魔法少女まどか☆マギカ [疑編]安息の物語   作:カピバラ@番長

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 廻天、本当に楽しみです。


後編 こんな日々が続くと良いな……

 

 「んで、具体的にはなんかあんのか?」

 

 佐倉さんも座り直し、本格的に変身ポーズと合体魔法の話し合いが始まる。

私とまどかと美樹さんとしては合体魔法の話に必要性はあると感じてはいるけど……。

ポーズは……どちらでもいいかなとは……。

 

 「そうねぇ。合体魔法とは言うけれど、やっぱり、魔法少女らしいモノが良いとは思っているのよねぇ」

 

なんて思っていると最初に始まったのは合体魔法の話から。

よ、良かったぁ……。ポーズなんて恥ずかしくて決められる気がしなかったし……。

上手くいけばポーズの話は流れるかもしれないから、このままじっくり話し合いたい……なんて、巴さんには悪いけど思ってしまう。

 

 「魔法少女らしい、ねぇ……。そーいうのはまどかが得意なんじゃねーか?」

 

 「へ!?わ、私!?」

 

申し訳無さを抱えている中、佐倉さんの視線がまどかに向う。

それを皮切りに他の二人の視線も集まった。

 

 「まー確かに。私達の中で一番[ぽい服]で戦ってるしね~」

 

 「えぇ!?さ、さやかちゃんまで……?」

 

 「あたしとさやかはだいぶ運動性能の高さが出ちまってるからなー。一応、あたしもさやかもフリルは付いてっけど」

 

 「そりゃあ、あたしだってうら若き乙女だもの。可愛さは欲しいよ」

 

 「なのにマントねぇ。……可愛いのか?」

 

 「う…。だ、だって、カッコいいじゃん……?」

 

 「……二人の言う通りね。ベースは鹿目さんに決めてもらうのが良いかしら」

 

 「マミさんもですか!?うぅ……」

 

 「ちなみにマントは私も好きよ?私の場合は[カッコいい]と気が付くのが遅かったから反映はされていないけれどね」

 

 「で、ですよねー!!良いですよね!マント!!ほらぁ!」

 

 「いや、別に否定しちゃいねぇだろ」

 

マントの話から一転、みんなの視線がまどかに集まる。

その視線に圧や催促の色は無かったけれど、受ける側にしてみればそれほど関係の無い事。

まどかはもじもじとして目が泳ぎ始めてしまった。

そんなまどかを助けてあげたい気持ちはある。……でも。

 

 ーーごめん、まどか。私に良い案は無いから助けられない……。

 

[魔法少女らしい服装]という観点から見れば私のは一番論外だ。

だって、殆ど学生服だし……。

 

 「うぅぅ……。じゃ、じゃあ……」

 

 「えぇ、なんでも言ってみて?」

 

少しの後、まどかは何かを思い付いたらしく俯き気味になっていた顔を上げる。

そうしてどこか上目遣いの状態で私達に目配せをしてから口にしたのは。

 

 「みんなでう、歌を歌いながら、ナイトメアをケーキにしてベベに食べてもらうのはどう、かな……。なんて…」

 

とてもメルヘンチックで、魔法少女っぽさのある方法だった。

 

 「い……良いじゃない、それ!とっても素敵よ、鹿目さん!!」

 

 「ほ、本当ですか!?」

 

 「あたしも賛成!戦いだからって殺伐とし続けなきゃいけないわけも無いしさ」

 

 「わ、私も!すごく良いと思うよ、まどか!」

 

 「はー、流石はフリッフリの魔法少女だ。あたしとは思考回路からしてちげー」

 

 「アンタじゃどう頑張っても暴力的になりそうだもんねぇ」

 

 「そりゃ倒すんだからそうだろ。けどま、悪かねぇ。ヤツらだって好きで成ったわけじゃねーだろうからな」

 

 「どうせなら可愛らしく、って?珍しく話が分かるじゃん」

 

 「え、えへへ。良かったぁ」

 

まどかの提案に私を含む全員が賛同する。

特に巴さんは見て分かるくらいに嬉しそうだ。

普段ケーキ作りもしてるし、べべも含めてくれている事も嬉しいのかな?

……って、あれ?

