実質箸休め回ですね。
少しヒントが多すぎたでしょうか。
新世界国家との初交渉から数日。
先日の脱出/迎撃戦は"パガンダ沖海戦"と名付けられ、その内容は帝国・連邦双方の国内に大きく広まった。
"新世界の野蛮な国"
"蛮族の国パガンダ"
"降伏を偽装か?"
「………荒れているな」
「そうですね……」
新聞やネットで大きく報じられ、両国の世論は対パガンダ王国で硬化。
特に帝国側は実際に死者が出ているのもあり、その憎悪は凄まじい。
一部ではパガンダ王国に限らず、新世界全てに対する憎しみを抱いている者もいる。
「転移前の生活もある程度戻ってきて、せっかく明るい雰囲気になっていたのに……」
「だが、その怒りは理解できる。俺とて我慢ならん」
帝国は新世界転移と連邦との交流によって国家の方針が大きく変わり、軍・政府上層部に限らず国民にも新しい意識が浸透し始めている。
しかし世界最強であった自負から、高いプライドは未だ健在である。
「徹底的にやる必要がある。お前にも働いてもらうぞ」
「無論です。閣下」
"戦術とも言えない卑劣な行いにより、栄えある帝国軍に死者が出た"
"これでは我が国の面子は丸潰れだ"
"帝国の真の力を示さなければ"
"我々は屈しない"
"報復を"
帝国内では、既に大規模な艦隊の編成が始まっている。
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一方連邦は、帝国とは別の理由で報復論が盛り上がっていた。
連邦は転移前より、"武装中立/拒否的抑止"をドクトリンとしていた。
他国の戦争に直接介入せず、武器輸出のみを行う。
仮に連邦へ侵攻してきた場合、全力で脅威を排除し、反撃に出る。
1900年代より2つの軍事大国に挟まれ、連邦を建国した後もその脅威にさらされ続けた彼の国にとって、力による中立は国家を維持するための生存戦略である。
それは連邦が単独の国力において世界1位に到達してからも変わらない。
長年武装中立を貫き、外からの脅威にさらされなかった連邦にとって、今回の件は衝撃的であった。
頂点たる連邦に攻撃してくる愚か者がいるなど、考えもしていなかったのだ。
無論、これは客観的に見れば傲慢である。
だが実際、連邦は旧世界において、大戦後はどんな国家からも侵攻を受けず、あらゆる戦争にも不干渉を貫いた。
それは圧倒的な力あってこその態度である。
しかし転移によってそうはいかなくなった。
この世界の国々は、連邦を知らないのだ。
連邦に手を出した国がどうなるか、知らないのだ。
ならばそれを知らしめよう。
自分達の平和と安寧を維持するために。
連邦国民は、蹂躙を求めている。
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グラ・バルカス帝国 会議場
「此度の件、痛ましく思う」
「余は、パガンダなる蛮族の国を断じて許さん」
「軍を派遣し、蛮族どもを滅ぼすのだ」
会議場では、妙な熱気が広まっていた。
旧世界を思い出す、帝国の圧倒的な力が証明される戦いが始まる。
皇帝は、軍事施設を主な標的とした大規模攻撃を指示した。その際、間接的に"ある程度の民間人、民間施設への被害は仕方のないことである"とも宣言した。
皇帝が口にした「蛮族」という言葉に、明確な定義は存在しなかった。
だが、この場にいる者たちは皆、その意味を理解していた。
兵士であろうと、武装した民間人であろうと変わらない。
礼節を弁えず、握手に銃を向けるのであれば、等しく「蛮族」である。
そして一度その言葉を与えられた者に対して、帝国軍がどれほど容赦をしないか。
それを、この場に知らぬ者はいなかった。
相手は文字通り、何をしてくるか分からない。
ならば、こちらも何をされても動じぬだけの力を用意すればいい。
故に、一切の油断なく全力で殲滅すべきである。
「では、より詳細な内容を議論いたします。ミレケネス将軍」
「はい。まずは現在の状況からですが、パガンダの戦列艦の強襲に備えて、東方艦隊所属の艦艇から駆逐艦を抽出し、周辺海域を巡回させております。現状、異常はありません」
パガンダ王国艦隊はパガンダ沖海戦でそれなりの損害を負ったはずだが、どれほどの戦力を保有しているのかは判明していない。追撃用の戦力を隠している可能性を鑑みて、艦隊が東方海域を主とした定期巡回を行っていた。
「また報復作戦についてですが、私は監査軍よりグレードアトラスターの派遣をご提案いたします」
