第四十三話 文の取材記事
「うむむ……大変困った事態になりました……」
1月末日、射命丸文は1人、教室で頭を抱えていた。
頭を叩いてみたり、こねくり回しているその姿は、彼女にしては珍しく、スキだらけだ。それほど切羽詰まっている状況に追いやられているのである。
その、文を困らせている頭痛のタネとは、
(ネタがありませんっ……)
彼女が、よく発刊している文々。新聞。そこに書く、話題がないのだ。
1月の初めはお正月特集として、教師たちに取材した。
そこから1か月間。びっくりするほど何も起きなかった。情報収集能力では、他の誰にも負けないと自負していた文が駆けずり回っても、いいのが全くなかった。
(これではさすがに……)
静かに首を振る。手元にあるのは、三枚の取材記事。
1枚目は、『魔理沙の調子がおかしい?』という題名である。3学期の始業式から、魔理沙のボケが少し弱くなったというものなのだが、
(テンションが変わることなんていつものことですしねぇ)
無言で、メモを引きちぎる。
続いて、『大妖精、なんだかとっても嬉しそう』。これはその名の通り、始業式から大妖精が、へらへら嬉しそうな顔をしているというものなのだが、
(どーせあの人にかわいいとか言ってもらったんでしょ)
一蹴すると、メモを引き裂いて、ゴミ箱に突っ込んだ。
3つ目は、『鬼たち、節分の日には逃走か?』というもの。もうすぐ節分で、本来ならば萃香と勇義が鬼をやるのだが、2人が本当に体が傷つくからやめると、申し出た話だ。
(これはもう知られてますしねぇ……後任の鬼も決まってますし)
男たちが鬼に駆り出されることになっている。記事に出すのには、遅すぎるだろう。
(って、冷静に考えてても何も変わりません。動かなくては)
沈んでいた顔を上げ、教室の外へと歩いていく。
頭をかきながら、後ろのドアを開けようとするが、
「あれっ?」
立てつけが悪いのか、ガタガタいうばかりで開かない。
「えいっ……おかしいですね」
両手で取っ手のところを持ち、力を込めて横へスライドしようとするが、やはり動かない。
「このっ……!」
少しいらだちながら、思いっきり取っ手をドアを移動させようとしたその時、
「お困りのようねー!」
「うわっ! ――なんだ、あなたですか」
勢いよくドアが開いた瞬間、上からにゅっと人が降ってきた。空中で静止し、さかさまの状態で文を見つめていた。
その者の足元、つまりドアの上側には、真っ黒な世界が広がっていた。つまり、スキマであるので……
「なんですか紫先生?」
「あら、不機嫌そうね~。せっかくいいネタを仕入れてきたのに」
「なんですか!?」
「2月14日にあるイベントなんだけどね……」
紫の入り知恵は、学校全体を巻き込むことになる。
第四十三話でした。実は文にはすべて筒抜けであるというお話。
二月十四日といえばあれですが、この高校では少し違った感じになるのでしょうか……
では!