皆さん飽きてないですか?
そんな時は他の方の二次小説を読みましょうね。
中央暦1639年2月21日
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グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ
帝王府所有 会議場内
「……………交易によって、国内も安定してまいりました」
「うむ、良い報告だ」
「帝国は連邦との交易のみで十分に国家として立ち行けるだろう、との分析も出ております。未だ転移前の規模には届きませんが、今後数年で完全に成長に転じるでしょう」
連邦との国交が成立しておよそ2か月。
追って通商条約が制定され、貿易が開始された影響で、帝国経済は旧世界での勢いをある程度取り戻していた。
食糧や資源の輸入はもはや言うまでもないことであるが、連邦から見ればアナログな帝国製の機械や嗜好品などは飛ぶように売れていった。
しかし、ある程度の悪影響は存在する。
連邦はその工業力で、帝国より品質が高く安価な製品を大量生産し、それが帝国国内の市場の一部を埋め始めていた。
逆に連邦国内でしか生産できない希少度の高い製品は、単純に物価の差が影響し超高級品として流通。帝国富裕層はこれをステータスとして追い求め、国内の一部企業は倒産するほどの打撃を受けた。
帝国としては連邦との関係を維持したいため、これら不満が連邦そのものへ向き過ぎないよう対応に苦心する事となる。
「そういえば、東に小さな島国があるという話だったな」
「はい。周辺海域では木造船が見られましたので、文明があるのは間違いないかと存じます」
「木造船となると……我が国とは100年以上の技術格差があるようだな。ここまで遅れている文明があろうとは……」
「彼らも、我々と同じような転移国家なのでしょうか」
国内に関する会議が終了し、話題は外部、もとい新世界の他国家の調査へ移っていく。
「可能性はある。転移した国家には、技術力に大きなばらつきが存在するのかも知れないな」
「陛下、実は情報局が提出した報告書に興味深いものがございます」
会議に参加していたカイザルが、皇帝グラ・ルークスに上奏する。
「申してみよ」
「はっ。内容は、"転移国家は連邦と我が国の2つしか存在しないのではないか"というものです」
「………なに?」
皇帝は怪訝な顔をした。彼の現在知りうる情報では、その回答に至ったと考えられる具体的な根拠を想像できなかったからだ。
「この研究は、連邦との共同で行われました。我々がこの結論に至れたのも、連邦の技術あっての事です。」
連邦の強大さは、既に上層部はおろか国中に知れ渡っていたため、皆は驚きよりも納得感のほうが強かった。
「連邦は大気圏外に『人工衛星』と呼ばれる観測機器を打ち上げ、世界中を監視しております」
宇宙への進出には、非常に強力なエンジンとそれを制御する機構、1mmのズレもなく部品を製作する精密技術が必要になる。それは、現在の帝国では想像もできない高みだ。
「大気圏外……!確かにそこからなら世界中が見えるけど、まさか宇宙まで領域にしていたとはね……」
「その技術によって、おおよその陸地を把握したとのことです。今回は、その写真も預かっていますので、陛下にもご覧いただければと思います。皆も集まってくれ!」
カイザルはそう言って、地図のような写真を広げた。
「写真で見る限り、この世界には主要な大陸が2つ。
それと大陸と言うにはすこし小さいため、準大陸とでも呼べるものがいくつか存在します。」
カイザルが帝国本土の位置を指差しながら言う。
「帝国は中央のここです。その南にある巨大な大陸は連邦になります。連邦領を入れれば、この地図に映る主要な大陸は3つとなりますね」
帝国本土の下にある大陸から指を動かして、カイザルが続ける。
「会談を行ったのは、大陸に沿うようにあるこの列島です。ここは、連邦にとっての政治的・技術的な本土に当たる場所のようです」
地図とは本来、極秘にされるものである。
地形や施設の情報は、敵に奪われれば侵攻ルートや作戦の立案に有効に使われるからだ。
今回提供されたのは写真だが、同じ使い方ができるものだ。それを安々と提供するということは、この情報は連邦にとって独占するほどの価値──ここでの価値とは有用性ではなく、情報としての希少性のことだ──がないのだろう。
「精度を上げれば、地表もある程度見えます。新世界の2つの大陸には、高層ビルらしき影があります。逆に石造りの城のようなものも確認できます。情報局は、同じ大陸の中に文明規模に差がある複数の国家が存在する、と推測しました」