 

 「そ、そう言えばベベが居ないですね……?」

 

 「んぁ?言われて見りゃ確かにな。いつものこうるせーマスコットが今日はいねぇじゃねぇか」

 

 「ベベならあそこで夢の中よ」

 

巴さんが向けた視線の先に私達の視線が向う。

そこは確か寝室で……。

 

 「か、可愛い~~!手がちょっとはみ出てる」

 

 「ありゃりゃ、大胆な寝相だねぇ」

 

僅かに開いている扉の隙間からはみ出るベベの袖のような手。

巴さんの言うように、あの子は今は夢の中みたいだ。

 

 「あの子、私が隠していたチーズを見つけて食べちゃったのよ。そのせいで満腹になって夕飯時からずーっと眠っているわ」

 

 「なるほどなぁ。こんだけ騒いでて起きねーんだから、まどかの案の是非は聞けそうにねぇな」

 

 「そこは大丈夫よ。今回の罰として必ず頷かせるから」

 

 「ちょ、ちょっと怖いです、巴さん……」

 

僅かにオーラが出しながら巴さんが答えた事で具体的な内容の話し合いが始まる。

ベースさえあれば後は魔法少女向きじゃない私の思考でもどうにかなる。

そしてそれは美樹さんも佐倉さんも同じだったみたいで、さくさくと話が進んでいった。

その結果。

 

 「……纏めるとこうね」

 

一・ナイトメアをある程度疲弊させる。

二・円卓の置かれた部屋を用意してそこに追い込み、囲むように私達が座る。

三・詠唱を歌に見立ててパートを分け、全員で詠唱を歌う。

四・しっかりとケーキに成ったところをベベに食べてもらう。

五・ナイトメアの部分と人間だった頃の部分をベベの中で切り離す。

六・人間の部分だけを吐き出す。

 

 「こんなところね」

 

 「おぉ~~!結構いけそうな気がして来た!」

 

 「わ、私の思い付きがちゃんと成立してる……!すごい!」

 

 「詠唱を歌に見立てるっつーのは斬新だな。面白そーだ」

 

 「そうなると、詠唱……歌詞……?も考えないとですね」

 

 「そこは大丈夫。始まりと終わりの共通パートは全員で歌うから決める必要はあるけれど、各パートに関しては個人の好きな味を言えばいいだけだもの。そこまで難しくは無いわ」

 

 「へ…?マミさん、もう詠唱考えついちゃったんですか!?」

 

 「ふふふ。こんな事もあろうかと幾つも詠唱のストックはあるのよ。その中から良さそうなものを、ね?」

 

 「……どんな事を想定してたんだよ。殆ど趣味だろ、それ」

 

段取りの良さ……って、言って良いのかは分からないけど、ものの一時間くらいで合体魔法の簡易的な流れが決まる。

後は巴さんがストックしていると言う詠唱の中から最も条件に見合ったモノを探し、そこから調整を加え、実用に漕ぎ付ければいいだけ。

勿論、ここからが大変なんだけど、ベテラン魔法少女の巴さんも佐倉さんもいる。そっちもきっとすんなり進む事だろう。

 

 「さて、これで合体魔法の方は一先ず決まったわね」

 

 「……へ?」

 

これからストックの中から探す工程が始まるかと思いきや、巴さんの中ではもう充分だったらしい。

まるでテーブルの上に置いてある書類を片付けるかのように、巴さんはそれぞれのティーカップとソーサーをお盆に乗せ始める。

 

 「次は変身ポーズ。これは長丁場になるでしょうから、新しいのを淹れ直してくるわね」

 

 「お、おぉ……。随分本気じゃねぇか、マミ」

 

 「当然よ。これから死地に赴く為の祈りの舞ーーいわば儀式が変身。その覚悟の高潔さを示す最後の佇まいが決めのポーズなのよ?もしも負けてしまった時、心残りにそんなモノが入り込んできたら嫌でしょう?」

 

覇気にも似た意志の強さに気圧される佐倉さんに毅然と言い放つ巴さん。

彼女は続けて、私が考えてもいなかった理由までを答え、その場が静まり返る。

 

 「まぁ、負けるつもりなんてさらさら無いけれどね。でも、そういう心構えが戦場では大切だったりもするのよ。生への渇望を僅かにでも強くしてくれるのであれば、私は三日三晩寝ずにだって考えるわ」

 

言葉は強い。

けれど、語調は慈愛さえ感じるほどの優しさに溢れている。

 

 ーー……そうか。これが、巴さんの強さの理由の一つなんだ……。

 

