「優斗、これを見てくれるか」
眼鏡をずりあげながら霖之助は懐から1枚の紙を取り出した。
「これは?」
「1年1組と1年2組の国語の点数グラフさ」
「どれ……うわっ、最初こんなに差あったんですか」
4月の時点では、棒の高さが2組のほうが圧倒的に勝っていた。が、ある月を境に1組の棒グラフが右肩上がりに上昇していた。
「ところが9月になると目に見えて上がってきた。明らかに優斗が入ったからだろう」
「そうですかね? クラスのみんなが頑張ってくれたことが一番だと思います」
「そうだとしても、やる気を出させたのは優斗、君の功績だ」
そこまで言い切った後、霖之助は再び優斗のほうへ視線を向けた。いよいよ疑問の革新へと迫る。
「優斗、君は本当に学生なのかい? 僕には一介の高校生には見えない」
霖之助の最大の疑問でもあり、また純粋な興味でもあること。それはそもそもなぜ普通の高校生の優斗がここまでスペックが高いのか? という根本的なものだ。
彼は1年2組の担任であると同時に、すべての学年の国語教師を担当している。
自分ではそこそこわかりやすく教えられているつもりであった。しかし、データとして現実な結果が出ている。認めざるを得なかった。
そこで直接聞くのが一番早いだろう。霖之助はそう考えたのだ。
そして、その答えは、――
「まあ……幻想郷らしくていいんじゃないですか?」
一瞬、霖之助の頭が真っ白になった。
すぐに目を閉じ、冷静に頭の中を整理する。
(なるほど……幻想郷らしいか。まったく答えになってない気がするのは僕の気のせいか?)
考えるほど、形容しにくい笑いがこみあげてくる。
なるほど、彼らしい答えだ。きっと彼なりに幻想郷に溶け込める方法を考えているのだろう。
どうせ彼はたいていのことはできるのだ。ならば彼のまねをしようとは思わないほうがいいだろう。自分は自分でいいではないか。
霖之助は優斗の一言でここまでのことを一気に悟った。いろいろな思いが脳内を駆け巡っている。
結局、霖之助と優斗は教え方も違えば考え方も違う。うまく国語を教えるには自分なりの方法を考えるしかないのだろう。
(なるほど。さすが優斗だ。こうも簡単に淀んでいたものが晴れるなんて)
霖之助はくつくつとこみあげてくる笑いを抑えながら、再び優斗のほうへ顔を整え、向いた。
「参考になったよ。ありがとう」
「あれ? もう帰るんですか?」
「ああ、もう十分だ。じゃあね」
「あ、はい……」
満足げな顔をして、霖之助はドアを閉めた。
「何がわかったんだろう。超適当だったのに」
優斗のつぶやきは誰にも聞かれなかった。
第四十話でした。霖之助の独り歩きがすさまじい。
霖之助は考えすぎですね。彼らしいといえばそうですが。
では!