第三十七話 霖之助の苦悩
森近霖之助は普段は香霖堂という何でも屋の店主をしている。
が、もう一つの顔として、幻想高校の国語教師を兼任しているのは誰もが知っていることだ。
高校内では数少ない常識人の立場で周りの暴走を止めることが多かった。
春に突然教師となった外の世界の住人、朝霧優斗が来てからはその役割が半減したが、代わりに別のことで悩まさせるようになった。
「むむ……どうするか」
1人、香霖堂の隅の椅子に座って頭を悩ませている霖之助。
彼は1年2組の担任をしている。早苗やうどんげなどがいて、テストではいつも上位の位置を占めていた。
ところが、優斗が1年1組に副担任としてきてから、だんだんと平均点でおいぬかれるようになっていったのだ。
特に彼が絶対の自信を持っていた国語で抜かれたときは少なからず布団で落ち込んだものだ。
「どうやったらあんなに点数が上がるんだろうか……」
「教えてほしいか?」
「ああ、来てたのか」
霖之助のつぶやきに魔理沙が反応した。
魔理沙はちらっと霖之助の手元を見た。そこにあるのはテストの点数データとクラスごとの平均点。
魔理沙は2度ほどデータと霖之助の顔を見比べた後、すべてわかったというように、にやっと不敵な笑みを浮かべた。
「なるほど……優斗に嫉妬しているわけか」
「違うからな。不思議に思っただけだ」
「それを妬みっていうんだぜ」
「まあ、羨ましく思うことはあるよ。確かに知識量では勝てないからね」
「外の世界に詳しいもんな」
彼自身、優斗が外の世界のことについて豊富なのはよく知っている。というか、すでに根掘り葉掘り聞いている。
しかし、聞けば聞くほど訳が分からなくなる。ますます外の世界への謎と興味が増しただけだった。
「よっし! 物は試しだ! 聞きに行こうぜ!」
「うわっ、ちょっ……」
魔理沙に引っ張られ、香霖堂の外へと連れ出される。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。わかった、行こう。けどちょっと準備させて」
「準備なんてする必要あるのか?」
「一応この店の店主だぞ? 戸締りをしとかないと」
「私しか客がいないから心配ないぜ」
「いや、霊夢もいる」
「それはそれで悲しいな……わかった。早くするんだぜ」
「ああ」
用意といってもすることは簡単だ。「休業中」の札を店の前にかけるだけ。
魔理沙の言うとおりほとんどすることがなく、少し悲しくなったのは内緒だ。
「さてと……準備完了だ魔理沙。ちなみに霊夢はどうしたんだ?」
「あいつは初詣の準備で大忙しだぜ」
「ふーん」
初詣は博麗神社にとって大変貴重な収入源だ。遊んでいる暇などないのだろう。
「よっし! 私についてこい!」
「優斗の家くらいわかるさ」
横に並んで寄り添うようにして、ゆっくりと歩を進めていく。
第三十七話でした。
今回はきりがよかったので少し短めでしたがここまでにしました。
ではまた!