嬉しいですね。
今回の話は、場面転換が多めです。
読みにくくないですか?話の繋がりで分かりにくいところとかありませんか?
不満な部分があったら言ってくださいね。
「あいつら、躊躇なく撃ってきやがる!」
現在、館から脱出した外交団一行は、軍艦に向かうボートに乗って退避していた。
沿岸ではパガンダ王国軍と思われる組織が、ボートに向けて大砲を撃ち続けている。
近世レベルの大砲であるからか命中率は良くないが、相手側もそれを理解しているのか大量の砲を配備しており、数の暴力で彼らを沈めにきていた。
「松前殿、気分は平気ですか!」
「ありがとうございます!少し取り乱してしまいました!」
逃走の際、迅速な退避のためにより速度の出る連邦のボートに全員が乗り込んだ。帝国の内火艇は沿岸に残してきてしまったが、近世文明にはどうせ解析できないだろうし、回収の機械もあるだろうという理由で放置された。
連邦のボートは30kt以上を発揮する高速なものだ。
岸はどんどんと遠のいていく。
「クソっ、我々を"蛮族"などと罵った挙句、一方的に処刑しようとするなど、許しがたい行動だ!」
「随分と驕り高ぶっていましたね。それに"列強"とか言うのも聞こえました。島の東にある大陸の何処かの国でしょうか」
突然の攻撃に精神的に興奮していた皆は、沿岸砲が届かない位置まで来て安心したのか、少しずつ落ち着いてきた。
だが、彼らの暴挙はまだ終わっていなかった。
「………!あれは、戦列艦!」
島の周囲を航行中だった戦列艦が、王族ドグラスの命でボートを撃沈するために向かってきたのだ。時間が経てば経つほど、港からも出撃し数を増すだろう。
「木造船とはいえ、さすがにこのボートに大型船を撃沈できる武装はありません。とにかく速く、我々の船へ戻らなければ」
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松前とブロアの乗るボートから、連邦の巡洋艦に通信が入った。また、連邦のボートからでは帝国艦隊への通信は出来ないものの、連邦巡洋艦を経由して帝国巡洋艦「ムリフェイン」に通信が回ってきた。
状況を知った乗員たちは慌ただしく動き出す。
「軍艦が来るぞ!相手は近世の戦列艦だが、数が多い!」
彼らは艦隊が追ってきたとの報告に、敵戦力に当たりをつけていた。しかし、それより先に戦域に到達する者がいた。
「対空レーダーが航空目標を探知しました!」
「対空レーダーが?………例の飛竜!やはり組織的な運用がされていたか!」
この事態は彼らにとって想定外ではあったが、むしろ丁度良い相手でもあった。
(対空能力特化の巡洋艦であることが功を奏したな。貴様らが何に手を出したか、教えてやる)
「射程内に入り次第、対空射撃を開始しろ!」
司令は即座に対空戦闘を指示する。
「自由射撃でよろしいのですか?」
「相手はせいぜい190km/h程度の鈍足飛竜だ。最高速度はもう少し出るかもしれないが、そう変わらないだろう。問題ない」
司令の顔は怒りと失望に染まっている。伝え聞いただけでも吐き気のする話だった。新世界には、こんな国しか無いのだろうか。
「奴ら、自分が蛮族である自覚が無いんだろうな。……いや、少し前までの我々も、そう大きく変わらなかったか」
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パガンダ王国飛竜騎士団は魔信で連携を取りながら、攻撃対象の蛮族目指して飛行していた。
ワイバーンの導力火炎弾は粘性を持つため、着弾地点にこびり着いて良く燃える。
どれだけ大きな船であっても、大量のワイバーンで導力火炎弾を浴びせれば必ず炎上し、いずれ沈む。
かの列強レイフォルの戦列艦とて、それは例外ではない。
何より戦列艦は対空戦闘能力を持たないため、相手がワイバーンを保有していなければ一方的な戦闘となるだろう。
「対象を発見した!これより攻撃に移る!」
複数騎で編隊を組みつつ、ワイバーンに導力火炎弾を準備させ蛮族の船へ高空から突っ込んでいく。
違和感。
(黒い船だ、随分と大きい。それこそ70を上回る魔導砲を持つ王国最大の戦列艦よりも………いや、そんなことはあり得ない!蛮族がそのような船を持つはずがないのだ!)
