13話 同接100超えたぁああ!
「じゃあ、いきます」
そう宣言してから、俺はA級の魔獣につっこんだ。
魔獣が咆哮《ほうこう》とともに前脚《まえあし》を振り上げ、水の塊を叩きつけてくる。
とっさに剣で受けるが、殺しきれなかった衝撃が腕を伝って全身に響いた。
「――ぐっ!!」
衝撃波のような水流に体ごと持っていかれ、地面を何度も転がる。
受け身も取れないまま、背中を岩壁に打ちつけて、息が詰まった。
「っ、ぐ……あぁ……」
視界がぐわんと揺れる。
立ち上がろうとした膝がガクガク笑って言うことを聞かない。
――やっぱ、A級、強ぇ!
だけど、さすが、レベル23になった俺の体だ。
死んでいない。
まだ戦える!
ちょっと前だったら、確実に死んでいた!
「雷術ランク2!」
これはレベルアップで覚えた魔法。
剣に雷をまとわせるバフ魔法。
ちなみに剣は、協会から30万で購入した、ちょっといいやつ!
耐久力が増して、できることが増えた。
こんなにうれしいことはない。
「くらぇええ! 一閃《いっせん》!!」
配信映えを意識して、必殺技名をつけてみた。
笑われてもいい。
むしろ、笑ってもらった方が、再生数的にはおいしい。
恥や外聞《がいぶん》なんてものは、教師をやめた時に爆散している。
それに今は前より金が必要なんでね。
ピエロにでもなんでもなってやる。
剣先から迸《ほとばし》った雷光が、魔獣を覆《おお》う水の膜を伝って、全身へと駆け抜けていく。
――ビリビリビリッ!!
「――グルォオオオッ!!」
魔獣が悲鳴を上げてのたうち回った。
「よっしゃ、効《き》いてる!!」
悲鳴が心地いい。
俺の収益のために、景気よく死んでくれ。
同情はしないぜ。
だって、お前、俺を殺そうとしてんだもん。
俺から狩りにいっているという不都合な事実には目をつぶる。
『この人、なんか、強くない?』
『なんで、A級の攻撃に耐えれてんの?』
『必殺技名叫ぶのおもろすぎるだろ』
『意味ない、意味ない。普通に黙って斬れw』
コメント欄が、ちょっとずつ盛り上がってきた。
てか、見てみると、同接が32になっている。
増えたねぇ……すごい勢いだねぇ……
このまま倒すことができれば……
夢の同接100も見えてくるかも……っ!
「我が聖剣のサビになれぇええ! ナイトメア・マストダイ・ブラッディ・一閃!!」
やばい……人が増えたことで、つい、やりすぎエンターテイナーになっちゃう……
特に何の工夫もしていない、ただの袈裟斬《けさぎ》りに、大層な名前をつけるというボケが、
わりと、しっかりウケて、コメント欄がバッチリ沸《わ》いている。
『聖剣って……それ、ダンジョン対策協会から販売されている中流の剣だろ』
『10万ぐらいだっけ?』
『もっと高ぇよ』
『センエース、がんばれぇ』
『必殺技名、長すぎ、わろた』
『いや、あの、みんな……この人が普通にA級とわたりあっていることに驚こうぜ』
『このセンって人、けっこう強いけど、なんで全然有名じゃないん?』
『過去の配信みたけど、この人、ちょっと前までC級にてこずっているんだけど』
『どういうこと?』
A級とわたりあっていること。
小粋にボケてエンタメにしていること。
そして、ちょっと前まで俺がC級に苦戦していたこと。
いろいろな要素がうまいこと噛み合い、
気づけば……
「おぉ……余裕で100超えた……この数字、夢だったんだけど……超えるときは、あっさりだな……」