「また、この高層ビルがある場所から離れれば離れるほど、文明の遅れは顕著になります。この事から"大国が不要になった技術を周辺国にばら撒いている"と結論付けました。周辺国は最も近い大国の影響を受け、外からの影響を受けにくい。つまり、各大陸が文明地域のようなものを構成し、集団となっている可能性があるという事です」
カイザルは情報局からされた話を噛み砕いて説明する。
「なるほど。この様な国同士の繋がりがある以上、それなりに長く関係を保ってきたと予想できるな」
「おっしゃる通りです陛下。帝国と連邦のように、突然周囲と切り離されたのでは説明できない繋がりがあるのです」
皇帝は理解したようだが、そこにミレケネスが異議を唱える。
「でもカイザル、大陸ごと転移してきたって説はあるんじゃない?大陸の中で関係が出来てても、他の大陸との関係がわからないんじゃ、それぞれの大陸が別の世界から転移してきた可能性だってあるでしょ?」
皆はその反論に納得の表情を浮かべ、カイザルの反応を待つ。
「その通りだ。だがそれに対する根拠も一応ある。我が国と連邦の転移から、ある程度の法則が見えたんだ」
「帝国は転移時、周囲の植民地や属国と切り離され、本土のみが転移してきた。つまり国家転移の法則は、"その国家が真に内包する領土のみが転移する"と言うもの。そしてもう一つ、連邦の大陸領は元々さらに巨大な大陸だったらしい。だが転移によって大地が切り離された事で、中規模の大陸になったそうだ。元々接続していた場所には新しい大地が接続されて、その先が海になっていた」
「連邦は、転移時に新しい領土を獲得していたのね……」
「だがそれはごく僅かな土地だ。接続地が崖にならないように整形する程度のものだったそうだ。まぁ、転移の不思議については一旦置いておくとしよう。私が言いたいのは、"たとえ大陸にある国家であっても、転移の際に領土に沿って切り取られる"と言うことなんだ」
カイザルが示したのは2つの法則だ。
"属国や植民地は国土と見做されない"
"大陸領土は国境線に沿って切り取られる"
「片方の大陸の高層ビル群の国家を仮にA大国とし、これを例に説明しよう。A大国が転移国家である仮説は、先ほど説明した2つの条件から否定される。1つ、周辺国が属国や植民地であった場合、それらは転移の際に付属しないから。2つ、周辺国が独立国であった場合、A大国は転移の際に国境線が切り取られるはずだから」
「周辺国が独立国であれ植民地であれ、A大国の転移には着いてこないはずだ。つまりこの複数の国家が関係を構築している大陸の状況は、"A大国が転移国家でない"という条件の下にしか成立しないわけだ」
「なら、A大国がずっと昔に単独で転移してきたって可能性はないの? 昔転移してきて、それから何百年もかけて周辺国と関係を作ったとしたら……」
ミレケネスの指摘は、一見すると鋭いもののように思える。しかし、それには致命的な欠陥があった。
「それも否定できる。転移した国家の接続地には新たな大地が生まれ、その先は海になる……これは先ほど話した、連邦の例から分かっている法則だ。もしA大国が単独で転移してきたのなら、国境の外側は本来すべて海であるはずだろう」
カイザルは地図の写真を指でなぞる。
「だが実際には、A大国は海に面してはいるものの、国境の半分近くは陸続きだ。これは単独転移の法則と明らかに矛盾するんだ。つまりA大国は、大陸そのものと共に最初からこの世界に存在していたと考えるのが自然だ」
「だがカイザル、"複数国が同じ世界から同時に転移した"ならば、先のどの条件にも当てはまらずに説明がついてしまうぞ」
「はい。それが最後の可能性です。これは完全には否定しきれないものの、蓋然性から理由付けは出来ます」
「"帝国と連邦が単独で転移したから"か?」
「ご慧眼です、陛下」
最後の理由は、先ほど2つと比べて少し根拠が弱い。しかしカイザルは、"決着をつける必要はない"と語る。
「たとえ真実が何であれ、この2つの可能性を頭に入れておけば対応に幅が生まれるでしょう。もし同じ様な転移国家であれば、そうでなくとも彼らが我々を受け入れるのなら、協力し合うことが出来るかもしれない。逆に拒むのなら、我々は我々だけでやっていきましょう」
転移国家の存在は重要なものとなった。先の地図の話と合わせ、転移国家は新世界の既存の国家にそぐわない文明レベルを持つ可能性がある。
