フランへの取材は予想外の収穫だった。具体的には一面トップに載せられるほどの。
フランのアップ写真を新聞の中心にはっておけば、咲夜もとがめることは無いだろう。むしろ、数十部くらい買ってくれるのではないだろうか。見出しは「フランの暴走チョコ特急!」といった感じで。
(やりました……)
恍惚な表情で幸せをかみしめる文。追いかけられても、殺人光線を向けられても、粘り強く取材した結果がこの成果だ。
(けど、まだ足りませんねえ……)
しかし、これで満足するような文ではない。1つスクープを見つけたら、それ以上の特ダネを見つけたくなる。その探究心こそ、幻想郷のブン屋だ。
午前の授業中に次の取材先は決めてある。
もう昼休み。この長い時間は格好の取材タイムとなる。
すでにその人物を尾行中だ。気づかれないようにそっと、物陰に隠れつつあとをつけていく。
その人物は、後生大事そうにチョコを抱えている。両手でギュッと握りしめていて、緊張していることが伝わってくる。帽子の羽がぴょこぴょこはねているのは、その影響だろうか。
常識を鑑みるなら声をかけるべきではないのだろうが、あいにく文はそんなデリカシーを持ち合わせていない。
大妖精とはチョコを引き合いに出され停戦協定を結んでいるが、慧音とは何一つ交渉しておらず、新聞のコラム欄を埋めるのにうってつけだ。
その人物が角を曲がった瞬間、光の速さで突撃する。
「慧音さーん!」
「うわっ!? ああああああ、文!?」
文が後ろから肩をたたいた途端体を激しく揺らし顔を真っ赤にするのは、文の担任、慧音。
「突然話しかけてすみません。お取込み中でしたか?」
「い、いや、別に大丈夫だ」
慧音の手が後ろへ回ったのを文は見逃さなかった。
「あれ? 何か持ってるみたいですが……なんですか?」
慧音の手が後ろへ回ったのを文は見逃さなかった。慧音の手の内を知っていながら、意地悪く文は尋ねる。
「な、なんでもない。つまらんものだ」
「そうですか。――うわーひどいなー」
「いきなり急になんだ」
「慧音さん、それをつまらないものなんて言ってはいけませんよ。妹紅さんへ渡す大事なものなんでしょ?」
「!? なんでそれを知っている!」
「あなた、この前1人で手作りチョコを作成してましたね。しっかりと取材させていただきました。慧音さんにしては脇が甘かったですね。割と近くでのぞいてたんですよ?」
「のぞいたのは認めるんだな……」
「まあ取材の一環ってことで」
顔を暗くした慧音の頭が反る。お得意の頭突き攻撃の準備態勢だ。
「おっと。頭突きしたら、この情報いろいろな所にばらしますよ」
「……いい性格してるな」
慧音の頭が戻る。
「まあまあ、ここは取引と行きましょう。新聞の片隅に慧音さんの記事を載せるだけで、邪魔をしないと約束しますから。それでいかがです?」
「絶対にだぞ?」
「ええ。記者魂にかけて誓います」
「ふん……いいだろう」
落ち着いた顔に戻った慧音は踵をかえし、歩いて行った。
(天井裏から、ひっそりと観察するのは邪魔な行為ではないんですよ慧音さん)
文の記者魂は紙のように薄いという当たり前のことに気付かずに。
第四十八話でした。
文に魂って言われてもねえ……特ダネ魂は人の何十倍もありそうですが。
では!