胸の奥が温かさで満ちて来る。

勝つために強くなるのでは無く、生き抜くために強くなる。それが巴さんの桁違いの強さの源なんだ。

それが分かった途端、さっきまでの自分が恥ずかしくなってすらくる。

 

 ーー恥ずかしいから変身ポーズの話は遠慮したい……なんて、視野も覚悟も意識も足りなかった。

 

 「とっ、巴さん!」

 

 「わっ!?ど、どうしたの暁美さん?」

 

いつの間にかティーカップ類を回収し終えて私達に背を向けていた巴さんを呼び止める。

思ったより大きい声が出てしまったせいで、彼女を驚かせてしまったけど……。

 

 「わ、私、ちゃんと考えます!死にたく無いですから!」

 

でも、自分の間違いを間違いのままにしたくなかった。

 

 「……ふふふ。その意気よ、暁美さん」

 

私のせいで一瞬バランスを崩してしまったのに、巴さんは私の事を責めたりせずに振り向いて微笑んですらくれる。

そうだ。誰だって最初から強いわけは無かったんだ。

強い人の後ろには、それだけの強さを支える強い気持ちが……。

 

 ≪……あー、感動してるとこワリーんだけどさ≫

 

 ≪へ…?≫

 

 ≪……何よ、水差さないでくんないかな≫

 

 ≪さ、さやかちゃん……≫

 

巴さんの後ろ姿が完全に台所へと消えてしまった瞬間、佐倉さんからテレパシーが飛んでくる。

その相手は私だけでは無くまどかと美樹さんもだったらしく、今の佐倉さんの口調からするに二人も感銘を受けていたらしい。

……の、だけど……。

 

 ≪あいつの成り立ち場、あんまし言うのもどうかとは思うんだけどさ。……マジで三日三晩使って考えた技とかあんだよ≫

 

 ≪……へ?そ、そうなんですか……!?≫

 

 ≪こ、心構えだけじゃないんだ……!さっすがマミさんだ!≫

 

 ≪……でも、杏子ちゃん。それって、もしかして……≫

 

 ≪……ああ。今日は寝れねぇと思え。ちなみにあたしは念の為エナドリ入れて来た≫

 

 ≪い、いつの間に!?≫

 

 ≪お前がまどかに連絡入れるっつった時≫

 

 ≪あんな一瞬でここまで予想してたの!?!?≫

 

佐倉さんからの忠告はテレパシーでだった事を除いても一瞬で私のーー私達の脳内に染み入った。

巴さんのあの意気込み。……うん、きっと佐倉さんの言うように今日は寝れないかもしれない……。

 

 「ま、マミさーん!ちょーっとコンビニに行ってきてもいいですかーー!?」

 

 「あら。何かお買い物?」

 

 「そ、そうなんです。ス、スナックのお菓子とか!」

 

 「そうねぇ。たまにはそういうのを食べながらもいいわね」

 

 「「行ってきまーす!!」」

 

私が佐倉さんの忠告を反芻している間にまどかと美樹さんは立ち上がり、早々に部屋から出て行ってしまう。

その行動の素早さは、さながら逃げるナイトメアを追い込む時と同じ……!

 

 ーーこ、こんなところでも経験値の差が……!

 

あの様子だと二人は徹夜に備えてエナジードリンクを買いに行ったんだろう。

勿論、スナック菓子も買っては来るんだろうけど……。

 

 ーーうー……。私も行けば良かったかな……。

 

二人が出て行くまでに言い出せなかった私は完全にタイミングを逃してしまう。

そうなるとこの四人の中で私だけがドーピング的な活力の無い状態で一夜を過ごす事になる。

 

 ーー耐えられる……かなぁ……。

 

あれだけ意気込んだ手前眠るのは避けたい気持ちもあるけど、同時に巴さんが残念がるんじゃないかという不安もある。

……だから。

 

 ≪大丈夫だよ、ほむらちゃん。キャンペーンで貰ったって事にして、ほむらちゃんの分も買って来るから≫

 

 ≪ま、まどか……!≫

 

まどかからのテレパシーは救いの女神の様だった。

 

                  ーーーー    ーーーー

 

 二人がコンビニから帰って来て暫くの時間が過ぎた。

外は僅かに白み始め、気の早いスズメか何かの鳴き声が時折窓ガラス越しに入って来る。

私の手元には約束してくれた通りのエナジードリンクの缶と、乾いた茶葉が底で小さな三日月状になったティーカップが。

テーブルの中央には殆ど空になったパーティー開けのスナックのお菓子が置かれている。

 

