉は多くない。だが、その巨体に込められた忠義は、誰よりも深い。

 

奴隷だった男は、主人を守り、妻を愛し、子を成し、そして英霊となった。後世のイメージが俺を巨大にしたが、その本質は変わらない。守るべき主人のために、俺は今日も立ちはだかる。

 

静かに拳を握り、戦場へと歩き出す。隣にはリリアが、背後には二十人の子供たちがいる。かつて奴隷部屋で目覚めた男の人生は、今や伝説の一部として、カルデアの戦いを支え続けている。

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