会議場内が湧いた。
帝国の象徴でもある、世界最大最強の戦艦だ。
「グレードアトラスターであれば、帝国の圧倒的な力を示せます。パガンダよりさらに東にある国々にも、威光を知らしめる事が出来るでしょう」
旧世界において、戦艦は時代遅れの兵器になりつつあった。航空機の発達は早くはないものの、着実に大型の爆弾を積めるようになり、速度も上がったことで対空砲にも簡単には当たらなくなった。
同時に、帝国に限った話ではあるが"水中に潜伏出来る艦艇"も登場し始めた。
いずれ相手が同じ物を作り上げれば、水上部にしか装甲を持てない戦艦はいずれ淘汰されるだろう、と分析されていた。
しかし新世界の転移に伴って、蛮族相手であれば分かりやすい脅威として運用できること、何より連邦が運用しているが故の先進性の確定から、今後も運用は継続されることとなった。
そんな戦艦群の中で最も大きい砲を持つのが、グレードアトラスターである。対外的には41cm砲とされているが、実際の口径は46cmあり、同レベルの技術進度だった過去の連邦もこの巨砲を持つ艦は保有していなかった。(計画にはあったそうだ)
「グレードアトラスターの投入に異論はない。だが、それだけでは足りぬだろう」
カイザルが静かに口を開く。
「ミレケネスの案には賛成だ。だが目的を履き違えてはならない。確かに今回の作戦目的は"報復"と"威光の誇示"。その内容から殲滅戦に近い攻撃的作戦ではあるものの、無駄な消耗を伴う必要はない」
「生ぬるい事を言うのね、カイザル。奴らは我が軍に死者を出したのよ」
「分かっている。だからこそ確実に、そして効率的に叩く必要があると言っているんだ」
ミレケネスは腕を組み、不満げな視線をカイザルに向けるが、口を挟むことはしなかった。
カイザルの発言には、いつも一定の理があることを知っているからだ。
「陛下、よろしいでしょうか」
「申せ」
「まず艦隊の編成についてですが、グレードアトラスターを中心とした主力打撃群に加え、上陸作戦を見据えた輸送艦、そして海兵隊の同行を提案します」
「占領するつもりか?」
「一時的な制圧です。完全な統治は考えておりません。しかし、"軍事施設を破壊するだけ"では、王都に居座るパガンダ王族……特に外交官の拘束を命じたというドグラスとやらに、直接その報いを受けさせることが出来ません」
一部の者は"忘れていた"と言わんばかりに目を見開いた。
パガンダ王国そのものへの報復に目が行き過ぎて、海戦の元凶となった主犯から意識がそれていたのだ。
「ドグラスは王族とのことですが、会談の途中で銃を用意して、外交官を撃とうとした、とのこと。つまり奴は民間人を攻撃する立派な蛮族であり、我が軍の排除対象です」
カイザルは"よい口実になる"とでも言いたげに口角をあげている。
「なるほどな。主のいうことは何も間違っていない。そして上陸か、これも悪くない。誇り高き我が国の外交官を貶したその口を、余が直々に踏みつけてやりたいところだが」
「陛下、お戯れを」
「半分は本気だぞ、カーツ」
冗談めかしてはいるが、その目の奥には確かな怒りが宿っている。
皇帝は国や民を自分の所有物だと思っているが、同時に宝とも思っているため、自身の大切な宝を傷つけた相手
を許すことは断じてない。
「連邦とはこの件について、何か連絡は取っているのか」
「はい。既に連邦側からも、今回の一件についての見解が届いております」
カーツが一枚の書類を差し出す。
「連邦もまた、独自に報復作戦を計画しているとのことです。彼らとしては、"自国の外交官が危険に晒された"事実を重く見ており、強硬な姿勢を示しています」
「やはり連邦にとっても、今回の件は類を見ない事態だったか」
「はい。それと、両国での連携について打診がございました。同じ、もしくは近接した時期に軍事行動を起こす事で、国内に転移国家の連帯を示す意図もあるようです」
皇帝は少し思案するように黙り込んだ。
「連邦と足並みを揃えるのは構わない。だが、主導権はこちらが握りたいところだな」
「陛下、私も同じように考えておりました。しかしそこは慎重にならざるを得ません。いくら連邦が帝国を対等に扱っているとはいえ、未だ差は圧倒的です」
しばらくの重い沈黙の後、皇帝が再び口を開く。
「……分かっている。分かってはいるのだ、カイザル」
皇帝は小さく息を吐いた。
「だが、これだけは譲れん。少なくとも今回、パガンダに報いを受けさせるのは我が帝国の艦隊であるべきだ。我が国の軍人が命を落としたのだからな」