しかし現実は無情だ。
黒い大型船より、無数の光が上がる。
その光が近くを通った瞬間、すぐ近くを飛行していた仲間が弾け飛んだ。
「は?なんだ、なに
動揺する暇など、なかったのだ。
彼は、肉塊と血飛沫に変わった。
それはもはや、一方的な蹂躙だ。
とてもではないが、戦いとは言えない。
栄えあるパガンダ王国の飛竜騎士団は、数十分のうちに壊滅。恐れをなして逃げ出した少数を除き、弾け飛んだ。
連邦の巡洋艦に向かっている別働隊やパガンダ王国本土の防空部隊など、まだ飛竜騎士団は残っている。しかし、それが戦力として通用するのは彼らの常識の内にある相手のみである。
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「敵航空戦力の撃破を確認!残存機は撤退する模様です!」
「休んでいる暇はないぞ!次は戦列艦だ!」
飛竜騎士団を撃破した帝国艦隊は、続いて対艦戦闘に備えようとする。
「いや待て、近接信管だと着弾前に砲弾が爆発してしまうか?木造船なら被害は与えられる。しかし直撃に比べるとどうしても……新しい飛竜が来るたびに、着発信管と近接信管で砲弾ごと切り替えるのは手間だな」
「司令、意見具申いたします」
参謀であるカイルが、悩んでいた司令に話しかける。
「聞きましょう、カイル参謀」
「ありがとうございます。では、連邦の艦と連携を取り、完全に役割を分担してはいかがでしょうか」
「分担、ですか?」
「より具体的には、対空戦闘を連邦の艦に完全に任せるのです。司令のおっしゃる通り、砲弾を切り替えるのは手間がかかります。我々は高角砲を対艦戦闘に専念させれば、砲門数がそう多くない駆逐艦2隻も有効に運用できます」
「"より無駄なく、効率的に"ということですか」
「ええ、それに連邦の艦の防空範囲は、我々のそれよりもずっと大きい。その上彼らの対艦兵装は高価で、木造船相手にはあまり使いたがらないでしょう。適材適所です」
司令は納得したような顔をする。
「すぐに連絡を取ります」
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「敵対空目標、高度4000m付近を約200km/hで飛行中」
「先ほど帝国護衛艦隊より通信が入りました。"対艦戦闘は任された"とのこと」
「彼らの艦の方が装甲も厚いだろうし、砲弾の射程からして被弾はほぼありえないが、万が一を考えると任せた方がいいか」
その頃、連邦側も通信を受け、対空戦闘に専念する方針が固まっていた。
「対空戦闘開始、ミサイル発射」
「対空ミサイル、発射します」
艦から白い煙と共に複数の光が打ち上げられ、猛スピードで飛竜に向かっていく。
「接触します。…………対象の反応消失を確認、撃墜確実と見られます」
「続けてミサイル発射、敵航空戦力が全滅するまで撃ち続けろ。ただし、逃げた相手はその限りではない」
「了解しました」
戦闘は順調に推移している。今海戦は彼らにとって想定外の事態であり、引き連れた戦力もそう多くはない。
しかし技術差は圧倒的であり、勝利は確実である。
「ブロア殿、申し訳ないが今しばらくお待ちください。戦闘中の移送は難しいのです」
「いえ、感謝申し上げます。突然にも関わらず受け入れていただいたのですから」
連邦のボートで退避していた外交団は、帝国側の外交官複数を含め、全員が連邦の巡洋艦に乗艦していた。
外交団一行は帝国艦隊の精強さと連邦の規格外さを知っていたため、最も危険な状態を脱したのもあり、落ち着きを取り戻していた。
遠くからでは鮮明に見えた訳ではないものの、彼らが乗るボートは沿岸砲の攻撃を受けているようだった。
外交交渉中に相手側が突如として拘束に乗り出し、何とか逃げ出したのだという。
この文明国としてあり得ない対応に、それを聞いた当初は皆が愕然とした。
