大変疲れました。
皆さんもいつもお疲れさまです。
第二文明圏 ムー大陸
第二列強 ムー
グラ・バルカス帝国より東の地。
2つの列強と複数の文明国がひしめくこの大陸にて、世界第二位の列強「ムー」は、繁栄を謳歌していた。
「レイフォルが慌ただしくなってるらしいぞ」
「ん、なんだ戦争か? 周辺の国は粗方勢力下に取り込みきったと思っていたがな」
「それが、文明圏外国がレイフォルの筆頭保護国の艦隊を一方的に撃破したんだとか」
パガンダ王国艦隊の敗北は、瞬く間にムー国内へと広まっていた。パガンダ側は不都合な敗北を隠蔽しようとしたものの、パガンダとムーの情報網の差、そして海戦の規模の大きさが相まって、情報はすでに筒抜けとなっていたのだ。
「マジかよ……デマじゃないだろうな?」
「情報の出どころは判らんが、実際にレイフォルの監査軍が、最低限の駐留戦力を残して出撃準備を進めているそうだ」
「これほど大きな戦争は、第二文明圏じゃあ久しぶりだな……」
第二文明圏は既に各国の勢力図が確定しきっていることもあり、大きな戦争は長年起きていない。
大陸の頂点に座するムーは静観を決め込んで武装中立を貫き、第五列強レイフォルは周辺国家を既に制圧し終えている。争いの種そのものが存在しない状態だったのだ。
「経済には若干影響があるかもしれないな。パガンダの艦隊はレイフォルのお下がりも多い。それが全滅したとなれば、レイフォルも面子のために本気でかかるだろう。こっちにも波及しそうだ」
科学国家ムーの国民にとって、レイフォルの軍事力は知り尽くした代物だった。自国には遠く及ばないものの、魔法と旧式戦列艦を誇るレイフォルは、周辺の蛮族や小国にとっては絶対的な脅威のはずだった。
「相手は一体どんな国なんだ? 戦列艦を沈めたってことは、より強力な魔法兵器でも使ったのか?」
「それが、噂じゃあ"巨大な鋼鉄の城"が現れたとか、"雷のような爆音と共に飛来する鉄の塊"に一瞬で全滅させられたなんて尾ひれがついている」
「ははっ、有り得ないよ。特徴から察するに、我が国かミリシアルの軍艦と話が混ざっているじゃないか」
市民たちは鼻で笑い飛ばしたが、時を同じくしてムー軍部や技術省の内部でも、この未知の国家に対する極秘調査が始まっていた。機械技術の発展に強い誇りを持つムーにとって、真偽不明の噂は、無視するにはあまりに不気味だったからである。
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パガンダ沖 海上
グレードアトラスター級戦艦 グレードアトラスター
海を割るように進む、巨大な鋼の城塞。
全長250メートルを超える巨体と、甲板に鎮座する三基の巨大な砲塔。帝国の威信そのものである大型戦艦『グレードアトラスター』は、護衛の巡洋艦や駆逐艦、さらには後方に控える大型輸送船団を従え、パガンダ沖の海原を静かに圧迫していた。
「艦長、主砲塔の点検完了いたしました。全システム、正常に稼働中」
「うむ。ついに新世界の海でこの巨砲を放つことが出来るとはな……」
指揮艦橋にて、重厚な双眼鏡を構えた艦長が静かに呟く。
その視線の先、水平線の向こうには、緑豊かなパガンダ王国の沿岸線と、港湾施設がうっすらと見え始めていた。
「先ほどレーダーで探知した敵の戦列艦、ならびにワイバーンと思われる飛行物体は、ある程度の距離をとって静観しています。……こちらを警戒しているようではありますが、遠方から動きを見ているだけのようです」
「無理もない。彼らの常識では、あそこは"安全圏"、あるいは睨み合いの距離なのだろう。先の海戦では、突然の撤退戦だったがゆえに交戦距離もかなり近かったと聞く。こちらの射程を知らなくともおかしな話ではない」
傍らに立つ艦隊参謀は、どこか冷めた眼差しで眼下の海を見つめていた。
パガンダ側から見れば、沖合遥か彼方に突如現れた巨大な黒い影に過ぎないのかもしれない。彼らの木造船の艦砲の有効射撃距離など、高々1〜2キロメートル。まさか20キロ以上離れたこの位置から、自国の港湾や要塞が一瞬で粉砕されるなど、夢にも思っていないのだ。
「連邦艦隊との同調も完了しております。彼らは上空警戒と、逃走ルートの遮断を担当するとのこと」
「つまり、前海戦と同様の役割分担だな。フッ、お互い容赦のないことだ」
「………ミレケネス将軍より入電。『予定通り、第一目標である沿岸要塞および軍港施設へ艦砲射撃を開始せよ』とのことです」
(敵戦列艦の対処は他艦艇に任せ、我々は対地攻撃か。まぁ、この大砲の威力は、木造船程度じゃ味わいきれんだろう)
艦長は深く息を吐くと、全艦内へ響き渡る受話器を手に取り、低く重い声で命じた。
「全主砲、目標、パガンダ軍港要塞。榴散弾装填」
旋回を開始する三基の46cm三連装砲。巨大な鋼鉄の砲身が重音を立てて持ち上がり、パガンダ王国の空へと向けられる。
(卑劣な野蛮人どもが………帝国軍人の血の代償、その身で味わうがいい!)
