正直、こんなに励ましていただけるとは思ってもみませんでした。
書いてる私としては、頭の中でぼんやり考えていたものと違う流れになったので、それで「破綻してね?」と思った次第です。
まぁ……皆さんが面白いと思ってくださっているなら、結果的に正解だったんでしょうね。
中央歴1639年 7月22日
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低翼単葉の美しい機体が、空気を切り裂いて青空を翔ける。およそ4年ほど前に開発され、その後量産が開始された最新鋭機"セローラ"。高い性能から陸海軍を問わず採用され、現在は数・質ともに主力機となっている。
レイフォルと文明圏外国との戦争。列強の本土が侵攻されるという非現実的な事態が起き、少なからず国内にも影響が出た。国境近くの街では"遠くから爆発音が聞こえる"という声もちらほら上がり、住民には不安が広がっている。
しかし不気味なのは、技術体系が似ているらしいということ。レイフォルとの開戦からすぐ、外交部に連絡が来た。
"あの文明圏外国には、ムーが支援を行っているのか。そうであれば、それらは即座に停止されるべきである"
そんな内容だ。
なぜそのような話になっているのかを聞いてみれば、相手国は位置的に文明圏外国に属するにも関わらず、飛行機械を運用していたという。それもただの飛行機械ではない。ムーが運用するそれと極めて酷似したものだ。
そのような噂を聞けば、ムーとしては確かめざるを得ない。仮にレイフォルが敗戦、併合などされれば、その文明圏外国とは間接的に国境を接することになるのだから。
「……うん……特に異常はなさそう、だが………」
開戦したという連絡が駐レイフォル大使から入っておよそ6日。ムー空軍はレイフォル国境沿いの哨戒飛行を頻繁に行っており、有事には即座に対応する態勢が整えられていた。
「……今日も異常なしかな。あとは本部との連絡を……」
そうつぶやいて、"異常なし"を本部に伝えようとした時。
「……ん?なんであんなところに……レイフォル国境に入ってるじゃないか」
恐らくレイフォル国境内に入り込んでいるだろう航空機を発見した。
レイフォルの戦争が終わったかどうかに関わらず、領空侵犯となってしまっている。即座に連れ戻さなければ。
「何をしてるんだ……誇り高いムーの戦士だろうに」
セローラと思われる機体に近づいていく。
相手機も、特に攻撃的な動きはせずに近づいてくる。
「……あんな色のセローラってあったか?」
そのセローラは、初めて見る色をしていた。
(優秀な成績を収めたパイロットが、機体の色を自分の好きなように変えたのか?いや、優秀な奴はそもそも領空範囲を間違えるなんて馬鹿な真似はしないか)
違和感がある。その色もそうだが、何よりこんな場所を飛んでいることへの違和感。
「………っ!識別が違う!俺たちの国旗じゃない!」
気づいた。そしてそれは、向こうも同じ。お互いに味方でないと同時に確信し、即座に離れ、万一に備え相手の後につこうとする。
(旋回能力も、速度も互角!性能までそっくりかよ!)
お互いが相手を警戒しながら飛行を続ける。
赤い円に白い十字が重なる識別マークを持つ相手機は、どうやら非常に高い練度を持つらしい。
性能的には互角なはずだが、ところどころに本国で見たエースパイロットと同じような機動が見られる。
「負けられない…!」
右へ、左へ。操縦桿を動かしながら、首を振って敵機の位置を確認して動きを微調整する。
「あとっ……少し……」
急な動きに、体にGがかかる。それを必死に耐えながらタイミングを計る。
(ここだ!)
狙い通りのタイミングで機体を翻し、有利を確保した。
そう思った瞬間だった。
上空から、とてつもない爆音が響き渡る。
思わず気を取られ、そちらを凝視し、せっかくの有利を手放してしまった。しかし、視線をそらせない。
あの怪物は、何だ?