"蛮族"
彼らは、真っ当に会話できる相手ではなかったのである。
軍人達の冷たい空気の中、松前達は先ほどのやり取りを思い返しながら考察を重ねていた。
「彼らは、ワイバーンの運用と魔法技術を持つのが先進国の証しである、という意味合いの発言をしていました。それがこの世界の共通認識なのでしょうか」
「現状、魔法がそれほど脅威になっているようには感じられませんが……」
「我々の技術体系との違いも気になります」
松前とブロア達は、交渉の時の話を思い出しながら考察している。
「帝国艦隊、砲撃を開始した模様です」
乗員が報告を上げると、外交官一行も戦闘内容が気になるのか、話をやめて聞き耳を立て始めた。
「命中精度が良いな。レーダーと連動させて射撃をしているにしても、砲術士の腕がいい。装填も随分と早い」
「同じ頃の我々であれば、目を見開いたことでしょう」
連邦側の驚きに、帝国外交官達は嬉しそうな顔をしている。
帝国艦隊は非常に高い練度を誇り、同レベルの技術を持つ相手であっても優位に戦闘を進めるだけの能力を持っていた。
その上、他国は遅れた技術しか持たないというのだから、旧世界において最強の座に君臨するのも道理である。
「この調子なら問題なさそうだが、念のため主砲の用意はしておいてくれ」
「対艦戦闘は任せるのでは?」
「本当に念のためだ。あらゆる事態を想定して備えておけば、憂いはない」
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戦闘は終結が近づいている。
帝国艦隊と砲戦を行っていた敵戦列艦隊は満身創痍であり、その多くがバラバラの木材となって海に浮かんでいた。
相手側は愚かではあるものの馬鹿ではない。
少なくとも、彼我の戦力差を理解するだけの能はあったようだ。
「敵艦隊、何隻かはマストに共通の紋様の旗が掲げられています。この世界における降伏旗、でしょうか」
「ッチ、ようやく観念したか。速度を落とせ。一応、救助だけはしておこう」
(我々は文明人だからな)
ムリフェインは速度を落とし、ボートを用いての救助に移行しようとしている。
抗議は起こらなかった。
皆が文明人としての誇りを持っていたし、それが先進的な国のやるべき事であると連邦から学んでいたからだ。
加えて、既に抗議する体力が無かったという理由もある。
"手間を掛けさせられた"
乗員達の顔には、面倒事を終えた後の疲れが浮かんでいた。
降伏した相手側の艦は、こちらに合流するように針路を変える。
「………?なぜこんなに近づいてくる。武装解除を受け入れるつもりか?」
「あれだけ野蛮な奴らが今更武装解除を受け入れるとでも言うのでしょうか」
「私も不思議でなりません……至近距離での騙し討ち、などであれば納得できるのですがね」
「それも難しいでしょう。戦列艦は横に大砲がついているのですから、斜めを向いていては我が艦には当たりませんよ」
戦列艦は進行方向・速度を変えず、まっすぐこちらに向かってくる。
もう目の前だ。
甲板上に整列しているのがよく見える。
「敵戦列艦、未だ針路変わらず」
(これは、何をしようとしているんだ?このままだとぶつかるぞ。金属で出来た艦に木造船が当たればどうなるか、分からないはずは……)
「………!………甲板要員は即座に艦内へ退避しろ!機関全開!面舵一杯!」
司令は突如甲板要員に避難の指示を出し、同時に戦列艦から離れようとする。
しかし速度を出し切る前に、戦列艦はムリフェインへ激突。木片を散らしつつ、接触しながら並走しだした。
不思議に思っていた中、突然叫び声が聞こえる。
「移乗開始!!殺せぇぇぇぇ!!!!」
戦列艦から、サーベルを装備した水兵たちが流れ込んでくる。避難が間に合わなかったものは携帯していた銃器や甲板上の機関砲などで応戦するが、相手側の数に徐々に押されていく。
