休み時間になった途端、アリスは教室を飛び出した。これは誰かに話しかけられ野を避けるため。つまり、一人になりたかったのだ。
魔理沙と協力して弾幕ごっこという、夢のような話。そのチャンスが今まさに目の前に転がっている。
その作戦を練るには、だれにも邪魔されない空間が必要だ。トイレの個室か、はたまた屋上の隅っこか、あるいは自分の家か。
いずれにせよ、教室にいたままでは都合が悪い。誰かに見つかることなく隠密に行動……
「見つけたわよアリス」
「どっから嗅ぎつけたのよ紫もやし」
できるはずもなかった。アリスが角を曲がると、その魔法使いは立ちはだかっていた。
「聞いたわよ。魔理沙と霊夢がコンビを解散するんですってね」
「情報が早いな……」
アリスの元タッグ相手で犬猿の仲、パチュリーが低い声で話す。
前回の弾幕ごっこ大会で、意外にも二人は手を取り合った。しかし、その魂胆はお互いをつぶすためというわかりやすいものだった。
結局、大妖精&小悪魔戦のときにアリスはゴリアテ人形、パチュリーは賢者の石をそれぞれぶつけ合って、自滅した。
それ以来特に関係を持たなかったのだが、なぜ今パチュリーは突っかかってきたのだろうか。
アリスの心底嫌そうな顔を気にも留めず、パチュリーは続ける。
「つまり今、魔理沙はフリー。またとない絶好のチャンスってわけね」
その言葉にアリスは怪訝な顔をした。数秒思考したあと、困惑した表情になる。
――何を言ってるんだろうかこの喘息魔導師は。
どうやら夢を見ているのだろうと判断し、アリスは現実を突きつける。
「あら? あなたにチャンスがあると思ってるのかしら。よく考えてみなさい、今回はクラス対抗の戦いなのよ。あなたは確か……3年生だったわよね。対して私たちは1年1組。入り込む余地なんてないのよ」
「ええ、よくわかってるわ」
「ならさっさと指くわえておけば?」
「そうするわけにもいかないでしょ?」
「はい?」
アリスの背筋が冷たくなる。いまのパチュリーの言葉と表情に恐ろしい狂気を感じたような気がした。
「まあとにかく! 今私は1人になりたいの。もう話はないわね」
話を強引に切ってパチュリーの横をすり抜けようとする。が、
「きゃっ!」
パチュリーの真横で、歩が止まる。一見すると何もない空間にしか見えない部分に、異物がある。
「な、なんなのよこれ!?」
まるで壁があるかのごとく、前に行けない。強くこぶしでたたいても、まったく変化がない。
右も左も後ろも同じような壁。アリスとパチュリーだけ隔離されたような、そんな一辺2メートルほどの正方形に閉じ込められた。
たまらずアリスがパチュリーの肩をつかんで詰めよる。
「パチュリー! いったいなんのマネよ!」
「ふふ、ふふふふ……。私考えたのよ。このままあなたが幸せになるくらいなら……」
一呼吸おいて、低い声でアリスの耳元にささやく。
「強引な手を使っても、あなたを止めるわ」
第五十三話でした。
これでパチュアリ最終章になります。少しずつ佳境に近づいてきましたね。
では!