「…はっ……はっ……はっ」
あまりの恐怖に呼吸が荒くなり、それを必死に理性で抑えてなんとか冷静を保つ。
鏃のようなその機体は、常識ではありえない速度を発揮している。
後ろから火を噴きながら、こちらを見ているかのように上空を周回している。
アレを刺激してはならないことは理解できた。自分と威嚇し合っていた相手機も、いつの間にか静かになっている。今はただ、目をつけられないことに必死だった。
息を潜めて、アレが過ぎ去るのを待つ。
「………っはぁ!!!…………はぁ……行った……?」
考えるのも馬鹿らしくなるような速度で、アレは飛び去っていった。先ほどの不明機もいつの間にか撤退したのか、レイフォル領側で黒い小さな点に見えるほど遠ざかっている。
「セローラに似た機体と、あの化け物……レイフォルは、一体何と戦ったんだ……」
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第二文明圏 ムー大陸
第五列強 レイフォル 皇都レイフォリア
美しい石造りの城や、整列した石畳が続く道。
列強に相応しい技術と富の象徴であったそれらは、もはや見る影もなくなってしまった。
グレード・アトラスターの砲撃は王都の軍事施設の尽くを耕し、その圧倒的な威力は周囲の建造物もまとめて吹き飛ばした。
幸い、軍事施設から離れた民家などは被害を受けずに済んでいる。しかし国の盾を失い、何処で爆発が起こるかも分からない恐怖に、民衆はパニック状態に陥った。親を見失って泣き叫ぶ子どもや、逆に我が子を探して走り回る母の姿が、探すまでもなく目に映る。
混乱に乗じて盗みに入る輩も、決して珍しくはない。
帝国軍人たちは、この地獄を作り出したのが自分たちであることをよく理解していた。
「ひどい光景だな」
「ああ、ユグドの植民地と変わらない。いや……それよりひどいかも」
崩れた石につまずきそうになりながらも、進んでいく。王都制圧のために派遣された部隊は、王都に残る抵抗勢力の排除を命令されている。
「この惨状じゃあ……組織だった抵抗なんて不可能だ」
「組織でなくとも脅威にはなる。刃物を持った相手なら近づかれる前に撃ち殺せばいいが、魔法を使ってきたらそうはいかない。素手の人間が、突然火を放ってくるかもしれないんだ」
「だ、だがなぁ……」
「割り切れ!…………俺たちは軍人だ。人を守ると同時に、大勢を殺さなきゃならん」
何人かの帝国軍人は、吐き気を催してしまい任務から離脱している。
旧世界において、制圧した国家の住民に好き勝手をする人間は当然いた。しかし全員がそうだったわけではない。
「俺にはこの状況で女を犯そうだとか、男を拷問しようだとか言う奴らの気持ちは、どうしても分からん」
「俺も同じさ。きっとそれが、まともな人間の感性なんだろう」
人間は脆い生き物だ。正常な心を保っていては、残酷になりきれない。何処までも悪に染まりきるには才能がいる。それか、限界まで擦り切れてしまった者か。
「っ、背後から音がしました。確認します」
「気をつけろ」
砂利を踏む音。崩れかけの家の陰に、誰かがいる。
「おい、いるなら出てこい!抵抗は無駄だ!」
「反応がありませんね」
「そんなはずは………」
一瞬の意識の空白が生まれた、ちょうどその時。
「あぁぁぁぁぁ!!!!」
陰から、叫び声を上げながら人が飛び出してくる。
「止まれ!止まれ!」
「うぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
パンッ……と発砲音がなり、飛び出してきた人間は倒れた。
「……子供」
「ぅ………ぁ………」
金髪の、小さな男の子だった。齢12ほどだろうか。手には刃物が握られており、赤い輝きを持っている。
恐らく武器に属性をもたせる魔法か何かを使っていたのだろう。
「とどめを刺せ」
「し、しかし隊長
隊長は言葉を発し切る前に続けて一発。子供は物言わぬ死体に成り果てた。