「司令!甲板上に敵が乗り込んできました!戦列艦から、直接です!」
「分かっている!艦内につながる扉をすべて閉鎖しろ!!外に残っているヤツもなるべく中へ入れるんだ!」
そもそも白兵戦をほとんど想定していなかった海軍軍人にとって、この奇襲は混乱を巻き起こすには十分だった。
外から、銃撃戦の音と悲鳴が聞こえてくる。
「これが人間のやる事か!そこまで勝ちたいのか!誇りも恥も、貴様らにはないのか!!蛮族どもがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
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「降伏を偽装して、奇襲するなんて………」
「……対艦戦闘用意」
皆が唖然として固まっていた中、声が響いた。
訓練された軍人である彼らは、その声によって即座に動き出す。
「艦長、帝国艦への誤射の可能性があります」
「主砲ならそれもない。レーダーがしっかりと戦列艦を捉えていればな」
「戦列艦の弾薬庫が誘爆した場合はどうするんです」
「あの帝国艦は装甲を持つ。巡洋艦ならそれなりの厚さだ。ある程度耐えられる」
皆の気持ちは一つになっていた。
報復しなければならない。
自分達の友邦が受けた仕打ちを、断じて許してはならない。
艦長はムリフェインへ通信を入れる。
「聞こえますか!無事ですか!」
少し遅れて、返答があった。
「艦内要員は無事です!しかし、甲板上に敵が大勢いて、今は扉を閉鎖して抑えている状況です!」
「艦を動かして、戦列艦から離れられますか!!」
何とか、誤射の可能性を減らそうと試みる。
「先ほどから試していますが、すぐには難しいです!無数のフックのようなものが引っ掛かって船同士を繋げているせいで、なかなか外れません!それに、時間が経てば扉を破られる危険もあります!!」
「艦長、これは……」
「仕方がない。やろう」
「これから、横付けになっている戦列艦に攻撃を行います。構いませんか」
「………お願いします……」
「承知しました。誘爆の危険性があります。皆さん艦内にいらっしゃるとは存じますが、衝撃に備えてください」
「分かりました」
通信が切れる。
「帝国巡洋艦に接触した戦列艦を主砲で撃沈した後、そのまま対艦戦闘を継続。近距離を主砲で、遠距離の相手には対艦ミサイルも使用する」
「周囲に残っている戦列艦は同様の手口で奇襲攻撃を行ってくる可能性がある。降伏の意思の有無に関わらず、全て撃沈する」
「必ず、後悔させる」
「砲撃、開始」
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兵器性能紹介
球磨型機巧軽巡洋艦
全長 205m
最大幅 24m
基準排水量 13,000t
速力 最大30kt
兵装 ーーーーーーーーーーーーーーーー+
130mm単装機巧速射砲 1基1門
ミサイル垂直発射システム 144セル
20mm 6連装対空迎撃機関砲 4門
艦載ヘリコプター 2機
無人偵察機 2機
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー+
同型艦ーーー+
甲401 球磨
甲402 多摩
甲403 北上
甲404 大井
甲405 木曽
甲406 天塩
甲407 飛騨
甲408 富士
甲409 高梁
甲410 吉野
ーーーーーー+
日本連邦海軍が運用する機巧軽巡洋艦。
"軽"とつくものの、現代の巡洋艦らしく空母を除く水上艦の中ではかなり大きな船体を持つ。
その船体に見合った数のミサイルを搭載しており、艦隊防空の主力を担っている。
建造数もそれなりに多く、数と質を両立した、連邦海軍の主力の一角であると言える。