「…………撃ち方、始め!!!!」
旧世界最大最強の戦艦が持つ巨砲が、その威力を発揮する。
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「敵艦発砲!!!」
「まずい、どの艦が狙われている!」
パガンダ王国側は、鋼鉄艦の具体的な最大射程を知らないものの、自分たちよりはるかに遠くまで攻撃できることを知っていた。
なぜなら、実際に鋼鉄艦を運用している国が近くに存在するからだ。
世界で唯一と言ってもいい、機械を文明の主軸としている国家であり、5つの列強国の中で第二位の総合力を持つ大国『ムー』である。
彼らのうち何人かはムーの鋼鉄艦を見たことがあり、その砲はどうやら10km以上先まで届くらしい、という噂も聞いていた。
彼らが敵鋼鉄艦から距離を取っていたのは、その射程から外れるためである。
しかし、それは意味をなさなかった。
「後方に着弾………沿岸を狙われました!!」
「何だと!?」
(相手の射程は、我々の想像よりもずっと長いのか!!)
着弾に気付き唖然としていた船員達に、砲撃時の爆音が届き、皆が耳を抑える。
グレードアトラスターの主砲である"46cm三連装砲"の最大射程は、およそ41kmである。
ムーの10km以上という話を聞いていた艦長は、最長射程は恐らく機密で、実際の射程はより長いだろうと考えた。
だからこそ大きく余裕を持って、敵艦から20kmは離れていた。
にも関わらず、敵艦はそこからさらに10km奥の沿岸内部を砲撃してきた。
あまりに常識外れだ。
46cm砲から放たれた榴散弾は、時限信管によって沿岸部上空で爆発。
搭載していた無数の金属球が広範囲に拡散。設置されていた魔導砲や木造宿舎を粉々に粉砕し、駐屯していた人員も肉の破片となった。
「っクソ!!」
(どんな手段でもいい、あの化け物を止めなければ!)