「俺が撃てと言ったら撃て。指揮官が真っ先に攻撃に参加するのは非効率だ」
「い、いや……でも子供ですよ!」
「魔法使いだ。年齢は関係ない」
戦闘力を持っていたのだと、自分たちを殺す武器を持っていたのだと、そう隊長は言う。
「小休止だ!……少し、気を休める時間を取ろう」
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ダンッと木を叩く音が響く。叩きつけられた木片は、腐っていたのかいくつかの破片となり飛び散った。
「平気か、クラウス」
「…………平気なもんかよ」
今回の制圧作戦に参加した帝国兵クラウスは、悲惨な現実に打ちのめされてしまっていた。
戦争への参加は初めてではない。勇敢に戦い、今までも何回か作戦を成功させてきている。
総じて優秀な軍人であると言えるだろう。
「マティアス、俺は……俺はここに、子供を撃ち殺しに来たわけじゃないぞ」
「……ああ、知ってるよ」
「弟の仇を取りに来たんだ」
「知ってる」
ぽつりぽつりと、言葉を漏らす。
「なんで……こうなっちまうんだろうな。俺の思ってた蛮族とは、まるで違う」
「あの子は、ただの子供だった。親か友人か分からんが、近しい誰かが死んだんだろう」
"蛮族"
ここ最近でよく耳にするようになった言葉だ。
卑怯にも騙し討ちをした蛮族の国、パガンダ。
最低限の礼節もわきまえない蛮族、パガンダ。
列強を名乗りながら、宣戦布告もなしに攻撃してきた蛮族、レイフォル。
"新世界は蛮族の巣窟か?"などという新聞記事もある。
「なぁ、弟を殺された俺と、さっきの子供。何が違うんだ」
「……クラウス」
「俺の弟を殺したパガンダのクソどもと、子供を撃ち殺した俺は、何が違うんだ……!」
「クラウス!」
「俺たちは今、文明人を名乗って何をやってんだよ!」
「クラウス!!!」
マティアスに強く肩を掴まれたクラウスは、先ほどまでの興奮が嘘のように静かになり、その場にへたり込む。
「なんなんだ………なんで……何が……」
そこに、草を踏みしめる靴の音が近寄ってくる。
「うるさいぞ」
「っ隊長!」
マティアスはきびきびと、クラウスは少しふらつきながらも立ちあがり、敬礼をする。
「クラウス、お前は精神に重大な異常があると認められた。この作戦を降りてもらう」
「………は?」
「返事はどうした。聞こえなかったか?"この作戦を降りろ"」
思わず掴みかかろうとするクラウスを、マティアスは必死に抑え込んだ。
「落ち着け、っ落ち着けよクラウス!仕方ないだろう!上の決定だ!」
「俺は!俺の弟は……だって、あいつら……でも……!」
隊長の後ろから2人の部下がやってきて、マティアスに変わってクラウスを拘束し連れ出していく。
「待って……だってまだ!!俺は……」
隊長は1本のタバコを取り出し、口に咥えて火をつける。
「隊長…………」
「別に良いだろう。あいつには………人殺しは向いていない」
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第一文明圏/中央世界 神聖ミリシアル帝国
港町カルトアルパス とある酒場
ガヤガヤとした店内で、顔を赤らめた男たちが盛り上がっている。
ついさっき入店したタウロは、空いている席がないということで、2人と相席をすることになった。
「あんちゃん、ここを見つけるなんてなかなかやるじゃねえか。それとも運がよかったのか?」
「ここの料理は一味違うからな!」
思っていたより気さくな人が多い。先進的な都市は田舎と違い、横の繋がりがあまり強くない傾向があるが、ここはそうでもなさそうだ。周りの話に聞き耳を立てれば、どうやら相席となっているテーブルもそれなりにあるようだが、皆楽しそうに話をしている。
『続いてのニュースです』
酒場についているカラーテレビから音声が流れ、その中で女性が話している。
「あれは?」
