「おお、もう始まってるね!」
「今は1組と……リリーホワイトとブラックだから2組が戦ってるね」
小傘たちが試合会場へ行くと、すでに激しい空中戦が繰り広げられていた。
一試合目は文、椛ペアの一組と、リリーホワイト、リリーブラックペアの2組という対戦カードだった。
「もうすぐ春ですねー。なんだか力がわいてくるねー。弾が止まって見えるよー」
「そうだねー。でも油断しちゃだめですよー。相手も本気ですよー」
「気を付けるよー」
「ああ、いちいち語尾を伸ばすな! そんなに私の恨み言を記事に書かれたいの‼」
「文様、あれはどうみても素ですよ。……強いのは確かですが」
文がペンを取り出して、猛烈にいろいろ書きなぐっている。椛はそれをたしなめているものの、リリー達をにらみつけて敵意をあらわにしていた。
ほわほわした笑顔のリリーホワイトと、きりっとして整った笑顔のリリーブラックに文たちは苦戦していた。
黒白リリーが相手と聞いて、油断したのは事実だった。もちろん技量の差もあるが、そもそもリリーたちはスペルを持っていないため、速攻で倒せると踏んでいた。
だが文たちは肝心なことを忘れていた。
今日は3月14日。特に今日が特別な日というわけではないが、この季節が問題なのである。
「あいつら春になっただけでこんなに強くなるの?」
「さあ? まあ今日はとても暖かいですからね」
「椛、あとスペル何枚残ってる?」
「私は3枚しか持ってないので、それらを使い切った時が負けですよ。まあわかりやすく言うと、あと1枚しかないんですが」
「だよね。私も1枚だけ……――来るっ!」
文が反射的に前を向くと、赤と青の弾が、大量にばらまかれていた。
「またこれ⁉ 動きにくいのよ!」
そこそこ密度もあり、不規則に動き回る弾は、1度当たっただけで負けとなる弾幕ごっこではなかなか厄介だった。
右、左、前、後ろ、あるいは上下を使って、三次元を駆使して何とか避ける。
「はあ……平気?」
「ご心配なく……と言いたいところですが、結構厳しいです」
弾は止まったものの、際限なく振ってくるランダム弾に、文たちの体力は少しずつ削られていた。
「もうちょっとだねー。そろそろ文さんたち事故りそうだねー」
「疲れてるのがよくわかりますねー。これが有名な、ジャイアントキリングというやつですかねー」
あいかわらず余裕しか見せないリリーたちを見て、文は決心した。
「正直リリーホワイトに使うのは大人げない気がするけど……あれ、いくわよ」
「了解です」
「ねえねえ、どうやら本気出しちゃうみたいだよー」
「避ける準備しておきますよー」
「わかったー」
文と椛は同時に懐からスペルカードを取り出す。文は少し腰を落とし、椛は剣を構えて、2人が出せる最大の合作スペカの準備をする。
「いくわよ! 旋風『鳥居つむじ風』!」
文の両脇に、吹き荒れんばかりの竜巻が二つ出現する。
「さあ、吹っ飛んで来い!」
「そんな単調なスペルー、あたるわけがー……」
リリーホワイトが言葉を失った。
実際、文は竜巻をリリーホワイトとブラックの間に投げつけた。しかし、風が吹いている方向が、予想と異なっていた。
普通竜巻は風が巻き上がるものだ。だが現実には風がリリーたちの間のほうへ吹いている。文たちとリリーたちの間に、一本の神風のような通り道ができた。
そこに突撃するのはもちろん、
「うらあああああああ!!」
「うわーすごいなー」
剣を振りかざしている椛だ。先ほどまであった10メートルの距離が急速に縮まる。
「終わりです! 山窩『エクスペリーズカナン』」
椛がスペルカードの紙きれを切り裂き、身体の周りに生み出した黄色の弾幕を至近距離から一気に放出する。
「うわー避けられないー」
すぐ近くにいたリリーホワイトはたまらず被弾した。だが、もう一人、リリーのクールな方は、
「ごめんなさいホワイトー。けど下ががら空きですよー」
妖精とは思えないすばやさで下に回り込み、華麗に回避していた。
リリーブラックの位置を視認した文は、ニンマリ笑った。
「かかったわね! そらいけっ!」
織り込み済みとばかりに、もう1つの竜巻を操作した。
猛烈に吹き荒れる風の入り口にいたのは椛、出口は当然リリーブラック。
「もう一度おおおおお‼」
猛烈な追い風をもらって、椛が真上から突進する。
「は、速すぎますー」
ピチューン
「案ずるな、みねうちです」
審判のホイッスルが高らかになり、試合終了になった。
第五十八話でした。椛とか一話以来ですね。
公式では、リリーブラックはホワイトのコスプレらしいですねー。
あと、ホワイトは原作でセリフがないのでー、この世界のリリーは、完全に僕の創作ですー。みなさんはどんなリリーがいいですか―?
ではまたお会いしましょうー。