12話 東大に入るために金がいる!
「起きてください」
容赦《ようしゃ》のない声とともに、頬をつつかれる感覚で目が覚めた。
目を開けると、腕を組んだユウガが、布団のすぐ脇に仁王立ちしていた。
「……まだはやいだろ、あと五分」
「もう朝食はできています。五分後には冷めています」
ユウガの命令に従い、布団から這《は》い出ると、
リビングにはすでに味噌汁の匂いが漂っていた。
制服姿のユウガが、手際よく肉じゃがを皿に盛っていく。
やらんでいい、と言っているのに、すげぇ家事してくる……
「無理をきいてもらったので、たいていのことはします。頑張って稼いできてください」
「あ、はい」
「ちなみに、私、東大に入りたいです。無茶を言う気はありませんが、できれば支援をお願いします」
「……マジかよ、東大生の親の平均年収950万だぞ……」
一応、教師をしていたので、その辺のことにはちょっとだけ詳しいのだ。
「無理だ、というのであれば、それでも結構です。夜の店で働いて学費を稼ぎます」
「なんか……『夜の店』ってワードを使ったら、いうことを聞かせられる……って学習している感じがするんだけど」
「気のせいです。それで、どうですか。支援いただけるのですか、それとも、私を風俗に売り飛ばしますか?」
「……言い方ぇ……完全に脅されている。ユウガさんの将来が安泰《あんたい》すぎて心配だ。……ああ、わかったよ……なんとか、稼ぐよ……300万につられたとはいえ、保護者になると決めた以上、義務は果たすさ……」
なんか知らん間に、外堀を埋められて、ものすごく稼がなければいけなくなってしまった。
けど、正直、悲観はしていない。
なぜなら、俺はレベル23の猛者だから。
ふっふっふ。
タイムリープを駆使すれば、まだまだレベルを上げられる。
一流配信者として名を売ることができれば、
再生回数を稼げて、収益がっぽがっぽ。
これが夢物語ではなく、射程圏内というのが素晴らしい。
タイムリープ様々。
★
――メシを食ったあと、俺はダンジョンに向かい、配信を開始した。
半年もやっているので、応援してくれているファンも、2人ぐらいいる。
配信すると毎回きてくれてコメントもくれる稀有《けう》な人たち。
「どうも、落ちぶれ元教師の終わっているダンジョン配信です。……今日から、チャンネル名を変えることにしました。その名も、『センエースの革命チャンネル!~ランクCも倒せなかった俺が、ある日、死ぬほど覚醒しました~』です」
するとコメントがついた。
『ウェブ小説かっ! あと承認欲求つよっ!』
「ガント・エレさん、つっこみありがとう。あなた、ずっと見てくれているね。俺みても面白くないでしょ」
『そうでもない』
「あ、そう……まあいいけど。じゃあ、とりあえず、配信をはじめていきますね。今日は、なんと……A級モンスターに挑戦しようと思っております! ぱちぱちぃ」
『死ぬぞ』
『やめとけ』
「……『土中八年《つちなかはちねん》』さん、どうも。……俺も、正直、やめておいた方がいいと思ってます。けど、最近、ちょっと色々ありましてねぇ。金が必要なんですよ。というわけで、無茶していきます。よろしければ、応援、お願いしまぁす」
ちなみに、事前にタイムリープで、
『どこにA級が出るか』は探索済み。
狙いは、地下2階の南東にある大広間に出現する、水属性の魔獣。
A級の中では大人しめで、比較的倒しやすい相手……というだけじゃない。
実はレベルアップしたことで、魔法を覚えたんだけど、それが雷属性だったのだ。
言うまでもなく、雷は水に効果抜群っ!
ちなみに、このダンジョンに入ると、みんな『配信魔法』というのが使えるようになる。
スマホを魔力で浮かせて、自動で撮れるようになるというもの。
おかげで、片手をふさぐことなく、モンスターと戦うことができる。
★
目的地につくと、ちゃんとA級の魔獣がいた。
全身を水の膜《まく》のようなもので覆《おお》った、巨大な獣。
のっそりとした動きで、こちらを見据えている。
「みなさん、どうぞ、俺の奮闘を楽しんでください」
ちなみに、現状、同接は3。
普段と同じ。
いつも見てくれている2人と、冷やかしが1人か2人……
――ただ、A級を画面にうつしたことで、同接が5に増えた。
強いモンスターはやはり引きがある。
ちなみに、この半年の中で、同接の最高数は8である。
……ひどいな、俺。
なんで、ずっとダンジョン配信やってんだ……
頭おかしいのか。