「お、見るのは初めてかぁ!ありゃ映像付き魔導通信って言ってな、まぁ遠くの人と顔を合わせて話せる代物だ。ミリシアル以外じゃ珍しいからな見たことがないのも仕方ない」
「ってかあんた、顔つきが違うよな。何処から来たんだ?」
タウロは頬を掻きながら、少し恥ずかしそうに言った。
「あー……実は西の方から来たんだ。第二文明圏、というか」
そういった瞬間、男たちの表情が強張る。その反応に、タウロは"何かおかしなことを言っただろうか"と不安になる。
「おまっ平気だったのかよ……あそこ、今は大規模な戦争があったんだろ?」
「列強が介入したって噂になってるじゃないか。治安も一気に悪化するだろうし」
「ご家族は無事だったのか?」
大柄な男2人に矢継ぎ早に質問攻めにされ、狼狽える姿を見せながらもタウロは"心配しなくていい"と告げた。
「俺の家族はみんな無事だよ。でも、被害にあった人もいる。警告もせずに攻撃してきたり、騙し討ちを仕掛けてきたり…………そもそも、宣戦布告もなしに戦争が始まったんだから」
「ああ、聞いたぜ。何でも連合を名乗って暴れてる文明圏外国だろ?まったくとんでもねぇ話だよな」
「安心しろ、ここはミリシアル。『世界最強の大国』だ。ここにいる限り、誰も手出しなんか出来やしねぇさ」
「おう、蛮族どもなんか鎧袖一触だぜ!はっはは!!」
「いやぁ、そうですよねぇ!あははっ………」
(俺たちが仕掛けたことになっている?……噂が多くの人を伝っていくうちに、この世界の人々にとって納得がいきやすいように変化したのか)
「でも、そもそもどうして文明圏外国を蛮族っていうんでしょう」
「ん?そりゃあ、文明が発達していない国は、最低限の礼節すら弁えていないからな。いや、礼節なんて存在しないと言ってもいい」
「それに、国の管理がそんなに行き届いていないから、危険も多いぞ」
(なるほど。ちゃんとした根拠や由来があったのか。それには理解を示そう)
(だが、きっと気づいていないのだろう。そうやって他者を見下し、こき下ろす仕草もまた、野蛮であるという事に)
(…………なんて、俺たち日本人が言えたことじゃないか。結局人類は皆、同じ穴の狢だ)
こうしている間にも、人が理不尽に死んでいる。そんな中で、他者を"野蛮だ"と笑いながら酒を飲んでいる人間がいる。
(なんとも……皮肉なものだ)
第二章 我らこそ文明人
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国家紹介
レイフォル
正式名称:レイフォル
国家元首:皇帝
首都:レイフォリア
人口:約2,150万人
GDP:約4兆2000億フォリア
国土面積:約346万km²
政治体制:絶対王政
国際地位:第五列強
第二文明圏に存在する二つの列強国の片割れであり、五大列強国の末席に名を連ねる大国。およそ350隻の木造船を運用し、100門級戦列艦や飛竜母艦を保有するなど技術・物量ともに高い水準を誇る、列強に名を連ねるに相応しい国家であった。
筆頭保護国のパガンダが強襲を受けたことで文明圏外国との戦争に参加したが、その戦争ではろくな抵抗もできずに敗北を積み重ね、滅亡した。現在は連邦を主導とした二国連合の統治下におかれている。
仕込みは済んだぜ。
正直、伏線は第一章の方がずっと多いです。
伏線に気づいた方がいたら、ネタバレにならないようにコメントでぼんやり書いてくれると嬉しいです。
作者が興奮して一人で飛び跳ねます。
話数の表示はどの形式が良い?
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第十三話,第13話
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第一章 第一話,第1章 第1話
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Ep.13/2-5