「御意にございます」
その言葉に、会議場の空気が僅かに引き締まる。
カイザルは一礼し、それ以上の反論はしなかった。
彼にとっても、"死者への報い"を優先すべきだという皇帝の判断は、納得のいくものだったからだ。
「では、艦隊編成の詳細を詰めよう。ミレケネス、上陸部隊の規模はどの程度を想定している」
「最低でも一個師団規模を。相手の戦力は未知数ですが、"魔法"とやらを扱う以上、油断は禁物です」
「魔法か。連邦も奴らの魔法を危惧しておったな」
旧世界の常識では在り得ない、しかし現実に存在するという力。
それがどれほどの脅威となるのか、まだ誰も正確には測れていない。
「情報局には、パガンダの"魔法"に関するあらゆる情報を集めさせよ。艦隊を自由に運用し、航空偵察を行うのでも構わん」
「はっ、承知致しました」
「それから、パガンダが列強の保護国を名乗った以上、列強に泣きつく可能性もあるな。敵艦隊の大幅な増強を想定しておけ」
「陛下、失礼ながら申し上げます。あの傲慢な蛮族が、我が国を格上と認められるはずもございません。かといって"格下に負けた"と列強に泣きつくとも、どうも考えられないのです」
それは、戦闘終結までまともに力の差を理解できなかったパガンダに対する蔑みであり、"その程度の知能すらないだろう"という見下しであった。
「相手の戦力は高く見積もるべきだ。たとえ蛮族相手であってもな。失敗から学べなければ、奴らと何も変わらん。貴様のいうことが間違っているとも思わんがな」
「過ぎたことを申しました、陛下」
「よい。……この戦いは単なる報復に留まらず、"新世界における帝国の在り方"を決める戦いになるだろう」
会議場に集う誰もが、その言葉を噛み締めた。
新世界に来てから初めての、本格的な軍事行動。
今回は近世相当の国が相手であるから良いが、次の相手がそうとは限らない。高い技術をもった野蛮な国が相手となる可能性は、十分にある。
「では、各員持ち場に戻り、準備を急げ。刻限は追って通達する」
「「「はっ!」」」
重鎮達が一斉に立ち上がり、会議場を後にしていく。
残された皇帝は、一人机上の地図を見つめていた。
「こうなるのか、新世界よ……我らを見下すのであれば、相応のもてなしをしようぞ、なぁ?」
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「結局、帝国の巡洋艦は平気だったんですか?」
「ああ、やはり装甲を備えているのが大きかったらしい。こういう事態に備えて、俺たちも装甲を持った艦の量産に走るべきかな」
「球磨型では若干不安がありますからね」
連邦国内は報復論が広がり始めているものの、ほとんどの軍人達は落ち着いていた。
「報復戦はどうします?帝国は相当大規模な艦隊を派遣するようですが、正直彼らだけでオーバーキルですよ」
「そうだな………大型艦を出すか、ドカンと何かデカい一撃を撃ち込んでやるか……」
「"夜霧"を爆装させて飛ばせませんかね?あまり想定されてはいませんが、一応対地攻撃も出来たはずです」
連邦は建国以来一度も戦争を経験していないが、軍事的圧力に常にさらされ続けたため訓練は欠かしていない。
その成果を発揮できると、沸き立つ者もいた。
「それか本土のアレ、出せませんか。未だ実戦経験はありませんでしたよね?」
「200km/h前後の相手に最新鋭機を出してどうする………"夜霧"でも過剰なんだ。アレは次の世代に片足突っ込んでる化け物だぞ?あと空中給油が無いと航続距離が足りん。非効率だ」
「言ってみただけですよ」
「新世界転移の影響で、それらの存在は一時的に秘匿することになっている。帝国上層部や外交団には来日する関係もあって存在を伝えたし、民間にも応用されている以上限界はあるが、詳細が機密であることは変わらんぞ」
雰囲気の軽い連邦軍内では、ジョークも飛んでいる。
国内とはまた違った軍人達の姿勢が浮きでていた。
「というか、それを決めるのは我々じゃない。おとなしく妄想に浸るだけにしておけ」
「了解しました!」
「そこで元気にならんで良い……」
仮にも戦争前であるにも関わらず、部下は気楽な態度を取っている。対して上官は呆れ気味だ。
「そういや機技研が一部性能の再現に成功したとか言ってたな。あいつらも大概、頭のおかしい奴らだ……」
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兵器性能紹介
『幸運は必ず訪れる』