従順な巨人と嬌声の美姫   作:岩塩ゴロゴロ

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FGO夏イベント風

真夏の太陽が照りつける浜辺に、ひときわ目を引く影が二つ並んでいた。ひとつは、筋骨隆々の巨漢。身の丈2メートルをゆうに超え、肩幅は岩壁のようだ。その隣には、対照的に小柄で華奢な美女が寄り添っている。白いワンピースの水着を着た彼女の腹部は、今日も変わらず大きく膨らんでいた。

 

「まあ、今年も呼んでいただけるなんて光栄ね」

 

リリアがふわりと笑う。その声は、波の音をものともせず、浜辺中に響き渡った。近くで遊んでいた子供連れの家族が、驚いたようにこちらを振り返る。彼女は慣れた様子で「ごめんなさいね」と手を振った。

 

カルデアの夏イベント。英霊たちが思い思いの水着霊基で現界する季節だ。今年の目玉は、なんと俺とリリアの二人で一つの霊基を共有するという特殊な召喚形態だった。

 

「英霊って、そういう融通が利くのね」

 

マスターが呆れたように言った。いや、呆れているのはこちらだ。後世のイメージというのは本当に恐ろしい。映画ではいつも夫婦で並んで描かれ、絵画では常に二人一緒。気づけば「従順な巨人と嬌声の美姫」は、切っても切り離せない一対の存在として認識されていた。だから夏のイベントでは、二人で一つの霊基、という形になったらしい。

 

「で、宝具はどうなるんですか?」

 

マスターの問いに、俺は静かに拳を握り、リリアは艶やかに笑った。

 

編成画面では、宝具のアイコンが二つ並んでいる。片方には俺の拳の絵。もう片方には、リリアが大きく口を開けたシルエットが描かれていた。どちらを選ぶかで、宝具の性質が切り替わるのだという。

 

俺を主体に選んだ場合、宝具は全体攻撃になる。その名も『熱砂防波堤・巨躯の日陰』。巨大化した俺が浜辺に立ち、マスターへの攻撃を遮断する。そして押し寄せる波のごとく、巨大な拳が敵全体をまとめて粉砕する。ゲーム上では、敵全体に超強力な防御力無視攻撃を与え、味方全体にダメージカットと防御バフを付与する。攻防一体の宝具だ。

 

リリアを主体に選んだ場合、宝具は味方への全体強化に変化する。名は『真夏の嬌声・子宝連弾』。リリアが大きく息を吸い込み、二十人の子供たちが一斉に彼女の声を増幅させる。その咆哮は、味方の限界を超えた力を引き出す。ゲーム上では、味方全体のNPを50%増加させ、攻撃力と宝具威力を大幅に上昇させ、さらに毎ターンHPとNPが回復する「絶好調」状態を付与する。この「絶好調」バフは、彼女が夜の営みの翌朝も常に溌剌としていた逸話の再現だ。

 

「さあ、あなた。私の声、たっぷり浴びせてあげる」

 

リリアが楽しそうに言う。二十人の子供たちが、彼女の周りに集まって、それぞれの得物を構える。大剣を持つ者、弓を引く者、魔術を練る者。全員が母親の声を合図に、敵へと殺到する。彼女の宝具は強化だけでなく、その後に子供たちによる追撃も発生する。ゲーム上では、ブレイブチェインの場合「従順な巨人と嬌声の美姫」のカードが全て全体攻撃になり、強化後に敵全体に防御力を無視した追加攻撃が入るという、まさに子沢山の一家による波状攻撃だった。

 

浜辺での戦闘。巨大なカニ型エネミーが群れをなして迫ってくる。マスターは迷わず、リリア主体の宝具を選んだ。

 

「リリアさん、お願いします!」

 

「ええ、任せて。みんな、準備はいい?」

 

リリアが大きく息を吸い込む。その瞬間、彼女の腹部がさらに膨らみ、臨月を超えた何かとしか言いようのない神秘的な輝きを放つ。二十人の子供たちが彼女を守るように陣形を組む。

 

「――ああああああああああっ!!!」

 

宝具が放たれた。声が空気を震わせ、海面が波立ち、砂浜が揺れる。味方全員の体に光が宿り、力が漲る。NPが満ち、攻撃力が跳ね上がり、そして「絶好調」の文字が全員の頭上に浮かび上がる。

 

さらに、声を合図に二十人の子供たちが一斉に突撃する。カニ型エネミーの群れは、その波状攻撃の前に瞬く間に殻を砕かれ、消滅していった。

 

戦闘後、マスターはぐったりと耳を押さえながら言った。

 

「やっぱり、リリアさんの宝具は味方への強化なのに、敵も怯みますね……」

 

「ふふ、昔から声だけは大きいの」

 

リリアは悪びれもせずに笑う。その隣で、二十人の子供たちが勝利の雄叫びを上げている。浜辺には、避暑に来ていた他の英霊たちが、頭を押さえながら倒れていた。味方への全体強化宝具のはずが、敵味方問わず体力を削るという、彼女らしいというべきか。

 

俺は黙って浜辺に立ち尽くす。水着霊基になった俺の体は、なぜか普段よりもさらに大きい。後世のイメージで、夏の浜辺にそびえる防波堤のように描かれたことがあるせいか、水着になると巨大化の倍率が上がるらしい。マスターが俺の影に入って「涼しい」と言った。日陰としての機能は、まさに『熱砂防波堤・巨躯の日陰』の名に恥じないものだった。

 

夕暮れが近づき、イベントの一日が終わろうとしている。リリアが俺の腕にしがみつき、子供たちがその周りを走り回る。マスターは微笑ましそうに、その光景を眺めていた。

 

「来年もまた、呼んでもらえるかしら」

 

リリアが呟く。俺は短く「ああ」と答える。来年は、どんな姿で現界するのだろう。俺たちのイメージは、きっとこれからも膨らみ続けていく。従順な巨人と、嬌声の美姫。奴隷部屋で目覚めた男の物語は、夏の浜辺で新しい伝説を刻み続けている。




自分の生成した小説を読んでる人がいるって嬉しいですね。
生成して手直しの繰り返しでも楽しい。
読書感想文とか大嫌いだったのに。
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