26話 同接3000超えたぁあ! やったぁ!
どうする。
どう見せる。
ここからどうやって、この龍の株を上げる――
考えを巡らせていた、まさにその時。
龍の喉が、大きく膨らんだ。
――ブレスの予兆。
正直、余裕でかわせる。
だが。
「――げっ!」
俺は、あえて、つまずいて倒れてみせた。
わざとらしくならないよう、慎重に。
演技力には自信がないが……『無様な生き様』には定評があるので、地を出せばいけるはず!
そのまま、ブレスを全身に浴びる。
「ぐわぁあ!」
結構なダメージを受けてしまった。
普通に痛ぇ。
けど、俺のレベルも結構なものなので、さすがにこの程度で致命傷にはならない。
コメント欄が、一気に沸き立つ。
『Sの攻撃が直撃!?』
『死ぬんじゃね?』
『やばい、逃げて!』
『センエース! 頑張れ!』
――よし、いい具合に盛り上がっている。
俺は、痛みに耐えながら、じりじりと立ち上がった。
正直、結構な痛さだが、再生数のため……ひいては、収益のためと思えば乗り越えられた。
「はぁ……はぁ……まだ……まだいける……まだ、死んでねぇ! こいよ! ドラゴン! この俺を殺せるものなら殺してみせろ!! まだ、俺は! お前の前に立っている!!」
などと大げさなセリフを叫びつつ、内心では、ばっちり間合いを測っていた。
『いけぇ! セン!』
『がんばれぇええ!!』
龍の爪が振り下ろされる。
半歩分の溜め。
その一瞬を見逃さず、俺は懐に飛び込んだ。
龍の腹部――弱点部位に剣を突き刺し、その柄《え》に向けて、
「くらぇえ!! 閃拳ッ!!」
全体重を乗せた拳が、剣を押し込んで龍のはらわたを切り裂く。
――断末魔の咆哮。
巨躯が、内側から光を漏らしながら、崩れ落ちていく。
その光の粒子が完全に消え去るまで、
俺は、拳を握ったまま、しばらく呆けて動けない……という演技をして、
「はぁ……はぁ……勝った……」
荒い息のまま、俺はカメラに向き直り、
「ぎ、ギリギリでした……皆様の応援の力がなかったら、どうなっていたことか」
白々しいセリフだと、自分でも思う。
だが、コメント欄は、素直に喜んでくれていた。
『よかったぁあ!』
『さすがセン!』
『マジで心配したわ』
『ちっ、死なんのかい、おもんな』
『ついに、Sに勝ったぁ! マジですげぇ!』
『時空旅団とかと比べたらしょぼいけど』
『それは比べる相手が悪い』
炎龍を倒したことで、大量の経験値を得てレベルも上がった。
――これで、俺のレベルは39。
「みなさん、ありがとう! これからも、俺は、強敵と戦い続け、いつの日か、時空旅団にも追いつき、そして! いつか、このダンジョンの謎を解き明かしたいと思っています!」
『時空旅団には追い付けないだろう』
『夢をかたるのは自由』
『がんばれ!』
最終的な同接は――3200。
なかなかの数字だ。
これだけ集められるのであれば十分。
――正直なところ、『S級を倒す』というだけなら、時空旅団が何度もやってきたことだ。
あの連中の偉業と比べたら、今回の俺の結果なんか大したことない。
だが、『ちょっと前まで、C級にすら手も足も出なかった雑魚が、こうしてS級を打ち倒すまでになった』――そのサクセスストーリーを楽しみたい層には、俺のチャンネルが刺さる。
配信を切り、俺は、拳をぐっと握りしめた。
★
――翌日、俺は裏面へ足を運ぶ。
すると、様子がすこし違っていた。
「……ん?」
看板に、見慣れない一文が刻まれていたのだ。
『裏面2が解放されました』
「……裏面……2……?」
俺は、しばらくの間、その文字列を見つめたまま、動けなかった。