幻想高校の日々   作:ゆう12906

53 / 63
第五十三話 不可視の壁

 休み時間になった途端、アリスは教室を飛び出した。これは誰かに話しかけられ野を避けるため。つまり、一人になりたかったのだ。

 

 魔理沙と協力して弾幕ごっこという、夢のような話。そのチャンスが今まさに目の前に転がっている。

 

 その作戦を練るには、だれにも邪魔されない空間が必要だ。トイレの個室か、はたまた屋上の隅っこか、あるいは自分の家か。

 

 いずれにせよ、教室にいたままでは都合が悪い。誰かに見つかることなく隠密に行動……

 

「見つけたわよアリス」

 

「どっから嗅ぎつけたのよ紫もやし」

 

 できるはずもなかった。アリスが角を曲がると、その魔法使いは立ちはだかっていた。

 

「聞いたわよ。魔理沙と霊夢がコンビを解散するんですってね」

 

「情報が早いな……」

 

 アリスの元タッグ相手で犬猿の仲、パチュリーが低い声で話す。

 

 前回の弾幕ごっこ大会で、意外にも二人は手を取り合った。しかし、その魂胆はお互いをつぶすためというわかりやすいものだった。

 

 結局、大妖精&小悪魔戦のときにアリスはゴリアテ人形、パチュリーは賢者の石をそれぞれぶつけ合って、自滅した。

 

 それ以来特に関係を持たなかったのだが、なぜ今パチュリーは突っかかってきたのだろうか。

 

 アリスの心底嫌そうな顔を気にも留めず、パチュリーは続ける。

 

「つまり今、魔理沙はフリー。またとない絶好のチャンスってわけね」

 

 その言葉にアリスは怪訝な顔をした。数秒思考したあと、困惑した表情になる。

 

 ――何を言ってるんだろうかこの喘息魔導師は。

 

 どうやら夢を見ているのだろうと判断し、アリスは現実を突きつける。

 

「あら? あなたにチャンスがあると思ってるのかしら。よく考えてみなさい、今回はクラス対抗の戦いなのよ。あなたは確か……3年生だったわよね。対して私たちは1年1組。入り込む余地なんてないのよ」

 

「ええ、よくわかってるわ」

 

「ならさっさと指くわえておけば?」

 

「そうするわけにもいかないでしょ?」

 

「はい?」

 

 アリスの背筋が冷たくなる。いまのパチュリーの言葉と表情に恐ろしい狂気を感じたような気がした。

 

「まあとにかく! 今私は1人になりたいの。もう話はないわね」

 

 話を強引に切ってパチュリーの横をすり抜けようとする。が、

 

「きゃっ!」

 

 パチュリーの真横で、歩が止まる。一見すると何もない空間にしか見えない部分に、異物がある。

 

「な、なんなのよこれ!?」

 

 まるで壁があるかのごとく、前に行けない。強くこぶしでたたいても、まったく変化がない。

 

 右も左も後ろも同じような壁。アリスとパチュリーだけ隔離されたような、そんな一辺2メートルほどの正方形に閉じ込められた。

 

 たまらずアリスがパチュリーの肩をつかんで詰めよる。

 

「パチュリー! いったいなんのマネよ!」

 

「ふふ、ふふふふ……。私考えたのよ。このままあなたが幸せになるくらいなら……」

 

 一呼吸おいて、低い声でアリスの耳元にささやく。

 

「強引な手を使っても、あなたを止めるわ」

 




第五十三話でした。

これでパチュアリ最終章になります。少しずつ佳境に近づいてきましたね。

では!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。