【一之瀬帆波】
綾小路清隆くん。
私の、大好きな人。
でも、私は彼に選ばれなかった。
私たちの卒業式の日、私たちのクラスは、Aクラスには届かなかった。
最後まで諦めずに頑張った。みんなで力を合わせて、何度も困難を乗り越えてきた。それでも、私たちが目指していた場所には手が届かなかった。
もし、最初からやり直せたのなら、何かが変わるだろうか。
そう強く願った時、気づいたら私はバスに乗っていた。
これは高度育成高等学校に向かうバスだ。
直感的にそう気づいた。
神様がやり直せるチャンスをくれたんだ、クラスのこと。
そして、綾小路くんのこと。
そう思った。
クラスが張り出される紙を見ると、やっぱり私はBクラス。そして、彼はDクラスだった。
……同じクラスだったら良かったのに。
その時、良い考えが浮かんできた。
同じクラスになればいいんだ。
綾小路くんが私のクラスに移籍してもらえば良い。
これなら綾小路くんと一緒にAクラスになれる。
なんと素晴らしい考えだろうか。
クラスに入り、説明を受ける。
Aクラスになるのとポイントを稼ぐには最初が肝心だ。
「先生、質問があるのですがよろしいですか?」
「はい、一之瀬さん、どうぞ」
「まず、支給されるポイントは毎月10万ポイントなのですか?」
その後も本質をつく質問を星之宮先生に投げかけていく。
これは、前回の私では気づけたなかったことだ。
少しズルのような気もするが、クラスをAクラスにするために背に腹はかえられない。
入学式を終え、施設内の説明を軽くされた後解散となり、クラスメイトが色々な予定を立てる中、私はDクラスへと真っ先に向かった。
そう、彼に会うためだ。
Dクラスに着き、教室を覗き込むとそこには彼が居た。
少し切れ長の落ち着いた瞳、外ハネのある茶髪のセンターパート。
……やっぱりかっこいい。
目が合ってしまってすぐに逸らしてしまったけれど、勿体ないことをした。
私は教室の外で彼が出てくるのを待つ。
あ、出てきた。
咄嗟に声をかける。
「ねえ、あ、綾小路くん」
しまった。これでは何故自分の名前を知っているのかと不審に思われてしまうかもしれない。
「えーと、何の用ですか?」
困惑する綾小路くんに私は一緒に学校を回ろうと誘う。
少し強引だが、入学した頃の綾小路くんにはこのくらいで良いだろう。
「どうしてオレを誘おうと思ったんだ?」
やっぱりこの質問はされるよね、でも、私の答えは決まっている。
「その……一目惚れ、かな?」
これが一番自然に、かつ早く好意を伝えられる方法だと思う。
綾小路くんは露骨に動揺する。
ふふっ。綾小路くんのこんな姿久しぶりに見たよ。
私たちは学校を回る。
その後、綾小路くんを部屋に誘うことができた。
私の作った料理を彼に食べてもらえる。
それがこんなにも嬉しいことだということを再確認できた。
それに、恋愛では胃袋を掴めっていうよね?
ちょっと古いかもしれないけど、私は効果的だと思う。
部屋にいる綾小路くんを見ると、今にも押し倒してしまいたい衝動に駆られるけど、今は我慢だ。
そんな女だと思われたくないし、何より嫌われてしまうかもしれない。
綾小路くんと付き合えるまではこの欲望を抑えていよう。
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入学してから1週間ほどがたち、休みの日になった。
もちろん、私は綾小路くんをデートに誘った
デートはとても楽しかった。
リードしたのは私だけれど、綾小路くんも楽しそうにしてくれてた気がする。
「……私と、付き合ってくれませんか?」
そして、デートでの別れ際、再度私は綾小路くんに告白した。
結果は、だめだった。
まあ、完全には脈ナシって感じでもなかったけど。
どうして、どうして、どうして。
昔の私ならそう思っていただろう。
でも、今の私は違う。
綾小路くんが振り返ってくれるまで諦めないのだ。
でも、キスをしてしまったのは少し失敗だったかもしれない。
そして月日は流れた。
私たちのクラスはAクラスへと上がった。
私は綾小路くんがして欲しそうな事は何でもし、綾小路くんに愛を与え続けた。
もちろん、綾小路くんにできるだけ女の子が近づかないように牽制もした。
それに、佐倉さんが綾小路くんのことを好きになるきっかけのトラブルも私が解決した。
綾小路くんは口数は少ないけれど、毎日色んなことを話してくれる。
でも、綾小路くんには基本的に友達が少ないのが心配だ。
だから、Aクラスの何人かと一緒に遊びに行ったりした。
私のクラスのみんなとも仲良くなって欲しいな。
誕生日の日、綾小路くんは私に指輪をくれた。
一瞬そういう意味かと思っちゃったけど、どうやら何か特別な意味はなかったみたいだ。
それでも、こんなに嬉しいプレゼントは初めてだ。
その指輪は、毎日欠かさずつけている。
夏休みに入る前日、綾小路くんは帰ってくるやいなや私を抱きしめてきた。
こんなことは初めてだったから、凄く驚いた。
どうしたのかと聞くと、なんと、茶柱先生に脅迫されたというのだ。
……許さない
私と綾小路くんのこれからを邪魔するやつなんて。
感情に任せて茶柱先生を社会的に抹殺してしまうところだったが、どうにか堪えて星之宮先生に後ろ盾になってもらうことで我慢することにした。
来たる無人島試験。
私は前回の知識を活かして、覚えているところはできるだけスポットを占拠して回った。
そして、うちのクラスに来ようとしてきたCクラスの金田くんを追い返す形でリタイアさせた。
金田くんがスパイだということは前回の経験で分かっている。
これで、うちのクラスがリーダーを指名される心配はないだろう。
綾小路くんがAクラスのリーダーとDクラスのリーダーを教えてくれた。
Cクラスのリーダーは龍園くんと分かっているから、これで私たちのクラスは磐石だ。
5日目の夜。
何となく眠れない中、綾小路くんに会えないかと少しの希望を持って砂浜を散歩していると、なんと偶然にも綾小路くんに会う事ができた。
私と綾小路くんは運命の赤い糸で結ばれているのでは無いだろうか。
そう錯覚してしまう。
そしてたわいもない話をし、別れ際。
驚くべきことが起きた。
「一之瀬、オレはお前のことが好きだ」
なんと、綾小路くんの方から告白をしてきたのだ。
やった……やった!やった!
こんなにも嬉しい事があるのだろうか。
「綾小路くん。改めて、私も好きです。私と付き合ってくれませんか?」
すぐさま私も告白をして告白を受け入れる。
思わず嬉し涙が出てくる。
前回は、私の気持ちは彼の心へと届かなかったのだろう。
体の関係はあったが、それだけだ。
以前は与えるだけでそれで良いと思っていたが、考えを改めた。
綾小路くん、いや、清隆くんからも与えてくれるのが1番だ。
「一之瀬……またいつか、話したいことがある。聞いてくれるか?」
なんだろう。
ホワイトルームというものの事だろうか。
それとも、別のことだろうか。
何にせよ、私は清隆くんのことならなんでも受け入れられる自信がある。
私も万引きをしてしまったことや、前回の記憶があることをいつか言わないといけない日が来るだろう。
でも、清隆くんは私を受け入れてくれる。
私には、その確信がある。
……清隆くん、大好きだよ。
ずっと一緒にいようね。