薄暗い廊下を照らしているのは、卓上に置かれたランプの、琥珀色をした柔らかな灯りだった。
すりガラスの窓から差し込む青白い月光は、夜空に浮かぶ月の姿を淡く映し、床には格子模様の影を落としている。
外の世界では、野獣先輩の悍ましい咆哮や、民衆の怒号が吹き荒れているというのに、この肉厚な石壁の内側にいると、それらすべてが遠い幻聴のように色褪せていった。
医務室の扉の向こうから聞こえるのは二人の女性の賑やかな会話、方や年端も行かない幼女と方やアラサーかもしれない女医師
ヨセフカ「いつも申し訳ないわ、こんなに美味しいクッキーをご馳走してもらって」
ヨセフカさん、彼女との出会いは中々に面白いものだ…
初めて彼女にあった印象はとても心優しい人というものだった、まあ今も変わらないが
顔も然ることながら中身も美しいときたものだ…ヨセフカさんは人形ちゃんと良い勝負できるよ本当に
ヨセフカ「この後はお茶会ね…最近はこれが少し楽しみになっているわ」
アメ (^ー^)
そう…実はアメは彼女と診療所の自室にて茶会を何度か開いている
こんなにも彼女との仲が深まったのは、お茶会を開く切っ掛けにもなった、私が今日持ってきた此の籠の中のクッキーにある。
時は数ヶ月前に遡る
その日は、診療所で代金を払って輸血液を貰うつもりだった。
それと、彼女の仕事が終わった後に、お互いに時間を作って、日頃のお礼も兼ねて少し話をすることになっていた。
そのために、彼女には内緒で自分で焼いたクッキーを持ってきたのだ。
せっかくだから、彼女にも試食してもらおうと思って……。
一階病室の階段を上った先にある診療所への扉…
アメはヨセフカさんから合鍵を預かっていた…
ヨセフカさんには「私が直ぐに出れなかったら、この合鍵を使って入ってもらっていいわ」そう言われている
これは信頼の証…
アメは診療所の扉を何時ものようにノックする、これでだいたい20秒後ぐらいには来るのだが…
アメ「…」
5秒経過
6秒経過
10秒経過
20秒経過
1分経過…
この日は遅かった…何故だろうと不思議に思う、来る日付や時間は確かに前に会った時に伝えたはず…その日は留守にはしていないと本人からも直接聞いたのに
再度ノックしたが何かが扉の奥で動く気配はない…
仕方なく合鍵を使って中に入る
アメは一階の診療所の階段で診療所の二階に向かう、もしかすると二階の医務室の部屋にいるかもしれない
薄暗い廊下を渡りながら医務室に向かう
そして…
あっ
見知った姿を見てアメは声をかける
???「ッ…!?」
そこにはヨセフカさんがいた…
夜の暗闇のなかでもその姿は絵になる
相変わらず美人だなぁ、そんなことをアメは考えていると。あることに気付く。
服がいつもの白衣のやつではない、何というかお洒落だ…いつもと違って (失礼)
そんな洒落た私服を持っていたのかとアメはヨセフカさんに尋ねると、彼女は少しカクつきながら答えた
???「えぇ…そうよッ…褒めて貰えて嬉しいわ」
声が少し変だ…寝不足なのかな?
その声は何時もよりも深く、暗い湖の底に引きずり込まれるような雰囲気だった。
ハッまさか仕事のやり過ぎで風邪でもひいたのか!?若しくは病みでもしたかッ!?!?
そう思うと未亡人のような雰囲気が顔に出てきたような気がするッ(勘違い)
あめは心配で一歩前進するも、ヨセフカさんはそれに合わせて一歩後退する
???「その籠の中にあるものは何かしら…」
成る程...そうか本来であればもう少し後にして出す予定だったが、やっぱり気になるよね…なら今の様子は期待やワクワク立ったのか?
でも、あまり期待はしないでほしい。ヨサフカさんに喜んでほしくて一生懸命作ったものの…そうワクワクされると何故か緊張してまう。
籠…
うーん
アメはもういっそのこと今この場で見せようかどうか悩んでいる。
まぁ…いっか♪
そうと決めたら誇らしげに中のクッキーを見せる
見よこの自信作を!!ドンッ
アメ (^ー^)
よく見て~そして喜んでほしいッ★
???「くぁwせdrftgyふじこlp~!?!?」
バリンッ
え?
ヨサフカさんが窓からスタイリッシュ緊急脱出をカマした
ドタドタッ…
バンッ…
ヨセフカ「何ッ…泥棒!?」
え?
休憩室の扉が勢いよく開かれ中からヨセフカさんが出てきた…
ヨセフカさんが二人?
ヨセフカ「アメちゃん!?…もしかして貴方が窓割ったの?」
アメ「ううん…」
ヨセフカ「そうよね、貴方がするわけないわよね…もしかして彼処のカラスかしら」
最近になって屋根の上が溜まり場になってるのよね…そう困り果てたようにヨセフカさんは言った後にアメを見る
ヨセフカ「そうだッアメちゃん折角だから彼処の屋根に居座ってるカラス達を退治してほしいの…輸血液の代金はそれで良いわ」
「いいかしら?」
アメはコクりと頷き、さっきの珍光景を忘れることに決めた…
そして時は現在にうつる
今日はラング・ド・シャと絞り出しクッキーを作ってきた。
茶葉は家庭菜園のやつを使っている
うん…何度も味見したが、クッキの味は上手く仕上がってる、庭で愛情込めて育てた小麦と仕入先の質のいいミルク(超重要)が合わさった結果だろう。
ラング・ド・シャの上品な香りとすっきりとした雑味のない甘味。
絞り出しクッキーの質素ながらもコクが深いまろやかな味が舌を楽しませる。
茶葉もなんてことのないやつだが、それでもお菓子が良ければ相乗効果でお茶は飲みたくなるものだ。
ゆっくりと会話を楽しみ、お茶と菓子を味わう
この心休まる一時もアメにとっては日々の労働の対価と言えよう…
アメは彼女とのティータイムを堪能しながら、ふと…あの時の珍光景の事を話そうとしたが、あの時の状況をどう説明したらいいのか分からず
結果、ヨセフカさんの身内や親族の事について聞いた
ヨセフカ「えっ私に双子や姉がいるかですって?…いないわよそんな人は、どうして?私にそっくりな人でも見たの?」
いないのか…
ならアレは本当に何だったのだろう、ヨセフカさんのストーカーか厄介ファンか
前者なら…土に帰れ、丁度いい場所が家にあるからな
後者なら少し説教をしなければならないな…それとヨセフカさんのファンクラブがあるなら加入させてほしい
そう思いながら残りの時間をしっかりと楽しんだ
それと、あれ以降ヨセフカさんのそっくりさんがヨセフカさんと私の前に現れることはなかった。
謎は謎のまま終わった…
聖歌隊 (ししっしっしっ…診療所にやべえ奴がいる…)
戦わずして勝つアメちゃん