今日は狩人の夢で人形ちゃんと庭でピクニックをしている
羨ましいかな?
アメ (^ー^)
バスケットの中はキッシュとパニーニにバターマフィンだ
ピクニックシートの上で夜風を感じながらお茶をカップに注ぐ
次回からは椅子と折り畳み式のテーブルなんかを持ってきてもいいかもしれない、なんなら折角だし自分で一から作るか、そう思ったら、どの様なものに仕上げようか迷うな
人形ちゃんのカップにもお茶を注ぐ
お茶はいつものにここの花を入れてみた、うん…フローラルな香りだ
キッシュも狐色に焼けたサクッとしたタルト生地に卵の味と豚の脂身、芋のホクホクの食感に丁度いい塩加減が食欲を増進させている。
マフィンはまだ食べていないが個人的には味はしっかりと美味しい、そう思って今度は人形ちゃんの反応を見ようとしたら、此方をじっと見つめていた、アメは少しだけ不安になる
月の光に照らされた灰緑色の綺麗な瞳に自分の顔が写っていた
どうしたのだろうか…
人形「アメちゃん…貴方は何故、野菜を育てたり、料理をしたりするのですか?」
数秒の間、お茶とキッシュを味わっていたところにそんな質問が来る
人形ちゃんは出会った頃に比べて、だいぶ口調に他人行儀な感じがなくなった、仲良くなった証だよね
それにしても…何故そんなことをするのか
…難しい質問だ
特に理由はなかったように思う、楽しいから、暇だったから?元から殺し合いが好きではないというのもあるし、あとは周りの反応が何というか…
それとなく人形ちゃんにその事を伝える
人形「確かに、その歳で狩人をしているのは、周りからしたら違和感を感じるのかもしれませんね」
やはり、そうなのか…
医療協会が設立した狩人達にとって狩人の本懐は治安維持であり、そのために獣を狩り続けることに価値がある
しかし、別にアメは狩人を本業にしていない、本業は農業なのだから必要以上に血を浴びなくてもよい立場にいたのだ
血の医療を受けておきながら、狩りを本業にしていないとは、もし医療協会がまだ崩壊してなかったら苦言の一つや二つ飛んできそうである
そして周りからの反応の話だが…
狩人は街の治安維持の為に発足した市民自警団なのだ、そこに本来なら治安を維持して守るべき存在である子供が狩人になったとあれば、彼らの大義名分としては本末転倒であろう
勿論入ったばかりの当時の周りの反応は本当に酷かった、別にアメが誰かから酷いことをされたわけではない、寧ろその逆であり、一般の狩人達の医療協会への信用は大いに揺らいだことだろう
昔の事を思いながらアメはキッシュを食べて、味に改良の余地があるか考える、そんなアメの顔を人形は眺める
人形 (懐かしいですね、当時一番憤慨していたのは確かガスコイン様でしたね…ご自身の家族を持ちながらもアメちゃんを気に掛けていたのをよく覚えています)
人形ちゃんはパニーニを手に取って口に運ぶ、小さな口に入り込んだパニーニは口の中に旨味を一気に広げた
トマトの酸味とチーズの相性が抜群で、焼き加減が丁度いいジューシーなズッキーニが合わされば、口の中は幸せ一色だ
アメは人形と同様にパニーニを食べながら再度考える
アメ「…」
料理をする理由…
畑を耕す理由…
それは自分のためだ…
具体的に説明は出来ないが、好きな自分が人にも、あの上位者達にすらも、自分の好きな才能を心を求められた…気がした…
勿論、只の他者願望であったり、自惚れの可能性もある
危険な仕事をこなして、その上で他の事もやるのだ、正直に言って最初は両立できるか、狩り一筋としない生き方を周りからどう思われるか
不安はあった、でも周りの大人から言わせれば、アメ本人が、それ以前に自分が子供であるということを自覚していなかったように思えた
軒並み狂いもせずに、心配になる程、異様に働く子供として写っていたことだろう
キッシュをお茶で流し込み、更にもっとよく数年前を振り返る…
当時は勿論、アメをこの残酷な仕事から引き離そうとする善人もいた
しかし、アメはそんなの御構いなしに、
その小さな体格で人食い豚に跨がり、撫でて懐かせようとしたり
禁忌の森で数ヵ月掛けて資材を集めて建築した畜舎に、匂いたつ血の酒で豚を大量に引き連れて、全員に名前を付けて家畜にしようとしたり
畜舎から脱走した豚に引き殺されたり、後ろ足で蹴り殺されたり、普通に食い殺されたり、何とか豚で畜力耕を成し遂げようとする様を見てヒヤヒヤさせられた狩人達は数多くいた
アメは今思い出した昔の行動も含め、人形ちゃんに昔の自分が周りとは少しズレていたと自覚していることを話した
人形「気が合いますね、私も今丁度その頃の事を思い出していました、それと安心してください…アメちゃんは今もあまり変わっていませんから」
アメ「…」
人形 (その当時、別の狩人様からその話を聞いたゲールマン様の溜め息は平時より長かった記憶があります…)
(確かに馬なんかは殆どが死に絶えましたが、まさかアレを使うだなんて、流石の私も驚きました)
(次は突進を利用して一気に耕すからと自信満々に私に語って、数秒後直ぐに死んで此処に帰ってきたのも覚えています)
(アメちゃんの数多くの奇行に振り回され、時間と血の意思を失って、此処へ帰ってくる他の狩人様達をゲールマン様が見かねて、一緒にもう止めてほしいと、ゲールマン様と説得したのは本当に楽しい思い出でした)
人形「アメちゃんは…面白い方ですね」
アメはその言葉に素直に喜べばいいのか分からなかった、でも取り敢えずは笑って見せた
人形「フフッ…勿論、良い意味でですよ、深い意味は特にありませんから、あまり考えすぎないでください」
無理に笑ったのはバレたらしい
そんな会話が続き、二人は最後にバターマフィンに手をつける
アメちゃんは少し気になった疑問を人形ちゃんにぶつけた
人形「私が口に含んだ食べ物の行方ですか?」
アメはコクりッと頷く
人形「さあ…何せ此処は夢の中ですから、現実とは違う次元では、何が起きても基本的には不思議ではありません、もしかすると…被造物の私でも料理を味わえるように、粋な計らいが成されているのかもしれません」
アメはなる程と納得した様子を見せた
なら実はウンコとかもするのか…?
人形「便意…それはどうなのでしょうか…?」
アメ「…!?」
何故読まれたッ…マズいッ…人形ちゃんは考え込んでしまっている…
イカンッこれ以上はこの話を進めるべきではない
人形ちゃんの心が汚れてしまうッ
アメはこの後に別の話題を振って、話をどうにか逸らすことに成功した
楽しい時間は過ぎるのはあっという間だ
バスケットから取り出した料理が減っていき、会話も一段落ついてきた
最後のバターマフィンを二人は食べる
バターマフィンの生地が口の中で溶けていくように、二人の楽しい会話も月の光が届かない遠い夜の闇にゆっくりと溶けていった
遅れて舌に優しい甘味が広がった気がした…
アメちゃんの雰囲気はこんな感じでエエか?