現状、新世界の国家は街の規模を見るに最高でも帝国と同等の文明しか存在しないが、他に転移国家があればそれが連邦のような超文明である可能性はある。
元々、転移国家であるかそうでないかというのは、関係構築の際に参考になる程度の情報だった。
連邦とは互いが転移国家であり、孤独であるがゆえに手を取り合えた。しかし、現地国家同士にはすでに独自の協調関係が存在しており、新参者である帝国がその輪に入れるとは限らないからだ。
少なくとも転移前、旧世界ユグドにあった頃の帝国であれば、突然「他の世界から転移してきたので国交を開きたい」等と言ってくる輩がいたとしても、それを信用しなかったことだろう。
しかし地図によって文明規模をある程度把握した現在、むしろ警戒すべきは転移国家のような例外である。
「もし、相手に攻撃されたら?」
ミレケネスは"曖昧な対応を取るべき"とも受け取れるカイザルの発言に、有事の際の対応を尋ねた。だが……
「それは私の判断するところではない。議会が、何より陛下がご判断なされる事だ」
会議場の目線が、皇帝に集まる。
「そうだな。もしそのようなことになれば……我々の怒りを、力を示す事になるだろう」
帝国は連邦との接触により、"覇を唱えるより得だ"と判断して融和に舵を切っただけである。断じて、牙を抜かれた訳ではない。
「だが、我々より高度な文明を持つ国家がないのであれば、そこまで敏感になる必要はなさそうだな」
「陛下。改めてお伝えいたしますが、先ほどの分析は
"地図で見える範囲には、転移国家と思しき周囲と隔絶した進度の文明は存在しない"
という事実を表すものです。
この地図の範囲外に存在する可能性は十分にございます」
「だがそれは問題にならない。仮にそうでも、我々が次に接触するのはどちらにしろ地図外の国家ではないからだ。そうだな?」
「杞憂を申し上げました」
この地図に写っていない場所には、もしかしたら転移国家や高度な現地国家が存在するかもしれない。しかし今重要なのは次に接触するだろう相手であり、今回の場合その相手は帝国の少し東にある大陸とその周辺の国家だ。
「東の島国との接触は、約束通り連邦との共同で行う事とする。カイザル、報告ご苦労であった」
「勿体なきお言葉でございます」
カイザルは恭しく頭を下げた。
「この地図だと、島国はここだな。すぐ近くに大陸もある」
「確認された木造船はこの島国を拠点としており、島内の建築技術とも整合するため独立国、または属国である可能性が高いです」
「少なくとも、植民地と言うには違和感があるか」
「連邦とは何処まで話が進んでいるんだ?」
「現在は簡易的な協定のみです。具体的な接触時の対応などについて、話し合いを継続し…………」
皆の話し合いを横目に、皇帝は一人地図を眺めながらこの先の接触を思い描く。
「転移、新世界、文明………」
結局、転移という現象そのものが何なのかは、手がかりすらつかめていない。自然現象なのか、人為的なものなのか。であれば原因や、その意図は何なのか。
「この世界は、我々に何を求める?」
会議場内は議論が続いており、皇帝の小さな呟きに気づく者はいない。
最強の国としてこの世界を支配すべきだ。
高度な文明を持つ帝国の統治によって世界はその恩恵を受け、結果平和が実現する。
それが、世界から与えられた帝国の使命である。
旧世界では、皆そのように考えていた。
しかし転移によって、帝国を中心に回っていた世界は失われた。
そして、彼らは新たな世界で、より大きな重力圏に捕らえられたのだ。
「フッ…………全く、面白き世界よ」
巨星の周回軌道に乗った彼らは、その光を受けて輝きを増していくだろう。
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国家紹介
グラ・バルカス帝国
正式名称:グラ・バルカス帝国
国家元首:皇帝
首都:ラグナ
人口:約8900万人
GDP:約27兆6900億バルカ
国土面積:約192万km²
政治体制:外見的立憲主義
転移前世界「ユグド」において、世界最強を誇る大国。
数多の植民地と属国を従え、世界の覇権を握る直前まで勢力を拡大していた。
新世界ではそれら影響圏から切り離されたものの、日本連邦との貿易によって圧倒的な重工業は復活を遂げている。
中でも造船能力は特筆して高く、その影響で海軍力も非常に強力。
彼らに敵対すれば、海原を進む鋼鉄の津波に全てが押し流される事になるだろう。
第一章の中で、色々ヒントは散らして置きました。