質のいい野菜を育てるためには、赤い月と質のいい肥料が必要だ
此処ビルゲンワースでの菜園は一筋縄じゃ行けない
農薬?いつの時代だよ…あるわけないでしょ…
アメの畑のベストパートナーは一度狩人の夢から離れた頃にもう一度やってくる、本当は他にもいろんなフレンズがいるが、それはまた別の機会で
ブゥゥーン~…ブゥゥーン~…
イタ★
瞳の苗床、略してナエちゃん
今日もなに不自由なく産まれてきてくれて、ありがとう
「A few moments later(数分後)」
♪♫~
介錯★
有意義な時間だった、最早あの時間もアメのスローライフの一部なのだ
さて…報酬を貰おうか
コイツを狩る時の目当ては大抵は瞳と、瞳の中にいるもう一人のベストパートナーだ、
彼らは窒素とミネラル、そしてタンパク質の宝庫なのだ、こんな馬鹿デカイ目玉が幾つもある低レベルのモブは早々見つからない
肥料としてはうってつけである
頭の外骨格に足を乗せて、眼球を手が離れぬようにしっかりと持って一気に引き抜く、踏ん張り続けるとズルリと抜けるが、これがまた中々の重労働
ヌルッ…ニュルリッ…ブチッブチッ…ズロォ~
引き抜くと目玉と一緒に引っ付いて出てくる、恐らくは退化した外眼筋と虫ならではの視葉と視神経に気管が顔を出す
これらは分けて使えるようにするため切って落としておく
そして実はもう一つのお目当てがある
瞳の内部に彼らは住んでいる
ニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロニョロ
彼らが畑を育ててくれるもう一人のベストパートナー達、寄生虫だ、それはもう眼球にびっしりと隙間なく埋め尽くすように張り付いており、網膜で仕切られているとは言え、外側からでも中で蠢く様子がよく分かる、未だに蠢く彼らには悪いが、これから網膜を切開して彼らを摘出する
アメはメスを手に取って、瞳にその薄い金属を刺し込ませる
刺した刃をスッと下に引いて普段通りにその膜を切り開き、剥離する、瞳の裏側では元気に寄生虫達が神秘のライブ感を出していた
ライブ中に失礼するよ、でも君らの家主はもう死んだんだ、いい奴だったよ本当に
ウ~ン…産卵期では無いようだ、良かった良かった
それにこのナエちゃんの苗床は熟していなかった、啓蒙が足りなかったのだろう
もし去年の様に産卵期に肥料の為に頻繁に乱獲なんてしようものなら、オドンさんや月の魔物その他の上位者さんに叱責されてしまう
あの時は本当にこのまま宇宙が寿命を終えるんじゃないかってぐらい長い時間説教をされた
ゲールマンのお爺さん曰く上位者の産卵期とは生物学的な周期ではなく、「赤い月が空に近づき、人間(世界)との距離が極限まで縮まった悪夢の夜」というのが上位者における産卵期
人間側の視点に立つと「高次元の『神秘』の波動(啓蒙の光)を送っている」「上位者が地上と交わろうとしている状態」が、私達の目には「赤い月」に見えるらしい…
月の魔物はかなりのロマンチストらしいね
それをゲールマンに言ったら狂ったように高笑いをされてしまったが
それで私は月の魔物に定期的に畑のために月の力を弱めてほしいのを遊びに行った時に頼んでいる、私の今までの経験上、神秘を過剰に含んだ野菜は何故かあまり美味しくない…
その分の対価は野菜をあげている
私が愛情込めて育てた野菜は人にも上位者にも好評だ、これほど誇らしいことはない
アメ「…」
てか思ったけど上位者が野菜を食べるところって見たことがないな、シャイなのかな?どんな食い方するんだろ
なんて思ってる内に全ての目玉を取り終え、一つ一つ丁寧に切り開く
瞳の内側の寄生虫をこそぎ落として、目玉を延べ棒で磨り潰していく、その後に外眼筋と虫の視神経、磨り潰した物と灰と寄生虫の何匹かを容器に入れて混ぜる
これをコンポストに閉まって定期的に月光を浴びせ、スコップで混ぜて土の空気と神秘を循環させて2ヶ月放置すると発酵して堆肥が出来上がるわけだ
アメ「ふぅ…」
開始から5時間が経過した
疲れた…
毎度毎度おかしいなぁ、狩人の体は不眠不休で疲れないって聞いたのに話が違うじゃないか
ザッ…
アメ「?」
足音がして振り返るとそこにいたのは狩人さん、またロマさんに挑みに来たのかな?
アメ「…」
止めてほしいな…あの認知のベールがなかったら常に月が出っぱなし、そしたら自身の業務スケジュールに影響大だ、でも、だからといって狩人さんを止めてしまうのも今後に支障がある気がする
狩人「貴公、すまないが、今日こそ本当の…本当に…今日がロマの命日になる」
このセリフこれで十回目だ
アメ「うん…」
狩人「また負けると思ってるだろ…」
アメ「うん」
狩人さんは殴りすぎる癖があるからね、しかも周りの小蜘蛛を処理しない、それをサボった結果は聞くまでもないだろう
だが、狩人さんは日に日に力を増していく…
何れにせよ彼女の終わりは遠くない内に来るだろう
白痴のロマ、彼女の運命は少し可哀想だ…今となっては原理は不明だがアメの手伝いと要望で月の光を場所や時間を限定して解放してくれている。
意識がないまま、永遠とあの湖を漂わせている…
もし彼?彼女?が夜明けを迎えて今のV.I.P.待遇が無くなったら畑に開閉できる屋根を建築しなくてはならないな、もしくは聖杯ダンジョンに畑を作るという案もあるが、行き来が非常に面倒だ
いや...
その時はロマがこの暗い夜から解放されたことを人として喜ぶべきか
アメ「…」
狩人「もし、私が勝ったら…祝杯に料理を振る舞ってくれないか?」
アメ「…うん」
そう答えると狩人は「失礼するよ」と言って私の家の月見台に向かって行った
その声は少し安心したようにも見えた
またロマには迷惑を (狩人を止めなくて) かけるだろうから、この肥料で良い野菜を届けよう
アメはそう思って残りの作業を終わらせにかかった
「2 months later...(2ヶ月後…)」
アメちゃんは堆肥をゲットした!!