「全速前進!レイフォルから下賜された"風神の涙"も全力で使え!何としてもヤツを沈める!!」
パガンダ王国艦隊は、距離を取るのが無意味であると知ると、グレードアトラスターを沈めんと全速力で接近する。
「艦長!周囲の敵艦も砲撃を開始しました!」
「あの巨大艦が特別ではなかったのか!他の艦も、とてつもない射程を………!」
しかし、いくら彼らが勇ましく進もうとも、戦況は覆らない。圧倒的な技術差によって、無情にもパガンダ王国の戦列艦は砲撃する距離にも届かず沈んでいく。
「何なのだ、奴らは………文明圏外の蛮族がムーの鋼鉄艦を持つなど……ありえん!一体何なのだぁぁ!!!」
一時間もたたない内に、パガンダ王国艦隊は全滅。
多くの戦列艦の母港であった沿岸部も、火の海に包まれた。
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「敵艦隊の全滅を確認」
「よく当たるようになった……これだけの距離から精密砲撃とはな。元は連邦の民生用だと言うが、開発陣もよくその技術を砲撃用に活かせたものだ。新しいレーダー、なんとも素晴らしい」
「連邦機艇により、接近中の敵航空戦力もすべて撃墜された模様です」
報告を受けた艦長は、双眼鏡から目を離さずに重く頷いた。上空を覆い尽くしていたワイバーンの群れは、連邦の誘導弾によって、戦いにすらならぬまま残らず海へと叩き落とされていた。
沿岸の要塞と港湾は炎に包まれ、パガンダ艦隊は海の藻屑と化した。だが、完全な制圧が完了したかに思えたその時、レーダー手が緊迫した声を上げた。
「沖合より接近する艦艇群を探知! パガンダの残党ではありません……艦型が一回り大きく、掲げている旗印も異なります!」
水平線の向こうから現れたのは、パガンダの木造船を遥かに凌ぐ巨躯を誇り、無数の砲門を備えた大型戦列艦の群れだった。
「パガンダとは違う旗……噂に聞く列強レイフォルの介入か。あるいは、奴らの手引きによる挟み撃ちの策か」
艦隊参謀が苦々しく呟く。前回の海戦において、降伏を装い不意打ちを仕掛けてきた蛮族どもの記憶が脳裏によみがえった。新世界の連中に、外交上の礼節や常識など通じないのだ。
「全艦、慎重に距離を保ちつつ後退せよ。主砲の照準は新たな不明艦に合わせておけ。……二度も同じ手にかかるわけにはいかん」
グレードアトラスターをはじめとする帝国艦隊は、距離を維持しながら慎重に後退を開始した。しかし、新参の敵艦隊にとって、その慎重な判断は、相手の目には「列強の威光に恐れをなして逃走を図る蛮族」にしか映らなかったらしい。
距離が到底詰まり切っていないにもかかわらず、敵大型戦列艦は先頭の一部が回頭を行い、側砲から一斉に砲弾を撃ち出す。煙とともに放たれた砲弾は、しかし帝国艦隊の数キロ手前の海面に虚しく水柱を打ち立てるだけだった。
「……やはり敵であったか。しかし、聞く耳を持たぬばかりか、対話の姿勢すら見せないとはな」
艦長の眼光が冷たく澄み渡る。もはや躊躇う理由は欠片も存在しなかった。
「多少巨大化したところで所詮は戦列艦、大した脅威にはならんだろう。だが、やり返さないのでは軍人の名折れ。なにより陛下にも国民にも示しが付かん」
艦長は自衛戦闘、および反撃を指示しようとした。
「この距離なら、余裕を持って敵の射程外から攻撃できる。個艦で自衛戦闘を行わず、艦隊で連動して殲滅したほうが効率的……か」
しかし、感情任せには動かず、司令の指示を待つことを選択した。
およそ1分後、連邦艦隊へ通信が入る。
『我が艦隊は不明艦隊より攻撃を受けため、自衛戦闘を開始する』
「全艦、砲撃開始。対話する能のない猿どもは、パガンダと同じ道を辿らせてやれ。ただし、あくまで指示されたのは艦隊規模での自衛戦闘だ。逃げる艦は追うなよ」
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兵器性能紹介
パガンダ級魔導戦列艦
全長 46m
最大幅 12m
基準排水量 1,200t
速力 最大15kt (風神の涙使用)
兵装ーーーーーーーーーーーーー|
・下砲甲板 14cm魔導砲 26門
・上砲甲板 11cm魔導砲 26門
・後甲板 9cm魔導砲 14門
・船首楼 9cm魔導砲 4門
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同型ーーーーーー|
1番艦 パガンダ
2番艦 ドグロフ
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パガンダ王国が運用する70門級戦列艦。
レイフォルから与えられた大型の戦列艦であり、その名の通り70門の魔導砲を搭載している。
下位列強内では陳腐化した艦であるが、文明圏外国は魔導砲を運用していない国家がほとんどであるため、貴重な戦力である。
30門級程度であれば建造可能であるが、70門級はパガンダ王国の技術力では不可能な規模であり、これを保有することは列強の筆頭保護国である証として国内外に広く宣伝されていた。
設定考案に頭を回し続けていたので、頭の中で考えていた流れが半分近く消し飛びました。
前話からの繋がりでおかしなところを見つけたら教えてください。
グレードアトラスターの名称について、読みやすいのは?
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グレードアトラスター型戦艦
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グレード・アトラスター型戦艦