22話 苦手属性のA級にも勝ったぁああああ!
「一閃!!」
踏み込み、懐に潜り込む。
振り下ろされるA級の拳を紙一重で躱し、
そのまま渾身の剣撃を、地属性精霊のコアめがけて叩き込んだ。
――パキン。
硬質な音とともに、地属性精霊種の巨体が、光の粒子となって崩れていく。
「はぁ……はぁ……勝った……勝ったぁあああ!」
この8回のタイムリープで、
俺のレベルは38まで上がっていた。
この数字はでかい。
もはや、全体の上位1パーセントには入っている!
「よし……よしよしよし……いいぞ、いいぞぉ」
これだけレベルが上がれば、A級はもう問題ない。
得意属性なら、S級でも普通にいけると思う。
「いやぁ……強くなったなぁ……マジで。…………おまけに……」
今回は勝てると思ったので、『苦手な地属性精霊のA級に挑む無謀なチャレンジ!』というタイトルで配信をしている。
苦手なモンスターに挑んで、ボコられながらも、なんとかギリギリ倒す。
――その泥臭い動画は、思っていた以上に数字がはねた。
同接は1000以上。
コメント欄も、まあまあ賑やか。
『弱かったのに、めっちゃ強くなっていくのが気持ちいい』
『過去の配信も見たけど、昔と今で別人』
『強敵相手にも折れずに挑むのがいいね』
『あんたがどこまでいくのか見ていたい』
『よく苦手属性のA級に勝てたな。マジですげぇ』
『最近の俺の推し』
推し、か。
そんな言葉を向けられる人生を送ることになるとは、半年前の俺は想像もしていなかった。
★
裏面に入り、スマホで今月の総再生数を見ながら、俺はぼんやりと考える。
「このぐらい見てもらえるようになると、収入的にも、まあまあになってくるだろうな……」
毎日配信して、このペースを維持できれば……
皮算用だが、月収70万ぐらいはいけそうな気がする。
「なるべく効率的にタイムリープを繰り返してレベルと戦闘力を底上げし、飛べる上限である10回目のタイミングで配信する。これを繰り返せば、『異常なペースで強くなっていくオッサン』として、さらに面白がってもらえるはずだ」
月収100万も、そこまで遠い未来じゃないかも。
年収300万を切っていたあの頃が懐かしいねぇ。
「……正直、俺一人が生きていくだけなら、もう十分すぎる稼ぎなんだけどな」
ユウガの学費と、金の心配をしなくていい生活。
そして、将来的な、タイムリープ費用。
「まだまだ必要だし、まだまだいける……とことんやってやる」
俺は、拳を握りしめた。
――次は、S級に挑戦する動画をあげよう。
勝とうが、ボコられようが、それなりには見てもらえるはずだ。
★
A級精霊を倒した翌日の夕方、スマホを開くと、SNSでちょっとだけ俺の名前がはねていた。
『センエースという配信者が妙に覚醒していて面白い』
『校長のパワハラに耐えた教師の奮闘劇がはねてる』
『時空旅団の元教師がかなりキテる』
『追っていくべき逸材』
『完成されている時空旅団より、センエースの方が好きかも』
――本当に、ざわめき程度ではあるが……話題になっている。
けっして『バズっている』というほどではないが、界隈の隅っこで名前が囁《ささや》かれ始めた。
「ついに始まってしまったか……俺の時代が……まいったな。まだサインの練習してねぇよ」
朝食の席、ユウガの作った味噌汁をすすりながら、俺は渾身のボケをかましていく。
だが、ユウガにはスルーされてしまった。
『あなたのサインなど便所紙にもなりませんよ』ぐらい言ってほしかったのだが……
ちなみに、本音というと、別に浮かれちゃいない。
なぜなら……
「しかし、あいつら、えぐいな……」
――時空旅団、前人未到の6階層クリア!!!
テレビでもSNSでも新聞でも、でかでかと躍る文字。
すべてのトレンド上位を、ぶっちぎりで独占している。
「あいつらが帰ってくるまでは、3階層で足止めくらっていたのに……」
前人未到の高い壁を鼻歌交じりに破壊していく教え子達。
それと比べると、俺のなんと、ちっぽけなことか……