 『……その缶のデザイン、前々からカッコいいと思っていたのよねぇ』

 

そう言っていた巴さんと中身は半分に分けてしまったけど、普段は全く飲まない私にはエナジードリンクの効果は抜群。

心臓病の事もあるからゆっくりゆっくり飲んだから未だに残っているのに目は冴えに冴えている。

それは、きっと一本飲んだのだろうまどかと、私と分けて飲んだ巴さんも同じで。

 

 「マミさんマミさん!こういうのってどうですか!?アイドルの人みたいに指差し確認して……!」

 

 「……良いわね。すごくいい。とっても可愛いわ!なのに心の強さも感じる!最高よ!!」

 

 「ほ、ホントですか!?えへへ…!」

 

噂に聞く深夜テンションも相まって、二人は未だに本意気で行っていた。

その本意気継続時間、実に五時間。……五時間!?

私達三人はまとめて三時間ほどで決まったから……。二人が全力で取り組んでいた時間は合計八時間ほどにもなるの………!?

 

 「……参ったぜ。マミどころかまどかまでこんなになるとはな」

 

 「あたしとアンタと違ってまどかは普段こーいうジャンクなのは飲まないからねぇ……。効きが凄いんだろーさ」

 

 「なるほどな。……なら、マミのあれもそーいう事か」

 

 「けど…、まどかのお陰で助かった側面もあるのがねぇ……」

 

 「……言えてるな。四人がこれで一人がアレだったとしたら、疲弊した時に相手するナイトメア並みに手に負えなかっただろうさ」

 

 「こーいうのも、楽しいし嬉しいんだけどさ……。まぁ、寄る年の波には勝てない、って事で……」

 

 「お前いくつだよ……」

 

対する私、佐倉さん、美樹さんは一つ所に固まって背を合わせる事で辛うじて座っていられる状態。

みんな目は冴えているけど、意識は冴えていない。そんな状態。

 

 「ま、なんにしても……、あたしらは早々に決められて良かったね。あの二人に付き合わされてたかと思うと……ゾッとするよ」

 

 「やるってなっちまった以上は勢いが大事だからな……。その上で、後で見返しても受け入れられるようにするってのがちっと厄介ではあるが……」

 

 「なんとか、なりましたね……」

 

 「……まぁ、ほむらがそう言うのならそうなんだろーね」

 

 「あーー、まぁ、そうだな。きっと上手くいったさ」

 

 「はい……!お二人のも、素敵でした……!」

 

 「「さんきゅ」」

 

示し合わせたわけでも無く、私達の手が上がる。

その手は頂点に達するまでに柔らかくも確かに握られ、それぞれの拳の背が触れ合う事で止まり、雪崩れる。

 

 「……あら、あらあら!それ、いいじゃない!」

 

 「いいなー、なんだか[戦友]って感じがする!」

 

その様子をいつの間にか見られていたらしい。

若干目の虚ろなまどかと巴さんが興奮気味なのに、どこか覚束無い足取りで傍までやって来る。

 

 ≪か、勘弁しろよ……!»

 

 ≪本当に今はやめて下さいよぉ……≫

 

 ≪ご、ごめんなさい、まどか……。今は私も……!≫

 

意図せず私達三人だけがテレパシーで通じ合う。

そんな切実な想いが届いたのか……。

 

 「う、うぅん……?」

 

 「うへっ…!?」

 

まどかと巴さんのバッテリーが突然切れて、私の膝まで指先があと僅かという所で倒れ込んでしまった。

 

 「は、はは……。久々に肝が冷えたぜ」

 

 「じゃ、あたしらも……」

 

 「……はい」

 

美樹さんの一言で私のーー私達の身体の力が一気に抜ける。

途端、一番支えが弱かった部分から倒れ込み……。

 

 「「「「「ぐぅ……」」」」」

 

私達五人は、それぞれの頭頂部で円を描くようにして眠ってしまった。

 

 

 

 同日のお昼過ぎ。

最初に目が覚めた私が起き上り、目にしたのは。

 

 「ふふふ、寂しかったんだね」

 

私達の頭頂部で作られた円の中央で眠るベベの姿だった。

 

 

 

end.

 





 ーーそうして時は降る。
事が始まる。
全てを決定付ける、一つの[叛逆]へと。
やがて至る、[廻天]の為に。
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