さとりは基本的にSっ気がある。地底の管理人ということは関係ない。おそらく能力のせいだろう。
心が読める程度の能力の性質上、相手の弱みを握ることが多い。別に彼女はそれをもとに金をゆするなんて野暮なことはしない。幻想郷では逆に弾幕で返り討ちになることもあるからだ。
しかし、せっかく手に入れた情報を使わないというのももったいない話だ。では、どうするのか。
「なんといってもですね……すごく面白いんですよ。それが一番です。なんですかねあの優斗の態度。そしてやきもきしているあなたを見ているのもまた面白い! さっさと夜這いでもすればいいのに」
「う……それはそうかもしれないけどさ……」
さとりはどうも、人をいじって楽しむことに執念を燃やしているフシがある。
「あの態度、まさにラブコメ! ドロドロしてないですが、書物のような展開! もうなんですかね、とにかくすばらしい!」
「おいさとり、あんま自分の世界に入るな」
1人で大仰に叫んでいるさとりを魔理沙がたしなめる。
さとりは大きく上げた両手を戻した後、元の冷静な顔に戻り、今度は口元に手をやり考え込むような顔をした。
「しかしあそこまでとなると……不能の可能性があるかもしれませんね」
さとりは真剣な口調だった。が、大妖精は小首をかしげている。
「不能って?」
「ああ、知りませんでしたか。不能というのはですね……」
「ちょっと待て。それは……」
魔理沙が慌ててさとりの口をふさぐ。そのままさとりを引っ張っていき、二人にしか聞こえないくらいの小声で、
「それを教えるのは……やめておいたほうが……」
「いいんじゃないですか。どうも夜這いという言葉も知ってるみたいですし」
「そうかもしれないが……なんかこう……罪悪感みたいのはないのか?」
「ふふ、魔理沙さん意外と優しいんですね」
「誰だってそう思うんだぜ。お前、もしかして……」
「なんかいいじゃないですか。健全な子にポルノ叩きつけるような罪悪感って」
ここにクズがいた。
薄ら笑いを浮かべていて、心底楽しそうである。
「まあ、あれが健全かって言われるとわかんないですけどねー」
「だったらやめとけ」
「まあ、どっちにしろおもしろそうなので教えてきますねー」
「おまっ、ちょっと待て……」
ルンルンと大妖精のほうへ走っていく。一人の純粋であろう妖精の心に闇が刺さってしまうのであろうか。
「大妖精さん、不能ってのはですね……」
その時――、
「させないよ!」
「うわっ! 何をするんですか!」
さとりの背後から突然現れた誰かが羽交い絞めにし、さとりの口をふさいだ。
「大ちゃんを汚そうとするなんて見逃せるはずないでしょお姉ちゃん!」
「離しなさいこいし! くっ、力が強い……わかった、わかりました!」
古明地こいし。無意識を操る程度の能力にして、さとりの能力が効かない唯一の相手である。
普段はさとりと一緒にいることがほとんどだか、よく消えている。さっきまでさとりにも居場所がわからなかった。
「はあ……今までどこに行ってたんですか?」
「まあいろいろとね。さっきまではちょっと見てたんだ」
こいしが見るものとは、基本的に一つしかない。
「見てた? 誰の無意識をですか?」
「さっきずっと話聞いてたからねー」
「大妖精さんの心の中なら私が見透かしてますよ」
「違う違う、魔理沙のほうだよ!」
「うえっ!?」
突然出てきた自分の名前に魔理沙はすっとんきょうな声を上げた。。今まで安全地帯にいると思い込んでいたが、突然の落下である。
「へえ……ちなみに魔理沙さんの乙女心の度合いは?」
「私も気になる!」
にやけ顔に戻ったさとりと、待ってましたとばかりに顔を輝かせる大妖精がこいしに詰め寄る。
「えーとね、『無くはない』程度かなー。これから変化する可能性は十分にあるよ」
「ほら、その程度だろ? 私は潔白の身だぜ」
「でもあるってことですよね」
「やったね! 魔理沙にそんな感情があるなんて知らなかったなー」
「大妖精さん、さっそく霖之助さんに報告に行きましょう。魔理沙さんに似合うのはラブコメより甘々な純愛ですよ! 霖之助さんに頭を撫でられて、デレデレになる魔理沙さんを激写しましょう!」
「そうだね! さっ、全速力でここから出よっ!」
「ちょ、ちょっと待てー!」
変なところで弱みを作ってしまった魔理沙であった。
この後、さとりと大妖精を押さえつけるのに相当苦労したとか。
第四十二話でした。不能の意味は各自宿題だぞー(慧音っぽく)
大妖精は少しは逆襲できた……のでしょうか。いつもがやられすぎのような気が……
では!